2012年7月13日金曜日

7月7日 七月大歌舞伎 夜の部

「義経千本桜  渡海屋 大物浦」

吉右衛門の銀平実は知盛、魁春のお柳実は典侍の局は期待を裏切らない。これぞ王道という演技かな。安徳天皇の子役もよかった。あの平坦なセリフづかいで涙を誘うってのは、やはり凄い演目だと思う。

「口上」

みなさん早口で巻き巻き。全部で15分なかったと思う…。

「吉野山」

ごちそうの仁左衛門の早見籐太がよかった。二枚目の仁左衛門の道化役って…と思っていたけど、これまで見たどの籐太より面白かった。歌舞伎初めて、という人を連れていったのだけれど、前半はわからなかったけど、籐太が出てからは面白かったとのこと。道化役も誰よりも伝えてしまう仁左衛門さんって凄い…


「河内山」

染五郎の河内山宗俊、歌昇の松江出雲守と若手ばかりの河内山。フレッシュなのはいいけど、前回、仁左衛門の河内山を見たばかりなので、ちと物足りなかった。初見の人は面白かったと言っていたので、悪くはなかったのだろう。



6月16日 坂東玉三郎特別公演

「壇浦兜軍記」

玉三郎は凄い、のだが、阿古屋はやはりしんどい。玉さまの圧倒的な美しさを堪能はできるのだが、演奏に込められた思いは正直私には理解できんです。
愛之助の秩父庄司重忠、薪車の岩永左衛門はよかったと思う。が、この演目、阿古屋役の凄さを見せるだけって感じだからなあ…

「傾城」

東西の遊女の違いを、ということだったが、阿古屋とは違う風情。思ったより短い舞踊だった。
演出が今っぽくて、それはそれでよしか。


ああああ、あんまり印象がなくて、感想もないよ…

同時開催の「玉三郎”美”の世界展」は昔のポスターなど見られたのはよかったが、衣装などはあまり関心がないので、ふーん、という感じ。衣装の大きさから、改めて、玉三郎って結構背が高いんだと思ったり。

2012年6月1日金曜日

5月26日 団菊祭五月大歌舞伎 昼の部

「寺子屋」

海老蔵の武部源蔵はなんか軽いというか、松王丸にばれないように身代わりを仕立てることに一所懸命で、主君への忠義とか、見知らぬ子供に手をかける苦悩とかがあまり感じられなかったような…。戸波は梅枝。3階席から見たせいか、立ち姿が玉三郎に似て見えてびっくり。スラリと細身でうりざね顔というのはいいな。

松王丸は松禄。咳込んだり、体がふらついたりとしんどそう。紫の鉢巻きをしているので病もちなのは知っていたが、こんなにしんどそうに演じるのは初めて見たかも。首実検のところも立ち位置がちがったりと、違う型なので興味深かった。菊之助の女房千代は武家の妻らしいしっかりした雰囲気。


「身代座禅」

菊五郎の右京、団十郎の奥方玉の井という組み合わせは、想像通り。菊五郎の右京は思っていたよりあっさりしてたかな。もっと矯めるかな、と思ったところでテンポよくセリフが進んだり、ちょっと脚本も短かったような。


「封印切」

藤十郎の忠兵衛はいつも通りという感じだが、菊之助の梅川が素晴らしい。けなげで、忠さん一途な感じで、なんともかわいらしいのだ。今までに見た梅川で一番かも。秀太郎に教わったそうだが、上方の雰囲気にも違和感はなかった。

三津五郎の八右衛門は意地悪ないやな奴全開。確か、前回の藤十郎との共演の時はうっかり睡魔に負けてしまったのだが、今回はセリフの応酬を楽しめた。

2012年5月21日月曜日

5月20日 五月花形歌舞伎 夜の部

「椿説弓張月」

三島歌舞伎の代表作なのに、上演回数が少ないのが不思議。大がかりなセットや仕掛けも楽しいし、凄惨な殺しのシーンなど、見せ場も多くて面白いのになあ。歌舞伎の様式を踏襲しつつも、新しい演出などあって、見ごたえ十分だった。

主人公の源為朝は染五郎。こういう、正義の人の役ははまっていていい。要所要所で型を決めて、歌舞伎らしい見せ場を作る。声もよく通っていたし。なんか、もっと頭でっかちな感じかと危惧していたのだけど、杞憂だった。

愛之助は第一の家来の高間太郎。立ちまわりなどはそつなく、という感じだが、最期のシーンが!腹を切って血しぶきが飛び散るなか(蜷川か?)、大波に呑まれて消えてしまうという。女房の磯萩役が福助で、油地獄に続いての共演。

七之助が白縫姫。この役は、玉三郎が若いころの当たり役だそうだけど、確かに誰にでもできる役ではなさそう。裏切り者の武藤太(=薪車)をお付きの女たちになぶり殺しにさせるのだが、「すぐに殺さず、時間をかけて苦しめろ」とか、きれいな顔をして凄いこと言うのだ。で、体中にくぎを打たれてのたうちまわる様を、琴を奏でて歌を口ずさみながら、顔色一つ変えずに見ている。

薪者は、白褌一枚になって、体中から血を流しながら惨殺される。ある意味、美味しい役?三島の趣味丸出しという感じもするけど、体格がいいので見栄えがいい。

注目の松屋は鶴亀兄弟の弟役なのだが、後段、夫婦に化けて敵の阿公の宿に潜入するところの女形がよかった。つい、男の地声が出てしまうところと、女の声色ががらりと変わるところとか。

5月19日 五月花形歌舞伎 昼の部

「西郷と豚姫」

仲居お玉をかん雀。不細工なんだけど、いじらしく、かわいい女を好演。女形をすると、藤十郎ににてるなあ…。西郷を一途に想いつつも、妻にはなれない哀しさは分かるのだが、何で死んでしまいたいのだろう。揚屋の舞妓や芸妓には慕われているし、西郷も憎からず思っているようだし。一番の馴染み客と仲居という立場で、西郷を陰でささえるだけでは不満なんだろうか?

獅童の西郷は、薩摩弁と低く太い声音がちょっとコントみたい。お玉と抱き合って涙にくれる、感動のシーンで笑いが起きてしまったのは、多分そのせい。心中しよう、とまで言っておきながら、出世の道が開けたとたん、「なかったことに」ってのはヒドイ。

松也は芸妓の岸野という、普通ならもうちょいベテランがやりそうな役だったのだけど、悪くなかったのでは。何より美人だし(←女形としてこれ大事)酔っ払いも難しそうだし、何年も揚屋勤めをしてこその、年増の悲哀というか、酸いも甘いもかきわけた上で、でも、愚痴らずにいられないのよ、って風情が感じられた。


「紅葉狩」

福助の更科姫&鬼女。踊りはともかく、姫が美しく見えないのはいかがなものか。2列目だったせいか、小じわとかきになっちゃって。

愛之助の山神は、踊り上手くなった?動きが滑らかで、キレイ。


「女殺油地獄」

予想していたより、断然よかった。若手の(これまで見たのは、獅童と海老蔵)のなかでは一番だし、ある意味、仁左衛門さんより、いいかも。
教えてもらったであろう演目は、ともすると愛之助の演技の後ろに仁左衛門さんが透けて見えるような気がするというか、お手本を消化しきれてなくて、差の部分が気になるのだか、この与兵衛に関しては、「愛之助の演技」を楽しめた。まあ、思慮に欠ける若者(ばかもの)が暴走する話だから、若い役者のほうが分があるというのもあるのでしょう。
仲間内で意気がってる様子とか、河内屋でのふてくされた様も、リアリティがあってよかったが、何より殺しの場面が美しかった。あんな、非人道的な行為に美を感じさせる歌舞伎って、奥深いなあ。

福助のお吉も、想像以上。世話焼きの近所のお姉さんぶりに説得力があり、こんなに優しくされたら、追い込まれた与兵衛は頼りにしちゃうよなあ。殺しの場面で「痛い」とか「助けて」とか、しゃべり通しでちょっとうるさい。

油については、「いつもより沢山撒いてます」って感じ?わざと全身まみれにしてるのではないか、ってくらい油の中をのたうちまわって、髪の毛がぐっしょり濡れて滴るくらい油まみれになっていた。最後、与兵衛が花道を引っ込むところで、物音にびくついて振り返りるとき、勢いよく動くので油が客席に飛び散って(結構遠くまで)思わず悲鳴が。シリアスなシーンなので、こういう余計な演出はいらないと思う。楽しい芝居なら、客席が盛り上がるということもあるだろうけど…。

秀太郎のおさわ、歌六の徳兵衛は予想通りの素晴らしい演技。とくにおさわが、大げさでない、何気ないしぐさのなかに心情があふれていて、胸に迫った。

2012年4月22日日曜日

4月21日 絵本合邦

約1年ぶりの再演、再見で話の細部まで楽しめた。

仁左衛門の大学之助、太平次の蓋約は見事。大悪人と小悪人が全く別人なのにそれぞれ魅力的で、目が話せない。悪い奴なのに格好いいって、なんでだろう。
太平次が女房のお道や、うんざりお松を後ろから抱き寄せるところなんて、やらしくて(誉め言葉)ドキドキした。

愛之助の与兵衛はいまいち。怪我した脚で花道を引っ込むところは、なんか不自然だし、お亀とじゃらじゃらするシーンもなんか萌えない。いい人の役って、魅力ないのかな。

時蔵はうんざりお松、皐月の演じ分けぶりに改めてびっくり。特にはすっぱなお松のほうが、好きかな。

前回と一部変わったキャストが、お道の秀太郎だったのだけど、この人がいると舞台が締まるというか、安定感が増す気がする。可愛くて、しっかり者の女房らしく、殺される場面の哀れさったらなかった。

2012年3月24日土曜日

3月24日 平成中村座「三月大歌舞伎」夜の部

襲名興行で高いので、当日券(立ち見、2500円)で観劇。狭い小屋なので、けっこう見えた。表情はオペラグラスが必要だったけど…。

「傾城反魂香」
仁左衛門の又平が見たくて。
勘三郎のおとくとは、息がぴったりで、夫婦の絆が感じられる。吃りの様子は控え目なのだけど、言いたい言葉が出てこない苦しさ、もどかしさが、痛いくらい伝わってくる。これまでに何人もの又平を見たけど、吃りのせいで幼稚にというか、知恵遅れのように見えることが多かったのだが、仁左衛門の又平はちゃんと大人の分別がある人に見えた。
石を絵が抜けたのに気づくくだりも、大袈裟すぎてやり過ぎになることなく、そのおかげで、素直に感動できた。吃又でもらい泣きしたの初めてかも。
勘三郎はちょっと存在感ありすぎのところがあって、「主役はおとく?」と感じる場面もあったけど、全体としては、いい女房だった。

「口上」
印象に残ったところを簡単に。

我當
中村座は8代(?)仁左衛門が座頭をつとめたことがあり、不思議なご縁。

進之助
高校時代、歌舞伎に興味がなかった同級生が、(前)勘九郎の演技を見てファンになった。人の見かたを180度変えるような役者になってください。

海老蔵
新勘九郎とは、初舞台の時からたびたび共演している。まじめなところは見習って、自分も精進したい。

仁左衛門
「御所五郎蔵」を新勘九郎に教えたと言われたが、17代勘三郎に教えてもらったので、恩返し。教えられた通りにはまだできていないが、聞いたことを孫の勘九郎に伝えたい。
いずれは、孫(虎之介)に教えてほしい。その時自分は生きていないだろうが、小山三さんはきっと生きているだろう。

扇雀
勘三郎には昼夜にかかわらずお世話になっている。
「身代座禅」で、勘太郎の右京に山の神で共演。その後勘三郎とも共演して、彼に足りないものがわかった。それは劇場を出てからの人生経験。勘九郎襲名を機に、劇場外の人生経験を積んでほしい。

笹野高史
歌舞伎の襲名口上の舞台に立てて感無量。先代勘九郎が勘三郎になるときに「大好きな勘九郎はどこへ行ってしまうのか?」と詰め寄ったが、7年ぶり(?)に勘九郎が帰ってきてくれて、うれしい。今夜は新勘九郎と「勘太郎の行方」について語り合いたい。


ーーー立ち見ではしんどいのでここまでで退場。肝心の襲名者の演目を見ずに帰ってスミマセン…。