「西郷と豚姫」
仲居お玉をかん雀。不細工なんだけど、いじらしく、かわいい女を好演。女形をすると、藤十郎ににてるなあ…。西郷を一途に想いつつも、妻にはなれない哀しさは分かるのだが、何で死んでしまいたいのだろう。揚屋の舞妓や芸妓には慕われているし、西郷も憎からず思っているようだし。一番の馴染み客と仲居という立場で、西郷を陰でささえるだけでは不満なんだろうか?
獅童の西郷は、薩摩弁と低く太い声音がちょっとコントみたい。お玉と抱き合って涙にくれる、感動のシーンで笑いが起きてしまったのは、多分そのせい。心中しよう、とまで言っておきながら、出世の道が開けたとたん、「なかったことに」ってのはヒドイ。
松也は芸妓の岸野という、普通ならもうちょいベテランがやりそうな役だったのだけど、悪くなかったのでは。何より美人だし(←女形としてこれ大事)酔っ払いも難しそうだし、何年も揚屋勤めをしてこその、年増の悲哀というか、酸いも甘いもかきわけた上で、でも、愚痴らずにいられないのよ、って風情が感じられた。
「紅葉狩」
福助の更科姫&鬼女。踊りはともかく、姫が美しく見えないのはいかがなものか。2列目だったせいか、小じわとかきになっちゃって。
愛之助の山神は、踊り上手くなった?動きが滑らかで、キレイ。
「女殺油地獄」
予想していたより、断然よかった。若手の(これまで見たのは、獅童と海老蔵)のなかでは一番だし、ある意味、仁左衛門さんより、いいかも。
教えてもらったであろう演目は、ともすると愛之助の演技の後ろに仁左衛門さんが透けて見えるような気がするというか、お手本を消化しきれてなくて、差の部分が気になるのだか、この与兵衛に関しては、「愛之助の演技」を楽しめた。まあ、思慮に欠ける若者(ばかもの)が暴走する話だから、若い役者のほうが分があるというのもあるのでしょう。
仲間内で意気がってる様子とか、河内屋でのふてくされた様も、リアリティがあってよかったが、何より殺しの場面が美しかった。あんな、非人道的な行為に美を感じさせる歌舞伎って、奥深いなあ。
福助のお吉も、想像以上。世話焼きの近所のお姉さんぶりに説得力があり、こんなに優しくされたら、追い込まれた与兵衛は頼りにしちゃうよなあ。殺しの場面で「痛い」とか「助けて」とか、しゃべり通しでちょっとうるさい。
油については、「いつもより沢山撒いてます」って感じ?わざと全身まみれにしてるのではないか、ってくらい油の中をのたうちまわって、髪の毛がぐっしょり濡れて滴るくらい油まみれになっていた。最後、与兵衛が花道を引っ込むところで、物音にびくついて振り返りるとき、勢いよく動くので油が客席に飛び散って(結構遠くまで)思わず悲鳴が。シリアスなシーンなので、こういう余計な演出はいらないと思う。楽しい芝居なら、客席が盛り上がるということもあるだろうけど…。
秀太郎のおさわ、歌六の徳兵衛は予想通りの素晴らしい演技。とくにおさわが、大げさでない、何気ないしぐさのなかに心情があふれていて、胸に迫った。
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