2024年8月12日月曜日

8月12日 八月納涼歌舞伎 第三部

「狐花」

京極夏彦書き下ろしの新作。歌舞伎役者が演じれば歌舞伎というが、セリフや演出に歌舞伎らしさは薄くストレートプレイに近い。 百鬼夜行シリーズの中禅寺秋彦の曽祖父、中禅寺洲斎が主人公のミステリー。
曼珠沙華が咲き乱れる鳥居の場面が印象的で、キーパーソンである萩之助の小袖の柄や、事件現場に残された曼珠沙華の花など象徴的に舞台を彩る。 照明も凝っていて、陰影が効果的に使われていた。
七之助演じる萩之介は娘たちを惹きつける妖しい美しさ。てっきり、家臣が連れて逃げた美冬(笑三郎)の息子だと思っていたが、雪乃(米吉)と双子という設定にはちょっと無理がないか? 自分とそっくりな人に一目惚れするかとか、一人だけ養子に出されるとか、そんなに幼い時に生き別れたのに復讐に身を捧げるほど事情を知っているとか、いろいろハテナが。米吉はわがままで可愛らしい、いいところのお嬢さんを好演。 
敵役の上月監物は勘九郎。老けた化粧で極悪人らしかったが、最後に中禅寺に「結局のところ独り」と言われて急に恐れ嘆くのは唐突な感じ。弟、的場左平次は染五郎。濃いアイシャドウで悪そうな雰囲気を醸し出し、老けて見えた。
憑き物落としの中禅寺洲斎は幸四郎。セリフを噛んでいたのがいただけない。流暢に喋ってこそ説得略がある役なので。 
堅物に横恋慕される美冬に笑三郎。美しくしっかりものの奥方。堅物と共に悪事を働く近江屋の猿弥、辰巳屋の片岡亀蔵は典型的な悪党ぶり。雲水の門之助がよくわからない役どころだった。
萩之介と雪乃だけでなく、堅物と左平次などみんな血縁なのはなんだかなあ。

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