2024年8月31日土曜日

8月31日 素浄瑠璃の会

第一部

「川連法眼館の段(中)」

聖・清公。
聖は真っ直ぐな語りぶりに好感が持てる。語り分けや音の使い方は未熟だけれど、ちゃんと真ん中で語ってる感じがする。狐言葉の前までだったのは、まだ彼には荷が重いという判断だろうか。
清公もきっぱりした弾きぶりがよい。音の大きさでなく、寸法がちょっと小さく感じられるのが、若手ってことなのかと思った。

「勘平腹切りの段」

睦・清允。
聖と比べれば格段の上手さで出だしはとても良かった。後半、ばてたのか声が掠れてきたのと、婆(女性)の語りがもう一つ。
清允は健闘してたけど、やはり寸足らずに聞こえた。

「山の段」

靖・清方。
山椒大夫の話は素浄瑠璃でしか残っていないのかな。靖は度々手がけているようだが、うーん。三味線が未熟だと語りにくいのか。
清方はよく弾いていたように思ったが。

「九郎助住処の段」

碩・藤蔵。
この日一番の聞き物。のびのびとした語りで、スケールの大きさを感じた。語り分けもできてたし、情景描写にもメリハリがあった。何より、太郎助が健気で可愛いのがいい。
藤蔵は唸り声は控えめで、太夫を上手く乗せていた。


第二部

「妙心寺の段」は小住・藤之亮。
三味線を盛り立てる語り。大きな語りで、隙間を埋めるような。藤之亮は固かったが、大きなミスはなかったのでは。

「夕顔棚」は薫・清志郎。
チャリっぽくなる癖を抑えてまずまず。

「花渡しの段」は亘・寛太郎。

「油店の段」は織・燕二郎。
チャリだから軽くていいのだけどやや早口で忙しない感じ。予定時間より10分ほど巻いて終わった。
コトバが多く、三味線は3分の2くらい弾かないでじっとしているので、燕二郎の稽古になるのかと思ったら、燕三の指示なのだそう。

3回目を迎える素浄瑠璃の会だが、台風の影響もあって客席が寂しかったのが残念。

2024年8月25日日曜日

8月25日 上方歌舞伎会

「荒れねずみ」 

松十郎、千寿、千次郎、りき弥、千太郎、愛三郎、愛治郎が素踊り。
振付は二世楳茂都扇性。てっきり友五郎振付かと思っていたが…。ねずみの顔を扇で表現するなど、ちょっと洒落た楽しい踊りなのだろう。松十郎がリーダーの風格。
プログラムによると、当代扇性の愛之助も指導にあたったそう。
 
「封印切」 

翫政の忠兵衛は愛嬌があって、いい忠兵衛。特に、後半の梅川に真実を打ち明けてからの慟哭が良い。成駒家は封印切りではなく「封印切れ」だったと思うが、小判がバラバラになってしまうほどの切れっぷり。吉太朗の梅川は前半、もう少し儚さが欲しいと思ったが、後半は忠兵衛を一途に思う風情に泣かされた。忠兵衛との並びも似合っていて、数年後にまた見たい。

八右衛門は松四郎。ところどころ愛之助の八右衛門を思わせる、仇っぷり。ただ、あれだけの独白を持たせるのはちょっと荷が重いか。ちょっと意識が遠のいてしまい、忠兵衛が階段を駆け降りるところを見逃した…。 

中居およしを千太郎、おふさを愛三郎が勤め、千寿とりき弥は名前のない中居なのは若手に経験を積ませようということなのだろう。若手2人は臆することなく、丁寧に勤めて好印象。おえんは當史弥。懐の深い女将さんといった風情がいい。

幕の後の挨拶は仁左衛門、友五郎、孝太郎、吉弥。(鴈治郎は翌日の藤間宗家の公演準備のため欠席だったが、成駒家の封印切だったので一言欲しかった…)「一部を除いて100点」と仁左衛門。成駒家型だったので遠慮していたところもあったろうが、主役の2人の芝居を見れば納得。「一部」」が誰だか気になるところだが、出演者の挨拶でトップバッターの松四郎の声がとても小さかったのはそう言うこと…?と思うなど。仁左衛門は上方歌舞伎会と言うべきところで「晴の会」と言い間違えたり、最後の手締めを忘れそうになって「どうやるんだっけ?」という感じで後ろにいた松十郎や千寿に教えてもらったりと、チャーミングさを遺憾なく発揮されてた。

 
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2024年8月24日土曜日

8月24日 内子座文楽 午後の部

解説は聖。緊張しているのかかなりとっ散らかって要領を得ず。4〜5分ほど。

寿柱立万歳は同キャストなので省略。

「摂州合邦辻」

前は藤・清志郎。
歌うような語り。
切は錣・宗介。
エモーショナルな語りというのはこういうのをいうのでは。合邦の慟哭が劇場に満ちる。三味線は午前の部より控えめ。終演後、駅で遭遇した宗介に聞いたところ、合邦の三味線は師匠によって違い、〇〇風というのでなく、個人の差だそう。「楽屋で清介が攫っているのを聞いたらかなりバチバチ弾いていた」とのこと。

8月24日 内子座文楽 午前の部

解説は薫。寿柱立万歳の由来、改修工事に入る内子座の未来を寿ぐ意義を説明。合邦は、合邦住処の前段からあらすじの要点を不足なく話していたのに感心した。本人も長々と言っていたが、ちょっと長くて7〜8分かかったか。

「寿柱立万歳」

希の太夫、亘の才三、聖、薫に寛太郎、清公、燕二郎、清允。
漫才なんだけど、ふざけた感じなのか裏返ったみたいだったり、節の調子が三味線と合ってなかったり。寛太郎をシンに三味線チームはキリッとしてた。 
人形は玉翔の太夫に玉勢の才三。

「摂州合邦辻」

前を呂勢・燕三。
玉手御前に色気があるのがいい。あっちからも惚れてもらう…気。はぞくっとした。合邦の元武士らしい武張った感じ、妻の娘可愛さ、それぞれの登場人物の輪郭がクッキリ描かれてバランスの取れた語り。しっかりと床本を見て語っていたのも好印象。燕三の三味線は情景描写が的確でとてもよかった。

切は若・清介。
十一代目若太夫襲名だけあって、掛け声がたくさん、拍手もたくさん。のっけから玉手のみならず、浅香姫も瀕死なの?という囁きボイスで、合邦のおいやいはため息にのよう。後半、三味線の手が増えると掻き消されて聞こえないにも関わらず拍手が起こるのは、「ここが拍手」という語りをするからと気づいた。清介の三味線はいつもに増してバチバチで、速弾きで拍手も大きかった。

2024年8月17日土曜日

8月17日 大槻文蔵と読み解く 能の世界〜能作者そして作品〜

対談は小田幸子と世阿弥をテーマに。世阿弥を50分で語るのは無理とのことで「恋重荷」を中心に紐解く。シテツレの女御は初めから舞台にいるが、ワキや前シテの荘司からは見えていない設定(御簾内にいる?)。後場から出てもよさそうなところ、いないはずの女御の視線の先で荘司らのやり取りが展開されるという演出に作者の狙いがあると。荘司がどうして死んだのかは明記されていないが、重荷に頭をぶつけて死ぬという解釈でそう演じていると文蔵。現行曲では荘司は言葉で女御を責め立てるのみだが、古い演出では、荘司の霊が女御を追い回して打擲するといった直接的な場面があるとか。最後、守護神となって千代に女御を守るというが、鬼に恨まれるのとどちらが怖いかという指摘に深く頷く。

「蝸牛」 

善竹弥五郎の山伏、忠重の主、忠亮の太郎冠者。
枯れた風というか、セリフも動きもおっとりした感じ。世代の違う忠亮だけ声量が大きい。


「恋重荷」

赤松禎友のシテ、大槻裕一のツレ、福王茂十郎のワキ、善竹隆司のアイ。
裕一の女御は清楚な感じ。上手に座っている間、頭も動かさずにじっとしているのは辛いと言っていたが、そう聞いて見てみると大変そう。後場で死んだ荘司を見せられたり、怨念に苦しめられたりとただただ気の毒。因果と言っても、重荷を持たせたのは女御の指示ではないのに。最後、守神となってずっと見守っていると言われ、佇む姿は絶望のあまり呆然としているように見えた。
シテは重荷を持てずに絶望し、重荷の脇で音を立てて膝をつくのが死んだということらしい。その後、橋掛かりから引っ込むのだが、肉体は動いているけど中身がないというか、役の命は離れているように見えた。ただ、その後、アイやワキが荘司の死骸を前に色々するので、現代劇だったら着物か何かを残すだろうなと思った。
小鼓は大倉源次郎。シテの面を丹後に伝わる古いものを使ったのにちなんで、同時代(室町期)の弥七?作の胴を使ったとか。

2024年8月16日金曜日

8月16日 大文字送り火能 蝋燭能

「葵上」

金剛永謹のシテ。登場したときから深い悲しみを称え、葵上への恨みを述べたり、打擲したりする仕草もどこか哀れ。腋正面席だわったのだが、こちらを向いている場面が多く、面の角度によって泣いているようにも見えた。
無明之祈の小書は金剛流のみに伝わるものだそうで、中入り後に後シテが緋の長袴に着替え、葵上の小袖を引きずって連れ去ろうとするのを小聖が奪い返し、祈る間後シテが橋掛りで悶え苦しむ。最後は舞台上でふと我に返ったようになって終わるので、退場が不思議な感じ。
ツレの照日の巫女は宇高徳成、ワキツレの朝臣は喜多雅人、ワキの小聖は福王和幸、アイは茂山千五郎。 アイは朝臣に言われて小聖を呼びに行くだけだった。

2024年8月14日水曜日

8月14日 BALLET with 金子三勇士 ステージアートの世界Vol.1〜身体表現の可能性〜

ピアニストの金子三勇士を中心に、バレエダンサーを招いての公演。クラシック音楽とバレエはともに舞台芸術であり、2度と同じものは再現できない一期一会。キャパ200人くらいの小ぢんまりした会場で、贅沢な時間だった。

「薔薇の精」
金子のピアノに、本島美和の少女、中島瑞生の薔薇の精。
本島は端正な踊りで清楚な少女を描出。中島は意外と上半身ががっしりしているのでローズ色のタイツ姿はちょっと刺激が強い。

ピアノソロでシューマンのトロイメライ、ドビュッシーの月の光、ショパンのバラード第1番など。ポッパーのハンガリー狂詩曲はチェロの植木昭雄と。

シューマン「詩人の恋」 
全16曲の独唱をテノールの城宏憲、金子のピアノ。
奥村康祐は全曲を踊るのではなく、①美しい5月、③バラや、百合や、鳩や、太陽や、⑤僕の心を潜めってみたい、⑦僕は恨みはしない、⑩かつて愛する人の歌ってくれた、14夜ごとに僕は君を夢に見る、16むかしの、忌まわしい歌草を、の7曲。初めての振り付けだそうだが、曲ごとに異なる感情をバラエティのある表現で魅せた。舞台が狭いので、途中、ピアノの後ろで見えないところがあったのが残念。

サン=サーンス「瀕死の白鳥」
ピアノとチェロの演奏に本島美和のソロ。
本島は初演だそうだが、もう少し腕の動きが柔らかかったらと思った。



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2024年8月12日月曜日

8月12日 八月納涼歌舞伎 第三部

「狐花」

京極夏彦書き下ろしの新作。歌舞伎役者が演じれば歌舞伎というが、セリフや演出に歌舞伎らしさは薄くストレートプレイに近い。 百鬼夜行シリーズの中禅寺秋彦の曽祖父、中禅寺洲斎が主人公のミステリー。
曼珠沙華が咲き乱れる鳥居の場面が印象的で、キーパーソンである萩之助の小袖の柄や、事件現場に残された曼珠沙華の花など象徴的に舞台を彩る。 照明も凝っていて、陰影が効果的に使われていた。
七之助演じる萩之介は娘たちを惹きつける妖しい美しさ。てっきり、家臣が連れて逃げた美冬(笑三郎)の息子だと思っていたが、雪乃(米吉)と双子という設定にはちょっと無理がないか? 自分とそっくりな人に一目惚れするかとか、一人だけ養子に出されるとか、そんなに幼い時に生き別れたのに復讐に身を捧げるほど事情を知っているとか、いろいろハテナが。米吉はわがままで可愛らしい、いいところのお嬢さんを好演。 
敵役の上月監物は勘九郎。老けた化粧で極悪人らしかったが、最後に中禅寺に「結局のところ独り」と言われて急に恐れ嘆くのは唐突な感じ。弟、的場左平次は染五郎。濃いアイシャドウで悪そうな雰囲気を醸し出し、老けて見えた。
憑き物落としの中禅寺洲斎は幸四郎。セリフを噛んでいたのがいただけない。流暢に喋ってこそ説得略がある役なので。 
堅物に横恋慕される美冬に笑三郎。美しくしっかりものの奥方。堅物と共に悪事を働く近江屋の猿弥、辰巳屋の片岡亀蔵は典型的な悪党ぶり。雲水の門之助がよくわからない役どころだった。
萩之介と雪乃だけでなく、堅物と左平次などみんな血縁なのはなんだかなあ。

2024年8月9日金曜日

8月9日 夏休み文楽公演 第2部

「生写朝顔話」

宇治川蛍狩の口は薫・清公。
懸命に語っているが、声のコントロールが未熟なので強弱の揺れが耳に障る。上目遣いでほとんど床本を見ていないのも気になった。

奥は睦・勝平。
女の声が掠れているのはいつものことだが、何か足りないのは艶かもしれない。美幸と阿曽次郎の色っぽい場面なのに盛り上がらない。 

明石浦船別れは芳穂・錦糸に清方の琴。
前日のフラストレーションと比して、こういう義太夫節が聞きたかったと思う。声がいいし、フシもいい。三味線も流麗だ。

浜松小屋の前は呂勢・清治。
朝顔と浅香、2人の女性の愁嘆場をたっぷりと聞かせる。これでもかと嘆きが続くので、逆にこれぞという見せ場(拍手のタイミング)がないのかも。
休演から復帰した清治が元気そうで一安心。譜面をみて俯くことはなかったが、一頃に比べて音色が優しくなった気がする。

後は小住・清馗。
輪抜吉兵衛が現れて立ち回りになるところから急に床が変わる。前回よりも声の抑制が効いて聞きやすかった。

島田宿笑い薬の中は咲寿・寛太郎。
発声が落ち着いてだいぶ聞きやすかった。

次は織・藤蔵。
こちらも力みが抜けて、軽妙な笑いに。

宿屋の錣・宗助、大井川の千歳・富助と切場が続き、充実の語り。朝顔はせっかく再会できたのだから、川止めくらいで絶望して死のうとしなくても…と思う。阿曽次郎はきっと迎えに来てくれるでしょうに。

2024年8月8日木曜日

8月7日 夏休み文楽公演 第3部

「女殺油地獄」

徳庵堤は三輪、津国、文字栄、南都、織栄に清友。
与兵衛は三輪だが、なんだか今ひとつ、あっさりした感じ。南都のお吉、小菊も今ひとつ美しくない。織栄が花車やお清、小栗八弥ら複数役を担当。上目遣いが目についたが、よく声がでていた。 
人形は頭巾を被っていたので、あまり印象に残らず。

河内屋内の口は亘・団吾。
ぎょーてーぎょーてーの出だしから大きな声。団吾は安定のしかめつら。

奥は靖・燕三。
この日一番の床。
与兵衛を折檻しつつも親の情の滲むお沢、徳兵衛が泣かせる。与兵衛のダメっぷりも的確だし、おかちは娘らしい可愛さがある。燕三は太夫を盛り立てるという感じではないのかもしれないが、靖との相性は悪くないように感じた。

豊島屋油店は若・清介。
声が小さいというより、もはや囁き? メリハリのないのっぺりとした語りで、人物の語り分けも皆同じに聞こえる。殺しに至るまでのやり取りも、気の抜けたぬるいコーラみたいで緊張感がない。聞いていてムカムカしたのは初めてだ。こんな語りで三味線はどんな顔して弾いてるの?と何度も床を凝視してしまった。

人形は玉助の与兵衛に一輔のお吉。与兵衛はすごいダメ男だし、お吉は所作が丁寧で言葉がなくても人柄の良さが滲み出る。豊島屋の床を滑る場面は息のあった動きで本当に滑っているよう。床の緊張感がなかったのがつくづく惜しい。
 
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2024年8月7日水曜日

8月7日 九雀の噺 美吉屋ご一門を迎えて

南座の歌舞伎鑑賞教室が縁という美吉屋一門が落語に挑むお楽しみ。本職の役者だから、芝居噺の芝居部分はさすがのうまさだが、普段の落語よりもボリュームがある上に歌舞伎役者の間なので少し長く感じた。落語家は芝居の上手い人でもやはり落語の芝居だったのだなあと。


 九雀「まめだ」

まめだの哀れさが強くて、こんなに悲しい話だったかと思う。

吉太朗「蔵丁稚」

ものすごく緊張していて、特にマクラはしどろもどろで終始着物の裾を直していた。丁稚のこまっしゃくれた可愛さ、主人のとの語り分けもしっかりしていて、芝居の部分になるとさすがの口跡の良さ。ひとりで演じて忠臣蔵四段目の緊張感を描き出していたのはあっぱれ。

折乃助「転宅」

2回目とあって、吉太朗よりは落ち着いた様子。特に後半は伸び伸びとして良かった。妾の色っぽさ、泥棒は普段はほとんど演じない男の役なので新鮮。弁天小僧の名乗りなど聞かせどころもよかった。

吉弥「質屋芝居」

意外なくらい緊張していて、本題に入ってからも羽織を脱がないのでハラハラしてしまった。忠臣蔵三段目の刃傷から裏門、鷺坂坂内までと盛りだくさん。坂内のところは日本舞踊のように形が決まって、「いい形!」と大向こうもバッチリ。立ち回りのところは舞台の左右から吉太朗と折乃助が出てきて3人で大いに見せた。

九雀「芝浜」

慣れない落語に挑戦する3人を憚って江戸弁で。イントネーションには違和感なかったけれど、ちょっともっちゃりした感じ。前半はサラサラとすぎたが、3年後の大晦日の告白はたっぷりと。

2024年8月4日日曜日

0804 京都バレエ団

「デフィレ」
設立75周年記念で、全団員らが舞台上に並んで壮観。

「コンチェルト・アン・レ」
エクササイズのような基本的な動作で構成された振付。ダンサーが入れ替わり立ち替わり、子どもから段々大人に替わり、ステップの難易度も高くなっていくが、クラスレッスンを見ているようで正直退屈。

「ペルソナ」
矢上恵子振付のコンテンポラリー。音の取り方、リズムの刻み方が心地よく、引き込まれる。
黒い衣装の藤川雅子を中心にした男性ダンサー4人がよく踊っていて、中心の藤川は次々と変わる曲調、振付をこなして見応えがあった。グレーの衣装の女性ダンサー4人のグループは若手もいたせいか踊りのキレが弱く、メリハリがなくてぼんやりと流れてしまう感じがした。

「ボレロ」
茶道をモチーフにしたそうだが、竹が象徴的に使われていて、女性ダンサーはうちわの骨のような小道具、男性ダンサーの持つ竹の棒を持つ。小道具を茶筅のようにシャカシャカしたり、竹棒を囲いのように用いたり、男性ダンサーが並行棒のように掲げる竹棒に女性ダンサーが脇でぶら下がって宙に浮いたり。竹の梯子に乗った女性ダンサーを掲げるところは、音楽の高揚感と合わさって盛り上がった。ラヴェルの曲はベジャール版が有名だが、こちらの方が好みかも。

「ル・レーヴ」
6年ぶりの再演でいろいろ改善したようで、冒頭の村のシーンは子どもたちも加わりより華やかに。主人公ら村人の衣装は作務衣みたいどが、上衣がコンパクトになって踊りやすそう。
ダイタ役の北野優香は華があり、長い手脚を生かした踊りは主役として不足なし。夢の場面でのソロで転んでしまったのは気の毒。前回同様ペラペラの中振袖のような衣装は脇のスリットがなく、踊りにくそうだった。
タイコ役の鷲尾佳凛は地味な衣装のせいか期待ほどではなかった。踊りの見せ場もあまりなかったし。意外に良かったのは領主役の吉岡遊歩。黒ベースの裃風の衣装もあって威厳があった。 イザナミの佐々木朝彩はもう少し女神の神々しさが欲しい。せっかくの衣装があまり素敵に見えなかったのはなぜだろう。

2024年8月3日土曜日

8月3日 夏休み文楽特別公演 第1部

「ひょうたん池の大なまず」

小住、碩、聖、薫に清志郎、清丈、錦吾、清允、清方。
人形は簑紫郎のごんべえ、勘介の大なまず。

勘十郎が子ども向けに作ったという新作。
舞台を左右に分けて、左側を地上、右側を池の中に設えて釣りの様子を見せる演出は面白い。ストーリーというほどのものはなく、なまずをはじめとする池の生き物たちを見るのが楽しいのかな。ごんべえの簑紫郎は細かな動きがいきいきとしていたし、勘介はサービス精神あふれるコミカルな動きが子どもの観客にも受けていた。

解説 文楽ってなあには勘次郎。ちょっと早口。

「西遊記」

五行山の段は希・友之助、燕二郎、藤之亮。
岩に閉じ込められた孫悟空と三蔵法師の出会いの場面から描くのはわかりやすい。これまでだったら語り分けにしそうなところ、一人で語り分ける意欲は買う。

一つ家の段は藤と休演の団七に代わって団吾。
いつもにまして顔を歪めての演奏は代役のプレッシャーからか。

人形は玉佳の孫悟空が大小の如意棒を操ったり、最期は宙乗りしたりと大活躍。ちっちゃい悟空がわちゃわちゃしているのもかわいかった。三蔵法師は紋臣で、気品がある。芙蓉実は銀角は紋秀で、孫悟空と一緒に宙乗りしていくのだが、蛇体を操るのは大変そう。孫悟空も宙乗りは大変そうで、本人の手足に人形の上半身をつけた状態なので身体のバランスが不思議な感じ。劇場後方の出口から捌ける寸前にホッとした表情になって手を振っていたのが印象的だった。




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2024年8月1日木曜日

8月1日 晴の会「伊賀越道中双六」

10年目、第9回に挑むのは上方歌舞伎の大物「伊賀越道中双六」。松嶋屋三兄弟の当たり役をそれぞれの弟子が演じる胸熱企画。4時間コースを覚悟していたが、沼津を中心に前後を補う構成で、3時間半にまとめた(タイムテーブルは3時間25分だったが、さすがに押した) 小さい劇場なので役者の表情がよく見えるし(今回はBブロックの下手側通路脇だったので、本当に近かった)、初役で教わったことを丁寧に演じていることもあって、普段の大歌舞伎よりも役柄の心情がより鮮明に伝わるように思う。

それぞれ熱演だったけど、十兵衛と仇の沢井股五郎を演じた松十郎が真逆の役どころを見事に演じ分け、成長を感じた。股五郎は低い声で憎々しく、沼津の十兵衛は仁左衛門写しのいい男ぶり。お米に一目惚れする軽さがチャーミングで、実の親子、兄妹と知って、情と義理の間で苦悩するところも魅せた。別れ際、平作の顔をよく見ようと提灯の灯りをかざすところなど、細かい所作に目がいくのは丁寧に演じているからだろう。平作とのやりとりで、名物のどじょうを食べるかというやりとりで「うまいモノに、、、罪はない」と言って笑いを堪えていたのは「名物に美味いものなし」というべきところをトチッたから? 白粉を耳の上半分をと首の後ろ塗り残していたのがちょっと気になった。 

千寿のお米は、序幕で物語の発端にも触れていたこともあって元は傾城の瀬川だということが分かる粋さを感じさせた。 沼津だけだとどうしても田舎の気立のいい娘に見えてしまうので、この構成は良い。翫政演じる志津馬への情も丁寧に描いた。
千次郎は改訂の亀屋東斎藤に加え、平作と唐木政右衛門の二役。平作はさすがに若すぎるのだが、人の良さそうな好々爺を好演。政右衛門はキリリと格好良かった。

お谷のりき弥は武家の女房らしい品格。當史弥は股五郎母の鳴海。母の慈愛があってよかったが、息子が武士らしい最期を迎えられるよう自害するという流れについていけなかった。
翫政は二枚目の志津馬と十兵衛の荷物持ちの二役。ちょっと小柄なのが惜しいが、軽率な二枚目もいい。愛治郎は孫八。迫力のある立ち回り。