2023年8月27日日曜日

8月27日 はじめてたのしむ文楽 その参

@北とぴあ

高木秀樹の案内で、作品と三業の解説を1時間余り。呂勢は金殿の段のお三輪や鱶七のセリフで語り分け、藤蔵と共に竹に雀の一節を披露するなど、耳に贅沢。若い娘は声色を使うのではなく、音(オン)を遣う、歌うように語るテクニックでおっさんの声でも可愛く聞こえると。
人形は玉助が中心に話をして、一輔が左に回る贅沢。足は玉延。若手会で鱶七を遣った時、文雀に「お祖父さんが泣くで」とダメ出しされたエピを話すと、呂勢が「玉助が偉いのはちゃんと反省していた。逆恨みする人も多いのに」とフォロー。一輔は金殿のお三輪の勉強のため箕助のビデオを研究したが、太夫によって同じ動きでも全然違ったと。

「金殿の段」は呂勢・藤蔵。
解説で聞きどころを話していたので、客席の集中力も高かったよう。お三輪が可憐で哀れで。一輔の人形も健気な風情でよかった。

2023年8月26日土曜日

8月26日 上片歌舞伎会

「仮名手本忠臣蔵」

五、六段目を松嶋屋の型で。
勘平は松十郎、少し痩せたのか顔がほっそりして、仁左衛門に似てた、セリフの言い方など、仁左衛門を思わせるところがあるものの、様にするのは難しいのねーと思っていたが、最後の独白かとても良くて泣かされた。
女形では當史弥のおかやがいい。老け役にはまだ若いので板についてないところもあるが、勘平をなじるところなど、情がある。途中まで六段目の主役はこの人ではと思ったほど。
佑次郎が定九郎。二枚目?は珍しく、シュッとして格好いいが、定九郎ってやることたくさんあるから手順に余裕がないかも。
千寿の一文字屋お才は黙って心持ち顔を上にしている風情に秀太郎を思い出した。
三味線に乗るのって難しいのだなあと。三味線の拍に合わせすぎて滑らかさがないように思った。

「釣女」

愛治郎の太郎冠者は愛嬌があっていい。なんだか楽しそう。
千次郎の大名、口跡がよく、間がいい。
上臈は千太郎、醜女は松四郎。無理に醜くしてなくて、丸顔で額の上に離して描いた眉がむしろかわいい。

終演後の挨拶で、久しぶりに表舞台の我當。不自由ながら結構長く挨拶してくれ、最後には「武士の情けだ…」以下の勘平のセリフに拍手が鳴り止まず。
一人一人、自己紹介で勤めた役名を述べたのだが、愛治郎が「太郎冠者と猟師…」と言うと、仁左衛門が「もう一つ!」とツッコミ。五段目のイノシシもやったそう。
愛三郎の背が伸びて、顔立ちも落ち着いてきた。今回見なかった上臈、見たかったかも。

iPhoneから送信

2023年8月21日月曜日

8月20日 内子座文楽 午後の部

呂勢の解説から。
普通は若手のイケメンが解説するのにこんなおじさんが出てきて…という自虐に始まり、父が宇和島出身なので、DNAに愛媛が入ってると。作品については、団子売りは清元からの移し、曽根崎は明治期に復曲する際に詞章がカットされてるなどで学者センセイの評価は低いが、お客様の要望なのだからいいでしょと(←学者の言うこと気にしすぎ)。松之輔のいい曲がついているので人気になったし、楽しんでと。あらすじは、単純なストーリーなので解説いらないと笑いをとっていた。これまでより早口でなくなった気がした。 

「団子売」
芳穂の杵造、小住のお臼に清馗、寛太郎、燕二郎。
小住は調子が悪いのか、声が出ていない。三味線はシンがぼんやりしている感じがした。
人形は玉勢と簑紫郎。杵造の腕が、肘が衣装から出てしまっていて、不自然に見えた。

「曽根崎心中」

生玉は希・清丈。声は悪くないのだが、単調な語り。盛り上がりに欠ける。

天満屋は呂勢・燕三。語りも三味線も申し分ないのに。音楽的なのに、なぜか集中できない。人形は玉男の徳兵衛に和生のお初と、望むべくベスト配役なのに。やっぱり私はこの話自体が好きじゃないのだな。

天神森は芳穂のお初、小住の徳兵衛に、亘のツレ、三味線は清馗、寛太郎、燕二郎。

左の桟敷席だったので少し高く、よく見えたのだが、床と目線が同じで、多分あちらからもバッチリ見えていた。 

4年ぶりの内子座文楽はボランティアも親切でいい雰囲気。来年から耐震工事でしばらく休館になるのだそう。

2023年8月20日日曜日

8月19日 文楽素浄瑠璃の会

「源平布引滝」
久郎助住家の段を織・清志郎。
とても気合の入った語りなのだが、内容が頭に入ってこないのは何故だろうとずっと考えていた。一本調子で緩急に欠けるとか、力が入るあまりがなり立てるようになってるとか、自分に酔ってるとか、気持ちが入っていないとか。色々思い当たるのだが、どれも十分に説明できない気がする。上手ぶってるってこういうことだろうかと思うなど。あれだけの熱演なのに、途中で拍手が入らないのはそういうことなのだろう。
清志郎の三味線はシャープでクリア。ただ、太夫の押しが強すぎるので、意識しないと耳に残らないのは困ったことである。


「ひらかな盛衰記」
松右衛門内より逆櫓の段を錣・藤蔵。
エモーショナルな2人で、義太夫らしくてほっとする。
錣はいつもに増して汁気の多い語り。「ヤッシッシ」の音が高いのはちょっと違和感があった。
三味線は派手な手が多く、弾き甲斐がありそう。藤蔵も乗ってよく唸ってた。


「卅三間堂棟由来」
平太郎住家より木遣り音頭の段を千歳・富助。
格調高い演奏。素浄瑠璃の会でトリということは、現役で一番と認められていることなのだろうか。


2023年8月14日月曜日

8月14日 蝠聚会

「寺入りの段」を清方・清允。
清方は素直な語り。菅秀才がかわいい。千代など女性の詞は間が持たないのか急ぎ気味で、声の調子まで上滑ってる感じ。

「寺子屋の段」の前を清介・清公。淡々とした語りに、力強い三味線。こんなに渾身の撥捌きをする清公は見たことがない。

後は宗助・寛太郎。泣けた。千代のクドキ、源蔵との立ち回りのあと、千代が正体を明かすところのクドキが秀逸で拍手もあった。高音のフシもきれい。一方、松王丸などはちょっと物足りないか。三味線は柔らかい音色。イロハ送りが泣かせる。

「傾城阿波の鳴門」巡礼歌の段は燕三・燕二郎。はじめは淡々としていたが、おつるが可哀想で涙。

着用していた裃から見るに、清介は織、宗助と燕三は呂勢が指導役か。

2023年8月13日日曜日

8月13日 坂東玉三郎特別公演「怪談 牡丹灯籠」

玉三郎のお峰に愛之助の伴蔵。会話のテンポは悪くないが、玉三郎はセリフが所々つかえ気味だったのは調子が悪かったのか。年上女房風ながら、伴蔵とのやり取りが楽しそう。愛之助は仁左衛門と比べるとせせこましいのだが、この小物ぶりが落語の登場人物らしいのかも。

新三郎に喜多村緑郎、お国に河合雪之丞と新派の役者も活躍。お露の件はあっさりめだったが、緑郎は相変わらずの二枚目。雪之丞はパッと場が華やぐ。

お六とお峰にお米とお露が取り憑いいたのを小刀で刺し殺した伴蔵が、牡丹灯籠に導かれるように花道を去っていく幕切れ。幽霊の恨みを買ったのか、良心の呵責から見た幻か。余韻が残る。

2023年8月12日土曜日

8月12日 KASANE PROJECT Vol.1 素浄瑠璃 色彩間苅豆

清元の「かさね」初演から200年を記念して、清元の素演奏と義太夫節の複曲の聴き比べ。清元の原曲を義太夫節に移したものなので、詞章は同じで、演奏方法が違うだけなので、ジャンルの違いが明確に表れて興味深かった。

清元は栄寿太夫(右近)が初役で立浄瑠璃を勤め、三味線は兄の斎寿をシンに。
栄寿太夫の清元は初役のせいか、音程や音色を探り探り語っているように感じた。清元の節が身体に入り切っていないような。与右衛門役の志寿子太夫やツレの瓢太夫、一太夫も、息をするように自然に語って(唄って)いたのに、栄寿太夫だけは視線をキョロキョロ、口元も落ち着かなげにもごもごしてて。音程もちょっと自信なさげに揺らいでたところがあったり(一箇所は明らかに詞章を間違えかけたような)視線をあちこち巡らせるのも、落ち着かなく見えた。(他の人はほぼ、一点を見据えているので余計に)セリフのところは、歌舞伎で演じたことがあるだけあって女方の綺麗なセリフだったけれど。

対して義太夫節は、呂勢、織という手だれなので、安心して聞けた。三味線は団七のシンに友之助、清公。サクサク進むなあと思ったら、時間も短くて、清元の45分に対し30分余。義太夫節ってゆったりしている印象だったけど、清元の方が時間がかかっていたとは。泥臭いというけれど、聞き慣れているせいかこちらの方が好みかな。

アフタートークで、粋で情感に溢れる清元に対して、泥臭い、野暮ったい義太夫節と団七。かさねと与右衛門の立ち回りの場面は重造師の朱にはメリヤスとしか書いてなく、メリヤス集からこれだと思うものをいつくか繋げて作ったら、後日、別の三味線弾き之朱が見つかって、そこに書かれていたものと一致したのだそう。 すごい。

呂勢は、芝居ベースなので、「アレェ」みたいな普段の義太夫節では言わないようなセリフがあって照れくさかったのだそう。重造師の作曲は、清元の手を取り入れつつ、義太夫節らしい曲になっているのが上手いと。師の曲が復曲できて嬉しそう。それと、団七の隣にいるせいか、いつもの皮肉屋が鳴りを潜めて、にこやかに見えた。団七は「自慢じゃあないけど」と言いつつ、復曲の手柄を話したり、義太夫節をやぼったいと自虐したりと、チャーミング。

「夜や更けて〜」のくだり、清元では立て=かさね役の太夫が語るのだが、義太夫節では与右衛門役のパート。初演した伊達太夫の床本にそう書いてあったのだそう。呂勢「織太夫は本当は美声だが、今は声を酷使する役を語っているので…」と言い訳。栄寿は「この場面にかさねは出てこないので、与右衛門役が語るのは理に叶っているが、聞かせどころなので立てが務めている」と。

栄寿は義太夫節でのテンポ感に憧れ。清元は緩急があるのが魅力だが、もどかしく感じることもあるそう。 歌舞伎は動きながらセリフを話すので、身体的に制約があり、やはり義太夫節のようなテンポにはならないのだとか。


8月11日 夏休み文楽特別公演 第1部 親子劇場

 「かみなり太鼓」

希のトロ吉、靖のおかあちゃん、小住のおとうちゃん、碩の寅ちゃんに清馗、清丈、清允、清方。

希のトロ吉はちょっと迫力不足。靖のおかあちゃんが大阪のおかんらしく、碩の寅ちゃんが可愛い。三味線も大幅に世代交代した感じ。希以外の太夫は自分の出番がないところで席を外していたのだが、せいぜい10分ほどでわざわざ床を離れるのはなぜだろう。そのまま退場ならまだしも、戻ってくるのだし。

人形は玉佳のトロ吉、勘次郎の寅ちゃん、簑紫郎のおかあちゃん、勘市のお父ちゃん。

落語作家らしくくすぐりがところどころに入っていて、「よそで言うたらあきません」というオチまでついて、子ども向けだけれど、よくできた本だと思う。


解説 文楽ってなあに?は勘次郎。当初は子どもによる体験コーナーもあったそうだが、病欠者続出で休演があったため、体験はなしに(終演後のお見送りも)。代わりに写真撮影OKで、最後に質問コーナーができていた。この日は主に「かみなり太鼓」についてで、最後にトロ吉が乗った雲の下にあったピカピカ光るものは何?(→かみなり)とか、宙乗りになった時人形使いは1人だったのはなぜ?(→3人吊るすのは重量オーバーだから)とか。「上手い主遣いになるには何年かかる?」という質問には、足遣い、左遣いでそれぞれ10〜15年修行して、主遣いになるのは30年後くらいとは言っていたが、「上手な」には言及せず。ただ、足遣い、左遣いの間も端役の主遣いをすることはあると話して正直でよいと思った。


「西遊記」

西遊記には数パターンあるそうで、今回は閻魔王宮より釜煮の段。

三輪、津国、亘、聖、薫に団七、友之助、錦吾、燕二郎。

人形は簑二郎の孫悟空、文昇の閻魔大王、玉延の赤鬼、簑悠の青鬼、亀次の太宗皇帝、番人才覚延の文哉。

孫悟空の宙乗りは客席後方から出てきて、舞台前まで降りた後、再び後方に戻る。長い如意棒を振り回しているのが迫力。

2023年8月9日水曜日

8月9日 スターライト vol.2 ガラコンサート

1部はバレエ団の生徒たち。白鳥の湖の王子役の少年1人仁、何十人もの少女たちがアプローチするのがら何だかおかしくて笑ってしまう。少年は小柄なせいもあってか、回転の軸がしっかりしていてスピードもあった。 「パリの炎」のグラン・パ・ド・ドゥを踊った福山麗が好印象。

2部はゲストダンサー。「ドン・キホーテ」のグランパドドゥを寺田翠・寺田智羽。キトリは精彩を欠いたが、バジルはジャンプテクニックを見せつける感じ(でも軽々ではない)。途中でキトリの友人のバリエーションを挟む構成は珍しい。
アアルト・バレエ エッセンの岸本有希とイエゴ・ホルディエンコの「On the Nature of Daylight」。ドラマティックなパドドゥ。
「眠りの森の美女」3幕のグランパドドゥはチェコ国立バレエ団の藤井彩嘉と新国立劇場バレエ団の木下嘉人。木下の王子を見るのは珍しく、新鮮。
トリは菅井円香・二山治雄による「ラ・フィユ・マル・ガルデ」のパドドゥ。この2ニニを間近で観られる幸福よ。ジャンプのキレといい、回転のスピード感といい、高度なテクニックを何気なくみせる。小柄だと思っていた二山が菅井と並ぶとちょっと高かった(ポワントで立つと菅井の方が高いが)のが意外だった。 

iPhoneから送信

2023年8月6日日曜日

8月6日 愛知芸術劇場×DaBY ダンスプロジェクト「Rain」

 サマセット・モームの小説が原作だということを予習しないまま臨んでしまったので、ちょっと消化不良な感じ。

ダークグレーの糸を垂らしたカーテンのようなセットが天井から下がり、熱帯雨林の雨のような、森林のような雰囲気。セットは場面によって上下に動き、ダンサーたちの頭上を覆う暗雲のようにもなり、床面スレスレまで下げられると深い森林から何かが出てくるようにも見える。

ほとんどのダンサーは黒をベースにした衣装で、唯一白いドレスの米沢唯が異質な存在であることが際立つ。宣教師(中川賢)を挑発するような視線や仕草は、マクベス婦人にも通じるような。

音楽はノイズのような感じで、地吹雪のようだったり、風雨のようだったり。

2023年8月5日土曜日

8月5日 NBAバレエ団「ドラキュラ」

英国ロイヤルの平野亮一がタイトルロール。不気味な美しさのある作品だった。2年前の初演を観なかったのを後悔。チラシのビジュアルで損していると思う。

平野演じるドラキュラは、不自然に反り返った姿勢や、這いつくばるような動きで異形さを醸しつつも、ゆったりした優雅な所作に支配者の風格があり、場を圧倒する。複雑なパやアクロバティックなリフトが連発され、目が追いつかない。2幕、友人の血を吸いながらルーシー(勅使河原綾乃)と見つめ合うところで、すでに気持ちは通っていると思った。
3幕でルーシーのの寝室に忍び込み、胸元をはだけて血を吸わせるところは、鍛えられた胸筋にドキドキ。ルーシーと婚礼をあげようとしたところで邪魔が入り、灰と帰すのだが、残されたルーシーはどうなるのだろう。

NBAバレエ団のダンサーたちは、女性陣はルーシー役の勅使河原、ミーナ役の野久保奈央とも小柄で、おっとりした雰囲気がよく似ている。あの時代の良家の女性役には似合う。一方の男性陣が役に合っていないというか、若造が無理やり老け役をやってるみたい。口髭が似合わなすぎ。

カーテンコールは写真OKだったのだが、平野が役そのままの様子でゆっくりと登場するサービスっぷり。後ろを振り返る時にいちいちマントを翻すのが笑いを呼んでいたが様になってた。


8月5日 ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル

リピするつもりはなかったのだが、諸事情により別キャストを見比べることに。平原綾香のサティーン、甲斐翔真のクリスチャン。

平原は歌の表現が多彩。特に低音部の強い声に味があり、ミュージカル向きと思った。比べると望海風斗は綺麗すぎるのかも。かと思うと、公爵を誘惑するところでは高音の可愛らしい声もあり、声の表現が幅広い。歌のないセリフは今一つで、コミカルな場面の間などは望海に一日の長あり。

支配人は橋本さとし。セリフの間がよく、お笑いは流石のうまさ。


2023年8月4日金曜日

8月4日 あべの歌舞伎 晴の会「肥後駒下駄」

4年ぶりの再演…というものの、びっくりするくらい覚えてなくて、新鮮に楽しんだ。

冒頭は、出演者が次々と行き交い、登場人物を披露するあべの歌舞伎恒例の演出。客席から出てくる人もいて、暗転したら急に隣りに役者が隣にいて驚いたけれど、これも観客サービス与ね。

初日だけあって所々セリフの出だしが怪しいところがあったけど、キャラクター造形がしっかりしているのは頼もしい。
中心メンバーの3人はそれぞれ二役を演じて、敵役の八坂源次兵衛役の松十郎はゾクゾクする悪人ぶり。もう一役の中川縫之助は全くの別人。お縫と月岡刑部の女房梅野を演じた千寿も、若い娘と老け役を演じ分ける。特に老け役、白髪でもないのにちゃんと母親に見えた。千次郎は作者・亀谷東西役で講談師さながらに物語の導入や背景説明を担い、奴駒平(向井善九郎)役では二枚目を好演。
お縫の夫、松田新蔵役の翫政、月岡刑部の當十郎、その娘、お沢の當史弥、松枝のりき弥、中元只助の佑次郎は初演と同じ役。それぞれ進化していたように思った。お沢の當史弥は少し老けていて松枝の姉というより母のよう。好きだけど。
八坂の弟、源内は初役で愛治郎。兄の悪事の片棒を担ぐ小悪人をよく演じた。

芝居としては、通し狂言を3時間にまとめるにあたって、序幕は細切れのような背景説明になってしまうのは仕方ないのか。二幕で竹本が入ると俄然面白くなった。

8月4日 ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル

どセンターの良席が取れてしまったのはよかったのか。

客席に張り出すようにセットが組まれ、赤いライトに包まれた会場全体がムーラン・ルージュの世界。開演10分前から役者たちが舞台上に現れ、踊り子や客の紳士たちの駆け引きを垣間見せるのが、物語い世界観に誘う仕掛けとして効いている。

サティーン役の望海風斗はこれまで観た女性役のなかでは一番と思うが、期待しているのとは違ってモヤモヤ。歌声はともかく、話す声が話すもっと低いほうが大人の女らしいと思うのと、体つきや足捌きが少年のようで色気がそがれること。(体つきは望海に限らずで、キャバレーのダンサーのような露出の多い服が似合う日本人って少ない気がする。みんな痩せすぎだから)とはいえ、今際の際のソロはジンときたし、久しぶりに歌を堪能できたのは嬉しかった。

クリスチャン役の甲斐翔真は、若々しく、純朴な青年ぶりが好ましい。歌も変な癖がなく、誠実な感じでよき。ただ、2幕でピチピチのTシャツ姿に違和感。なんだかゲイ男性みたいで、サティーンに愛をささげる姿と合わなくて困った。

ユーミンが手掛けたという訳詩はどうだかなあ。「your song」の「I hope you don't mind」を「気にしないで」とか、言葉の音が音楽に合っていないと感じた。他にも、英語の歌詞で聞きたかったという歌唱が多かったのは残念なところ。

支配人シドラー役が松村雄基でびっくり。浅野和之あたりがやりそうな役と思ったら。公爵役の伊礼彼方は朝ドラに続いてイヤミな金持ちを好演。素肌にタキシードという衣装は、ナイトクラブに出入りするような人物という描写なのか。 

ニニ役の加賀楓は下手ではないのだが、サティーンのライバルというか、クラブの2番手というほどの華はないように思った。

作品としては、ヒット曲がてんこ盛り。サティーンとクリスチャンが恋に落ちる場面のデュエットなんかは、1フレーズしかないような歌もあって、何の歌が入っていたか把握しきれないほどお腹いっぱいな感じ。




iPhoneから送信