「義経千本桜」
秀太郎の義経が素晴らしい。よく通る声、品のある語り口。何より、花道から来る静を迎える時の慈愛に満ちた眼差しが胸を打つ。義経って大事な役ではあるのだろうけど、どこかお飾り的というか、あまり注目したことがなかったのだが、役者によって説得力が違うのだなあと。
愛之助の忠信は、ちょっと身のこなしが重くないか?ひらりと欄干を乗り越えて部屋へ上がるところとか、欄干を渡るところとか、狐の本性を表して飛び跳ねるところとか、もっと軽やかであってほしい。セリフも所作も表面的な感じで、もっと感情を込めるのが松嶋屋ではないの?
壱太郎の静は声よし、姿よし。
法源の當十郎はセリフが怪しくてハラハラした。
「夕霧名残の正月」
鴈治郎の伊左衛門に扇雀の夕霧。扇屋亭主の竹三郎、、女房おふさの吉弥がいい風情。
「伏見の富くじ」
賛否両論の否定的意見も聞いたが、褒められたものではないものの、眉をひそめるほどでもないかなぁという感想。暗転から歌謡曲のイントロのような音楽が流れ、しょうもないギャグを連発するなど、新喜劇のよう。大筋は落語の高津の富だが、花魁道中に一目惚れしたり、大事の屏風を紛失して潰れた商家の再興を目指したりといった要素が加わり、籠釣瓶の見初めを思わせるシーンも。
紙屑屋の幸四郎は、途中途中で「あんた江戸の人?」というツッコミを入れ、不自然な関西弁をカバー。鳰照太夫の鴈治郎は月のように丸いとか、突いたらこしあんが出てきそうとかひどい言われようだが、愛嬌がある。
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