2020年1月20日月曜日

1月19日 壽初春大歌舞伎 昼の部

「九十九折」
大正時代に初演の上方の芝居。店のために罪を被った清七(幸四郎)が、娘のお秀(壱太郎)と恋仲にありながら、店を追われるという展開はさもありなん。静かにうつむく壱太郎から、言葉にできない思いがあふれる。
酒で憂さをはらそうとしたところで、お秀にそっくりの芸者(雛勇)と出会ったことで、運命が大きく変わる。雛勇の家に転がり込むも、旦那や間夫がいないはずはないと出ていこうとする清七は十分に理性を保っているようだが、力蔵(愛之助)が現れたことでだまされたとはっきり悟った清七は店からもらった300両を叩きつける。清七に情がわいた雛勇が取りすがって詫び、力蔵へ愛想尽かしをすると、逆上した力蔵との争いとなり、死んでもいいと言っていた清七がなぜか2人を切り殺す。理不尽な殺人の後味が悪い。
壱太郎が可憐なお秀と蓮っ葉な雛勇を演じ分け、愛之助の力蔵はチンピラ風情がピタリとはまる。
お店の養子となった新造役の松江。頼んないボンボンぶり。

「大津絵道成寺」
愛之助が藤娘、鷹匠、座頭、船頭、鬼の5役を演じる変化舞踊。常磐津の見台から座頭が現れたりと工夫を凝らしていて、目に楽しい。引っ込んでの早替わりはともかく、舞台上での引き抜きや、昆布巻きなどはちょっともたついて見えた。

「酒屋」
藤十郎が体調不良で休演のため、扇雀がお園と三勝の二役。鴈治郎はお園父宋岸と半七の二役。
扇雀のお園は、茜屋に帰っての第一声がだみ声のようで、興をそがれる。風邪でもひいたのか、そのあとも声が悪く、お園の哀れさが今一つ伝わらない。せっかくのクドキで、いびきが聞こえたり、「用事があるから帰る」とゴソゴソするオッサンがいたりと、客席もトホホだった。
半兵衛の橘三郎、おさよの寿治郎に情がある。子役のお通、行儀よくじっと座っていて人形のよう。

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