29期生は太夫志望が2人。
二人三番叟は希、咲寿と並んで。三味線は寛太郎がシンで手堅い演奏。研修生ではないが、足遣いのリズムが転びがちで良くなかった。
「寺子屋の段」は愛知県出身の。落ち着いた語りぶりに感心。聞くと、地元の人形浄瑠璃で経験があるのだとか。語り分けもはっきりしており、1年目とは思えない出来栄え。
「裏門の段」は兵庫県出身。力みが感じられるものの、精一杯の語りは好印象。神戸大出身だとかで、年かさの応募なのでやる気はありそう。おかるの高音が苦し気だったが、よく声が出ていた。
2020年1月29日水曜日
2020年1月26日日曜日
0126 金剛定期能
「神歌」
金剛龍謹、宇高竜成らによる素謡?
翁の詞章を掛け合いで。声の良さが存分に発揮された。
「老松」
道真公ゆかりの太宰府天神の梅と松。
前シテの老人と後シテの老松の精は永謹。威厳のある姿。前場の最後、少し立ち上がりづらそうだった。
小書付きで、後ツレに梅の精。おそらく龍謹だが、舞姿が美しい。空気をまとったようなゆったりした所作が優雅。
「胡蝶」
梅と戯れる胡蝶の精が可愛らしい。前日に文楽の廓文章を見たせいか、お囃子が餅つきのように聞こえた。
金剛龍謹、宇高竜成らによる素謡?
翁の詞章を掛け合いで。声の良さが存分に発揮された。
「老松」
道真公ゆかりの太宰府天神の梅と松。
前シテの老人と後シテの老松の精は永謹。威厳のある姿。前場の最後、少し立ち上がりづらそうだった。
小書付きで、後ツレに梅の精。おそらく龍謹だが、舞姿が美しい。空気をまとったようなゆったりした所作が優雅。
「胡蝶」
梅と戯れる胡蝶の精が可愛らしい。前日に文楽の廓文章を見たせいか、お囃子が餅つきのように聞こえた。
2020年1月25日土曜日
0124 寿初春大歌舞伎 夜の部
「連獅子」
幕見で所見。澤瀉屋の連獅子は初めてだったが、シャープでスピード感がある。踊巧者の猿之助は、親獅子の風格があり、背の高い団子よりも大きく見える。団子は初役の初々しさがあり、キビキビとした動きが爽快。猿之助に親の慈愛は感じなかったが(親というより、師匠の厳しさや暖かさ)、団子には親を慕ういじらしさがあった。
親獅子が子獅子を足蹴にするところ、舞台中央から上手に向かって。後場の演台は3つをピラミッド状に重ねて、牡丹は上手と下手に一つづつ。一段高いところで親獅子が威厳を示す狙いか。
幕見で所見。澤瀉屋の連獅子は初めてだったが、シャープでスピード感がある。踊巧者の猿之助は、親獅子の風格があり、背の高い団子よりも大きく見える。団子は初役の初々しさがあり、キビキビとした動きが爽快。猿之助に親の慈愛は感じなかったが(親というより、師匠の厳しさや暖かさ)、団子には親を慕ういじらしさがあった。
親獅子が子獅子を足蹴にするところ、舞台中央から上手に向かって。後場の演台は3つをピラミッド状に重ねて、牡丹は上手と下手に一つづつ。一段高いところで親獅子が威厳を示す狙いか。
2020年1月20日月曜日
1月19日 初春文楽公演 第二部
「鏡山旧錦絵」
長局の段は掛け合い。岩藤は呂勢の代役で靖、尾上に芳穂、亘、碩、小住と並び、清治が引率の先生のよう。
靖は声質が岩藤に合い、代役として十分の働き。意地悪さが増すともっといい。
廊下の段は藤・団七。岩藤が上品過ぎに感じた。
長局のの段は千歳・富助から。尾上の振り絞るような心情が痛切。小春がちょっとガチャガチャして聞こえた。
後は織・藤蔵。テンション高く、熱気ある床。
奥庭の段は靖・錦糸。緊迫感のある語りで、敵討ちのカタルシスがあった。
人形は和生の尾上が耐え忍ぶ役どころを品を保って表現。玉男の岩藤は人形が目を細めたように見えたと思ったら、目も動く人形だった。
勘十郎のお初が大立ち回り。目には楽しいが、ちょっとオーバーアクションにも感じた。
長局の段は掛け合い。岩藤は呂勢の代役で靖、尾上に芳穂、亘、碩、小住と並び、清治が引率の先生のよう。
靖は声質が岩藤に合い、代役として十分の働き。意地悪さが増すともっといい。
廊下の段は藤・団七。岩藤が上品過ぎに感じた。
長局のの段は千歳・富助から。尾上の振り絞るような心情が痛切。小春がちょっとガチャガチャして聞こえた。
後は織・藤蔵。テンション高く、熱気ある床。
奥庭の段は靖・錦糸。緊迫感のある語りで、敵討ちのカタルシスがあった。
人形は和生の尾上が耐え忍ぶ役どころを品を保って表現。玉男の岩藤は人形が目を細めたように見えたと思ったら、目も動く人形だった。
勘十郎のお初が大立ち回り。目には楽しいが、ちょっとオーバーアクションにも感じた。
1月19日 壽初春大歌舞伎 昼の部
「九十九折」
大正時代に初演の上方の芝居。店のために罪を被った清七(幸四郎)が、娘のお秀(壱太郎)と恋仲にありながら、店を追われるという展開はさもありなん。静かにうつむく壱太郎から、言葉にできない思いがあふれる。
酒で憂さをはらそうとしたところで、お秀にそっくりの芸者(雛勇)と出会ったことで、運命が大きく変わる。雛勇の家に転がり込むも、旦那や間夫がいないはずはないと出ていこうとする清七は十分に理性を保っているようだが、力蔵(愛之助)が現れたことでだまされたとはっきり悟った清七は店からもらった300両を叩きつける。清七に情がわいた雛勇が取りすがって詫び、力蔵へ愛想尽かしをすると、逆上した力蔵との争いとなり、死んでもいいと言っていた清七がなぜか2人を切り殺す。理不尽な殺人の後味が悪い。
壱太郎が可憐なお秀と蓮っ葉な雛勇を演じ分け、愛之助の力蔵はチンピラ風情がピタリとはまる。
お店の養子となった新造役の松江。頼んないボンボンぶり。
「大津絵道成寺」
愛之助が藤娘、鷹匠、座頭、船頭、鬼の5役を演じる変化舞踊。常磐津の見台から座頭が現れたりと工夫を凝らしていて、目に楽しい。引っ込んでの早替わりはともかく、舞台上での引き抜きや、昆布巻きなどはちょっともたついて見えた。
「酒屋」
藤十郎が体調不良で休演のため、扇雀がお園と三勝の二役。鴈治郎はお園父宋岸と半七の二役。
扇雀のお園は、茜屋に帰っての第一声がだみ声のようで、興をそがれる。風邪でもひいたのか、そのあとも声が悪く、お園の哀れさが今一つ伝わらない。せっかくのクドキで、いびきが聞こえたり、「用事があるから帰る」とゴソゴソするオッサンがいたりと、客席もトホホだった。
半兵衛の橘三郎、おさよの寿治郎に情がある。子役のお通、行儀よくじっと座っていて人形のよう。
大正時代に初演の上方の芝居。店のために罪を被った清七(幸四郎)が、娘のお秀(壱太郎)と恋仲にありながら、店を追われるという展開はさもありなん。静かにうつむく壱太郎から、言葉にできない思いがあふれる。
酒で憂さをはらそうとしたところで、お秀にそっくりの芸者(雛勇)と出会ったことで、運命が大きく変わる。雛勇の家に転がり込むも、旦那や間夫がいないはずはないと出ていこうとする清七は十分に理性を保っているようだが、力蔵(愛之助)が現れたことでだまされたとはっきり悟った清七は店からもらった300両を叩きつける。清七に情がわいた雛勇が取りすがって詫び、力蔵へ愛想尽かしをすると、逆上した力蔵との争いとなり、死んでもいいと言っていた清七がなぜか2人を切り殺す。理不尽な殺人の後味が悪い。
壱太郎が可憐なお秀と蓮っ葉な雛勇を演じ分け、愛之助の力蔵はチンピラ風情がピタリとはまる。
お店の養子となった新造役の松江。頼んないボンボンぶり。
「大津絵道成寺」
愛之助が藤娘、鷹匠、座頭、船頭、鬼の5役を演じる変化舞踊。常磐津の見台から座頭が現れたりと工夫を凝らしていて、目に楽しい。引っ込んでの早替わりはともかく、舞台上での引き抜きや、昆布巻きなどはちょっともたついて見えた。
「酒屋」
藤十郎が体調不良で休演のため、扇雀がお園と三勝の二役。鴈治郎はお園父宋岸と半七の二役。
扇雀のお園は、茜屋に帰っての第一声がだみ声のようで、興をそがれる。風邪でもひいたのか、そのあとも声が悪く、お園の哀れさが今一つ伝わらない。せっかくのクドキで、いびきが聞こえたり、「用事があるから帰る」とゴソゴソするオッサンがいたりと、客席もトホホだった。
半兵衛の橘三郎、おさよの寿治郎に情がある。子役のお通、行儀よくじっと座っていて人形のよう。
2020年1月18日土曜日
0118 「サイレンス」アレクサンドル・デスプラ&ソルレイによる室内オペラ
川端康成の短編小説にインスピレーションを受けたという室内オペラ。ヴァレンティノのクリエイティブディレクターが衣装を担当したとあって、スタイリッシュ。音楽家が虹色のようなパステル調の色合いで、ローブのような衣服にターバンを巻いた姿が民族調。シンプルなセットで、箱がタクシーの座席やテーブルとイスになる。楽団の後ろのスクリーンに映像が投影され、タクシーの車窓や言葉をなくした小説家の目、女の幽霊などが映し出される。
2人の歌手と語り手の3人の舞台。ところどころ日本語が混じるのだが、「カタカナ」という音が面白かったのか、執拗に繰り返される。
言葉を失った小説家とタクシーに女の幽霊が乗り込んでくるという怪談が交錯する。濃密な時間、90分ほどの上演時間を感じさせない。ラスト、スクリーンに女の幽霊の映像、舞台後方に白いローブに長い黒髪に着替えた女が登場し、恐怖感をあおる。映像の女の幽霊、婚礼衣装のような白い打掛はなぜ?
2人の歌手と語り手の3人の舞台。ところどころ日本語が混じるのだが、「カタカナ」という音が面白かったのか、執拗に繰り返される。
言葉を失った小説家とタクシーに女の幽霊が乗り込んでくるという怪談が交錯する。濃密な時間、90分ほどの上演時間を感じさせない。ラスト、スクリーンに女の幽霊の映像、舞台後方に白いローブに長い黒髪に着替えた女が登場し、恐怖感をあおる。映像の女の幽霊、婚礼衣装のような白い打掛はなぜ?
0118 二兎社「私たちは何も知らない」
青鞜の編集部を現在の感覚で描く。彼女たちに立ちはだかる障害は現在にも共通するもので、現代風の衣装で現代のものとして描く意図は理解できなくはないのだが、違和感が残った。冒頭、青鞜創刊時に寄せた平塚らいてうの言葉をラップで歌うのが今っぽいというか、洒落ていたが、暗転の転換が多用され、ドラムのSEが繰り返されるのが集中を妨げる。最後は戦時中や戦後のらいてうらの活動を駆け足に紹介する感じ。へえという意外感はあったが、詰め込んだように感じなくもない。
平塚らいてう役の朝倉あきは清楚なたたずまいで、育ちの良さが感じられる。黒のプリーツスカートに白や紺のブラウスという衣装はおしゃれで素敵。伊藤野枝役の藤野涼子はチェックのシャツにジーパンで、粗野な貧しさを体現。空回りする理想、計画性のなさといった問題はありつつも、もがく女たちの姿は現在も続いている。
尾竹紅吉役の夏子が少年のような不器用さ、少女らしい執着を現して魅力的。
らいてうの恋人、奥村博役の須藤連は、ちょっとなよっとして、若い燕らしくはあるが、頼りない感じ。
山田わか役の枝元萌が、困難を乗り越えてきた女のたくましさを体現して頼もしい。
平塚らいてう役の朝倉あきは清楚なたたずまいで、育ちの良さが感じられる。黒のプリーツスカートに白や紺のブラウスという衣装はおしゃれで素敵。伊藤野枝役の藤野涼子はチェックのシャツにジーパンで、粗野な貧しさを体現。空回りする理想、計画性のなさといった問題はありつつも、もがく女たちの姿は現在も続いている。
尾竹紅吉役の夏子が少年のような不器用さ、少女らしい執着を現して魅力的。
らいてうの恋人、奥村博役の須藤連は、ちょっとなよっとして、若い燕らしくはあるが、頼りない感じ。
山田わか役の枝元萌が、困難を乗り越えてきた女のたくましさを体現して頼もしい。
2020年1月14日火曜日
0114 宝塚雪組「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」
望海風斗が男役としての風格を増した。スーツがよく似合い、少年時代の初々しさ、上昇志向に溢れる青年期、後悔をかかえて生きてきた壮年期を存分に演じた。今だけでなく、宝塚の歴史上も、ここまで骨太の男を演じられるのは他にないのでは。デボラに思いをぶつけるも拒絶され、一人嘆く一幕のラストが圧巻。堂々とソロを歌い上げ、観客を一手に惹きつけた。
デボラ役の真彩希帆は、歌の上手さが役柄によく合い、ブロードウェイで成功すると歌姫らしい華やかさ。
労働組合とマフィアの癒着や、裏切りなど、なかなかにハードな内容で、清く正しく、の宝塚らしからぬ硬質な作品。
デボラ役の真彩希帆は、歌の上手さが役柄によく合い、ブロードウェイで成功すると歌姫らしい華やかさ。
労働組合とマフィアの癒着や、裏切りなど、なかなかにハードな内容で、清く正しく、の宝塚らしからぬ硬質な作品。
2020年1月12日日曜日
0112 京都観世会一月例会
「翁」
観世清和の翁。脇正面席で橋掛りがよく見えたので、宗家の歩みが正確で美しいのがよく分かった。上下運動がほとんどなくて、滑るように動くのだ。
三番叟は茂山茂。気迫溢れる面差しで、気合い漲る舞。足踏みが力強く、スピード感があった。
「養老」
林宗一郎のシテ。面の隙間から覗く肌がツヤツヤしてて、老人らしからず。若いから仕方ないと思うが、若いうちにこういう役をやるのは何故だろう。後シテは颯爽として清々しい舞だった。
「末広がり」
茂山七五三の主人、千五郎の太郎冠者。間合いが何とも言えず可笑しい。
「東北」
福王知登は重低音ボイスというか、低く響く声が魅力。
シテの片山伸吾は優美。
仕舞は浦田保浩の「高砂」、井上裕久の「屋島」、大江又三郎の「梅 キリ」、片山九郎衛門の「船弁慶 キリ」。九郎衛門がキレのある舞。
「春日龍神」
宮本茂樹のシテ。龍神の舞が勇壮。
観世清和の翁。脇正面席で橋掛りがよく見えたので、宗家の歩みが正確で美しいのがよく分かった。上下運動がほとんどなくて、滑るように動くのだ。
三番叟は茂山茂。気迫溢れる面差しで、気合い漲る舞。足踏みが力強く、スピード感があった。
「養老」
林宗一郎のシテ。面の隙間から覗く肌がツヤツヤしてて、老人らしからず。若いから仕方ないと思うが、若いうちにこういう役をやるのは何故だろう。後シテは颯爽として清々しい舞だった。
「末広がり」
茂山七五三の主人、千五郎の太郎冠者。間合いが何とも言えず可笑しい。
「東北」
福王知登は重低音ボイスというか、低く響く声が魅力。
シテの片山伸吾は優美。
仕舞は浦田保浩の「高砂」、井上裕久の「屋島」、大江又三郎の「梅 キリ」、片山九郎衛門の「船弁慶 キリ」。九郎衛門がキレのある舞。
「春日龍神」
宮本茂樹のシテ。龍神の舞が勇壮。
2020年1月11日土曜日
0111 常陸坊海尊
秋元松代戯曲、長塚圭史演出とあって期待したのだが、期待ほどではなかったというのが正直な感想。秋元戯曲ではピッコロ劇団の「かさぶた式部考」のほうが感動があった。
一番の違和感は、雪乃(中村ゆり)。1幕の子どもっぽさから、2幕でいきなりファムファタールというか、サディステックに男たちをいたぶる豹変ぶりに必然性が感じられなかった。終戦後、行方不明になる安田はおばばと百合たちと共にあったのだが、それだけで何番目かの海尊になるには十分では。サディスティックな百合は魅力的ではあるのだが、新たな海尊を生み出すのに必要なのかは疑問だ。男はああいう女にしいたげられたいのだろうか?
おばばの白石加代子は代替の利かない存在感で、山伏を引き付ける魅力もあり。
一番の違和感は、雪乃(中村ゆり)。1幕の子どもっぽさから、2幕でいきなりファムファタールというか、サディステックに男たちをいたぶる豹変ぶりに必然性が感じられなかった。終戦後、行方不明になる安田はおばばと百合たちと共にあったのだが、それだけで何番目かの海尊になるには十分では。サディスティックな百合は魅力的ではあるのだが、新たな海尊を生み出すのに必要なのかは疑問だ。男はああいう女にしいたげられたいのだろうか?
おばばの白石加代子は代替の利かない存在感で、山伏を引き付ける魅力もあり。
2020年1月10日金曜日
0110 一劇屋「劇の劇」
演劇をやめると宣言した男のセリフが芝居だったり、夢オチだったり…と、な何が本当で何が演技だか分からなくなる。3人の舞台で、運動量が半端ない。マイムやダンスと芝居が入り混じり、興味深く展開するが、後半少しダレたか。
2020年1月8日水曜日
0108 シスカンパニー「風博士」
坂口安吾の小説をモチーフに戯曲化。とはいえ、かなりオリジナルな設定になっているよう。
元研究者で風船爆弾の開発に携わり、大陸で日本軍相手の女郎屋の亭主をしているというフーさんに中井貴一。飄々とした様子が過去に何かを捨ててきた男の、諦念のようなものを感じさせる。冒頭、「青い空」というセリフがあるのだが、舞台奥の背景はグレーがかった色合いだったのは何故だろうか。
フーさんに預けられる、戦争で家族を失った娘役の趣里がいい。ショックのあまり頭のネジが飛んでしまった娘を所在なさげに、時に無邪気に体現。セリフなしで、身体を動かす時のしなやかさ。脚が綺麗に伸びていると思ったら、バレエをやっていたそうで納得。
曰くありげな遊女、鶯の吉田羊が格好良く、新兵卒の林遣都は初々しく、哀れだ。
ファルスという触れ込みだが、戦争の悲惨さを描いてあまり笑いはしなかったが、終始からりとした芝居で、悲惨さや湿っぽさは少ない。最後はバイクでの逃走劇で、爽快感があった。
元研究者で風船爆弾の開発に携わり、大陸で日本軍相手の女郎屋の亭主をしているというフーさんに中井貴一。飄々とした様子が過去に何かを捨ててきた男の、諦念のようなものを感じさせる。冒頭、「青い空」というセリフがあるのだが、舞台奥の背景はグレーがかった色合いだったのは何故だろうか。
フーさんに預けられる、戦争で家族を失った娘役の趣里がいい。ショックのあまり頭のネジが飛んでしまった娘を所在なさげに、時に無邪気に体現。セリフなしで、身体を動かす時のしなやかさ。脚が綺麗に伸びていると思ったら、バレエをやっていたそうで納得。
曰くありげな遊女、鶯の吉田羊が格好良く、新兵卒の林遣都は初々しく、哀れだ。
ファルスという触れ込みだが、戦争の悲惨さを描いてあまり笑いはしなかったが、終始からりとした芝居で、悲惨さや湿っぽさは少ない。最後はバイクでの逃走劇で、爽快感があった。
2020年1月6日月曜日
1月6日 寿初春大歌舞伎 夜の部
「義経千本桜」
秀太郎の義経が素晴らしい。よく通る声、品のある語り口。何より、花道から来る静を迎える時の慈愛に満ちた眼差しが胸を打つ。義経って大事な役ではあるのだろうけど、どこかお飾り的というか、あまり注目したことがなかったのだが、役者によって説得力が違うのだなあと。
愛之助の忠信は、ちょっと身のこなしが重くないか?ひらりと欄干を乗り越えて部屋へ上がるところとか、欄干を渡るところとか、狐の本性を表して飛び跳ねるところとか、もっと軽やかであってほしい。セリフも所作も表面的な感じで、もっと感情を込めるのが松嶋屋ではないの?
壱太郎の静は声よし、姿よし。
法源の當十郎はセリフが怪しくてハラハラした。
「夕霧名残の正月」
鴈治郎の伊左衛門に扇雀の夕霧。扇屋亭主の竹三郎、、女房おふさの吉弥がいい風情。
「伏見の富くじ」
賛否両論の否定的意見も聞いたが、褒められたものではないものの、眉をひそめるほどでもないかなぁという感想。暗転から歌謡曲のイントロのような音楽が流れ、しょうもないギャグを連発するなど、新喜劇のよう。大筋は落語の高津の富だが、花魁道中に一目惚れしたり、大事の屏風を紛失して潰れた商家の再興を目指したりといった要素が加わり、籠釣瓶の見初めを思わせるシーンも。
紙屑屋の幸四郎は、途中途中で「あんた江戸の人?」というツッコミを入れ、不自然な関西弁をカバー。鳰照太夫の鴈治郎は月のように丸いとか、突いたらこしあんが出てきそうとかひどい言われようだが、愛嬌がある。
秀太郎の義経が素晴らしい。よく通る声、品のある語り口。何より、花道から来る静を迎える時の慈愛に満ちた眼差しが胸を打つ。義経って大事な役ではあるのだろうけど、どこかお飾り的というか、あまり注目したことがなかったのだが、役者によって説得力が違うのだなあと。
愛之助の忠信は、ちょっと身のこなしが重くないか?ひらりと欄干を乗り越えて部屋へ上がるところとか、欄干を渡るところとか、狐の本性を表して飛び跳ねるところとか、もっと軽やかであってほしい。セリフも所作も表面的な感じで、もっと感情を込めるのが松嶋屋ではないの?
壱太郎の静は声よし、姿よし。
法源の當十郎はセリフが怪しくてハラハラした。
「夕霧名残の正月」
鴈治郎の伊左衛門に扇雀の夕霧。扇屋亭主の竹三郎、、女房おふさの吉弥がいい風情。
「伏見の富くじ」
賛否両論の否定的意見も聞いたが、褒められたものではないものの、眉をひそめるほどでもないかなぁという感想。暗転から歌謡曲のイントロのような音楽が流れ、しょうもないギャグを連発するなど、新喜劇のよう。大筋は落語の高津の富だが、花魁道中に一目惚れしたり、大事の屏風を紛失して潰れた商家の再興を目指したりといった要素が加わり、籠釣瓶の見初めを思わせるシーンも。
紙屑屋の幸四郎は、途中途中で「あんた江戸の人?」というツッコミを入れ、不自然な関西弁をカバー。鳰照太夫の鴈治郎は月のように丸いとか、突いたらこしあんが出てきそうとかひどい言われようだが、愛嬌がある。
2020年1月4日土曜日
1月3日 文楽公演 第1部
「七福神宝の入舩」
三輪、津国、芳穂、靖、亘、碩、文字栄に清友、清志郎、清馗、清丈、友之助、清公、清方。
紅白幕が振り下ろされ、七福神が舩に乗って登場。寿老人の玉志、大黒天の勘市、布袋の清五郎、弁財天の紋臣、福禄寿の紋秀、恵比寿の簑紫郎、毘沙門の亀次。
寿老人が琴、大黒天が胡弓、弁天が琵琶を奏で、それぞれ、清公、友之助、清友が演奏。友之助が曲弾き。布袋が腹太鼓、福禄寿が頭の上に獅子頭を乗せたりと、かくし芸大会の様相。小ネタもいろいろあり、賑々しく笑いを誘っていた。
清介の息子、清方が初舞台。ツレ弾きのみでソロパートはなし。最後、足がしびれたようで、這って床裏に退場していた。
「傾城反魂香」
竹本津駒太夫改め六代目竹本錣太夫の襲名披露で、土佐将監閑居の段。希・団吾の口の後、床上で口上。呂太夫は修業時代の笑い話を披露するのだが、これって必要?今一つ間が悪いというか、冗長で笑いも少なめ。錣太夫はクスリともしていなかったような。
津駒の吃又は純朴な感じが似合う。どもり具合もちょうどいい塩梅に思った。
文楽では初めて見たが、虎が小ぶりでかわいかったり、奇跡が起きたのを又平夫婦も、将監もすぐに察して、とんとん拍子で名前を許される、歌舞伎版はちょっとくどいと思うが、こちらはあっさりしすぎているようにも感じる。そしてどちらも、将監は師匠としてというか、人として又平に冷たすぎるように思う。
「曲輪文章」
吉田屋の段。口は睦・勝平にツレの錦吾。高音部のカスレが再発してしまったのが残念。
後半は咲の伊左衛門に織の夕霧、藤の喜左衛門、南都のおきさ、男の咲寿と咲太夫一門勢ぞろい。三味線は燕三に燕二郎のツレ。
人形が入り、正月支度をしている揚屋が舞台なので華やかではあるが、やはり文楽向きではない気がする。咲はおっとりとした語り口が大店のボンボンらしいが、色男っぽくはないし、織の夕霧はいい声で歌ってる。咲寿の男って、吉田屋の店先で伊左衛門をボコボコにしようとする店の者たちで、役名をつけるような役でなし。燕三の三味線に艶があり、曲輪の華やかさが感じられた。
人形は玉男の伊左衛門に和生の夕霧。和生はらしくないと思うのは先入観なのか。本人も馬鹿馬鹿しいと思ってやってそう。簑助がおきさで無駄遣い感が。
三輪、津国、芳穂、靖、亘、碩、文字栄に清友、清志郎、清馗、清丈、友之助、清公、清方。
紅白幕が振り下ろされ、七福神が舩に乗って登場。寿老人の玉志、大黒天の勘市、布袋の清五郎、弁財天の紋臣、福禄寿の紋秀、恵比寿の簑紫郎、毘沙門の亀次。
寿老人が琴、大黒天が胡弓、弁天が琵琶を奏で、それぞれ、清公、友之助、清友が演奏。友之助が曲弾き。布袋が腹太鼓、福禄寿が頭の上に獅子頭を乗せたりと、かくし芸大会の様相。小ネタもいろいろあり、賑々しく笑いを誘っていた。
清介の息子、清方が初舞台。ツレ弾きのみでソロパートはなし。最後、足がしびれたようで、這って床裏に退場していた。
「傾城反魂香」
竹本津駒太夫改め六代目竹本錣太夫の襲名披露で、土佐将監閑居の段。希・団吾の口の後、床上で口上。呂太夫は修業時代の笑い話を披露するのだが、これって必要?今一つ間が悪いというか、冗長で笑いも少なめ。錣太夫はクスリともしていなかったような。
津駒の吃又は純朴な感じが似合う。どもり具合もちょうどいい塩梅に思った。
文楽では初めて見たが、虎が小ぶりでかわいかったり、奇跡が起きたのを又平夫婦も、将監もすぐに察して、とんとん拍子で名前を許される、歌舞伎版はちょっとくどいと思うが、こちらはあっさりしすぎているようにも感じる。そしてどちらも、将監は師匠としてというか、人として又平に冷たすぎるように思う。
「曲輪文章」
吉田屋の段。口は睦・勝平にツレの錦吾。高音部のカスレが再発してしまったのが残念。
後半は咲の伊左衛門に織の夕霧、藤の喜左衛門、南都のおきさ、男の咲寿と咲太夫一門勢ぞろい。三味線は燕三に燕二郎のツレ。
人形が入り、正月支度をしている揚屋が舞台なので華やかではあるが、やはり文楽向きではない気がする。咲はおっとりとした語り口が大店のボンボンらしいが、色男っぽくはないし、織の夕霧はいい声で歌ってる。咲寿の男って、吉田屋の店先で伊左衛門をボコボコにしようとする店の者たちで、役名をつけるような役でなし。燕三の三味線に艶があり、曲輪の華やかさが感じられた。
人形は玉男の伊左衛門に和生の夕霧。和生はらしくないと思うのは先入観なのか。本人も馬鹿馬鹿しいと思ってやってそう。簑助がおきさで無駄遣い感が。
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