昼夜両方観たのだが、昼の部で感じた違和感を夜には修正してきたのが頼もしい。
「寿式三番叟」
メーンは三番叟の二人だと思うのだが、吉太郎と光が対照的というか、ヤンチャな弟と落ち着いた兄みたいな感じで面白い。吉太郎は昼の部では元気が溢れて動きがややがちゃがちゃしていて、あしぶみがうるさいくらいだったが、夜はハツラツとしつつも、やり過ぎ感は収まってた。
翁の松四郎はちょっと固かったが大役をはたし、千歳の愛治郎は(師匠と違って?)誠実な踊りに好感が持てる。附千歳の千太郎は凛とした美しさ。
「熊谷陣屋」
ついこの間、素浄瑠璃で聞いたこともあり、話の細かいところはまでよく理解できた。義太夫狂言の難しさで、おそらく教わった通りのセリフの言い回し、仕草なのだろうが、間が埋めきれないというか、中身が伴っていない感じは否めなかった。でも、夜は昼に比べたら段違いに良くなってたのでびっくり。
熊谷次郎直実の當史朗はやはり難役。はじめは千寿の相模と夫婦に見えなかったが、バランスが改善。花道で「十六年もひと昔」というところで、首に手をやるのが、いかにも段取りめいていたのが、夜にはだいぶん自然になっていた。目は涙で潤んでいたが、夜の部は花道横だったので、涙が一筋流れるところもちゃんと見ました。仁左衛門のような人物の大きさには届かないものの、無骨な哀愁があった。
相模の千寿は中では一番の安定感。夜には柔らかみを増して、母らしさが感じられた。
藤の方は折之助。高貴さが身についた。
よかったのが翫政の義経。口跡がよく、浪々と響くセリフに説得力があった。
松十郎は出番の少ない梶原平治。骨太な感じで印象を残した。弥陀六に殺されるのは花道を引っ込んでからうめき声のみ。
「堀川猿回し」
千次郎の与次郎ははじめ、ちょっと軽いというか、陽気すぎるように感じたのだが、夜には落ち着いていて、ほっとした。仕事から帰って、猿を檻に入れたり、脚半を解いたり、着物の埃を払ったりと、やる事が多いのに気を取られて、病気の母が喋るのを無視しているようだったのも、2回目にはちゃんと老母をいたわるのが感じられた。
母おぎんの當史弥は年に似合わない老け役を健闘。ただ、盲目の演技はもう少し。火鉢に刺した火箸をいきなりつかむのは目が見えない人には不自然では。もっと足先や手を伸ばして探る様子があるといい。
お俊のりき弥は可憐で、遊女らしい哀れさがある。情がもっとあるとなおいい。伝兵衛の佑次郎は白塗りの二枚目。
浄瑠璃は谷太夫と勝二郎。文楽との差を感じたことであった。
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