2017年10月31日火曜日

1027 忠三郎狂言会 大阪

襲名後初の忠三郎狂言会で、重習曲の「花子」が眼目。歌舞伎の「身替座戦」の仁左衛門の印象が強すぎてつい比べてしまうのだが、狂言ではそこまであからさまでないのがちょっと物足りなくもあり。とはいえ、忠三郎はかわいらしさや色気もあり、小唄も聞かせた。女房を茂山仙三郎、太郎冠者を善竹大二郎。ほか「末広かり」を善竹忠一郎の果報者、善竹隆司の太郎冠者、忠三郎のすっぱで。「魚説教」の僧、大蔵吉次郎はふがふがした感じ。施主は山口耕道。

10月26日 匿名劇壇「悪い癖」

OMS戯曲賞受賞作だけあってよくできた脚本。ネイリストになる夢を実現できず、夢を実現した友人にコンプレックスを感じて引きこもっている主人公。妄想の世界では楽しい学生生活を送っている。外へ連れ出そうとする恋人がいるだけ幸せなのではとも思うが、当人には越えられない壁なのだろう。現実と妄想が交錯する具合が心地よい。白雪姫は女子の憧れみたいなセリフはこそばゆいが、この伏線があってこそきれいに落ちが付いた。

10月24日 桂吉朝十三回忌 吉朝一門会

一門7人がそろっての公演。鉄道オタクぶりを発揮したしん吉の「地下鉄」、「茶の湯」を演じた吉弥や、ネタおろしで「宿替え」を演じたよね吉など、本格派の高座がそろう充実ぶり。「あくびの稽古」のあさ吉は下手なのか味なのか。吉朝の映像で「化け物つかい」が上演されたのは、故人の飄々とした舞台がしのばれた。化け物を使うところで説明なしに次の日になってしまうのがやや不親切に感じた。

10月22日 芸術祭十月大歌舞伎 昼の部「マハーバーラタ戦記」

壮大な叙事詩を上手く歌舞伎にまとめている。ヒーローのくせに敵役につき、悩める迦楼奈(菊之助)はインド風なのか。悪だくみを図る敵役、鶴妖朶役の七之助の好演が光った。百合守良王子(彦三郎)を筆頭にした五人兄弟も個性がはっきり。阿龍樹雷王子(松也)は前半は好戦的な考えで迦楼奈と対立するものの、ラストでは平和を望むよう考えを改め、勝者となる。神々の世界を黄金の衣装で表す神々しさ、両花道や戦車をつかっての立ち回りなど、華やかな見どころ満載で、歌舞伎らしさを堪能できた。

10月21日 国立劇場 十月歌舞伎公演「霊験亀山鉾」

仁左衛門が悪の限りを尽くす。美しいのだが、バッタバッタと人を殺し、深みには欠ける。

1020 清流劇場「メアリー・ステュアート」

濃厚で骨太な歴史劇。エリザベス役の林英世の演技が素晴らしいのはもちろん、メアリー役の竹田朋子の気品ある風情もよかった。膨大なセリフ量をこなした役者たちの負担は相当なものと推察される。時に噛んでしまったりしても、役柄を損なってはいないよう。女王でありながら、国民の期待を裏切れない。臣下の男たちに翻弄され、最後のエリザベスの圧倒的な孤独感。林の美しさが際立った。

1019 ミュージカル・コメディ「パジャマゲーム」

1954年初演だけあって、設定の古さはあるものの、王道のラブコメミュージカル。適齢期の女性に向かって、「この顔とスタイルで今まで独身だなんて信じられない」なんていうセリフとか、今の時代では許されないと思う。女優デビューの北翔海莉は歌の上手さは抜群。安定感があり、女性のキーにも無理がない。が、踊りはちょっと残念。特に、フォッシー振り付けの「スチーム・ヒート」のポーズ一つ一つが今一つ決まり切らないのが惜しかった。ピルエットはきれいなんだけどなあ。工場長シド役の新納慎也は、古臭い二枚目役を好演。脇役では宝塚出身の音花ゆりが華があり目を引き付けられた。

2017年10月28日土曜日

1017 第54回宝塚舞踊会

「屋敷娘」 真彩希帆、綺咲愛里。パッと見て綺咲が華やかで目を惹くのはトップとしてのキャリアの差か。踊りが特にうまいというわけではないのだけれど。 「猿曲舞」 美弥るりか、彩風咲奈、礼真琴。姿勢の良さか、礼に目がいく。 「三つ面子守」 愛希れいか。3種類の面を次々に変えながら、踊り分ける達者ぶり。日本舞踊にしては腰が高いというか、ピョンピョンはねてる感じ。 「橋弁慶」 望海風斗の義経に紅ゆずるの弁慶。新トップの顔合わせが注目だが、2人とも着慣れてない感じは否めない。 「京鹿子娘道成寺」 宝塚一の踊り手という松本悠里が45分ほどたっぷりと。所化の若手たちの坊主姿が微笑ましく、出入りのたびに客席から笑いがもれる。でもこういう演目だから。 フィナーレは山村友五郎の指導で、それぞれが素顔の紋付き袴で。

2017年10月23日月曜日

1016 ミュージカル「ビリー・エリオット~リトルダンサー~」

ビリー役の少年がほぼ出ずっぱりで、ソロのダンスシーンも多く大活躍。子役中心でここまで見せるのは大したもの。他のキャストでも見てみたくなった。特にオールダー・ビリーとのパドドゥは、映画版ではないシーンだが、フライングも取り混ぜた見せ場に。女装好きの同級生とのちょっとキュンとするやりとりは映画ではなかったような。エルトン・ジョン風味?
父親役の吉田鋼太郎は無骨ながら愛嬌があり、バレエ教師役の柚希礼音も思ったよりらしかった。

1015 法村友井バレエ団 80周年記念公演

「未来へ」
80周年の記念碑的作品で、創業者からの写真をスライドショーで紹介しつつ、子供からシニアダンサーによる踊りがつく。どちらかというと踊りは付け足しみたいな感じで、スメタナの「モルダウ」というい壮大な曲が勿体なくはあった。ラストで法村牧緒・東代子が出てきたのはサプライズ?親子三代の共演で、次世代へのバトンタッチを表現したのか。

「騎兵隊の休息」
バレエ団の得意演目だそうだが、コメディタッチの作品ならもっと弾けた演技がほしい。

「赤き死の舞踏」
61年振りのリメーク上演で、今公演の目玉。作品世界はドラマチックで、それ用に作曲された曲も悪くない(一幕で、人がバタバタと病に倒れるシーンの音楽が妙に牧歌的だったのが?だが)。再演に耐える、見応えのある演目になる可能性は充分だ。残念だったのは、赤き死の精の恐ろしさが今ひとつだったこと。振り付けの篠原聖一は抽象的な恐怖ではなく、病のにかかった生身の女と解釈したそうだが、そのせいか作品の持つ得体の知れないおどろおどろしさがぼやけてしまった。光の中で再生するイメージもいただけない。80周年という祝祭には、全てが死に絶えるラストはあんまりだという考えもあるだろうが。

1015 「オーファンズ」

廃屋で暮らす孤児のトリートとフィリップ兄弟。ある日、自身も孤児だったやくざ者ハロルドが訪れたことから、関係性が変化していく。ハロルドがなぜ兄弟の面倒をみてやるのか、動機が今ひとつ分からなかったが、社会から隔絶されていた兄弟が、したたかな大人と接することで成長し、生きる力を付けていく様が生き生きと描かれる。兄トリートの細貝圭は野生の獣のようなヒリヒリした風情、弟フィリップの佐藤祐基の無邪気さの対比。ハロルド役の加藤虎ノ介はいかにも翻訳劇的な、昔の洋画の吹き替えのような言い回しがやや不自然に感じたが、世慣れた大人の男らしい。わずか3人で劇場の空気を支配する、濃密な時間だった。

10月14日 Kバレエカンパニー「クレオパトラ」

熊川バレエのオリジナル作品。ドラマチックなクレオパトラの半生はバレエ作品にうってつけだが、少々詰め込みすぎか。特に一幕で、物語の展開が慌ただしく感じられた。二幕はよりバレエらしく、パドカトルや各国の踊りのような見せ場が多い。全体的に、ドラマに力点を置いているようで、踊りの美しさという点では少々物足りなかった。
中村祥子は強く気高い女王の貫禄にあふれ、鍛えられた身体美を惜しげもなく披露。カエサルやアントニウスなど、相手を取っ替え引っ替えしながらのパ・ド・ドゥはクラシックにはあまりない展開で、様々な表情の踊りが見られるのが面白い。ただ、性愛の場面での組んず解れつの直截的な振り付けや、蛇の化身という設定で地面をのたうつような振りが多かったのはいただけないところ。カエサルのS・キャシディが包容力のあるパートナーシップで、中村とのバランスもいい感じ。それまで張りつめていたクレオパトラが柔らかく、幸福感に包まれる。そのカエサルを失い、次の拠りどころとなるアントニウスの宮尾俊太郎は活気溢れる若者ぶりは予想通りだが、中村の相手としてはちょっと物足りなくもある。クールなクレオパトラがどうしてアントニウスが死んだあとあんなに取り乱したのかに説得力がない。
ラストシーンの音楽が印象的だったのと、クレオパトラの最期が美しかったので、それでよしという気になった。 カーテンコールで熊川氏登場。キレッキレの動きで挨拶し、一番の拍手をもらっていた。

2017年10月14日土曜日

1013 わ芝居「カラサワギ」落語バージョン

桂吉弥が落語で。登場人物が多すぎて、落語にするのは難しかろう。こなしていた吉弥の力量だ。が、芝居を観ていなかったら分からなかったかもと思うところもあった。最大で1シーンに4人というのは落語ではないそう。芝居と落語のコラボレーションという意味では、検討の余地あり。

1013 アマデウス

松本幸四郎の当たり役。開演前から舞台中央に背中を向けて座っている人影が、と思ったらサリエーリ役の幸四郎でびっくり。ほとんど出ずっぱりで膨大なセリフ量をこなすのはさすがだが、時折変なところでブレスが入ったりとおぼつかないところがあったのはお歳のせいか。 モーツアルト役の桐山照史は健闘していたが、幼稚な子どもで天才には見えなかった。コンスタンツェの大和田美帆ははじけた演技。

1012 わ芝居「カラサワギ」

本格小型時代劇と題した、ドタバタ時代劇。元禄の尼崎藩を舞台に、討ち入りブームに沸く藩士の混乱ぶりを面白く描く。登場人物がどれも個性的であくが強く、小劇場からはみ出さんばかり。

1008 三喬改メ七代目笑福亭松喬襲名披露公演

昼の部は喬若「骨釣り」、遊喬「上燗屋」、鶴瓶「青木先生」、さん喬「抜け雀」、口上をはさんでざこば(+塩鯛)の漫談、松喬「初天神」。 初天神は虎ちゃんが生意気でかわいく、ほのぼのした風情が漂う。ざこばは塩鯛の助けがないとおぼつかない感じで心配だ。 夜の部は喬介「犬の目」、生喬「豊竹屋」とかっぽれ、南光「阿弥陀池」、市馬「片棒」、口上をはさんで文枝「やさしい言葉」、松喬「三十石」。 市場が口上で相撲甚句を披露。素晴らしい声をたっぷり聴かせる。

1007 A級ミッシングリンク「罪だったり罰だったり」

ドストエフスキーの「罪と罰」をモチーフにした短編3本。濃密な舞台で見応えがある。 「罪だったり罰だったり」は余命宣告をされた男が、高校時代の同級生殺人の容疑者とみられる男を殺害するが、死んだ父の遺品から同級生の制服が見つかる。 「Who are you? Why are you here?」シリアを訪れた、日本人民間軍事会社のスタッフと、シリア系英国人、アメリカから遠隔操作する爆撃機で攻撃する米国人女性が邂逅する。 「世の中は間違いに満ちていて、いつだって僕はそれを黙って見過ごす」同居していた彼女の痴呆症の祖母を見ているように頼まれた男は、祖母が自殺すると予期しつつも頼まれてビールを買いに行く。おばあちゃんの好きにさせてあげたかったという選択はよかったのか。正しいと思ってしたことが間違っていたり、立場によって正義が異なったり、罪とは何かを考えさせる。 1人が何役もこなすのだが、イスラムの工作員?をやった林田あゆみが低い凄みのある声でまるで別人。達者な役者だ。

1007 五耀會

「新曲浦島」 5人がそろっての短い舞踊。山村流の作品だけあって、友五郎の扇遣いが際立つ。滑らか。 「夢の跡」 松尾芭蕉の句にも歌われた衣川の合戦がモチーフ。芭蕉から弁慶へと変わりつつの一人踊りを寿楽が。 「夢の富」 滑稽な芝居仕立ての踊り。箕乃助と扇二郎。 「座敷舞道成寺」 道成寺を座敷舞で一人舞う。友五郎が可憐に見えた。 「鏡」 蘭黄、箕乃助、基。狂言仕立ての面白い踊り。箕乃助の花子がかわいらしく、蘭黄の太郎と盗人は芝居っけたっぷり。

1006 地主薫バレエ団「トリプルビル」

優雅、溌剌、勇壮とカラーの異なるバラエティに富んだ演目だてで、見応えのある舞台。
「ショピニアーナ」は奥村康祐の詩人、唯のマズルカをはじめ、おとぎ話のような柔らかな風情で、絵面が美しい。
「卒業舞踏会」は芝居っ気たっぷりにコミカルな動きで沸かせる。ソロの1人が拍手が出たところで踵をついてしまったのが惜しいけど、フェッテを競うところなどテクニックも十分に見せつけた。
「韃靼人の踊り」は生のコーラスも加わって舞台からはみ出さんくらいの迫力。奥村唯が弾けんばかりの跳躍を見せ1幕とは別人のようだった。

2017年10月5日木曜日

10月5日 木ノ下歌舞伎「心中天の網島」

糸井プロデュースは妙なミュージカル風。随所に歌が盛り込まれているのだが、あまり上手くないというか、むしろ下手。狙ってるのかとも思ったが、西田夏菜子だけ上手いので、単に音痴なのか。特に小春。可愛らしく調子っぱずれで作品には合っているものの、曲はキャッチャーで悪くないのでちゃんと歌える人たちで聞いてみたい気もした。 治兵衛のダメ男ぶりがこの上なくて、なんで小春が惚れるのか分からないくらい。小春、おさんは感情表現が上手くはまった。おさんと治兵衛の若かりし幸せだった場面はおそらく原作にはないが、これがあったのでかえって小春とのことの理不尽さを際立たせて効果的。心中のシーンは刀を振りかざしては躊躇し、痛がってのたうち回ったり、首をつって苦しみもがいたりと、死をみっともなく描いたのがよかった。実際の心中なんて綺麗事ではないはず。 義太夫節風に語るところで、西田がヴァイオリンを弾いていて、芸達者ぶりに驚いた。

1005 宝塚星組「ベルリン、わが愛」「Bouquet de TAKARAZUKA」

紅ゆずるがナチスの支配が強まるなか、映画製作にかける青年テオ役。お笑い色を封印しシリアスな役どころは悪くないが、冒頭、映画への情熱を語るセリフの滑舌が悪いのが何とも残念。ちょっとうわずった声もいただけない。礼真琴がテオの友人で絵本作家の穏やかな男役。ふんわりとした雰囲気が良かった。ユダヤ人女優ジル(綺咲愛里)をヒロインとして起用し続け、ゲッペルスに逮捕されそうになるところを国外へ逃れるところで幕。戦争の暗い時代をあえて避けるのはちょっとご都合主義すぎる気もするが、宝塚だから仕方ないのか。 レビューはモンパリ90周年で、過去の主要な音楽をふんだんに盛り込む。オープニングの花をモチーフにした、ピンクベージュ系の衣装は華やかで美しいが、蝶と花のシーンのセットがいかにもな書割で学芸会みたいだったのと、スパニッシュのシーンの唐突さに戸惑った。紅は歌はともかく、ダンスがことごとく今一つなのは、ポーズが決まり切らないから。礼が歌、踊りともに秀でているのが改めて感じられた。

2017年10月2日月曜日

1001 「謎の変奏曲」

橋爪功と井上芳雄の二人芝居。1人の女性をめぐる男たちの心理戦で、ミステリーのように謎が明かされていく。派手な展開はなく、静かに展開するので、感動はじわじわと来るのかも。私が今一つ引き込まれなかったのは、橋爪にあまり色気を感じないからだろうか。初演はアラン・ドロンだそうだが、だったら2人のやり取りももっと緊迫感を感じられたのかなと思った。

0930 貞松・浜田バレエ団「ジゼル」

貞松融団長の前説、バレエのマイムと手話を並べて比較するのが面白い。 ジゼルの川﨑麻衣は純朴な風情がぴったり。重力を感じさせない軽やかな踊り。頭が小さく、すらりとした手足のバランスがいい。 アルブレヒトの塚本士朗はあまり格好いいとは見えなかったが、サポートが的確なのかな。川崎がよろけたのを上手くカバーしていた。 ミルタの廣岡奈美は力強さがみなぎる。ウイリーの踊りも全体的に幽玄というより勇壮だったような。

0928 ピッコロ劇団「かさぶた式部考」

好評だった舞台の再演ということで期待していたのだが、初演のほうがよかったという人も。 宗教のうさん臭さと突きつけ、豊市一家は結局救われないというラスト。焚火の火に照られされた母伊佐(平井久美子)の横顔が切ない。 智修尼の森万紀は凛とした美しさで2幕で豊市をいたぶるところの妖艶さが鮮烈。知的障害の信者、夢之助の孫高宏の鬼気迫る様子、てるえ役の吉江麻樹の切羽詰まった演技が良かった。解せないのは伊佐が最後、正気に戻ったことを忘れるため巡礼地の管理人のようになるところ。豊市が正気に戻ったという「奇跡」を描いた大きな絵馬が飾られているところになぜとどまるのか。絶えずその事実を突きつけられる場所にあえて身を置く理由がわからない。

0927 壁ノ花団「ウイークエンダー」

水不足の四国の山あいの村?で暮らす女。同居していた父は川に流され、結婚して京都に出ていた妹が帰省している。大切なものは川から流れてくるという父の教えや、ジョイとソロウと名付けた犬、採用面接に落ち続けている夫、そな夫に妊娠を告げられずにいる妹、思い出を食ってしまう幼馴染など、寓意的なエピソードが散りばめられるが、全体としてはぼんやりしている。父親やハワイと呼ばれる幼馴染を演じた金替康博がそこはかとなくおかしい。姉妹は「〜だ」というふうなぶっきら棒なものいいなのは作者の好みか。

0926 劇団新派「華岡青洲の妻」

市川春猿改め河合雪之丞の大阪お目見え。先に新派入りした喜多村緑郎と2人が入って、一気に華が増した。立ち姿の美しさに口跡のよい台詞回しが心地よい。波乃久里子の小陸は遠目だったこともあってか、妹らしい幼さがあり、「女であることが恐ろしい」などのセリフが的確で心に響く。水谷八重子は圧倒的な美しさというのとはちょっと違うけれど、独特の可愛らしさがあるので、嫁いびりが陰湿になりすぎないのがいい。ただ、青洲への執着があまり感じられず、嫁への対抗心が唐突に見えた。