2023年2月28日火曜日

2月28日 ミュージカル「ドリームガールズ」

 福原みほのエフィで再見。ソウルシンガーで歌唱力抜群というので、リベンジのつもりで行ったのだが、正直期待ハズレ。上手だし、声量もあるのだが、周囲を圧倒するほどではないと感じた。他の女性陣にも感じたことだが、歌声が綺麗すぎるというか、音響のせいか高音部がキンキンしてた。ソウルはもっと骨太というか、迫力のある声が欲しい。

ただ、福原の踊りはソウルっぽいと思った。それほどダンスが得意というわけではなさそうだが、リズムの取り方に違和感がないというか。逆に望海らは、棒切れを振り回しているような手のふり、ぴょんぴょん跳ねるようなステップが子どもっぽく、がっかりした。前半はティーンエイジの設定だから、あえてそうしているのかもしれないが、アメリカ人の女性はティーンでもあんな仕草はしないだろうし、今時日本人でもあんなぶりっ子しないのでは。

2023年2月26日日曜日

2月26日 素浄瑠璃の会

 京都府立文化芸術会館という立派なホールで、靖を筆頭に若手太夫、三味線弾き5組が大奮闘。トータル4時間という長丁場だが、不思議と飽きずにしっかり聞くことができ、健闘を頼もしく感じた。

トップバッターは聖・清志郎の「妙心寺の段」。大阪マラソンのおかげで電車に乗り遅れ、後半しか聞けなかったが、地に足のついた落ち着いた語りぶりに好感が持てる。終盤は声が掠れるなど、まだまだなところは多いのだが、義太夫らしさが感じられる。

「熊谷桜の段」は薫・寛太郎。声のコントロールが不安定ではあるのだが、だいぶ様になってきたように感じた。「入来たる梶原平次景時」は声量もしっかり。

「金殿の段」は碩・清公。ことばが明瞭でとても聞きやすく、物語がすっと頭に入る。竹に雀の見台を選んだとパンフレットにあったので、耳がそこへいってしまった。

「車曳の段」は小住・清方。清方が一人で引くのは初めて聞くかも。ところどころあれ?というところがあり、小住がフォローしてあげているように感じた。太夫としても、普段は掛け合いで語る段なので、一人での語り分けは珍しい。

「寺子屋の段」は靖・清允。気合の入った様子で、のっけから着物の襟にシミをつけるほど。寺子屋は何度も聞いているけれど、特に心に沁みた。清允は実直な演奏というか。この並びでは一番の先輩太夫なので、さすが途中で拍手が起こっていた。





2023年2月25日土曜日

2月25日 ミュージカル「ドリームガールズ」

 望海風斗のディーナ、村川絵梨のエフィ、saraのローレルという顔ぶれ。望海が主役だと思っていたのだが、正直、歌の主役はエフィではと思った。ディーナはグループのリードではあるのだが、ソロは少なく、エフィの方がソロも多くて、物語上の盛り上がりもあった。

皆歌が上手く、踊りも悪くないのだが、なんだか違和感があるのは、ソウルのグルーヴがないのだ。だから、借り物のような似合わなさが終始漂う。のっけの場面からちょっと鳥肌が立つというか(←悪い意味で)、うわっと思ってしまったのが最後まで抜けなかった。

望海は正直、期待はずれ。歌は上手いがソウルフルという点では不足だし、細すぎる体つきが色っぽくない。というか、前半子どもっぽくないか? キャピキャピした感じの動きもいただけない。エフィの村上はソウルフルな歌唱という点では物足りなかったが、芝居は激しい感情表現に揺さぶられた。

男性陣では、カーティス役のspiがラガーマンのような立派な体格で堂々とした佇まいといい、歌唱力といい、日本のミュージカル界にはあまりないタイプ。ジェームズの岡田浩暉は低い声の歌唱が良かった。


2023年2月24日金曜日

2月23日 大槻能楽堂 能の名曲六選

 大槻文蔵と天野文雄の対談。題名の「玄象」は観世流のみで、他は絃上。後から観世流が変えたのだとか。劇中に玄象の言及は1回ほどしかなく、藤原師長が持参している琵琶が玄象なのだろうという指摘。だが、皇室一級の宝物をなぜ師長が持っているのかとも。後場で出てくる獅子丸は唐から渡来する際に海に沈んだとされる幻の名器。

小書きの替之型は琵琶の作り物を使用。早装束は間狂言なしでの早着替え、窕(くつろぎ)は舞の途中で橋掛かりへ行くこと。

能「玄象」

前シテの尉と後シテの村上天皇は観世清和、ツレは三郎太。前ツレの姥は坂口貴信、後ツレは大槻裕一。ワキは福王知登。

後場の舞が見応えあり。裕一の龍神が颯爽として現れ、目が覚めるよう。後シテの早舞も、品があって豊かな気持ちになった。

2023年2月19日日曜日

2月19日 文楽公演第三部

「女殺油地獄」

一輔のお吉を観たくて再見。いやー、よかった。徳庵堤から、しっとりとした趣があり、目を惹かれる。殺しの場面では、大きく動い
てはいるのだが、やり過ぎ感はない。簑二郎との違いは何なのだろう。
一方、太夫には不満が。
徳庵堤の薫、娘お清を表情をつけて滑稽に語ったが、ここは子どもの純真さが笑いになるところ。ウケを狙うと嫌らしくなる。
豊島屋の呂は気の抜けた炭酸のようというか、ぬるい風呂のようというか、起伏がなさすぎないか?手摺がいいだけに、物足りなさが募った。

2月19日 文楽公演第二部

「国性爺合戦」

公演の前半で観た時の感動がそれほどでもなかったので、おかわりするか迷ったのだが、してよかった!小住→呂勢と繋ぐ楼門が素晴らしかった。小住の進化が凄まじく、堂々とした語りぶりは聞き応え十分。呂勢も脂の乗ったかんじで、朗々とした声に聞き惚れた。心地良すぎてウトウトしてしまったくらい…。清治の三味線が輪郭をくっきりさせていた。前回もだが、代わりの三味線を脇に置いていたのは何故?

一方、紅流しの織・藤蔵は、大きな音出せばいいってもんじゃないんでは?というか、床の熱量に比して客席はクールだったように感じた。「こういうのが好きなんでしょ?」というのがあんまりあからさまだと、冷めるよ。少なくとも私は。

2月19日 二月大歌舞伎 第一部

「三人吉三巴白浪」

七之助のお嬢、愛之助のお坊、松緑の和尚の組み合わせ。大川端から大詰めまでのほぼ通しなので、見応えあった。何より、主役の3人が充実してバランスが良い。
七之助はこれまでより凛々しいお嬢で、あまり女っぽくしていないよう。アイラインの赤は控えめな感じで、火の見櫓に登るため腕まくりした腕は逞しい。が、キャラクターとしてはこれが正解という気もする。
お坊の愛之助は、キリリとしたハンサム。江戸弁のセリフのキレがもうちょっとよければなおよかったが、お嬢との渡り台詞は耳に心地よかった。
今回、一番感心したのが松緑の和尚。セリフの嫌なクセが抑えられていたし、なによりどっしりとして和尚としての重みがあった。おとせとと十三を殺さなければならなくなる件に滲ませる苦悩にグッときた。
壱太郎のおとせは手堅いが、籠ったような発声が耳に障る。十三の巳之助、出てきた時だれ?と思ってしまったのは、とても落ち着いていたから。いい役者さんになったなぁ。

2023年2月9日木曜日

2月9日 二月大歌舞伎 第三部

「霊験亀山鉾」

仁左衛門の悪の華が咲き誇る。卑怯な手を使って敵討を返り討ちにする残忍さがゾクっとする格好よさ。過去公演ではトータル4時間ほどだったのを、休憩込みで3時間15分ほど(初日より10分ほど巻いているらしい)に圧縮しているので、展開が唐突に感じるところもままあったけど、仁左衛門の格好良さを堪能する芝居だから。物語の深みはないので、むしろこれでいいとすら思える。
唐突、というか、分かりにくくいと思ったのは、例えば曲輪の場面で、おつまを巡って弥助(実は源之丞)と(鴈治郎)が鞘当てをするところ。おりき(吉弥)が出てきて弥助は私のいい人と言い含めて煙に巻くのだが、後に水右衛門を匿っていると明かすので混乱する。また八郎兵衛の登場も水右衛門に与する人物と知らされないままそっくりさんとして出てきて、おつまに言い寄るので、水右衛門宛の手紙と20両を横領したように見えてしまい、おつまが騙されようとしているのが分からなかったり(その後、八郎兵衛の立場が明かされて整合性が取れるのだが)。伴介(仁三郎)が水右衛門宛の偽手紙を八郎兵衛に渡すところも、水右衛門の顔を知らなくて、そっくりな八郎兵衛に渡す体なのも、後から考えると整合性が取れない。お松(孝太郎)のところに反物を買いに来る商人、才兵衛(松之助)が高値で勝っていたのは源之丞の母貞林(東蔵)の計らいと明かして引っ込んだ直後に源之丞の位牌と共に貞林を連れてくるところも、待ち構えていたように唐突で、松之助が石井家の別の家臣と二役(才兵衛と入れ替わり)なのかと筋書きを確認してしまったよ。

源之丞と袖介の二役を演じた芝翫は演じ分けがくっきりして良かったが、源之丞ってよく分からん。敵討を志していながらおつまとの間に子まで作ってしまうってどうよ。親に認められていないとはいえ、お松との世帯を持って源次郎という子までいるというのに。ただの浮気でなく、愛想尽かしされた怒りから殺しにくるし。とはいえ、久しぶりに家に戻った源之丞がお松(孝太郎)といちゃいちゃするところ、とても色気があった。仁左衛門仕込み?
 
雀右衛門のおつまは幸薄げで綺麗だし、吉弥の丹波屋おりきは悪女ぶりが格好いい。適材適所の配役がハマっていて見応えあった。源次郎役に歌昇の息子、種太郎。可愛らしい子役で、立ち回りも楽しげに演じているのが微笑ましい。おでこが広く見えるので、かつらを工夫した方がいいと思うなど。
松之助はちょっとセリフが怪しく心配。


以前も見たことあるはずなのに、あまり記憶にないのはなぜなのだろう…。18日に再見したが、ストーリーのアラにより気づいてしまった。これは、細かいことにこだわらず、どんでん返しにえっと思い、仁左衛門の悪の華を愛でるのが正解なのだろう。 

2023年2月6日月曜日

2月6日 文楽公演 第二部

「国性爺合戦」

千里が竹虎狩りの段の口は御簾内で碩・燕二郎。はっきりしてよい。
奥は三輪・清友にツレの錦吾、清方。錦吾が落ち着いてきた。
この段は三輪のおはこなの?虎との絡みはいつも三輪な気がする。

楼門の前は小住・清馗。小住は声にハリがあって義太夫らしい。
後は呂勢・清治。音楽としての義太夫節を堪能し、できるなら一段丸々聞きたいところ。

甘輝館は錣・宗介。宗介の三味線ってうまいなと改めて思った。一段語ってもらえると、切場の風格が感じられる。

紅流しより獅子が城は織・藤蔵。いつもの織のドヤ感が…。藤蔵の三味線が煽るからかな。甘輝の高笑いで拍手が起こっていたけれど、圧力に押されたような…。 

2月6日 文楽公演第一部

「心中天網島」

北新地河庄の段の中は睦・勝平。
睦ははじめ、また声が掠れていて辛いと思っていたが、小春の哀れさ健気さがよかった。太兵衛の口三味線は下手な感じがリアルというか。あまり自信満々にやらない方がこの場面には合っているのかも。
切は千歳・富介。孫右衛門がいいのはもちろん、太兵衛が意外に面白い。格子に括り付けられた治兵衛を笑うところの憎らしさが秀逸。

天満紙屋内の口は希・友之助。
奥は藤・団七。聞き心地がいいのだが、必ずと言っていいほど寝てしまう。

大和屋は病気休演の咲に変わって織・燕三。場面が場面だけになのが、抑制された語りがとても良いと思った。燕三の三味線が抑えていたのか。

道行名残の橋づくしは芳穂、小住、亘、聖に錦糸、寛太郎、清公、清允、清方。錦糸の三味線の鮮やかなこと。これぞ道行という感じ。寛太郎は二枚目のせいか、眉間に皺が寄っていた。

人形は玉男の治兵衛に清十郎の小春。似合いのカップルぶりだが、河庄の小春が常に上半身が右に傾いていたのが不自然に見えた。俯く姿を強調するなら上体をひねる方が効果的では?左側にいる人が嫌で逃げようとしている?和生のおさんのできた女房ぶり。

今回見ていて、やはり治兵衛のような未練がましい男は嫌いだと思いつつ、対極の、いわゆる男らしい人をよしとする気持ちが自分にもあるのではと思い至ってハッとした。よく考えてみたい。

2023年2月5日日曜日

2月5日 全国共同制作オペラ「田舎騎士道」「道化師」

上田久美子の演出に惹かれて観劇。マスカーニ作という両作は初めて知ったが、「田舎騎士道」の間奏曲は聞き覚えのあるものだし、曲自体は華やかでオペラらしい起伏に富み聞き応え十分。が、字幕で見る限り歌詞は退屈で、ストーリーは現代の感覚ではつまらない。そこを、歌手とダンサーが二人一役で演じることで、情報量を増やしたという。歌手はドレスやジャケットといった時代にあった衣装で原作の19世紀イタリアの世界を演じ、ダンサーは現代大阪に置き換えた世界を身体で表現する。オペラの歌詞の逐語訳と大阪弁に翻案したセリフが同時に表示されるのも面白く、大阪弁のセリフは俗っぽく生々しい。「文楽スタイル」ということで、歌とダンスで分業するのかと思ったら、歌手も演技するし、時にはダンサーと絡んだらもするので目を離せず、一度にあれもこれも見て情報処理しなければならないのは少し忙しなく感じた。

「田舎騎士道」はだんじり祭の準備が進む中、2組の男女の痴情のもつれから殺人がおこる。とても卑近な話なのに、オペラになるとどこか高尚な感じがして、歌詞も逐語訳ではぴんとこないところを、大阪弁に置き換えることで、登場人物の感情が露わになり、音楽の大仰さと釣り合うようになったと思う。
ダンサーの身体表現も秀逸で、特に聖子(三東瑠璃)の叫ぶような踊りが印象的だった。日野(アルフィオ)役の宮河愛一郎はカリスマ感があり、目を惹かれた。

「道化師」の方は、旅芸人の一座を大衆演劇の一座に置き換えたもの。すでに同じ手法を見ていたせいか、「田舎騎士道」ほとのインパクトを感じなかった。加美男(カニオ)役の三井聡に期待していたのだが、それほどでもなく、ヒロインの寧々(ネッダ)が蘭乃はな、富男(トニオ)役が芋洗坂係長だったりと、ダンサーというより演技だった。

両演目とも幕前から舞台に路上生活者が2人いて、劇中も舞台に絡んでくるのだが、これはどういう意図だったのだろう? 現代とつなぐ橋渡し的な役割? どちらも最後に殺しがあった後、彼らが舞台上で物を撒き散らかしておわるのだが、ワンパターンに感じた。

初日の数日前に、上演順を入れ替えるという知らせがあったのだが、なぜだったのだろう?「道化師」のほうの冒頭に、口上人形が二人一役や大阪弁の字幕のことなど、今回の上演について述べたのだが、これって初めに上演する前提のはず。そのまま残して順序を入れ替えたのが釈然としないというか。

2023年2月4日土曜日

2月4日 文楽公演第三部

「女殺油地獄」

徳庵堤は南都、亘、津国、文字栄、薫に清丈。清丈がノリノリで弾いてた。太夫陣はタガが外れたというか、自由というか。津国の七左衛門ほかが安定感あった。

河内屋内の前は咲寿・団吾。「ぎょーてーぎょーてー」からの語りは筒いっぱいの感じでよろし。
後は靖・清志郎。よかったのだけど、疲れていたのか、意識が飛んでしまい…。

豊島屋は呂・清介はいつも通り。殺しの場面で与兵衛の狂気がなく、真っ当なことを言ってるみたいな口ぶりなのはなぜ? 直前に伝統芸能情報館で、藤十郎監修の翫雀(現鴈治郎)の与兵衛を見たばかりだったので、余計に違和感を抱いたのかもしれない。

人形はお吉の一輔がコロナ休演で簑二郎の代役。箕助のを踏襲しているのだろうが、殺しの場面の動きは派手すぎるように感じた。あと、刺されてすぐくらいの時に、玄関の戸を開けて柱にもたれるのだが、なんでそのまま逃げないの?と思った。与兵衛に連れ戻されるのでなく、自分から戻っていたから。与兵衛の勘十郎は期待通り。今日は下手側の席だったので、豊島屋に両親が訪ねてきて、裏手に隠れるところなどもしっかり見られた。

2月4日 木ノ下歌舞伎「桜姫東文章」

岡田利規演出は合わないと認識を新たにする。桜姫の石橋静河も、清玄・権助の成河もハマり役だし、その他、悪太郎や長浦の役者も悪くなかったのだが、脚本・演出がなぁ…。一番よろしくないと思ったのは、場面の初めにあらすじを字幕で出したこと。役者の演技は字幕の内容をなぞったようになってしまい、話の展開への驚きが無くなってしまう。長くて複雑な物語を短時間でまとめるにあたって、観客の理解を助ける意図なのかもしれないが。それにしては、場面転換が唐突で、かったるく感じた。休憩を含んで3時間20分ほど。 

だるそうな話ぶり、棒読みのようなセリフは岡田演出の特徴だが、やはりイラッとする。
立ち回りなど歌舞伎の型を踏襲した場面が多く、完コピの影響を感じたが、だるそうに動かれると拙さが目立つ。石橋や成河はさすがの身体表現力で決まっていたが、気持ちが入っておらず、形だけなぞっているように見えるところもあった。 

ラストは桜姫が子どもと権助を殺したところで終わってしまったのもモヤモヤ。家の仇を打ったので、整合性がなくはないが、その後でお家再興まであってこその桜姫の不条理さだと思うのだが。その少し前の、借金のカタにお十が女郎屋に売られるところで殊更に「モノみたいに扱われて変」みたいなセリフがあるのだか、引っかかるのそこ!?というか、主人公周りでも変なところあるし、そこを突いたほうがいいのでは。 
桜姫が権助と再会して「近くへ」と誘うところや、墓掘り権助が桜姫を自分の妻と言って抱き寄せるところなどは、色気があってぞくっとした。

劇中劇の形で、出番のない役者が周りを囲んで見ている。大向こうをかけたりして。成河→イナゲヤ、石原→ベニヤなどの他、豆腐屋とか、ブルガリヤ、ポメラニアンなども。面白いけど由来が不明だ。
観終わって、不条理さは残った。それが狙いなら大成功。


2023年2月1日水曜日

1月31日 ミュージカル「エリザベート」

花總まりのラスト舞台をオンラインで視聴。初演時から27年、一つの役を深めてきた集大成と感慨深く観た。皇后の威厳や気品をこれだけ体現できる役者ってなかなかいない。少女期のあどけなさもまだまだ遜色ないし、晩年の悲哀は深みを増した。1幕のラストでフランツの謝罪を受け入れて見せた恍惚の表情、ハンガリーの戴冠式で「勝ったわ」と名言してみせた勝ち誇った顔はひれ伏すような美しさ。その後の「踊るなら」は「踊るときは」になり、ちょっと違和感があった。「私だけに」など歌唱は地声で押し切ったところがやや聞き辛かったが、感情表現としてはアリだと思った。
演出面で少し変化があったようで、フランツは求婚した時から、王族には自由がないと繰り返し話しているのに、エリザベートは夢見心地で、2人が初めからすれ違っている様子が明らか。終盤で、追加された父の亡霊と対話するシーンで「気の持ちよう」みたいなセリフもあり、エリザベートの孤独は独り勝手というか自業自得みたいで、突き放して描かれて同情しにくいように思った。

古川雄大のトートは、エリザベートへの憧憬という感じで、終始仰ぎ見る風情。最後のダンスでエリザベートの足元に滑り込んだところや、フェイクで歌い上げるところは思わず笑ってしまった(←褒めてる)拒絶されて捨てられた子犬のようになってしまうのは、万能の帝王としてはどうなの?と思ったが、それはそれできゅんとした。歌唱は思っていたよりはよかったが、得意のダンスをもっとみたかった。カメラワークが寄りばかりだったのが残念。 

田代万里生のフランツは、青年期は声が明るく、陽のイメージ。晩年は歌声も変わっていたが、老けメイクは少しやりすぎではと思った。(映像だからそう見えたので、舞台ならそうでもないのか)

黒羽真理央のルキーニは狂気が濃い。そういえば、古川とは「恋と弾丸」でも共演して快演を見せていたっけ。バートイシューで荷物運びをしたり、出番が増えた?
ゾフィーは剣幸。期待していたのだが、カーテンコールて本人が「人のいいおばさんみたいとダメ出しされた」と言っていた通り、厳しさや威厳が足りないように思った。歌もあれ?と思うレベルで、体調でも悪かったのかしら。