2022年10月21日金曜日

10月21日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

吉田都芸術監督による新制作ということで、期待の舞台。小野絢子のジゼルに奥村康祐のアルブレヒトは、8月の地主薫バレエ団での共演が素晴らしかったので期待していたのだが…。
アルブレヒトは初めから遊びのつもりがありありで、どこか冷めている感じ。ジゼルとのイチャコラも駆け引きを楽しんでいる風。バチルダが婚約者であることを明かすところで、シーっとする仕草もなかったし、全く別のキャラだった。同じ役でこれほど違う人物を描出できるとは、ある意味すごい。ジゼルもアルブレヒトのことは好きだけれど夢中というほどでもなく。こんな2人なので2幕でどうしてジゼルが赦すのかが釈然としなかった。踊りのレベルは高く、そういう意味ではとても見応えがあった。
小野のジゼルは可憐なおぼこ娘。ステップの軽やかさは圧巻。狂乱が少し長く感じたのは、さまざまな感情の変化が克明だったからか。剣を振り回すところで、刃を持ったら怪我するんじゃないの?と思う。
バチルダは大富豪の娘という設定で、ネックレスを重ねたケバケバしい衣装が成金みたいで、周囲から浮いている。ジゼルへの対応がいじわるっぽい。 
ヒラリオンは福田圭吾。ワイルドな感じで、無骨なところがジゼルには嫌われちゃったのかなと思った。アルブレヒトの正体を知って、してやったりとするところ。そういうところが、少女には受け入れられないのよ! 
ペザントはネックレスのお礼に身体が弱くて踊れないジゼルの代わりに躍る、という流れで、村人たちを率いて踊るところもあり、話の流れとしてとても自然。池田理沙子と速水渉悟は共にテクニックが素晴らしく、特に速水のジャンプのキレが素晴らしかった。

2幕は冒頭、寺田亜抄子のミルタが秀逸。滑るような登場から、人ならぬものの無機質な感じがよい。ウィリーの群舞はあれ?という感じ。チュチュの丈が短い上、レースが薄いので脚がバッチリ見えているし、足音が思いの外響く。フォーメーションは複雑で綺麗だった。
小野ジゼルは体重を感じさせない軽やかさが圧巻。何でアルブレヒトを庇うのかという思いは拭えず、すれ違う切なさも薄かった。
奥村は一幕と打って変わって、後悔の念が深く、ジゼルやミルタに赦しを乞う。踊り疲れて倒れ込む姿に悲壮感があるが、3回くらい倒れたのは多すぎる気もした。これに対して、ヒラリオンのくだりはあっさりめで重ねて気の毒。
終演後は満場のスタンディングオベーション。はじめ表情が硬かった奥村も、振付家らが舞台に上がった頃からは笑顔を見せていた。

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