吉弥の挨拶に続いて、折之助の「汐汲」。素踊りで、汲桶や手拭い、扇、三階傘など次々に道具を変えて踊る。丁寧な踊りがよいが、海女にしてはちょっと上品すぎるように思った。
「静と知盛」は吉太郎。船弁慶の舞踊版で、元々は能の作品だから能舞台に合わせてのチョイスだろう。前半の静は暖色系の着物と袴で柔らかく、後半の知盛は黒紋付きに着物を変え、顔つきもガラリと変っていた。特に後半の知盛は薙刀を振り回しながらもキレのある動きで、ちょっと振り回されそうになりながらも堪えたのは若さゆえの体力かな。もうすっかり大人の役者なんだなぁと思った。
新作の「玉手御前」は摂州合邦辻のアレンジ。天王寺で乞食となった俊徳丸の元へ浅香姫、玉手が訪ねてきて、合邦庵でのようなやりとり。吉弥の玉手が情念の女をこってりと。過去にも勉強会で勤めたことがあるそうだが、古典の玉手とはだいぶ違う。冒頭のモノローグから俊徳丸への恋心や朝香姫への嫉妬が露わで、「邪魔しやったら蹴殺すぞ」は見せかけでなく本心といった感じ。吉太郎の浅香姫は可憐で、折之助の俊徳とのバランスもよかった。
最後に「大阪締め」でと言いながら、「祝うて三度」が出てこなかったのか「よよいのよい」と言う吉弥にずっこける吉太郎。仕切り直してお開きに。客席も暖かく、いい会だった。
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