2020年10月26日月曜日

10月25日 東京バレエ団「M」

 冒頭の海の群舞が美しい。

少年役の大野麻州は健康優良児という感じで少年時代の三島由紀夫というイメージではなかったが、ほぼ出ずっぱりの難役をよくこなしていた。少年の手を引いて登場する白塗りの和服の婦人(池本祥真)は母なのかばあやなのか。婦人が着物を脱ぎ捨てると、ㇱ(死)になるという展開。狂言回し的な存在で、実質的な主役?

イチ(柄本弾)、ニ(宮川新大)、サン(秋元康臣)や聖セバスチャン(樋口祐輝)、船乗り(ブラウリオ・アルバレス)ら、男性ダンサーに名前のある役が多いのが象徴的。アルバレスは若き日の美輪明宏を思わせる美丈夫。射手の南江祐生は着物を片脱ぎするのがもたつき(おそらく手を襦袢と着物の間に入れてしまった)、矢を射るまでの時間があまりに長く、作品の緊張感を途切れさせてしまったのが残念だった。

小鼓と笛の演奏に掛け声が入り、少年の自決シーンでは刀の代わりに扇を用いるなど、能楽の要素がちりばめられているのが、抽象性を感じさせる。芝居とはいえ、少年に刀で自決させるのはいたたまれない気がするので、扇と分かってちょっとホッとした。

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