こういうドンキが観たかったのよ!という大満足な舞台。1幕の冒頭からあふれんばかりの祝祭感に涙ぐみそうだった。オケがよかったのも一因か。下手側の2階席は、舞台全体もダンサーの表情も、さらにはオーケストラピットもよく見え、感動もひとしお。指揮は冨田実里。
結構アップテンポで進むのだが、キトリの池田理沙子、バジルの奥村康祐をはじめ、コールドにいたるまで誰も遅れず、角々のはっきりしたキレのある踊りと音楽との一体感が心地いい。今季から舞踊芸術監督に就任した吉田都の影響もあるのだろうか。止めはねがしっかりしているというか、緩急があって、音に合ってストレスを感じさせないのがいい。
池田は華奢な体が少女らしく、品よく賢そうでいながら、少し小悪魔的な魅力もあるキトリ。バジルの奥村も少年らしいやんちゃさがあり、二人とも芝居気があるので、2人がイチャイチャするところも楽しく見せる。それでいて、キレのある踊りでもしっかり見せるのが素晴らしい。奥村はジャンプはそれなりだが、回転技が得意なのか、連続で回っても軸がぶれず、スピードも落ちないのが凄い。
2幕のドゥルシネア姫の池田はあまりニンではないように見えたのは、高貴さが薄いからだろうか。3幕は1幕ほどの感動はなかったが、テクニックがしっかりしており、十分堪能した。奥村が池田の腰を支えて回るところで1回、息が合わずにもたつくところがあったのが残念だったが、アイコンタクトがよく、パートナーシップも素晴らしい。
1幕で、闘牛士らが地面にナイフを突き立てるところで、3回とも数本が倒れてしまったのは床が硬すぎるのか、ナイフがなまくらなのか……。こういうところで気を散らされるのは好ましくない。
エスパーダの井澤駿は髭のせいもあってか気障な感じだった。