2017年2月27日月曜日

0226 三代目桂春団治一周忌追善落語会 夜の部

一門による口上。ほとんど昼の部と同じだが、梅団治のみ違う話をしていて好感度アップ。 梅団治「野崎参り」 三代目とは違うけれど、これはこれで愛嬌があって面白い野崎参り。 春若「代書」 三代目は「代書屋」というところをあえて「代書」にしているそうな。 市馬「二番煎じ」 声がいい人の落語は聞いていて心地いい。上質な落語を聞いたという満足感。 鶴瓶「青木先生」 アフロヘアの頃から三代目には可愛がってもらい、1000円もらっては髪切ってこいと言われたとか、形見分けでもらった帯を披露したり。春之輔のあほ話も。 三代目の墓が母校である浪花高校の近くにあるという話題から、思い出の国語教師をからかう話へ。誇張しすぎてちょっと嫌みかも。 ざこば「月並丁稚」 三代目に教わった2つのネタから披露。口上を覚えられないアホな丁稚が上手い。 春之輔「幸助餅」 得意ネタに挙げているわりに期待外れと言わざるを得ない。雑というか練られていない感じだ。結構な数の登場人物がいるのに語り分けが明確でないのでわかりにくい。 はじめに「人情話です」といって話し始めるのもどうかなあ。

0226 三代目桂春団治一周忌追善落語会 昼の部

幕開きは一門による口上。福団治がやたらと「一門の結束」を口にしていたのが気になる。新春団治について誰も触れないのも変だ。 春雨「皿屋敷」 カジュアルというか軽い皿屋敷だ。日舞をやっているだけあってお菊の所作はきれい。羽織を脱ぐのも、三代目にはかなわないまでも結構シュッとやっていたのに拍手がなかったのは気の毒。 文珍「憧れの養老院」 小話かと思っていたらネタだったらしい。 歌丸「紙入れ」 こんなに淡々とした紙入れは初めて。おかみさんも地声のままで色気をつくるということがほとんどないのだ。 高座まで歩くのが辛いらしく、いったん幕を閉じてから板付きで登場。声にもハリがなかったが、間の取り方が絶妙で笑いを誘った。 小春団治「アーバン紙芝居」 いかけ屋を現代風にアレンジしたそうで、がり勉の小賢しい小学生やこまっしゃくれた4歳児などキャラクターが楽しい。 鶴光「竹の水仙」 左甚五郎が宿代代わりに竹で水仙の花を拵える。鶴光の古典落語は初めて聞いた。 福団治「藪入り」 子どもが出てくる人情話は鉄板だけど、ほかの話も聞きたいような。

0225 浪曲名人会

「南部坂雪の別れ」 真山一郎 歌謡浪曲の仰々しい音楽、派手な衣装は私は苦手かも。討ち入りの当日、大石内蔵助が瑞泉院を訪ね、秘密を洩らさないまま別れを告げるというデリケートな場面なのだが、瑞泉院の声色が下町のおばちゃんみたいで気分がそがれてしまった。 「定九郎出世噺」京山小圓嬢 落語でもよく知られた中村仲蔵の話なのだが、芸の工夫よりも夫婦愛にフォーカスがおかれている。仲蔵が大抜擢で五段目の定九郎の役を振られるというのも違う。それまでは名前もない役ばかりだったとはいえ、弁当場というのは抜擢と言うほどの躍進ではないような気がする。 芸歴70年の小圓嬢の声のハリ、つやに驚く。 「松坂城の月」松浦四郎若 講談で聞いた印象が強く、話の運びがまどろっこしく感じた。 「異国の母」三原佐知子 迫力のある声に圧倒される。お涙頂戴の浪花節らしいというか。ただ、小学校6年生になっても喋り方が幼いままというのはどうなんだろう。 「樽屋おせん」春野恵子 不義を疑われていたおせんがとうとうやけっぱちになって一線を越えてしまうという驚きの展開。 春野恵子は人気者らしく「待ってました」のかけ声も。よく通る声だし、頑張っているのはよく伝わるが、一節歌うたびににっこり微笑むのは笑いすぎでは。話にも合っていないし。歌い終わりにアクセントが付くのも耳に触った。 「曲垣平九郎―どど平の住込み―」京山幸枝若 最後の立ち回りは迫力があって面白いが、ぶつっと切れて続きは…とやるのは大トリとしてどうなのだろう。消化不良感が残った。

2017年2月25日土曜日

0223 若手素浄瑠璃の会

「ひらかな盛衰記」松右衛門内より逆櫓の段 1時間10分あまりを小住が語り切った。後半はしんどそうなところもあったが、藤蔵が激しくうなる三味線で尻をたたいているよう。 小住は声量もあり、堂々とした語り振りなのだが、詞章が頭に入ってこないのはどうしてだろう。言葉や音程をたどるのに精一杯な感じがするからか。時折言葉が違って聞こえたのも気になった。 「新版歌祭文」野崎村の段 希と清志郎にツレの清允。 希は声がよく、声量もまずまず。詞章が分かりやすいのは経験の差なのかなあ。

0223 ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」

舞台を近未来に移し、登場人物はスマホを持っていたりする。荒廃した世界観で、キャピュレット家の荒廃ぶりが強調して描かれる。ジュリエットの両親の関係が破たんしていて、母親はティボルトと不倫関係にあったり、当のティボルトは従妹のジュリエットに片思いしていたり、パリス伯との結婚を進めながら、母親がジュリエットに本当の父親は別の人だとほのめかしたり。ティボルトはソロも多く、1幕ではロミオより目立っていたほど。なのにそういった伏線が後半に生きてなかったような気がする。 古川雄大のロミオに木下春香のジュリエット。歌は悪くなかったと思うが、演出のせいか、2人が恋に落ちる運命性が感じられなかったので、その後の展開がしっくりこない。 2人の結婚式がスマホの写真で拡散され、皆に知れ渡っても両家の争いはやまず。2人が死んだのを見て初めて争いを悔いるという展開も、愛がすべてに勝というテーマを薄めているようで疑問。

0222 松竹座 二月花形歌舞伎 夜の部

「金閣寺」 梅枝の雪姫が気品、可憐さのあるいいお姫様だった。屋台にもたれた憂いの表情も、縛られながらの演技もきれいだった。 上置きの又五郎が松永大膳で舞台を引き締めていたものの、歌昇の此下東吉、種之助の十河軍平、右近の松永鬼藤太などは花形だなあという印象。歌昇はおそらく二枚目を目指しているのだろうに、ちんちくりんな感じがするのはなぜだろう。 「連獅子」 松也の親獅子に右近の小獅子。松也の年で親獅子はまだ早いのは仕方ないにしても、踊りの上手さが逆転してたのも辛かった。 毛振りがそろってないし、振り終わりのタイミングすら合わせられないってどうよ。

2017年2月20日月曜日

2月19日 国立劇場開場50周年記念 文楽公演 第一部

「平家女護島」 六波羅の段 靖・錦糸。 二段目の切だそうで、35分ほどを語り切った。 あづまやが若すぎたり、教経と越中次郎兵衛の語り分けが甘かったりといろいろ感じるところはあったが、大健闘と言っていいのでは。 女のクドキあり、立ち回りありの盛りだくさんで、見どころ、聞かせどころが満載だった。 鬼界が島の段 英・清介。 声もよく通っていて悪くない出来だったが、緩急が乏しかったのか盛り上がりに欠けたように思う。場面としては千鳥のクドキとかいろいろ見どころがあるのに。 物語としては、未練がましい歌舞伎よりも文楽のほうが好み。俊寛の物語に特化している歌舞伎より千鳥がクローズアップされてるのもいい。 船路の道行きより敷名の裏の段 咲甫の清盛、三輪の丹左衛門、有王丸の津国、千鳥の南都、法王の始にツレの咲寿、亘。三味線は藤蔵、喜一朗、清馗、燕二郎、清允。 華やかな三味線の演奏が盛り上げる。咲甫の清盛は敵役にしてはシュッとした男前。 人形は何と言っても簑助の千鳥のかわいらしさ。道行では簑紫郎に変っていたが、これもよかった。

2月18日 国立劇場開場50周年記念 文楽公演 第三部

「冥土の飛脚」 淡路町の段 口を休演の松香に代わって咲甫・清友。 端場だからかもしれないが、ちょっと早口すぎて何言ってるか分かりにくいところも。 奥は呂勢・清治。 忠兵衛のダメ男ぶりがこれでもかと。中之島の武家に金を届けるはずが、知らず梅川のいる方へ歩いてきてしまった忠兵衛が、行こうか行くまいかと逡巡するところ、絶妙な間で笑わせた。八右衛門の野太い声と忠兵衛の柔らかい話ぶりと、語り分けがはっきりしていてききやすい。 封印切の段 千歳・富助。 切場語りの風格がただよってきたよう。忠兵衛があまりにダメ男すぎて、全く同情できないのだが。梅川も最初に商売の金ではないかと疑っているので、喜び転じて悲劇~の落差が薄くなってしまう。忠兵衛はやはりダメ男なのだが、歌舞伎のほうが可愛げがあるし、梅川のイノセンスなところも哀れを誘い、気持ちの盛り上がりがあるように思う。文楽はあほがあほやって勝手に自滅してる身勝手な話にしか感じられなかった。 廓の女郎たちが忠兵衛を「たださん」とよぶのばなんでだろ。歌舞伎は「ちゅうさん」だよね。 道行相合かご 文字久、睦、希、小住、文字栄に団七、団吾、清丈、龍爾、錦吾。 殺風景な野道を行く2人。雪景色の中の逃避行よりリアルなのかもしれないが、寂しい限り。 人形は玉男の忠兵衛に清十郎の梅川。清十郎の出しゃばらない遣いぶりが好印象だった。

2月18日 国立劇場開場50周年記念 文楽公演 第二部

「曽根崎心中」 生玉社前の段 文字久・宗介。 悪くない。むしろ床はよかったと思うのだが、やはり私はこの物語が好きではないと再認識した。遠くで起こっていることを眺めているようで、全然入り込めない。 天満屋の段 咲・燕三。 体調が思わしくないのか、声に力がなく、高音が擦れて聴きづらかった。 天神森の段 津駒、咲甫、芳穂、亘に寛治、清志郎、寛太郎、清公。 津駒は情感たっぷり。咲甫は自分に酔っているようで、ちょっと薄情そうに聞こえた。 人形は玉男の徳兵衛に勘十郎のお初。お初は少々オーバーアクションな感じ。天満屋の段でお初の裲襠に徳兵衛を隠してひき入れるところ、さっと軒下に隠れられずモタモタしてたのが気になった。そんなんじゃ見つかるでしょ。

2017年2月18日土曜日

0217 南船北馬「赤い靴はいて」

アラフォー女性5人の会話劇。奔放な母の介護をめぐる姉妹の確執、登校拒否の娘と義母の介護に追われる中学教師に鋭い言葉を投げる独身の同僚、先行きに不安を抱えながら猫に愛情を注ぐ派遣社員、それぞれに問題をかかえ、相手に不満を抱いている。セリフの一つ一つが実感をもって感じられる一方、痛くて苦しい。個性的な5人の女優たちが存在感を放ち、引き込まれた。国語教師役の高橋映美子の声や話ぶりが心地よかったのと、妹役の木下菜穂子のひんやりとした空気感が印象に残った。

2017年2月13日月曜日

0212 烏丸ストロークロック×庭ヶ月「凪の砦」

宗教に救いを見いだせなくなった夫婦が始めたホスピスを舞台に、人の最後を考える。ホスピスで働く人たちも行き場をなくしたような人たち。家族とか地縁とか薄くなっている時代において、こういうコミュニティは一つの解なのだろうと思う。だからこそ、最期、自身で施設が崩壊してしまうというラストが不可解だった。

0210 宝塚宙組「王妃の館」「VIVA!FESTA!」

浅田次郎のおふざけ小説をどうやって宝塚にするのかと思ったが、それらしくまとまっていた。ビジュアルはなんだかなあという感じだけど。ルイ14世のくだりを劇中劇にしないで、亡霊となって現れるルイが現代のキャストと絡ませたのがよかった。ディアナやプティ・ルイのエピソードは回想シーンでコンパクトに。ドタバタコメディのドタバタぶりはそれほどでもなかったけれど、朝夏まなと、実咲凛音らが上手く笑いに持って行っていた。 レビューは祭りをテーマに。冒頭のリオのカーニバルが、前の星組と被っていたのがマイナス点。黒燕尾やムードあるデュエットダンスなど、レビューらしい出し物だった。

2017年2月6日月曜日

0205 世界

赤堀雅秋脚本・演出。千葉の鄙びた町工場を舞台にした人間模様がリアル。風間杜夫演じる、あらゆることに文句を言っている初老の男の存在感が際立つ。熟年離婚を切り出されるのもしょうがないよねという。スナックのママと浮気している息子とか、夫に愛想をつかした妻とか、よく描かれていると思った。広瀬アリスの初舞台だそうだが、一服の清涼剤のよう。彼女が風俗嬢を演じるだけで満足してしまう男性が多そうだ。 回り舞台で、工場一家の台所、スナック、役者志望の男の部屋、スーパーの控室がしつらえられる。上部にかかる歩道橋が効いている。

2017年2月5日日曜日

0204 ミュージカル「キャバレー」

長澤まさみの主演が話題だが、歌声もよく出ていたし、思っていたよりは達者だった。特に、2幕冒頭のソロはよく歌えていてびっくり。ただ、ナチスが台頭する不安な社会情勢を背景にした退廃的な雰囲気には程遠く、別の芝居を見ているよう。思うに、長澤まさみという女優は根っからの陽なのだ。裸電球のような曇りのない明るさというか。あまりにあっけらかんとしていて、それはそれで一つの個性だけれど、この芝居には合っていないと思う。 MCの石丸幹二は、歌えば聞きほれずにいられない声だし、サックスも披露しての活躍だけれど、残念ながらあの衣装は似合わない。 ミス・シュナイダーの秋山菜津子の存在感が圧巻。

0204 ミュージカル「フランケンシュタイン」

音楽も役者もよかったのに、観劇後感はモヤモヤ。何より、1部と2部の世界観が違いすぎて、あまりの突飛さに戸惑った。それぞれのシーンはよくできているのに、そこに至るまでの過程が省略されてしまっているので、ブツ切れの断片を並べられているような印象で、物語に入り込めなかった。 特に、アンリとビクターの友情をもっと深く描いて、怪物の怒りや恨み、復讐に至る過程を描写してくれたらもっと共感できたのに。1幕の終わりでビクターの罪をかぶって死刑に処せられるアンリがいきないり「愛してる」と言ってしまうところとか、唐突で。 タイトルロールはビクター・フランケンシュタイン(柿澤勇人)なのだが、アンリ・デュプレの小西遼生のほうが印象的だった。

2017年2月3日金曜日

0203 劇団太陽族「大阪レ・ミゼラブル」

音楽劇と銘打っただけあって、歌と踊りはだいぶ頑張ったなと思ったが、いかんせん本職ではない役者ばかりなので、決してうまくはなく素人っぽい。あえて下手さを狙っているのかもしれないけど。特に、船場仁(ジャン・バルジャン)を演じた森本研典の歌が辛かった。曲は悪くなさそうなので、歌唱力のある人に歌わせたらもっと心を揺さぶられたのかも。ホルモン屋のメニューを盛り込んだ歌詞など、作りこんでいるというのは分かるが、感動したり、思い切り笑ったりというところには至らなかった。 風刺やパロディとしては物足りない印象だ。冒頭シーンで、都構想が実現した大阪で、万博の建築現場で働かされる犯罪者というのが一番の皮肉で、後は原作をほぼ忠実に再現。一番笑いがあったのが、梢恵(コゼット)と真理生(マリウス)のべたな恋愛のやりとりだったというのは、物語の本質では笑いが効いていなかったという証では。

0202 二月花形歌舞伎 昼の部

壱太郎のご挨拶から。座組といい、浅草歌舞伎のようだ。 「義経千本桜 渡海屋・大物浦」 若々しくフレッシュな碇知盛。松也の銀平は柔らかすぎる印象だったが、知盛の正体を現してからは骨太な感じがでて悪くなかった。 壱太郎も女房お柳はまだ板についていないよう。典侍の局の姿は美しく、今まで見た中で一番似合っているかも。 種之助の相模五郎は弾むようで、いいか悪いかは別として元気で溌剌としている。右近の入江丹蔵は型どおりというか、リアリティが薄い。新悟の義経、歌昇の弁慶とも、丈に合わないような印象。花形だとはいえ…。 「三人形」 梅枝の若衆に種之助の奴、新悟の傾城。新悟は大柄なのがネックだ。ほっそりして立ち姿は美しくても、並んだ立ち役よりも頭一つ大きいのでは。表情が硬いというか冷たい感じなのも気になった。客につれなくあしらうという設定なのかもしれないが。