2017年1月29日日曜日
0122 PM/飛ぶ教室「足場のゴースト」
工事現場から転落死したおじいを桂雀三郎。飄々とした雰囲気はこの人ならではだが、たまに素になっているように見えたのが気になった。物語に入り込むのに水をさされるようで。役に没頭しないのは落語家ならではなのかもしれないけど。
再再演だけあって、こなれた様子。どもりの野呂が達者で時折うっとおしいほどだった。突然の親しい人の死をどうやって受け入れていくのか。観劇の余韻は心地いいものだった。
0128 第27期文楽研修終了発表会
「万才」
太夫の田中碩人が、並んだ咲寿や亘に引けをとらない堂々とした語りぶり。
人形は吉田陸夫がキビキビとしたいい動き。東寛二は足がそろわなかったり、向きがずれてしまったりとちょっと見劣りする。上を見るくせがあるらしく、主遣いとの距離が離れすぎているせいではないか。
素浄瑠璃「一谷嫩軍記」熊谷桜の段
堂々とした風情はいいが、言葉の頭のアタックが強すぎるきらいが。変な癖がつかないといいのだが。
「本朝二十四孝」
吉田が白須賀六郎、東が原小文治の主遣いだったのだが、出番が短すぎてあまり印象に残らなかった。
0122 民俗芸能公演 淡路人形芝居
「賤ヶ嶽七本槍」
清光尼庵室の段
太夫の友里希、小柄な女性ながら低い声も頑張って、複雑な節回しで聞かせていたが、声量がこの会場には足りない。三味線に掻き消されがちなのが惜しい。続く友和嘉・友吉は手堅く、切りの友庄・友勇は流石の貫禄あり。
深雪たちが遠眼鏡で合戦の様子を見るところ、柴田勝久とその敵の人形が客席後方から登場、通路半ばまで出てきて立ち回り。一人遣いで複雑な動きはないけど客席は湧く。
蘭の方の身代わりに深雪の首を打つとき、人形が仰向けに倒れて前方に首が落ちるのはいかがなものか。文楽でも同じようだけど、どうせ船底に隠れて捌けるのだから、俯せに倒れる方が自然では。
深雪を還俗させて婿を取らせる話はどうなったのか。それと久吉、実子をあっさり殺しすぎ。ちょつとは苦悩しろよ…。
真柴久吉帰国行列の段
メリヤスに乗って、総勢30~40人が次々と。お猿が馬の背によじ登ったり、長い棒の先端に房飾りがついたものを投げて交換するなど見所もあり。
七勇士勢揃の段
馬に乗った七勇士が横一列に並ぶのは壮観。3人遣い+馬1人×7で28人かと思ったら、久吉もいるから32人が舞台に出ているのだ。加藤正清と山路将監、佐久間玄蕃の立ち回りなど、戦闘シーンが面白い。小さい人形で遠見にしたり、梨割や首が外れたり。
太夫、三味線はそれぞれ2人。掛け合いというより、久吉方と敵方で分担してる感じ。友庄が出のタイミングを間違えたか、友和嘉のところを語りそうになったような。
0122 古今亭文菊独演会
前座は柳家小多け「手紙無筆」。テンポも間もまだまだで完成度は低いのだが、所々クスクス笑いが起きていた。とぼけたセリフがおかしいのか。
文菊は「初天神」と「うどんや」。季節らしい2席。
「初天神」はマクラで子役の話から始まって、こまっしゃくれた子どもへと自然な流れ。金坊がうっとおしいの一歩手前の可愛さ。おとっつあんはその辺にいそうなリアル感。お腹ん中へ落っこちたで落とさず、団子屋の蜜壷につけるまで。おとっつぁんが飴を取った指輪を舐ったり、団子の蜜を啜ったりするのをたっぷり見せた。
「うどんや」落ちを聞くまでなんの話か分からず、落ちて「かぜうどん」かと思ったら、江戸落語では名前が違うのね。酔っ払いとのやり取りがくど過ぎず、引き込まれた。
0121 寿初春大歌舞伎 昼の部
「将軍江戸を去る」
門前での押し問答、歌昇や種之助の衣装が身体に合ってなくて借り物のよう。
山岡鉄太郎の愛之助は声がやや辛そうだが、この座組のなかでは聞かせるほうか。いつもより朗々とした響きはなかったが、話の内容が一番伝わった。これまで観た鉄太郎はどれもわあわあ騒ぐばっかりで、何を言っているのかさっぱりだったが、初めて理解できた。
伊勢守は又五郎。貫禄があって説得力があるのだが、伊勢守の長台詞のところで真後ろの席のご婦人が奇声を発して具合が悪くなったらしく、何やらごそごそしていて舞台に集中できなかった。
染五郎の慶喜は慣れた感じ。台詞を歌ってた。
「大津絵道成寺」
愛之助が五役を早替わり。すっぽんから登場した藤娘が予想外に綺麗だった。時折、玉三郎ににて見えてびっくり。目線のやり方が色っぽかったのと、笠の紐で輪郭が細く見えたせいかも。踊りはしなやかさが増していて、それらしくなっていた。早替わりは、常磐津の見台から登場したり、黒御簾に飛び込んで捌けたりと工夫して楽しませたが、壁がスムースに回らなかったり、引き抜く前に着物の前身頃がはだけていたり、昆布巻きでもたついたりと色々課題あり。大歌舞伎と銘打ってるからにはもっと洗練されたものを観たい。
「沼津」
何より歌六の平作が良かった。年齢が相応になったせいもあろうが、重いはずの荷物が軽そうだったほかは、これまで観たどの平作よりもそれらしかった。惜しむらくは吉右衛門の十兵衛があまりキリリとした二枚目に見えないことか。清々しさが感じられないのだよ。お米を見初めるところなんかも、好色そうで。
お米は雀右衛門。しっとりと美しく、ただの村娘でない、吉原の過去を感じさせる色気があった。
2017年1月15日日曜日
0114 新国立劇場バレエ団「シンデレラ」
初めて生で見たが、ダンサーのレベルが高いという評判に納得。メーンキャストはもちろん、コールドも安定感があった。
シンデレラの小野絢子はテクニックがしっかりしていて危なげがない。繊細というか、華奢というのではないけれど、可憐な少女らしい風情。姉たちが男性ダンサーで背が高かったのでそう感じたのかもしれないけど。王子の福岡雄大、道化の福田圭吾も目を惹く踊り。
1幕の最後でシンデレラの乗った馬車が舞台をさーっと回るのだけれど、もっとゆっくりシンデレラの姿を見せてほしい。父親というのは初めて観たかも。姉たちは継母の連れ子と思っていたけれど、異母姉?2幕の最後は、魔法が解けて普段の姿に戻ってから逃げていく。
0114 点の階「・・・」
ときおりハッとするようなセリフがあるのだけれど、レトリックをひけらかしているよう。小説として書かれたことが指南書として読まれるって、文章では簡単だけど、実際にはありえないでしょという思いをぬぐえない。窓の外を見る女の挙動不審ぶりが度を越えていて、ずっと違和感。ラストにその理由は明かされるのだが、いきなりSFになってしまうのは突飛に感じた。点転棋士という男の演技も舞台の調和を乱していたように思った。そういう役どころなのかもしれないけど、急に音声のボリュームが変わってしまったような不快感があった。亡くなった師匠の意図が分からなかったのも消化不良な感じ。白い靴下の男の三田村啓示がとぼけた風情で空気を緩和してくれた。
2017年1月11日水曜日
0110 宝塚月組「グランドホテル」「カルーセル輪舞曲」
「グランドホテル」
珠城りょうの大劇場お披露目。体格がよく胸板が厚いのでスーツがよく似合い、男爵役がはまる。歌や踊りには拙さも残るが、トップらしい風格が出てきたのでは。感心したのはリフトの安定感。ラスト近く、銃殺された男爵とエリザベタのパドトゥで肩から胸に高さを変えての長いリフトが男性ダンサーのような力強さ。愛希れいかはエリザベタにしては若すぎるきらいはあるが、芸達者ぶりを発揮して高慢なプリマらしさを現していた。バレエはちょっと残念だったか。手の表現は綺麗なのだが、脚の形がバレエダンサーぽくないんだよね。オットーの美弥るりかが主役を食う熱演だった。
「カルーセル輪舞曲」
レビュー90周年記念で、「モン・パリ」へのオマージュなのかな。パリから宝塚への世界旅行…なのだが、パリからNY、南米へ行った後、太平洋を渡って日本に来るのではなくなぜか砂漠?
冒頭の回転木馬をイメージした白いきらびやかな群舞や、色とりどりのサンバの衣装など、ひたすらキラキラして華やか。
2017年1月9日月曜日
0108 京都観世会一月例会〈其の一〉
「翁」
面箱を掲げて最初に登場した井口竜也がのっけから手足を震わせていてハラハラした。そんなに重いの?
翁は井上裕久、千歳は大江広祐。囃子方も皆長袴姿で、格調高いというのか厳粛な感じ。
三番三の千五郎は、自身の襲名の時よりは肩の力が抜けた感じで、見やすかった。
「老松」
松の精が出てきて舞うだけでなんでこんなに長いのか。
「三本柱」
千作の果報者は朗らかで見ていて楽しくなる。3本の柱を3人で、1人が2本ずつ担いでこいという謎かけのような話。
仕舞は梅田邦久が休演?で鶴亀は上演なし。
大江又三郎の東北。
「熊野」
熊野の観世清和、帰郷を許されて橋かがりを引っ込むところで表情が明るくなったように見えた。ただ、これもよく分からん話だ。帰郷を許してやるなら最初からそうしろよと言いたくなる。
仕舞は杉浦豊彦の田村、林喜右衛門の羽衣、片山九郎右衛門の野守。野守は扇を2枚持って凛々しく舞うのが面白かった。
「乱」
時間切れで途中で出てしまったので、肝心の猩々乱を見られず。
2017年1月7日土曜日
0107 OSK日本歌劇団「高山右近伝」
高槻城主、高山右近の福者認定記念の公演。
こんな人がいたのを知らなかったので、へえとは思ったが、脚本のせいかこの人が高槻のために何をしたのかが今一つピンとこない。
問題の多い領主、和田惟長に暗殺されそうになったのを返り討ちにした際、首を半分切るほどの重症を負って生還したというのがクライマックスか(嘘みたいだけど後で調べたら史実らしい)。この惟長が領民にとってひどい領主だったというのなら、地域を救った英雄ということにもなるのだろうが、ただ己の身を守っただけ?キリシタンとしての功績もよくわからないし。
高山右近の香月蓮は立ち姿は凛々しくていいが、歌が今一つ。妻の和紗くるみも同様。
右近の父、友照の緋波亜紀はさすがの安定感だった。
最後、洋装でアイネクライネナハトムジークをアレンジした曲に乗ってダンスのシーンが違和感。和装で通すほうがいいんじゃないのかな。
0107 初春文楽公演 第2部
「染模様妹背門松」
油店の段
中を咲甫・清友、切を咲・燕三。
お得意のチャリ場は「私失敗しないので」「アイ・ハブ・ア・ペン」「君の名は」など流行語満載。咲はちょっと声に力がなかったか。わざと力を抜いて語っていたのかもしれないが。
番頭善六の勘十郎が楽しそう。
生玉の段
芳穂・団吾にツレで小住・錦吾。
芳穂のお染が可憐。
質店の段
千歳・富助。先月の九段目に続いて好演が光った。なんか文句の付けようがない感じ。久作の情愛が泣かせる。
冒頭の祭文売りの陰声は靖か。
蔵前の段
掛け合いで、松香、三輪、希、津国、南都に喜一郎、ツレ燕二郎。
とってつけたような配役だ。
全体を通して、お染・久松には全く同情できない。清兵衛が嫌な奴ならまだしも、2人の関係を知った上ですべて飲み込んで助けてくれるわけだし。何より、質店の段の最後で、久松を田舎に連れ帰るのは正月になってからでいいでしょと言ってしまう母お勝!久作がいろいろ心配して、早く2人を引き離さないとと言っているのにすべてがおじゃんになってしまうじゃないの~とモヤモヤした。
0107 初春文楽公演 第1部
「寿式三番叟」
正面の舞台後方に9人の三味線と太夫が並ぶのは圧巻だが、客席に届く音が弱く感じた。音が天井に抜けてしまうのだろうか。
シンが清治だったせいか、三味線はテンポよく聞かせた。翁を呂勢、千歳を始、三番叟を睦と芳穂と、嶋太夫門下で固めていたのが感慨深い。
人形は和生の翁が格調高く。一輔、玉佳の三番叟は三枚目のほうを一輔、二枚目のほうを玉佳と本人のニンとは逆で、それも面白かった。
「欧州安達原 環の宮明御殿の段」
中を靖・錦糸。ますます安定感が増してきたよう。頼もしい語りだ。
次は咲甫・藤蔵。うなる三味線に語りもよく応えている。
前を英・清介。袖萩祭文など見せ場の多い場で、娘お君の健気さなど聞かせたが、やはり声が小さいのがつらい。
後は文字久・団七。時代がかった武士が活躍する場面ははまる。力強く頼もしい語り。
「本朝廿四孝」
十種香の段
津駒と休演の寛治に代わって清志郎。大役の重圧かやや硬かったように感じた。慎重な撥運びというか。
人形は八重垣姫を初役で勘十郎。人形からにじみ出るような感情はやはりまだ簑助には及ばないか。出の後ろ姿の印象が薄いし、恋に突っ走るところもかわいらしくはあるのだが、姫の気品に欠けるのか町娘のような気安さ。簑助が遣った腰元濡衣はしっとりとした色気。勝頼の和生は感情を抑えた様子がよい。
奥庭狐火の段
呂勢・宗助。八重垣姫のほとばしる思いを切々と。期待通りだが、それ以上を期待したくなる。宗助の三味線は的確。螺鈿の見台が豪華絢爛。
勘十郎もこちらは慣れたもの。最後は3人出遣いで左は一輔、足は勘次郎。狐の人形も和馬、玉延、玉路、玉彦が出遣いで。
15日に再見。三番叟の三味線は攻める度合いが増していたよう。清公病気休演で寛太郎が加わる。
9人がそろって語るところでも呂勢の声が一つ前に出ているように感じた。
2017年1月4日水曜日
0103 壽初春大歌舞伎 夜の部
「鶴亀」
鶴と亀に扮したおめでたい踊り。藤十郎の女帝はミニマムな動きに磨きがかかっている。
「口上」
藤十郎の披露は恒例となった読み上げスタイルだったが、歌之助を「歌右衛門」と言いかける間違いにハラハラ。
我當が痛々しい。新芝翫は気持ちの入った口上だった。
「勧進帳」
仁左衛門の富樫は颯爽として期待通り。だが、山伏問答が期待ほど盛り上がらなかったのは、芝翫の弁慶がゆったりしすぎているせいか。13日に再見。山伏問答は緊迫感が増していたが、期待値にはまだ足りない気がする。
「雁のたより」
鴈治郎の三二五郎七は柔らかいはんなりした雰囲気はいいのだが、二枚目には見えない。
0103 壽初春大歌舞伎 昼の部
「吉例寿曽我」
雪の対面という、雪景色が季節にあう。工藤祐経かと思ったら奥方梛の葉というパロディ。曽我兄弟は一万、箱王という名で、歌之助、福之助の兄弟が逆転しているのだが、歌之助は兄には見えないよなあ。それになんだか子供歌舞伎みたいだ。腰元に芝のぶや千寿、りき弥ら綺麗どころがそろって目に楽しい。梛の葉の秀太郎がきりっとした奥方で舞台を引き締めた。
「梶原平三誉石切」
新芝翫の襲名狂言で、石切梶原をやりたかったんだそうだ。
東蔵の六郎太夫が情があっていい風情。児太郎の梢はかわいらしいのだが、花道を引っ込むところがなぜか艶っぽく見えた。
剣菱呑助の弥十郎が酒の銘柄を掛けて襲名を盛り込んだセリフで沸かせた。
「恋飛脚大和往来 新口村」
仁左衛門、忠兵衛より孫右衛門のほうがしっくりくると思ってしまったことがショックだ。
2017年1月2日月曜日
0102 米朝一門会
小鯛「やかん」
吉弥「犬の目」
南光「阿弥陀池」
テンポよく落ちまで疾走するよう。
塩鯛「一人酒盛」
にぎやかな落語だ。
文之助「マキシム・ド・ゼンザイ」
高級店をちゃかした様子が面白いが、ちょっとうっとおし。
ざこば「一門笛」
ざこばお得意の人情話。上手いのだが、子ども井戸に身を投げるくだりが後味が悪い。
0102 天空狂言2017
「舞初式」
一門が勢ぞろいで厳かに。千五郎が当主になって初めてで、当主らしさが出てきたか。
「節分」
童司の鬼がなんだかかわいい。
「合柿」
柿売をあきら。渋そうな顔がたまらん。
1231 ミュージカル「ミス・サイゴン」
ダイアモンド☆ユカイのエンジニアに期待していたのだが、遠慮しているのか演技が小さく感じた。彼のキャラにはあっているし、もっと魅力的にできそうなのに。
キム(キム・スハ)やクリス(小野田龍之介)ら主要キャストは歌が上手いのだが、今一つ心に響かないのはなぜだろう。クリスがややぽっちゃりだったのも、説得力がない所以かも。子役が可愛かった。冒頭、ビキニ姿で煽情的に踊る女たちにびっくり。20年ほど前にロンドンで見たときは、こんなシーンはなかったと思うのだが。
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