2016年3月27日日曜日

0325 ミュージカル「ジキル&ハイド」

冒頭から病院での審査の場面までは盛り上がりがなくダレたが、石丸幹二のソロあたりからは聞きほれた。歌が上手いのはもちろん、声が素晴らしい。ジキル博士の紳士ぶりと、ハイドになってからの野性味。ジキルの邪魔をした人々を殺害するのは、ジキルの隠れた本性とも見える。 ルーシーの濱田めぐみ、エマの笹本玲奈も対照的な2人で、ともに歌が達者。と カーテンコールの2回目くらいから客席総立ちで(私はそこまでではなかったが)観客の満足度は高かったよう。石丸もガッツポーズをしたり、最後、客席に投げキッスをしたりするサービスも。 侯爵夫人役の塩田朋子、出てきた時から貴婦人の格好なのに身分が低そうな立ち居振る舞いに違和感があって、役作りなのか何なのか考えてしまった。

2016年3月25日金曜日

0324 MONO「裸に勾玉」

弥生時代の言葉をモデルにしたという、濁音のない独特のセリフ回しに戸惑うが10分もすると慣れてきた。 嫉妬などの漢語や英語など、普段何気なく使っている言葉が通じないのを笑いにするなど、セリフのやり取りが面白い。 主人公の妻や上司、三兄弟の三男など、うまく立ち回って周囲に適合してしまう人々と、愚直に心の良心に従う人たち。 後者でいたいとは思うけれど、いざとなったら自分はどちらになるのだろうと考えさせられた。 三男の妻だが、後に主人公らと行動を共にする踊り子の存在が印象的だった。

2016年3月22日火曜日

0320 文楽 京都公演Bプロ

「絵本太功記」 夕顔棚の段は睦大夫と錦糸。同じ時代物だが、2月公演ほどの迫力は感じられず残念。 尼崎の段の前を文字久大夫と清志郎、後を津駒大夫と宗助。 津駒大夫はたまにセリフにはっとするものの、全体としては気持ちが盛り上がらないのはなぜだろう。 「日高川入相花王」 靖大夫の清姫に南都大夫の安珍、咲寿大夫のツレ、三味線は清馗、清丈、清允。 靖大夫の清姫がかわいらしい。

2016年3月19日土曜日

0319 宝塚月組 「激情―ホセとカルメン―」「Apasionado!!Ⅲ」

珠城りょうが主役のドン・ホセを演じ、事実上のトップお披露目。客席の拍手がいつもより大きく熱かった。背が高く見栄えがするが、運命の恋に翻弄される男にしては淡々としているか。後のショーのほうが堂々とした風格を感じさせた。両方ともスペインが題材で代り映えがしないのは、観ていて飽きる。 カルメンの愛希れいかは男を堕落させる魔性の女という設定が前回の「マノン」と似ていて、これも代り映えせず。カルメンの強烈な押しの強さが足りないのか、ベトナム人のほうが似合っているように思った。

0318 野田地図「逆鱗」

水族館が舞台で、水槽のアクリル板のような装置の屈折率の不思議で背景が歪んで見える。泳ぐように舞台上を移動する演出など、水中を感じさせる。人魚をめぐる騒動から、いつの間にか太平洋戦争末期の人間魚雷の話になる。こんなにストレートに戦争を扱ったことに驚いた。 松たか子、阿部サダヲ、瑛太、井上真央といった実力のある役者の個性がぶつかりあい、緊張感のある舞台だった。

0318 宝塚月組「こうもり」「THE ENTERTAINER!」

「こうもり博士の愉快な復讐劇」という副題にあるように、オペレッタ「こうもり」を宝塚風にアレンジし、こうもり博士ことファルケが主人公に。 ヨハン・シュトラウスの曲素晴らしいのはもちろんだが、トップの北翔海莉の確かな歌唱力が聞かせる。ポスターで見るとこの楽しさが伝わらないのがつくづく惜しい。確かな芸に裏打ちされた上質なエンターテインメントで、1時間半ほどの舞台を飽きさせることなく満足感が高い。 アイゼンシュタイン侯爵家の侍女アデーレの妃海風も、北翔ほどではないにせよ歌が達者。アイゼンシュタイン侯爵の紅ゆずるはクールなルックスよりもコミカルな演技に魅力を感じた。 ショーの「THE ENTERTAINER」は北翔が芸達者ぶりを遺憾なく発揮し、タップダンスあり、ピアノの弾き語りありと盛りだくさん。2番手以下の人たちもそれぞれ見せ場があって。

0317 工藤俊作プロデュースプロジェクトKUTO-10「骨から星へ」

仕事や人生に疲れた中年男2人が駅のベンチに座っている。「電車に乗ることは不自然だ」という話からぽつりぽつりと過去が明らかになっていく。 離婚した妻が引き取った思春期の娘と話したいといっても、会話がすべて元妻にさえぎられる様などはリアルな感じ。 望めば電車は来る、疲れたら乗らなくてもいいというのは、なんだか当たり前すぎてあまり共感できなかった。 認知症の高齢男性と、若いころの恋人の話が素敵だった。

2016年3月17日木曜日

0313 松本雄吉×林慎一郎「PORTAL」

奥に向かって傾斜になった舞台は直線を組み合わせ、独特のリズムが異空間を感じさせる。 陣取りゲームと地図製作を重ね、次々と場面が入れ替わる。折々で入る志人によるラップ調の語りがアクセントになっている。 不思議な感覚にたゆたう90分は心地よかった。

2016年3月12日土曜日

0311 談ス

大植真太郎、森山未來、平原慎太郎によるパフォーマンス。ダンサーの高い身体能力を遺憾なく発揮し、感嘆している間に1時間あまりが過ぎていた。特にストーリーはなく、男子がじゃれ合っている感じで楽しそう。

2016年3月11日金曜日

0310 清流劇場「賢者ナータン」

人物関係が複雑なのだが、パンフレットの相関図が助けになった。アラブ服のような白地のだぼっとした衣装に、宗教ごとにマークが描かれ、顔は丸い白塗りに女性のみ頬紅と口紅を施す。3つの宗教が交錯し、主人公のナータンを女優の林英世が演じるなど、役と役者の性別がバラバラで、誰が誰だか分からなくなりそうなところ、衣装とメイクの工夫のおかげでよく分かった。 物語の舞台は12世紀のイスラエルだが、舞台の後ろには現在のパレスチナらしき風景が映し出され、今と共通する問題であることが示される。ドイツ人の作者がキリスト教徒を最も独善的で融通の利かない存在として描いているのが興味深い。 宗教の対立を寛容さで乗り越える。宗教のまえに一人の人間であり、そのことによって許し合えるでは。生まれによって決められる宗教が実はあやふやなものだということが分かるラスト。けれど、レヒャと神殿騎士は恋仲になったのに、兄妹と分かってがっかりしないのか。 ナータン役の林英世は膨大なセリフをこなして、説得力のある語り。レヒャの泉希衣子は純真な少女の風情を出して好感が持てた。 初日だったためか、台詞を噛むところが散見されたのが惜しい。

0306 伊藤えん魔プロデュース 「兄貴歌/アニソン!」

昭和のアニメキャラが中年になり、人気がなくなり腐っている。ルパン三世と次元、バカボンのパパ、ドラえもんという顔ぶれがシュールだ。 おそ松さんとして再ブレークしたおそ松くんが勝ち組なのはまだしも、オスカルとバンコランが人気者の代表として登場するのは不思議だ。 新旧のアニメソングが満載で、ライブとして楽しかった。

0305 地点「スポーツ劇」

舞台は大きな人工芝の坂になっていて、前方にネットが張られている。テニスコートのような雰囲気。 役者は坂を駆け上っては滑り落ちたり、反復横飛びをしながら台詞をしゃべったりと、運動量が半端ない。役者たちは大変だろうなあと感心。 音節の途中で区切る話し方はリズムとしては面白いが、中身がまるで頭に入らない。「パッパー」と「マッマー」という叫びだけが耳に残る。 2時間の長舞台はしんどかった。

0305 ダヴィデ・ヴォンパク「渇望」

カニバリズムがテーマだそうだが、のっけから出てきたダンサーが唾を垂らしたり、飛ばしたりするのに嫌悪感。 女性の胸や男性器、尻を出したり、肉弾戦を繰り広げたり………。 壁の後ろで見ている男女。はじめは頭だけだが、次第に姿を現したかと思うと、また消える。場面が変わると今度は尻だけを出している。よく分からん。

0304 Dolly & Rolly LIVE OSAKA ~とにかく夢で逢いまSHOW~

キムラ緑子が歌手ドリーに扮する、芝居仕立てのライブ。ミュージカルナンバーやジャズ、ロック、昭和歌謡など多彩な歌を表現力豊かに歌う。歌が上手いのは無論だが、歌によって別人のように色を変えられるのは役者の本領なのだろう。 共演のローリー。ギター上手いなあ。魅せる。

0229 ETERNAL CHIKAMATSU

「心中天網島」を題材に、現代と江戸時代の芝居の世界が交錯する。美しい舞台だった。 冒頭、ニューヨークの街並みや、リーマン破たんの映像が流れ、金融恐慌でハルの人生が転落したことを示す。 舞台は現代大阪の歓楽街。売春婦ハルを演じる深津絵里がすごみのある演技。借金を返すために身体を売るのだが、したたかさと繊細さが見え隠れする。 恋愛関係にある妻子持ちの男、ジロウを中島歩。軽薄そうで、なぜハルがこんな男に入れあげるのか分からない。が、治平衛も頼りない男なので、その現代版と思えばこんなものか。 ジロウの兄に手切れ金を渡され、自暴自棄になってさすらううちにハルは蜆川で七之助演じる小春と出会う。2人並ぶと、七之助でかっと思ったが、だんだん違和感は薄らいだ。それより、アイメイクが現代風というか、私にはピエロのように見えて、最後までしっくりこなかった。 現代劇の俳優たちのなかで、七之助ひとりが歌舞伎調で、せりふ回しもゆっくりなのだが、不思議とかみ合って面白い。 江戸時代から何度も何度も心中を繰り返す小春と治平衛。見せしめのため晒しものにされ、心中は決して美しくはない。ハルは2人を止めるのだが、これは現代の価値観だろう。最後、心中を止められた小春が傘の陰に引っ込んだ一瞬ののち、七之助が白シャツにチノパンの男装に早変わりし、自殺したハルの旦那となって現れる。衣装はともかく、一瞬でメイクを落としていたのにびっくり。本水の中を歩きだすハル。悲劇で終わらず、希望を感じさせるラストだった。

0227 藤間勘十郎 春秋座花形舞踊公演

勘十郎が7番すべてに出演する活躍ぶり。 猿之助との「種蒔三番叟」は踊り上手の2人が楽しそうで、見ている方も面白い。あの身体つきなのに、女形の踊りがちゃんと女に見えるのがすごい。 「蜘蛛の拍子舞」は蜘蛛の糸をこれでもか、というくらいに投げていて、それが綺麗に広がっていた。 「二人椀久」は中村壱太郎の松山太夫と。素踊りなのに、歌舞伎で見た椀久よりも楽しめた。 踊りだけで2部通しはしんどいかと思ったが、飽きずに観られた。勘十郎の踊りは雄弁で、見物に伝わるものが多いからだと思う。

0226 青年王者館「思い出し未来」

映像の巻き戻しを見ているかのようにリピートする舞台。未来なのか過去なのか混然としてくる。照明や映像も洗練されていて視覚的にも面白い。フォーメーションのようなダンスもクオリティが高かった。

2016年3月10日木曜日

2月22日 文楽二月公演 第三部

「義経千本桜」 渡海屋の段 途中からだったが、靖大夫が立派で驚く。声がビンと前に出ていた。 睦大夫は錦糸と。三味線が尻をたたくというか、盛り立てて力を引き出したようで、今までとは違う語りを聞かせてもらったように感じた。 最後は千歳大夫と富助。安定感があるよなあ。知盛が迫力なのはもちろん、安徳天皇の幼さのなかに威厳を感じさせる様もよかった。三味線も力強く。 人形の知盛が碇とともに後ろに倒れ落ちるのは勘十郎の新趣向だそう。歌舞伎だと役者が後ろ向きに飛び込むところ、人形を放るようにくるり。 道行初音旅 津駒大夫、芳穂大夫ほか。 人形の忠信実は狐を勘弥。最初の狐はやや動きがぎこちなく、勘十郎のリアルさに及ばないと思ったが、早変わりの鮮やかさや、忠信のキレのある動き、美しい仕草には魅せられた。

2月22日 文楽二月公演 第二部

「桜鍔恨鮫鞘」 中の松香大夫と喜一郎、前の呂勢大夫と清治、切りは咲大夫と燕三。 前回の大阪公演がよくって期待値が高まりすぎていたのか、それほどとは思えず…。呂勢大夫は後半はまだしも、前半が今ひとつに感じた。 「関取千両幟」 呂勢大夫の口上は落ち着いた様子。大阪の千秋楽は気が急くのかやたら早口だったけど。「辛いけど大好きと申された浄瑠璃を文楽の床で語るのは本日が最後、心中いかばかりか…」という言葉に目頭が熱くなった。 嶋大夫の語りは全く衰えた様子がなく、つやのあるお声。もう聞かれないのかと思うとつくづく名残惜しい。まだ全然聞き足りないと思う。 終演後、舞台上で寛治、簑助から花束贈呈。寛治とは握手もしていた(大阪ではなかったような…)けど、寛治が手をほどこうとしてもなお嶋大夫はしっかりと握っていたように見えた。簑助はおとわの人形で涙をぬぐったり、嶋大夫に抱きついたりとサービス満点。会場が温まった。 そういえば、おとわの着物が縞でなく、黄色地の格子模様?になっていたのはなぜだろう。

2月22日 文楽二月公演 第一部

「靭猿」 三輪大夫の猿曳に始大夫の大名、南都大夫の太郎冠者。始大夫は立派な声で大名らしい。 先月、狂言で見たばかりだが、子猿の健気さや愛らしさは人間の子役のほうが勝っている気がする。 「信州川中島合戦」 輝虎配膳の段は口が希大夫と清馗、奥が咲甫大夫と清介に琴の清公。 越路が膳を蹴り倒すところ、うまく引っ繰り返らず、介錯が処理したのが惜しい。 お勝が琴を弾きながら訴える場面で、輝虎と直江、越路と唐衣がそれぞれ揉み合っていて、全然話を聞いてる風でないのが変な感じ。 直江屋敷の段は文字久大夫と藤蔵。 藤蔵と組んでからの最近の文字久はすごくいい気がする。攻める三味線がいい具合に盛り立てているよう。時代物があっているのもあるが、お勝のどもりが上手くて、誤解を解こうと必死な様子が胸を打った。

2月21日 二月大歌舞伎

「ひらかな盛衰記」 梶原平次景高の錦之助が休演で又五郎が代役。文武に秀でた兄、梶原源太景季(梅玉)をやっかむ弟には二枚目の錦之助よりも合っているかも。 腰元に千寿やりき弥ら綺麗どころが揃い、孝太郎は分が悪い。…と思ったら、最後、梅玉と並んだところは美しかった。 秀太郎の母延寿が厳しさの中に状を見せてよかった。 「籠釣瓶花街酔醒」 菊之助の八ツ橋が期待を上回る美しさ。見染めの微笑みはうっとりと恍惚の表情を浮かべ、観客も息を呑んで見惚れた。 吉太郎の次郎左衛門の惚けた表情も過不足なく。ただ、一場の最後、「宿に帰るのが嫌になった」の台詞に「気持ちは分かる」と大向こうがかかり、うんざり。やたら「二代目」と言っていた人もいたなあ。襲名披露でもあるまいに。 菊五郎の栄之丞はややくたびれた感じで色男に見えず。菊之助と並ぶと年の差が歴然で、この2人親子なんだなと現実に引き戻されてしまう。 愛想尽かしでは、八ツ橋の苦悩が感じられ、引き込まれた。九重の梅枝は年齢以上の貫禄が出ていた。 最終場の惨殺も狂気と美しさがあり、見応え充分。堪能した。 「浜松風恋歌」 海女小ふじの時蔵と船頭此兵衛の松緑。

2月20日 システィーナ歌舞伎「美女と野獣」

愛之助の野獣に壱太郎の美女という役どころからの期待を裏切らず、おおむね楽しめた。話の運びがやや冗長い感じられるところもあったが、愛之助、壱太郎、吉弥それぞれに見せ場があるのも嬉しい。 壱太郎が女形の声で歌ったのはシスティーナならでは。野獣の愛之助がバルコニーで歌いだすと客席からは失笑が漏れたが、まあお約束のようなもの。 美寿々姫の真実の愛で野獣が人に戻るクライマックスは舞台上での早変わりで見たかった。野獣が洋装だったのも疑問だ。

0219 青年団「冒険王」

バックパッカーの生態てこんな風なんだーというのはよく分かるが、で?イスタンブールのドミトリーのある日を切り取ったらこうだろうという以上のものが感じられず。初演時はもっと伝わるものがあったのかもしれないが、時代が変わった今となってはピンと来ない。「新・冒険王」とセットで見たら違ったのかも。

0219 ピッコロ劇団「天空の恋~谷崎と猫と三人の女~」

谷崎潤一郎が主人公のようで、3人の妻を軸に物語が進む。あまり知られていなかった谷崎の人物像が明かされ興味深い一方、説明的で情報過多にも感じた。 前半はややテンポが悪かったが、最後の妻、松子役の島田歌穂が出てきてから雰囲気が一変。それまでパッとしなかった谷崎(春蝶)も魅力的に見えたし、何より2人のやり取りが微笑ましい。

0218 劇団犯罪友の会「白蓮の針」

幕末から明治期の女商人の一代記。大河ドラマのようなスケールの大きな話が、ほぼ一人芝居で繰り広げられる驚き。セットはほとんどなしなのに、川や原っぱの情景が目に浮かんだ。若いころと年取った主人公を、メークや鬘を変えるのでなく、演じ分けた中田彩葉の表現力に脱帽。