奥村のマクベスは線の細さが武将らしくはないのだが、繊細で、夫人の言うがままに動かされてしまう弱さがあった。ダンカン王殺害に逡巡し、夫人に焚き付けられて事に及ぶまでの心理描写がくっきり。バンクォー乃亡霊に怯える様、夫人の亡骸を抱き抱えて嘆くパドドゥ、最後の闘いに向かう悲壮感。どれも濃密で、息を呑むほど。
小野のマクベス夫人は妖艶。振り切った演技でマクベスをリードする欲望の強さを描いた。夢遊病の場面が唐突に思えたが、アフタートークによると、その前の寝室の場面で、マクベスを叱咤激励しつつも、一人のときには弱さを垣間見せたと聞いて納得。死んだあとのパドドゥはぐったりとしていながら、美しさを保っているのが圧巻だった。
衣装もとても素晴らしいのだが、男性ダンサーの靴が黒のバレエシューズだったのが気になった。コスチュームのなかでそこだけ普段のレッスンみたいで。
《アフタートーク》
奥村 やっと終わったという開放感と寂しさ。1つの感情だけでなく、複雑に絡み合う。野心だじゃない、たくさんの感情がミックスして、普段生きている時のような感情。人間らしい役でやりがいがあった。生きていればでてくる感情を全て使うというか、とてもエネルギーのいる役で1回終わるとぐったりしてしまった。
小野 どの役も新たな挑戦。血に興奮する役は初めてだが、特別ではない。自分とかけ離れた役は逆にやりやすい。楽しかった。
奥 タケットのイメージを見つけていく感じ。見本がないので、自分たちが出したものがそのまま振り付けになる。緊張感があり、これでいいのかという不安も。
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