2023年5月28日日曜日

5月28日 第13回ストラディバリウス サミット・コンサート

 ヴァイオリン7、ヴィオラ2、チェロ2、コントラバス1にチェンバロという構成で、うち11挺がストラディバリウスという。奏者は全てベルリン・フィルより。

モーツアルトの「ディベルティメント ニ長調」に始まり、バッハの「2つのヴァイオリンのための協奏曲 ニ短調」、ヴィヴァルディの「2つのチェロのための協奏曲 ト短調」、休憩を挟んでヴィヴァルディの「四季」。

フルオーケストラでなく、弦楽器のみのためか、全体的にテンポが速く、軽い感じで、ジャズのセッションのような雰囲気も。圧巻だったのはチェロ協奏曲で、掛け合いのようなスリリングな演奏がとてもセクシーと感じた。

ヴァイオリン協奏曲や四季では、ヴァイオリニストそれぞれがソロを担う見せ場があったのだが、ヴィオラは終始サポート役でちょっと不憫。

2023年5月26日金曜日

5月26日 能狂言「鬼滅の刃」

再演でなく追加公演なのだそう。
昨年の大阪公演が良かったのでもう一度観たいと思ったのだが、初見時の興奮はなく、随分あっさりした印象で時間も短く感じた。 よくまとまっているし、能狂言の面白さも分かるし、決して悪くはないのだが。度重なる再演で演者側の緊張感が緩んだのか、内容の薄さか。

開演前に裕一、裕基、太一郎のアナウンス。「花金にようこそ」みたいなコメントがあったので生だったのかな。


2023年5月21日日曜日

5月21日 文楽公演 第3部

「夏祭浪花鑑」

住吉鳥居前も口を碩・錦吾。
明るい声が端場の導入にはいい。錦吾は落ち着いた表情で、安定感が出てきた。
奥は三輪・団七。
三輪は泥場の義平次のイメージだったが、この場面でも出番はあるか。

内本町道具屋の口は咲寿・寛太郎。いつになく落ち着いた語りは三味線のリードゆえ?
切は錣・宗介。この場はあまり観たことがないが、磯之氶のダメっぷりがよくわかる。

人形は和生の義平次が意外にもよく、憎らしい舅。磯之氶は清五郎で、優男ぶりはいいのだが、人形を構える高さが変でないか? 屋内では床にめり込んでいるみたいで、団七との身長差から巨人のように見えるし、外に出ると宙に浮いているみたいだった。

釣船三婦内の切は呂・清介。せっかくの見せ場なのに、終始ぬるい。三婦とお辰のやり取りも緊迫感がなく、コレジャナイ感にいたたまれなくなった。若太夫襲名を発表したのだから、もっと奮起して、十代目のような魂の語りを聞かせて欲しい。襲名してからなんて出し惜しみせずに。
アトは亘・友之助。こちらは荒削りながら、緊迫感はあった。

長町裏は藤の義平次に織の団七、清友之三味線。
藤の義平次は悪くないのだが、織とは相性が悪いのか掛け合いがしっくりこない。織はかっこよすぎ。冒頭のカゴを呼び止める声は、追いついてからあの位置関係で話すにはボリュームが大きすぎないか?と思ったり、誤って切ってしまってから「毒食らわば」までの葛藤が感じられず(当然のことをしてるみたいな悪びれなさ)、最後の「悪い人でも〜」のセリフは自分に酔っているみたい
だった。
人形は勘十郎ほ団七は慣れたものだが、30両と偽る石を包むのが雑(義平次に丸見え)でないか?た思った。殺しの場面の型の美しさはさすが。和生の義兵次はやり過ぎない感じ。断末魔の死んだと思いきや再び起き上がるところ、以前見たのは人形の顔が変わる仕掛けがあったと思うのだが、そのままだった。

5月21日 文楽公演 第2部

「菅原伝授手習鑑」二段目

道行詞の甘替
桜丸の希、斎世の小住、苅谷姫の碩に聖、文字栄のツレ、三味線は清志郎、清丈、燕二郎、清允、清方。主要キャストの声のバランスがいい。特に苅谷姫の碩が姫らしい可憐さを描出。
人形は玉佳の桜丸、所作事の柔らかみのある動きが役に合っている 。簑紫郎の苅谷は滑らかで可憐さがあるのだが、どこかあざと可愛い感じがした。

安井汐待は睦・勝平。
高温の掠れがなければ。力の入ったいい語りなのに、掠れているせいで登場人物の語り分けがはっきりしない。特に女性に難あり。

杖折檻は芳穂・錦糸。
掛け合いでないのは初めて? 語りだしからいつもと違って、全体的に落ち着いたというか、不要な力みがなく、聞き良かった。

東天紅は小住・藤蔵。
珍しく出だしのバチが引っかかった? 小住は堂々として声量も十分あり、頼もしい。

宿も太郎詮議は呂勢・清治。
覚寿に品があり、三老女の風格。安心して聞ける。

菅丞相名残は千歳・富助。
前半は力が入りすぎて大仰に感じたが、後半は威厳に変わって、切語りの面目躍如。歌舞伎の静謐さとは違って、最後まで激しい。

人形は、和生の覚寿が素晴らしい。




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2023年5月20日土曜日

5月20日 文楽公演 第1部

「菅原伝授手習鑑」

大序は御簾内で聖、薫、碩、亘、小住のリレー。三味線は見えなかったけど、清方、清允、燕二郎、錦吾の順か。初めの組の声が苦しそうで、三味線の音が硬かったほかは、特筆すべきことはなし。碩の晴れやかさ、小住の安定感は声を聞いただけでわかる。
人形は前半、ほんと木偶の坊にじっとしたまま。大序って登場人物紹介みたいなものだから、語られてる当人物は小さくてもアクションがあるべきでは? 詞になってようやく動くのでなくて。また、時平が斎世親王の冠や衣服を剥ぎ取るところで微動だにしない菅丞相ってとつなの?慌てたり、助けようとしたりしないのはかえって不自然ではと思うなど。

加茂堤は希、津国、南都、咲寿の掛け合いに団吾の三味線。苅谷姫と八重を咲寿が語ったのだが、発声が苦しそうで姫らしい可愛さに欠ける。地のところは正面を見据えて語り、地に足のついた感じで悪くない。桜丸は希だが、兄弟のなかで一番優しいとはいえ、舎人とは思えない弱々しさ。松王の津国はしっくりだが、南都の梅王もあまり似合わず、配役に難ありとり思った。
人形は簑紫郎の苅谷姫が繊細な動きで可憐さを描出。桜丸の玉佳、八重の紋臣は若々しく仲のよい夫婦らしい。斎世親王は玉勢。牛車で登場するので最後まで誰だか分からないのだが、逃げっぷりがいい(笑)

筆法伝授の口は亘・清公。語り分けがしっかりして聞きやすくなった。
奥は織・燕三。深刻そうな顔、物々しい語りは相変わらず。ちょっと控えめだったものの、大仰な感じがして冷めてしまう。希世のチャリっぽい声も大袈裟で耳につく。ハッとしたのは三味線で、要所要所で場面を締めるような音があって、救われた。

築地は靖・清馗。のっけから緊迫感のある語りで、ても清々しく嫌な感じはしない。最近の頑張りが実りつつある気がする。三味線はいつもながら、ツボが甘いのか時折気が抜けたように聞こえて水を差された。 

2023年5月17日水曜日

5月17日 ROCK BALLET with QUEEN

2021年初演時に観て、また観たいと思っていたので日帰りで参戦。のっけから引き込まれて、大いに充実。強行軍だったけど悔いはない。

再演ということだが、だいぶ印象は変わった。音楽をフルに使っている感じだし、ダンサーたちがより音に乗っていて、作品としての密度が上がった感じ。
功績大だったのは、初参加の二山治雄。オープニングの紗幕前のソロに始まり、誰よりも動いているのでは?というくらい踊りっぱなし。高い跳躍やシャープな回転、柔軟な身体性など高度なテクニックを遺憾なく発揮した。ミリオネアワルツだったか、井澤駿とアラセゴン対決みたいな場面があって、回転数や軸の安定性が素晴らしくて曲の途中で拍手が起こった。彼が加わったおかげで、主旋律が1本加わって音楽が重厚になった感じがした。男性陣の中では小柄で、少年っぽい雰囲気が妖精のよう。物語を進める狂言回し的な役割にも見えた。

紅一点の米沢唯は、よりダンスの見せ場が増えた感じ。男性陣を手玉に取る小悪魔っぷりがチャーミングで、二山とは姉弟のようでもあり、イタズラを仕掛ける共犯者みたいな雰囲気も。2人で踊るところはリフトは少ないのだけれど、技術を見せつけ合うような高度な振り付けを軽々とこなす。 

音楽の繋ぎも洗練され、We Will Rock Youでは、男性4人が足踏みとクラップでリズムを刻んでから曲に繋げたり、ピアノの編曲を交えたり。 1時間あまりの舞台があっという間だった。

振付の福田圭吾は、バーテン役で登場。ポーズをとっているだけで笑いが起き、絶妙な間は大阪人のセンスなのか。

会場には福田の師、矢上久留美の姿も。立ち上がって拍手をされていたので、師匠の目から見ても満足の出来だったのでは。

5月7日 霜乃会本公演 霜華咲源平物語

源平をテーマに。タイトルは碩の案だとか。

茶道のお手前から始まり、源平にちなんだ道具の紹介。背後の生花もちなんで、紅白の芍薬や弟切草など。

浪曲は幸太の「弁慶」。かたりや啖呵が少なく、フシで物語を進める感じだつたのだが、旋律が単調に感じた。息が長いのは感心。

能は仕舞「巴」を林本大。衣擦れの音が聞こえるほどの至近距離。

碩と燕二郎は素浄瑠璃で「一谷嫩軍記 須磨浦の段」。懸命な演奏に好感が持てる 。

最後は南龍の講談で「那須余一」。笑いを取り混ぜつつ、飄々とした語り。



2023年5月14日日曜日

5月14日 歌舞伎鑑賞教室

南座の鑑賞教室。今年の解説は南龍。講談師らしく滔々と歌舞伎や南座の歴史を紹介するのだが、出雲阿国のかぶき踊りが四条河原だったことが抜けてたのは惜しい。いつものように微妙にウソを混ぜての笑いをとるも、客受は微妙だった。
當志哉を交えて黒衣の役割、千太郎を交えて、歌舞伎の効果音や見栄などを解説。眼目は忠臣蔵の一場面を語る講談に合わせて、祐次郎、愛治郎が立ち回り。


「妹背山婦女庭訓 願絲縁苧環」

吉太郎のお三輪、りき彌の橘姫、千次郎の求女。 
吉太郎の初々しさ、健気さと、りき彌のクールビューティーぶりが好対照。千次郎は珍しい白塗りの二枚目ぶりで、薄情な求女を好演。
花道の引っ込みで、苧環の糸が切れたことを知ったお三輪の失望、それでも求女を追いかける必死さが痛々しいほど。上方歌舞伎会の時も良かったけれど、さらに表現力が増したよう。

2023年5月6日土曜日

5月6日 KYOTOPHONIE KOKI NAKANO &MINOSHIRO YOSHIDA

現代音楽の中野公輝と簑紫郎のコラボ。「関寺小町」を題材に、新たに作曲したピアノ曲に合わせて人形が舞う。
ピアノはサンプリングした音源やピアノの中に手を入れて直接ピアノ線を弾いたり、押さえてミュートしたりする(内部奏法とか言ったか)手法が現代的なのか。初めの曲はピアノソロだったが、人形が出てきてからはこちらに気を取られてあまり印象に残ってないのだが、どの辺が関寺なのかピンと来なかった。現代音楽に造詣の深い人なら違う感想なのかも。
簑紫郎の関寺は仕草が普段以上に細かく動いていて引き込まれた。通常、1手で動くところ、3〜4手使っているような印象。関寺がひとくさり終わった後、若い娘の人形が傘を持って舞うので、若かりし日の小町かと思ったら、鷺娘なのだそう。なんで? アフタートークで転生後のようなことを言っていたが、しっくりこなかった。

2023年5月5日金曜日

5月5日 新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」

小野絢子・奥村康祐ペアを再見。体調を整えて臨んだので、十分に楽しめた。とても濃密な1時間だった。

奥村のマクベスは線の細さが武将らしくはないのだが、繊細で、夫人の言うがままに動かされてしまう弱さがあった。ダンカン王殺害に逡巡し、夫人に焚き付けられて事に及ぶまでの心理描写がくっきり。バンクォー乃亡霊に怯える様、夫人の亡骸を抱き抱えて嘆くパドドゥ、最後の闘いに向かう悲壮感。どれも濃密で、息を呑むほど。

小野のマクベス夫人は妖艶。振り切った演技でマクベスをリードする欲望の強さを描いた。夢遊病の場面が唐突に思えたが、アフタートークによると、その前の寝室の場面で、マクベスを叱咤激励しつつも、一人のときには弱さを垣間見せたと聞いて納得。死んだあとのパドドゥはぐったりとしていながら、美しさを保っているのが圧巻だった。

衣装もとても素晴らしいのだが、男性ダンサーの靴が黒のバレエシューズだったのが気になった。コスチュームのなかでそこだけ普段のレッスンみたいで。

《アフタートーク》

奥村 やっと終わったという開放感と寂しさ。1つの感情だけでなく、複雑に絡み合う。野心だじゃない、たくさんの感情がミックスして、普段生きている時のような感情。人間らしい役でやりがいがあった。生きていればでてくる感情を全て使うというか、とてもエネルギーのいる役で1回終わるとぐったりしてしまった。

小野 どの役も新たな挑戦。血に興奮する役は初めてだが、特別ではない。自分とかけ離れた役は逆にやりやすい。楽しかった。

奥 タケットのイメージを見つけていく感じ。見本がないので、自分たちが出したものがそのまま振り付けになる。緊張感があり、これでいいのかという不安も。













2023年5月4日木曜日

5月4日 新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」

「マクベス」
米沢唯・福岡雄大ペア。
福岡のマクベスは体格の良さが騎士らしく、よく知るマクベス。王位に関心はなかったが、妻に焚き付けられて王位への野心を抱くものの、元々関心はなかったので今一つ煮えきらないというのがよく分かる。米沢のマクベス夫人は、ちょっと冷酷な感じが身分の高い人らしく、これも役柄によくあう。 

「夏の夜の夢」
柴山沙穂・渡邊ペア。
柴山之ティターニアは女王の威厳や強さがあり、イメージに近い。
パックの山田悠貴は細身て軽快なのがいいが、少し知恵が足りない感じ。


2023年5月3日水曜日

5月3日 新国立劇場バレエ段「シェイクスピア・ダブルビル」

「マクベス」
小野絢子・奥村康祐ペア。演技派の2人なのでと期待が高すぎたのか、ちょっと期待外れに感じた。奥村は線は勇壮な軍人には線が細いし、小野の妖艶さは身の丈に合わない服を着ているようでしっくりこない。体調がすぐれないこともあり、途中少し意識が途切れた。

マクベス夫人が自殺してから、ぐったりしたままのパドドゥは身体性の高さに目を見張った。

カーンコールで子供たちが顔に血糊のついたままで、ニコニコ笑っているのがシュールだった。

「夏の夜の夢」

オーベロンの速水渉悟はこれまでみたことないほど、堂々とたくましく威厳がある風貌。ティターニアの池田理沙子は女王というには可愛らしい。小姓と並ぶのが似合う。
パックの石山蓮は体格が良すぎ? オーベロンよりがっしりしているのはちょっと違和感がある。 ボトムの福田圭吾は笑いのセンスがいい。大阪人気質?

軽いコメディのはずなのだが、最後、ティターニアが酷い目に遭わされたとも知らずに和解するラストの後味が悪かった。 


5月5日に再見。体調を整えて臨んだので、「マクベス」の世界観を十分に楽しめた。とても濃密な1時間だった。 

奥村のマクベスは線の細さが武将らしくはないのだが、繊細で、夫人の言うがままの弱さがよく表されていた。ダンカン王殺害に逡巡し、夫人に焚き付けられて事に及ぶまでの心理描写がくっきり。バンクォーの亡霊に怯える様、夫人の亡骸を抱き抱えて嘆くパドドゥ、最後の闘いに向かう悲壮感は濃密で、息を呑むほど。 

小野のマクベス夫人は妖艶。振り切った演技でマクベスをリードする欲望の強さを描いた。夢遊病の場面が唐突に思えたが、アフタートークによると、その前の寝室の場面で、マクベスを叱咤激励しつつも、一人のときには弱さを垣間見せたと聞いて納得。死んだあとのパドドゥはぐったりとしていながら、美しさを保っているのが圧巻だった。 

衣装もとても素晴らしいのだが、男性ダンサーの靴が黒のバレエシューズだったのが気になった。上衣はややシンプルながらもコスチュームらしいのに、足元だけ普段のレッスンみたいでそぐわない。