「熊谷陣屋」
吉右衛門の熊谷に葵太夫が丸々一段語るという、おそらく当代一の熊谷。吉右衛門は義太夫狂言らしい重みがあり、語りにも力が入っている。魁春の相模は型通りでちょっと憐れみが薄いようにも感じたが、雀右衛門の藤の方は品を保ちつつ、母の情が感じられた。が、何故だろう。義経が出てきたあたりから急激に眠気が…。菊之助の義経は、貴公子然としていて武士らしくないのだか、それはそれで悪くないはず。さすがに、僧形となった熊谷が花道へ向かう直前で覚醒して、「十六年も…」のセリフはしっかり聞いたのだが。
「當年祝春駒」
曽我の対面を舞踊仕立てで華やかに。五郎役の尾上左近がチラシの写真では子ども子どもしてたのに、以外に大きくて驚いた。大磯の虎の米吉、傾化粧坂少将の梅丸と若手の綺麗どころが並んだが、化粧のせいか梅丸がキツイ顔だったのが残念。
「名月八幡祭」
なんだかなあと感じたのはホンのせいか、役者のせいか。芸者に入れ上げた田舎者が裏切られて逆上するという、籠釣瓶のような展開ながら、全体的にスケールが小さいので物足りなく感じる。新助の気が触れて殺すにしても美代吉1人だし、狂気も凄みよりは惚けた感じ。新助を演じる松緑が可愛げがないというか、可哀想に見えないせいか。玉三郎の美代吉は悪女というより、気まぐれ。騙そうとしたというより、面倒くさくなって、投げやりになったように見える。仁左衛門の船頭三次も悪人というより小者っぽい。新助の職業、縮屋というのが、「シジミ屋」と聞こえて、蜆売りかと思ったよ。
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