2016年7月31日日曜日
0730 宝塚雪組「ローマの休日」
グレゴリー・ペックとオードリー・ヘップバーンの往年の名作を舞台化。これまで舞台にかけられていなかったのが不思議と思っていたが、観て納得。この作品は、ローマの観光地をめぐるところが一つの見せ場なので、舞台での再現は難しいのだ。映像をスクリーンに映すなど工夫はしていたが、いかんせんぼんやりした映像では魅力は伝わらない。
早霧せいなはコスプレの名手というか、いつもがらりと違うキャラクターを演じるのがすごい。ハリウッド的二枚目を好演。王女の咲妃みゆはちょっとおっちょこちょいな娘の可愛さはあるが、王室の高貴さに欠けるか。
全体としてよくまとまっていて飽きさせない舞台だが、それ以上ではない。
0730 大阪女優の会「あたしの話と裸足のあたし」
戦争にまつわる証言や書かれたものをオムニバス風につなぎ合わせた朗読劇。20人ほどの女優(男優1人)が代わる代わる演じる。赤い毛糸を年配者から若者につなぐことで、大切なのは記憶を言葉で伝えることというメッセージが明確。おでこをくっつけてもコピーロボットのように記憶は伝わらないから。
始終、戦争について考えるきっかけにはなるが、空襲を受けた市民の悲惨さを知るだけでは、未来の戦争を防ぐことにはならない。悲惨なのは負ける戦争で、勝てばいいという考えにもなりうる。「戦うのはいけない」という母親に、「それでは攻められたときに守れない」と反論する息子の言い分はもっともで、反戦を叫ぶ女性たちは往々にして前者でストップしてしまいがち。
最後のあたり、1904年の日清戦争からの戦争や内戦を次々とあげていくいくのだが、朝鮮戦争やベトナム戦争が入っていなかったような。何か意図があるのだろうか。
2016年7月30日土曜日
0729 劇団鹿殺し「名なしの侍」
生バンドにブラスバンドの演奏に乗った殺陣は迫力がある。織田信長や秀吉、家康など実在の武将の名を交えつつ、描くのは農民から下剋上でのし上がろうという名もなき足軽たち。菜月チョビらのうまくもない歌謡曲風の歌は相変わらずで、歌詞で物語を進めているようにも、世界観を現しているようにも感じられず、退屈で意識が遠くなった。よく作りこんでいるのだが、やりたいことをなんでも詰め込んだごちゃまぜのごった煮のようで、統一感がなく、メッセージがあるのだろうか。
0729 宝塚宙組「エリザベート」
朝夏まなとのトートはクールで性別を超えた雰囲気がいい。歌も変な癖がなく、音程が安定しているので安心して聞いていられる。視線で誘う妖しさ、「死ねばいい!」もしびれた。長い手足を生かした踊りも映える。
実咲凛音のエリザベートは、健気というか懸命な感じが共感を誘う。何より高音域に無理がないので、音楽に身をゆだねられるのがいい。
コーラスもよく、身長が高い人がそろっているので群舞も格好良かった。
2016年7月29日金曜日
0728 夏休み文楽特別公演 第3部
「金壺親父恋達引」
井上ひさし原作の幻の文楽作品。モリエールの「守銭奴」を翻案し、設定その他をそのまま江戸の浅草に移した喜劇。
金左衛門の英はもうちょっとこってりやってもと思うが、おおむね面白かった。お梶ばばあの芳穂がいい味出してた。
0728 夏休み文楽特別公演 第1部
「五条橋」
睦の牛若丸に始の弁慶、南都、咲寿、文字栄。三味線は喜一郎、清馗、錦吾、清允、燕二郎。
蓑紫郎の牛若丸が軽々と。弁慶の玉勢は当人はひょろりとしているのだが、人形は力強くて弁慶らしい。
「新編西遊記GO WEST!」
猪八戒をフォーカスしたところが面白く、仕掛けがいろいろあって楽しめる。天界から落ちるところは、舞台後方から前方への移動で立体感がある。舞台セットもカラフルで絵本のよう。が、うさぎが復讐に走る動機が軽すぎないか?あっさり謝っちゃうのも肩透かし。
太夫は猪八戒の靖がいい味出してる。沙悟浄の小住は年齢に似合わぬ安定感。
三味線は琴や胡弓も使って華やか。5丁で弾くと迫力あり。
0728 夏休み文楽特別公演 第2部
「薫樹累物語」
豆腐屋の段
松香の谷蔵、三輪の累、津国の三婦、咲寿、亘。三味線は清友、団吾、錦吾。
人形は累の和生が期待通り。姉の敵と分かっても、娘の恋心は止まらず。まあ、古典では典型だけれど、そうでないと物語が進まないけど。
あと、主君のために高尾を殺さなければならない理由もよくわからない。
埴生村の段
中を咲甫・団七、奥を千歳・富助。
咲甫の語りが師匠に似てる。これまで意識したことなかったが。けどそれが咲甫のよさを損ねているような。
千歳・富助は安定感が増してきた。千歳は力が入りすぎてなくてよかった。
累は自分の顔が変わっているのが分かった時、なぜ姉のせいと分かったのだろうか?
土橋の段
中を靖・錦糸、奥を呂勢・清治。
靖は錦糸と組んでぐんぐん伸びている印象。明快な語りがいい。
呂勢は悋気な女がはまるのだが、またかという気がしなくもない。後半早口になると、言葉が聞きづらかった。清治の三味線が、激しくはないのだが淡々とした緊張感で怖さを引き立てる。
「伊勢音頭恋寝刃」
古市油屋の段は一段まるまる、津駒・寛治。
寛治は相変わらずの超省エネモードの三味線。時折不協和音に聞こえるのはミスタッチ?
津駒の万野はネッチリしてていいが、歌舞伎に比べるとあっさりした印象。
奥庭十人切りの段は咲・燕三。
咲はまあ、病み上がりなので声に力がないのは仕方ない。
勘十郎の貢は形相からして恐ろしいのだが、罪もない子供まで切り捨てる十人斬り、事件の後だけに素直には楽しめず。
2016年7月19日火曜日
0718 花形狂言2016「おそれいります、シェイクスピアさん」
執筆に行き詰ったシェイクスピア(茂山宗彦)が、、かつて書いた脚本の登場人物とやり取りをする。狂言風の言い回しで「ハムレット」を演じる逸平、女形なのだがいまいち可憐でない(←たぶんわざと)茂など、キャラクターを生かした楽しい舞台。正邦のトトロもどきはもうええっちゅうねんという感じだし、後半ちょっとダレたようにも思うが、楽しそうなので何より。
2016年7月18日月曜日
0716 A級missinglink「或いは、魂のやどり木」
過疎が進む片田舎のバラバラになっていく家族の話。高校生だった長男が飛び降り自殺をしてから、父が蒸発し、女手ひとつで育てられた次男と妹は独立して都会へ出、一人残っていた母も再婚して海外に移住する。現在と過去、現実の世界と長男が自殺していなかったらの妄想の世界が入れ替わりつつ、次第にいろいろなことが明らかになっていくのはサスペンスのよう。
失踪した父と共に暮らす女が物語りをかき回す。
2016年7月17日日曜日
0716 ワハハ本舗「ラスト2~NEW HOPE 新たなる希望~
面白かったのは久本雅美と柴田理恵の漫談くらい。江頭ならぬ赤いスパッツの婆さんの扮装でババアあるあるみたいな。観客は中高年女性が多く、ウケていた。佐藤正宏が日舞の名取とかで、オペラ座の怪人を日舞風に踊っていたのはなかなか堂に入っていたが、笑いではなかった。
若手(?)のところは全般的にちっともおかしくない。ダンスに力を入れているらしく、オープニングから、ラストまで踊るシーンが多いのだが、ダンサーの訓練を受けているわけではなく、また笑えるでもないので中途半端。何人か本気で踊っている人もいたけど、この劇団にはそぐわないというか、面白いことやりたくて入ったんじゃないの?後半のコンテンポラリー風の踊りはコント風でドリフのようだった。
やたら会場を巻き込みたがり、いろんなものを投げ込んだり、客席降りしたりするのだが、マンネリぎみ。
2016年7月16日土曜日
0715 豊澤雛文 女義太夫を楽しむ会
川崎の人形劇団ひとみ座の乙女文楽による「新口村」のさわり。一人遣いの人形は初めて観るが、人と一体で動くのが興味深い。人形遣いに結び付けた支柱で人形を支え、両手、両足を人形の手足にして動かす。人形の首と人形遣いの頭を糸で結び、顔を動かすと首も動く仕組み。首は文楽のものと同じように胴串がついていたが、一人遣い専用のものというわけではないようだ。
トークをはさんで素浄瑠璃で「御所桜堀川夜討 弁慶上使の段」。竹本雛子の語りに雛文の三味線。女流の義太夫は初めて聞いたが、雛子の声がだみ声かかっているせいかあまり男との違いは感じなかった。しいて言えばやや音が繊細というか、上品かなあ。
2016年7月13日水曜日
0713 太棹の響き―初代藤蔵の音を聞く―
二代目鶴沢藤蔵襲名の5周年記念。
三味線組曲は5丁の三味線が舞台に並んで圧巻。藤蔵、清志郎、清馗、清丈、清公。
初代藤蔵の未公開音源を聞くでは、30代のころの住太夫や源太夫らの語りがすでに出来上がっているのに驚く。同じ年齢の今の太夫陣との差は大きいなあ。
最後は津駒太夫の語りで「近頃河原伊達引 堀川猿回しの段」。ツレ弾きは清志郎。一段まるまる、じっくり聞かせた。
2016年7月11日月曜日
0711 ニットキャップシアター「ねむり姫」
平安時代が舞台の、ある時から長い眠りに落ちる姫と姫に恋する少年の話?群像劇ということで沢山の人で舞台が埋め尽くされる。
平安風の装束は主要人物だけで、ほかは普段着のような格好なのは予算を考慮した工夫だろうが、ごちゃごちゃした雰囲気になって悪くない。姫は純白のダウンジャケットのような上衣はいいとして、顔の上半分だけ白塗りで頬紅のメークはあまり可愛く見えなかった。
ギターやバイオリン、打楽器の生演奏で効果音など挟むのが面白い。つどつど挟まれるダンスシーンはこの劇団の売り物なのだろうが、小劇場のダンスって役にならなずに素のままで踊っているような人がたまにいる。
0710 三谷文楽「其礼成心中」
4度目の公演にして初の大阪。文楽の本拠地の観客の反応はまずまずといったところか。
主要キャストにほとんど同じだが、人形遣いが何人か入れ替わっていたのと3人目の太夫が睦と靖のダブルキャストになっていた。
新しい演出も特になく、何度も見ているとだんだん笑えるところが少なくなっていくなあ…。はじめのころは太夫が「カップル」とか「パトロール」とか言うだけでおかしかったけど。お福ちゃんがジタバタするところとか、人形の動きとかは工夫があって笑えるところ。
2016年7月9日土曜日
0709 劇団犯罪友の会「風の姿で」
高校の文芸部を舞台にした娘(上木椛)と顧問教諭(松山カオル)、同級生のムラカミ(中西謙吾)の話と、和菓子屋を舞台に父(川本三吉)と娘、来店の厚労省職員(和久本あさ美)、お茶の先生(自称、中田彩葉)の話が交錯する。関係が分かりづらく、物語に入りづらい。
親切気に浪曲師(?)との出演交渉を買って出るお茶の先生に、うさんくささを感じていたらやっぱり詐欺だったり、才能のある詩人かと思っていたムラカミが連続動物殺傷事件の犯人だったりと、いい人かと思ったら悪人という裏切り、進路に悩む娘が最終的に文芸の道をいったんあきらめ父と一緒に和菓子屋をしていく決意をしていく心の動きが山場かと思うが、チラシにあった「恋の行くへ」はどこに?
0709 萬狂言大阪公演
「棒縛」
野村万蔵の太郎冠者に能村晶人の次郎冠者、野村虎之介の主人。
おなじみの狂言なのだが、これまで見たものよりも品がいい感じ。
「骨皮」
野村萬の老僧に小笠原弘晃の新発意、檀那に河野佑紀、野村万禄、野村万蔵。
弘晃は発声、所作など思っていたよりしっかり。だが、話の面白さが伝わらないのは年若ゆえか。
萬の演技はゆったりしていて、体調不良の身は意識が飛んでしまった。
「弓弥太郎」
小笠原匡の太郎。コントのような気軽な面白さ。わあわあと大勢(8人+後見)が舞台に登場するのも珍しく面白かった。
0708 Nonism劇的舞踊vol.3「ラ・バヤデール―幻の国」
モノトーンの舞台にシルバーの柱が数本並び、これを動かして場面が変わる。
衣装が素晴らしく、踊り子カリオン族のブルー系のひらひらしたドレス、馬賊の赤系のフリンジのついた衣装が動きと合わさるととても効果的。衣装で民族の違いを表現していたのも、分かりやすかった。
セリフを語る役者が3人入ることで、物語は分かりやすくなる。ムラカミ(貴島豪)が狂言回しのように物語の背景を説明する。マランシュ族の皇女フイシェン役のたきいみきは王族の重々しさだが、やや重厚すぎに感じた。ダンサーに対抗するためか、役者は全体的に重々しい芝居だった。
2幕、アヘンにおぼれるバートル(中川賢)の幻想で踊り子たちが現れるシーンが印象的。グレーの薄いベールを重ねたような衣装が幻想的だ。最後、ミラン(井関佐和子)は衣装だけをバートルの手の中に残し、裸のような姿で舞台後方に去る。残された衣装は数枚の布切れになってしまうはかなさ。
0705 だいこん役者
藤山直美と大杉連の初共演。
直美が出てくると舞台が締まる。大杉連は舞台経験は少ないようだが“大根”役者を好演。2人並んだ様子がいい夫婦だ。
台本のせいか、前半はテンポよく進むのだが後半がダレた感じ。料理やの娘(前田亜季)が実の娘だと分かったところで一つの山が終わってしまい、立ち退き云々のくだりがつけたしのようになってしまった。
0704 七月大歌舞伎 夜の部
「鬼一法眼三略巻」
奴虎蔵実は牛若丸に梅玉。うーん。この年で前髪役をするのはすごいが、奴知恵内の橋之助に「若輩者ゆえ…」と言われると違和感がぬぐえない。
「口上」
藤十郎が書状を読み上げる形。秀太郎のほのぼのとうれし気な口上がよかった。
「鳥辺山心中」
仁左衛門の半九郎が格好いい。雀右衛門のお染はしっとりとかわいらしい。
遊女お花の秀太郎と中居お雪の竹三郎が花を添える。
「芋堀長者」
踊り上手の橋之助。ユーモラスな舞踊劇で観劇の最後を締めくくるにはいい。
0704 七月大歌舞伎 昼の部
五代目中村雀右衛門の襲名披露。
「小さん金五郎」
松竹新喜劇のようなゆるゆるのお話。鴈治郎の金五郎の風情がはまってる。
吉弥演じる女髪結お鶴は金五郎に一方的に思いを寄せて空回りするイタイ人なのだが…。
芸妓お糸の児太郎がきれいになってた。
「夕霧名残の正月」
襲名公演の雀右衛門の夕霧が美しい。藤十郎の伊左衛門は立っているだけで風情がある。
「与話情浮名横櫛」
仁左衛門の与三郎に雀右衛門のお富。シュッとした仁左衛門と並ぶと不利だよなあ。
2016年7月4日月曜日
7月3日 坂東玉三郎京丹後特別舞踊公演
京丹後での初公演。和久傳がかかわっているだけあって、最寄り駅からタクシーの無料送迎など至れり尽くせり。会場で販売していたお菓子や軽食もおいしそう。
演目は「傾城」と「藤娘」。会場が小ぶりなので、手先、足先の細かい動きまで見えて、芸の繊細さを感じた。藤娘の初々しさ。これまで見た年若のどの役者よりももっと若々しいのが脅威だ。
7月2日 正邦・茂兄弟会「傅之会」
「しびり」
連の太郎冠者に慶和の主人。セリフは一本調子で聞き取りにくいが、小さい子が一生懸命やっているのでかわいらしく、微笑ましい。
「萩大名」
正邦の大名に、逸平の太郎冠者、宗彦の亭主。
正邦は自身が言っていたように大らかな大名が嵌る。宗彦がさもうんざりしたような顔つきでとりわけ笑いを誘っていた。
「文山立」
山立甲、乙を茂、童司。
わあわあとやかましい、ばかばかしい芝居。ほぼコントだ。
「附子」
竜正、虎真の太郎冠者、二郎冠者に鳳仁の主人。
このくらいの年になると、やってるだけでかわいいとは思ってもらえず、さりとて大人のような芸はできないわけで、なかなか難しそうだ。
「止動方角」
正邦の太郎冠者、茂の主人、千五郎の伯父、島田の馬。
正邦、茂は力が入りすぎているような感じで、千五郎が出てくるとホッとする。
狂言の馬って初めてみた。
0701 宝塚雪組公演「ドン・ジュアン」
宝塚とフレンチミュージカルは相性がいいようだ。本作で4作目。宝塚の魅力を感じられたように思った。
何より、主役ドン・ジュアンの望海風斗がハマり役。ニヒルで非道な色男を衒いなく演じきった。これぞザ・宝塚という、ホンモノの男がやるとどこか生々しくなってしまいそうなところだ。歌が上手いのもこの役には重要で、ほぼ全編歌いっぱなし。白い衣装で幸せいっぱいな場面が似合わないように感じたのは、マリアと恋に落ちるところがやや唐突だったからか。もう少し丁寧に描いてほしかった。
マリア役の彩みちるは前半は歌に難ありだったが、後半もちなおした。歌だけ見れば、妻エルヴィラ役の有沙瞳の方が良かった。
は歌が上手いというイメージはなかったのだが、イザベル役に専科の美穂圭子を迎えるなど上手い人を集めたおかげか、全体を通して聞き応え十分。衣装も素敵で、ダンスシーンに映えた。
登録:
投稿 (Atom)