2013年11月12日火曜日

11月10日 11月文楽公演「伊賀越え道中双六」第2部

昼の部より客席は空いていたけれど、見応えがある場が多く、1部より面白かった。なんで観に来ないかな〜。

「藤川新関の段」
助平の三輪太夫、志津馬の始大夫、お袖の咲甫太夫と、3人の掛け合い。人形の動きがコミカルで面白い。

「竹藪の段」

「岡崎の段」
仇討のため、生まれたばかりの息子を切殺してしまう政右衛門。幼子を抱えて、雪の中を追いかけてくるお谷もよく解らんが、この理不尽なストーリーで泣かせるのは語りの力だなあ。

中の芳穂太夫、次の呂勢大夫と続き、切の嶋太夫が聴かせる。時折、見台に突っ伏すようにして語っていたので、体調が悪いのかと心配になった。単に熱演してただけならいいのだけれど。
切の千歳太夫もよかった。

「伏見北国屋の段」
仇討の関係者が宿で隣り合わせるなんて、というのはさておき、たがいに様子を探りあう心理戦が面白い。

「伊賀上野仇討の段」
見事仇討達成、カタルシス。立ち回りが迫力あって、見ごたえあり。

2013年11月11日月曜日

11月9日 11月文楽公演「伊賀越道中双六」第1部

歌舞伎では「沼津」しか見たことがなかったので、今回通しで観て、初めて仇討ちの次第が分かった。いやはや、こんなに壮大な物語とは。

「鶴ヶ岡の段」

敵討ちの原因を作る場面だけど、一言で言って、志津馬、脇甘すぎ。酒に弱いと注意されていながら、なんで酔っ払うよ。主君をお迎えする大事なところに瀬川がやって来る理由もよく分からん。
義太夫は御簾の奥で、人形使いも皆、顔を隠しての演出。仮名手本忠臣蔵の序幕みたいな感じ?


「和田行家屋敷の段」

正宗を狙う股五郎のたくらみを見事見抜いた行家だが、手紙を読んだ隙にあっさり殺されちゃう脇の甘さ。不思議だ。寝返って行家殺害に協力した、和田家の奴実内があっさり殺されちゃうのもよく解らん。
奥を語った松香大夫がよかった。

「円覚寺の段」

股五郎母、鳴海を人質に、刀と引き換えに股五郎の引き渡しを求める丹右衛門。実は鳴海と図っていて、鳴海は自害、刀は偽物とすり替えている。正々堂々としているのか、卑怯なのか。
帰り道、城五郎一味に股五郎を奪われ、瀕死の重傷を負う丹右衛門。駆けつけた志津馬も負傷し、この後の沼津に続く。

「唐木政右衛門屋敷の段」

志津馬の姉、お谷の夫、政右衛門は新しい妻をめとり、敵討に参加って、血縁関係にないと助太刀できないの?お谷はお腹のなかに子供までいるのに、かわいそうすぎ。

切が咲太夫。さすがの安定感。

「沼津里の段」「平作内の段」「千本松原の段」

沼津は、正直、歌舞伎のほうがいいかな。平作が荷を担ぐのに四苦八苦するところとか、十兵衛がお米に一目惚れしちゃうくだりとか、あっさり感じた。千本松原で平作が命をかけて股五郎の居所を聞き出すところ、前後のつながりが分かったのでようやく腑に落ちた気分。

平作内の段を語った呂勢大夫は、聴いていて心地よい。
切の住大夫、残念だけど、声に力がない。下手側の座席で出語床から遠かったから余計にそう感じたのかも。

2013年11月10日日曜日

10月19日 十月花形歌舞伎 昼の部

「大坂純情伝」

女殺油地獄とウエストサイドストーリーを足して二で割ったようなーーということだそうで。やんちゃな若者たち、大店のぼんぼんの天神組と下町の不良、雁金組がいがみ合っているという設定。与兵衛(愛之助)は天神組で、恋人、小菊(新悟)の兄、文三(薪車)が雁金組のリーダー格で…というのだが、チームの対立と与兵衛と小菊という恋人同士の関係がちょっと希薄だったかな。まあ、物語の本筋ではないから、あまり深堀りもできないのだろうけど。大人数での立ち回りが、ミュージカルの群舞のように振付けられていたのが面白かった。あと、花道を登場してくるシーンで、三味線でタンゴを演奏したり。(曲がだんご三兄弟だったのは、初演時の流行りか)

与兵衛が妹思いで、おかち(右近)が廓に売られないようにと金策に奔走したり、淫蕩な母、おさわ(吉弥)への屈折した思いが、お吉(壱太郎)に色目をつかってからかわれたのを引き金に、殺人にいたったりと、与兵衛の性格にいろいろ肉付けしているのだけど、そのせいでかえって、衝動殺人の不条理さがぼやけてしまい、殺しの場のゾッとするような怖さがなかったのが、残念。古典のがよかっただけに、期待していたので余計に。

歌舞伎は難しそう…と、尻込みしているひとには、とっつきやすくていいのかも。実際、リピーターも多いようだし。けど、最後の場、与兵衛が取り手に捕まえられる場面で戸板倒し。前に見た、別の浪花花形歌舞伎でも使っていたけど、軽々しくつかいすぎでは。


「三人連獅子」

父、母、子の3人連獅子。親子のほのぼのした情愛が描かれていて、いつもの連獅子とはまた違う風情。愛之助、壱太郎、吉太郎の息があっていてよろし。毛振りも隈取りでなく、素顔のままなので、引っ込んでから再登場までの時間が短いのもいい。

2013年10月28日月曜日

10月12日 十月花形歌舞伎 夜の部

「夏祭浪花鑑」

愛之助の団七がはまり役。裾をからげたときに、むっちりと太い太ももが安定感があっていいのだ。これで、ひょろっと細い脚だとちょっと興ざめ。お梶の壱太郎やお辰の吉弥、三婦の翫雀、磯之丞の薪車と上方の役者さんが沢山でているのもうれしい。あ、丁稚役の吉太郎もいい味だしてた。徳兵衛の亀鶴もよかったし、どの役もうまくはまっていた。

珍しく、お鯛茶屋の場からの上演だったので、徳兵衛と団七の関係がよくわかるし、徳兵衛の見せ場が多いのもよかった。亀鶴の二枚目って、あまり見たことなかったかも。団七と2人で並ぶ場面も多くて、格好よかった。

壱太郎のお梶は美しいのだが、ちょっと硬いか。愛之助と並ぶと、美男美女でお似合い。

お辰の吉弥、すごくはまり役で、ほれぼれするいい女っぷりだったのだが、何だかちょっと堪能できない。頬に焼き鏝を当てるところなど、たっぷりと演じているのだが、それを受ける三婦の翫雀の反応が早すぎる気がした。もうちょっと間をもってくれると、よかったような。「こちの人が好いたのは…」のくだりも、花道の途中で立ち止まって、席に半分背を向けているので、表情がちゃんと見えなくてもったいない。

2013年9月24日火曜日

9月22日 九月花形歌舞伎 昼の部

「新薄雪物語」

めったに上演されない演目といいうことだけれど、華やかな舞台装置といい、立ち回りといい、歌舞伎らしさ満載で杮落し公演にはぴったり。花形役者ばかりの競演なのも、体当たりで演じている感じでよかったような。こんな座組みではもう見られないだろうな、という希少感も。


花見の場

妻平の愛之助がいい。歌舞伎らしい重々しさのある立ち居振る舞い、後段の立ち回りという見せ場もあるし、案外美味しい役?籬の七之助が息のあった演技で、薄雪姫(梅枝)・左衛門(勘九郎)の初々しさとの対比もあっていい風情。

梅枝は典型的な赤姫がかわいらしい。左衛門の勘九郎、こうしたおっとりした話し方すると、ますます勘三郎に似てきたなあ。

立ち回りはいろいろ工夫されていて面白かった。桶とか傘とか小物の使い方も目新しかった。


詮議の場

白髪の伊賀守(松緑)はともかく、園部兵衛の染五郎が父親に見えない。伊賀守・松ヶ枝(吉弥)がよいだけに、何だかバランスの悪い感じだった。

民部の海老蔵、前段の秋月大膳の悪役っぷりがあたりに板についていたせいか、暫くはいい人に見えなくて困った。


広間・合腹の場

梅の方の菊之助がいい。ちゃんと母の情が感じられた。

三人笑いは本来はもっとベテランの役者が演ずるべきなのだろうけれど、花形が精一杯演じている緊迫感が舞台を盛り上げていたように感じた。大御所が演じてもこの感動はなかったかも。


「吉原雀」

踊り上手の勘九郎・七之助兄弟なので普通に楽しい。前の演目が重々しく終わったので、食後の口直しのような。

2013年8月11日日曜日

8月10日 三谷文楽「其礼成心中」

映像では一度見ていたので、ストーリーは知っていたのだが、生で見聞きするとより面白い。

いつもの文楽より、人形がフィーチャーされている感じ。出語り床はなくて、大夫&三味線さんは舞台正面の高いところにいるので、一歩引いたように見える。映像でみたよりは低く感じたけど、いつもより裏方さんぽいというか。

呂勢大夫、千歳大夫という、美声の二人なので、聞き応え十分。二人でほとんどの場を語るので、大変そう。冒頭、呂勢大夫の声がかすれ気味(それはそれで味があって良かったのだが)にかんじたのは、疲れから?

人形がコミカルな動きで笑わせる。特に、娘役。お前みたいな不器量な娘に惚れる男がいるのか、とか、心中は美男美女がするもんだと言われて悶絶するところなんて、可愛らしくて可笑しくて。

カーテンコールで、大夫さんや三味線さんたちが手を振ってくれた。普段の文楽じゃあ見られない光景で得した気分。呂勢大夫の照れたような笑顔が素敵。

8月10日 ABKAI

「蛇柳」
歌舞伎十八番の一つとのことだが、過去に途絶えてしまっているので実質的には新作。松羽目物の舞踊仕立てで、土蜘蛛や船弁慶を彷彿とさせる構成。

ユニークなのは、背景が松ではなくて柳になっていて、途中、蛇に化身するところで木の幹が蛇に変わるところ。蛇の手下どもの動きがショッカーぽいというが、変な手つき。動きがややぎこちなく、学芸会みたいに練れていない感じ。

海老蔵は、登場したときの優男のときからクネクネしてて、キモチワルイ。蛇を意識しての演技なのかどうかはしらないが、私には体の芯が通ってなくて、踊りの基本がなってないように見えた。声も、海老蔵が高貴な二枚目を演るときにする、浮ついたぼんやりした喋り方。バカにされているようでイラっとする。
蛇に変じてからは、カーッと目を剥いたり、見栄をしたり、荒事らしい動きを連発。結構早い段階で、お面を被った代役に替わったので、どうするのかと思っていたら、最後、客席から、荒武者のような格好で登場し(暫?)、蛇退治に参加。あまりに唐突なので、この人は何?と呆気にとられたまま幕。普通、愛之助演じるところの高僧に成敗されて終わると思うのだが、突然現れた、誰ともわからない人にいいところを持っていかれた感じで、印象が散漫になった。ヒーローも悪役も、全部一人でやらないと気が済まないのだろうか。ゲストの扱いがあまりにぞんざい。

「はなさかじいさん」

本題は「疾風如白狗怒涛之花咲翁物語。」 (はやてのごときしろいぬ どとうのはなさきおきなのものがたり)というそうな。長くてとても覚えられない。タイトルに「。」がついているのが、正式らしい。どんな意図で?

新作なのはいいとして、なぜ花咲じいさん?演者はみな若手なのに、あえて老け役をやる意味がわかんない。花咲じいさんをモチーフにしたとしても、主人公を若くしてしまうという手もあったのでは。愛之助は人のいい老人を好演していたけど、海老蔵のは髪が白いだけで、老人らしさはなかったし。

海老蔵はこの演目でも、悪い爺さん(得松)、犬、殿様と三役をこなしていたが、一番よかったのは、悪い爺さん。爺さんというよりは、昔やんちゃした中年のスケベ親父といった感じだけど。動物を虐待するところとか、いい婆(セツ)の吉弥を口説くところとか、しょうもない悪党ぶりが板に付いている。

話は全体的に子ども向けの感じ。いきなり童謡を歌い出したり、意味もなく一寸法師が出てきたり、子どもに見せようとして作ったものならいいが、主に大人の観客に見せるには幼稚すぎないか?人が自然に手を加えて灌漑を行ったために川が氾濫して田畑が流されてしまっただの、かけがえのない綺麗な水を守ろうだの、妙に説教くさいのも、私としてはマイナス。

いい爺さん、正造の愛之助と吉弥は仲睦まじい老夫婦を好演。でも、この役が老人である必要かあるのか? 中年夫婦とか、もっと若い設定でも問題はなさそう。

子役の市川福太郎が狂言回し・悪い爺さんを刺す虫の役で、可愛らしく、達者な演技。団十郎の部屋子だそうだが、海老蔵のもとで、ちゃんと育ててもらえるのかしら。