2024年10月19日土曜日

10月18日 東京バレエ団「ザ・カブキ」

十数年前に観た時はピンと来なかったが、とても面白かった。仮名手本忠臣蔵への理解度が高まったせいもあって、舞台上で何が起こっているかが分かり、物語の再現度に驚いた。とはいえ、勘平腹切りのくだりはは説明不足。与市兵衛を殺したと思い込んで命を断った人がどうして連判状に加われるのか、初見の人には分からないだろう。

場面の最初に義太夫節の演奏があるのも良き。言葉による状況説明の後、言葉のない音楽と踊りが物語を引き取る演出が効いている。竹本じゃないよなと思ったら、呂大夫(五代目)と清治だった。

由良之助の柄本弾ははじめから最後まで踊りっぱなし。現代の(といって衣装は少し古い感じだが)若者が江戸時代に迷い込んで、はじめ傍観者だったのが判官の切腹を機に討ち入りを率いるリーダーになっていく様に説得力があった。
おかるの沖香菜子が小柄でほっそりしているので、おかっぱにペールピンクのレオタード、打掛という衣装がこの世ならぬ人のよう。勘平は池本祥馬。古典と現代のおかる勘平が併存するのはどんな意図なのだろう。

顔世御前の上野水香は品のある佇まい。判官の樋口祐耀とは夫婦なのに、並ぶと格が違う感じ。由良之助に討ち入りの真意を問うところで、半ば狂乱したように花の散った桜の枝を持って彷徨うのも優美。ただ、ここで赤褌に赤鉢巻の男たちが出てくるのは違和感。ラストの日の丸といい、三島由紀夫を彷彿とさせモヤモヤした。

討ち入りの場面は47人の浪士による群舞が圧巻。9人が並ぶ逆正三角形の隊列が美しい。

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