2024年6月23日日曜日

6月23日 宝生能楽堂 夜能

津田健次郎の朗読。
声の表現が豊かで、さすが引き込まれる語り。白拍子が妖艶なのはイメージと違ったけど、怨念が恐ろしいほど。住職が「我らが願い聞き入れたまえ!」と叫ぶところはヒーローみたい。 
中正面寄りの正面席目付柱近くに立ってやや下手目線だったので、ずっとこちらを見ているようでドキドキした。
長田育恵の上演台本は、白拍子目線の独白が面白い。が、最後の「ただ一度、あなたの瞳に見つめられ、その指に触れていただきたかった」というセリフには納得しかねる。蛇にまでなる情念はこういう控えめな態度と相入れないと思う。
雅楽の楽器の中に巨大な三味線をチェロのように弾いているのがあり、何かと思ったら豪弦という大正時代に作られたオリジナル楽器だそう。

能「道成寺」
宝生流宗家のシテ。小柄なせいか、可憐で健気に感じる。座席からは乱拍子の間中、視線の上にシテと小鼓方がいて、緊迫感のある息遣いを感じられた。小鼓方の鵜澤洋太郎は長い掛け声(イヨーッ)を声が掠れるまで伸ばしていて、シテは静止の緊張感を極限まで張っている。
鐘入りの前、烏帽子と扇を払ったのが白洲まで飛んで(すかさず後見が客席から回収)、鐘のしたに滑り込んで飛び上がるまでの息迫る迫力!
鐘が上がると誰もおらず、少し遅れて鐘の中から後シテが現れる演出。一瞬、消えたのかと驚いた。僧たちに調伏され、泣きながら引っ込むのは、蛇身に変わった我が身を恥じているようにも見えた。

アフタートークによると、野口兼資の型付けを参考にしたそう。中の段で乱拍子を繰り返し、最後に杖を投げて泣いて帰るのは十八世、鐘を引き上げた時に姿がないのは五世の演出?で500年前の伝書にある。鐘の中にぶら下がった状態で引き上げるため、通常よりも鐘後見を増やしたのだとか。宗家の体格(160cm台、52kg)と体力あってこその演出。乱拍子は申合せ1回のみ。相手の呼吸で変えていくのだそう。

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