文蔵と野村萬斎の対談「伝承と継承」
能の演出についてなど。かつて照明能を試みた時、数時間かけて徐々に日が暮れていくように照明を絞るよう演出したところ、照明スタッフから嫌がられたとか。新作能では古典にはないような演出をあえて意図して、鬼滅では暗転を取り入れたとか。
「養老」
水波之伝の小書。アイがなく、前場が終わると後ツレの楊柳観音が舞う演出は華やかでいい。シテは裕一。前シテの樵翁は若さが前に出てしまい、老人には見えなかったが、後シテの山神は緩急の効いた舞が清々しい。
「蝸牛」
囃子入の小書。ホール公演用に賑やかさを加えるため、20年ほど前に作った演出だそうで、「でんでんむしむし」と囃すところでお囃子が入る。野村萬斎の太郎冠者、裕樹の山伏、中村修一の主。
「葵上」
古演出によるとあり、前シテの六条御息所の登場時に車の作り物を置き、三人の青女房を従える。青女房がいると位の高さが感じられる一方、葵上を攻め立てるところは御息所の思いの激しさが薄まってしまうように思った。前場の終わり、橋掛に向かう途中、囃子座のあたりで奥義を放るのは、先週見た林宗一郎(葵上の着物に向かって投げつける)と違ったが、演出の違いか? 文蔵のシテは気品のある佇まいで、嫉妬に駆られる自身を抑えられない悲しみが満ちる。ツレの照日ノ巫女は裕一で、梓弓を持って登場。ワキは福王茂十郎。
咲くやこの花賞・大阪文化祭奨励賞受賞記念と銘打ち、ロビーには賞状とトロフィーが飾ってあった。
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