「寿曽我対面」
十世坂東三津五郎七回忌追善で、巳之助が初役で五郎を勤める。緊張感のあるキリっとしたいい五郎。セリフにも力があり、終盤は衿が汗で変色するほどの熱演。五郎はこうでなくては。時折素が見えるような感じがあったのが惜しい。十郎の時蔵と並んでも見劣りはしなかった。
工藤祐経の菊五郎をはじめ、大磯の虎の雀右衛門、朝比奈の松緑ら、菊五郎劇団の面々が脇を固め、見応えのある対面。化粧坂少将の梅枝も美しかった。
「連獅子」
仁左衛門が史上最高齢の御年77歳で親獅子に挑むというのが話題。親獅子は堂々と大きく、神々しさすら感じさせたが、全体としてはあまり感動できなかった。
出だしから時折、千之助の足元へ視線をやって気遣う様子は、役というより、中の人の心配に見えた。中盤からはだんだん役に入っていったが、谷底へ蹴落とした仔獅子を気遣ったり、生還するのを慈愛に満ちた眼差しで見守ったりというのはいいのだが、受ける千之助のほうの成長があまり感じられなかった。いや、成長はしたのだろう。余裕がある様子で、終始落ち着いて舞台に立っていたが、その分懸命さや健気さが感じられなかったのがマイナスポイント。花道を後ろ向きに引っ込むところはもっとスピード感が欲しかったし、片足立ちになると体の軸がぶれるなど、まだまだだなあと思うところも多々あった。
毛振りはゆったりと大きく毛を振る仁左衛門に対し、千之助が中盤スピードを増して若さで押していくのはよかった。
宗論は又五郎と門之助。又五郎が痩せたせいか面差しが変わり、別人のようだった。
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