2021年11月6日土曜日

11月5日 第十六回山井綱雄之会「新作能 鷹姫」

開演前から場内に波音と海鳥の鳴き声が流れ、普段の能楽堂とは違う雰囲気。
冒頭にシェイクスピア「ヘンリー六世」の一場面。戦場で父を殺してしまった息子(島田惇平)と、息子を殺してしまった父親(廣田高志)が演じたのだが、新劇らしいセリフのテンションと音量に調子を崩され、その後の鑑賞に集中しにくかった。

この劇の主役と思しき空賦麟(クーフリン)を山井綱雄。くどいくらいの熱演。はじめに登場する老人の櫻間金記は小柄な容姿がこの世ならざる者のよう。2人目の老人、観世喜正と身長差があるので、同じ老人?という感じがした。
タイトルロールの鷹姫は宝生和英。可憐さと神秘性があり、不思議な磁力が役にあっている。(アフタートークによると、「謡い宝生」なので普段は謡いから役を掴んでいくのだが、鷹姫役は言葉を発せず、舞の型だけで表現しなければならないのはチャレンジだったそう。山井は術にかからないはずなのに、つい惹き込まれそうになったとか。)

コロスは紋付袴に、顔の上半分を覆うマスクとヴェールのようなものが付いた帽子のようなものを被っているのだが、あまり見栄えがしない。コロスが舞台上をランダムに動き回るのは、時折動きに迷いがあるように見えた(多分、各々の動きを把握しきれていないのだろう)。

演出はカクシンハンの木村龍之介。能楽師でない演出家を立てるのは能楽史上初めての挑戦(書き下ろしの脚本家が演出するケースは別)で、鷹姫の歴史に爪痕を残したと自賛していたが…。もっとブラッシュアップして再見したい。

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