2021年11月28日日曜日

11月27、28日 新国立劇場バレエ団「Dance to the Future:2021Selection」

 「Coppelia Spiritoso」木村優子、木村優里
優里の振付。2人は姉妹なのかな。砂時計が回転し、人形が動き出す。コッペリアのワルツに乗って少女が戯れるようなかわいらしい踊り。舞台が暗転すると、今度は人形と少女が入れ代わり、再び砂時計が回る…という演出だったのだが、暗転したところで気の早い観客が拍手をしてしまい、ムードが台無し。

「人魚姫」米沢唯、渡邊峻郁
米沢の人魚姫がはかなくて、陸に上がったばかりで、足が頽れてしまう様子も可憐。軽々としたリフトが宙を舞うようだった。

「コロンバイン」池田理沙子、渡辺与布、玉井るい、趙戴範、佐藤和輝、高橋一輝
赤、黄、青の3組の男女ペアによる、青春の輝きみたいな作品。ちょっとコケティッシュな感じもあって、楽しい。衣装がちょっと昭和っぽかった。

「≠(ノットイコール)」柴山紗帆、益田裕子、赤井綾乃、横山柊子
出演4人による共同振付だそう。抽象的な音楽、黒、白の衣装に分かれ、時にシンクロして、時に対峙して踊る。これも終盤に暗転から再びシーンが続くのだが、気の早い拍手が…。暗転の直前、柴山が振り返って何かに向かうような動きがあって、明らかに続いている感じがあったのになあ。

「神秘的な障壁」米沢唯/木村優里
ベージュのビスチェのようなものとショートパンツをまとった上にシフォンのようなガウンをまとった衣装。裸みたいにしたいのか。

「Passacaglia」小野絢子、福岡雄大、五月女遥、木下嘉人
ありきたりなコンテという感じで、あまり印象に残らず。

「ナット・キング・コール組曲」
聴きなれたスタンダードナンバーに乗って、スタイリッシュな踊り。バレエダンサーが踊るととても洗練されて見える。


11月28日 淡路人形座

 渋谷の伝承ホールで公演。1人空けの座席はほぼ埋まっていた。

「伊達娘恋緋鹿子」
人形浄瑠璃というとこれなのね。お七の振りがくさいというか、少しオーバーアクションぎみ。太夫の友富士は高い声だが、義太夫というより、大衆演劇の裏声のよう。
三味線の友弥は音が軽い。

「日高川嫉妬鱗」
文楽にはない、天田堤では、道行く人々に安珍の行方を尋ね、渡し場では、蛇ならぬ緑色の龍に姿を変える。清姫の髪がはじめからほつれていたのは演出か? ガブと娘の顔との入れ替わりがあまりなく、けれん味が伝わりにくいのではと思った。
太夫は友里希の清姫に友庄のその他(通行人や船頭)。三味線は友勇で、安定感があった。

2021年11月27日土曜日

11月27日 アルトゥロ・ウイの興隆

初演時の草彅剛の評判が良かったので、再演を楽しみにしていたのだが…。ファンクバンド、オーサカ・モノレールの生演奏は盛り上がるのだが、どこかライブコンサートのよう。音楽が挟まるたびに物語が中断されるので、話の筋を追いにくい。

シーンごとに字幕が映し出され、国会議事堂放火やレームの暗殺、オーストリア併合など、比喩で表している実際の事件の解説が入るのだが、説明過多に感じた。具体的な事件といちいち照会しなくても、理不尽な出来事が重なって、独裁者の台頭を許してしまった怖さは伝わると思うのだが。

アルトゥロ・ウイの草彅は初めからスター然として登場するのだが、滑舌がいまいち。途中、スピーチの訓練をして変わるのかと思ったら、そうでもなかった。そして、踊りも歌も、私には響かなかった。

女優は七瀬なつみただ1人で、途中、ダンサーが身振りだけで役を演じ、セリフを七瀬がしゃべるという演出が? ダンスは格好よかったけど。
  
客席下りが結構あって、その時は一応マスク着用。観客が初めから手拍子したり、舞台からの呼びかけに応じて挙手をしたりしていて、作品の意図を分かっているのかと思った。最後に、熱狂する大衆を動かすのは簡単だというようなヒトラーの言葉が字幕で示されるのだが、どれだけ伝わったのか疑問だ。


2021年11月20日土曜日

11月20日 横浜能楽堂普及公演

 「鎌腹」
善竹隆司のシテ、妻は山本則重、仲裁人は隆平。
隆司は田舎者っぽいおおらかさ。山本はわわしい女房だが、ちょっと声が大きい。隆平が常識人ぽい。

「鵺」
宇高竜成のシテ、ワキは有松遼一、アイに隆平。
竜成は面をかけていてもよく通る声が聴きやすい。金剛流らしい、ダイナミックな舞も見ごたえあり。後場の面は鵺(現代鵺含む)のみに用いる専用面なのだそう。
地謡は黒いマスク着用。若宗家がときおり布をつまんでいたのは、息苦しいのかしら。

囃子方の大鼓(佃良太郎)と小鼓(住駒充彦)が合っていないような気がした。

2021年11月14日日曜日

11月14日 錦秋文楽公演 第2部

 「ひらかな盛衰記」

大津宿屋の段は靖・錦糸に錦吾のツレ。
この段も初見。子どもが取り違えられたのはこういうわけかと納得。でも、子どもらが行燈を倒してしまったときは、火事になるのではとハラハラした。(ただ真っ暗になるだけで、そのせいで子どもを取り違えたと)

笹引の段は咲・燕三。切場ではないので「切」字はつかず。
立ち廻りがあったり、三味線の手は面白い。お筆が格好いいが、死んだ主人を笹(竹?)に乗せて運ぶのはいかに。

松右衛門内の段は中を希・勝平、奥を呂・清介。
希は頑張ってはいたけれどあまり印象にのこらず。
呂はいつも通り。権四郎があっさり納得してしまうので???となった。

逆櫓の段は睦・清志郎。
睦は「やっしっし」は大きな声で勢いもあってよかったが、終盤高音がかすれてしまったのが惜しい。疲れがでたか。清志郎は複雑な手に気合の入った弾きっぷり。

人形は玉男の松右衛門が大きさがあって堂々としてた。玉也の権四郎、勘弥のおよし。

11月14日 錦秋文楽公演 第1部

 「芦屋道満大内鑑」

保名物狂いの段は口を碩・燕二郎(簾内)、奥を織、小住に藤蔵、清公。
奥は登場人物で語り分けるのかと思ったら、悪右衛門を織も小住も語っていて、どういう分担なのか分からず。保名物狂いは初めてみたが、狐が助けられ、保名と夫婦になる経緯がよくわかった。なるほど。

葛の葉子別れの段は中を亘・友之助、奥を錣・宗助。
体調がすぐれなかったせいか、あんまり泣けなかった。

蘭菊の乱れは呂勢、芳穂、咲寿、亘、碩に清治、清馗、清丈、清允、燕二郎の5枚5挺で華やか。舞台一面の白菊が雪景色のようでもあり。

人形は和生の女房葛の葉が、しっとりとしつつも、狐らしい仕草で童子をなめたりと、人ならぬものの風情。蘭菊の乱れは一人舞台。
紋臣の葛の葉姫は可憐。童子は勘次郎で、このところ子役が多いようだが、幼気でかわいらしい。


2021年11月13日土曜日

11月13日 錦秋文楽公演 第3部

 「団子売」

またか、というか、なんでここで団子売?という感じが否めない。は〇〇〇のような床は、お臼が三輪、杵造が希、ほか津国、南都、薫、文字栄に三味線は清友、団吾、寛太郎、錦吾、清方。
薫が眼鏡、マスク着用のまま舞台に出てきたので「ええ!?」と思ったが、客席にお辞儀をするころに気づいて外していたのでほっとした。周りの人は注意してあげないのかしら。
ツレの面々も、一言ずつ一人で語るパートを作ってもらっていたようだけど。

人形は玉勢と簑紫郎。


「ひらかな盛衰記」

辻法院の段は藤・團七にツレの清允。
法院と源太が障子の影で見えないあいだ、ツメ人形の百姓たちがガヤガヤする面白い場面。

神崎揚屋の段は千歳・富助に寛太郎のツレ。
以前、素浄瑠璃で聞いた時よりは物語が分かりやすかったが、なんだかなあという話だ。梶原源太のダメ男ぶりっにまったく同情できない。なんでこんな男が色男ってことになってるの?

人形は辻法院の玉佳、源太の玉助と、顔芸が先に立つ2人。梅ヶ枝の勘十郎はこういう役は好きそう。金策に必死の梅ヶ枝が、舞台下手の垣に頭を突っ込んでいる…と思ったらさばいた髪になって出てきた。確かに花魁の頭のままでは狂乱できないよなあとなっとく。

2021年11月7日日曜日

11月7日 吉例顔見世大歌舞伎 第二部

 「寿曽我対面」

十世坂東三津五郎七回忌追善で、巳之助が初役で五郎を勤める。緊張感のあるキリっとしたいい五郎。セリフにも力があり、終盤は衿が汗で変色するほどの熱演。五郎はこうでなくては。時折素が見えるような感じがあったのが惜しい。十郎の時蔵と並んでも見劣りはしなかった。

工藤祐経の菊五郎をはじめ、大磯の虎の雀右衛門、朝比奈の松緑ら、菊五郎劇団の面々が脇を固め、見応えのある対面。化粧坂少将の梅枝も美しかった。


「連獅子」

仁左衛門が史上最高齢の御年77歳で親獅子に挑むというのが話題。親獅子は堂々と大きく、神々しさすら感じさせたが、全体としてはあまり感動できなかった。

出だしから時折、千之助の足元へ視線をやって気遣う様子は、役というより、中の人の心配に見えた。中盤からはだんだん役に入っていったが、谷底へ蹴落とした仔獅子を気遣ったり、生還するのを慈愛に満ちた眼差しで見守ったりというのはいいのだが、受ける千之助のほうの成長があまり感じられなかった。いや、成長はしたのだろう。余裕がある様子で、終始落ち着いて舞台に立っていたが、その分懸命さや健気さが感じられなかったのがマイナスポイント。花道を後ろ向きに引っ込むところはもっとスピード感が欲しかったし、片足立ちになると体の軸がぶれるなど、まだまだだなあと思うところも多々あった。

毛振りはゆったりと大きく毛を振る仁左衛門に対し、千之助が中盤スピードを増して若さで押していくのはよかった。

宗論は又五郎と門之助。又五郎が痩せたせいか面差しが変わり、別人のようだった。

2021年11月6日土曜日

11月6日 東京バレエ団「かぐや姫」ほか

「中国の不思議な役人」
予備知識ゼロで見たら、さっぱり分からなかった。無頼漢の首領(鳥海創)という役どころがまず不明だし、娘だと思っていたら男性ダンサー(宮川新大)だし、ジークフリート(ブラウリオ・アルバレス)がターザンのような恰好なのも謎だし、若い男(伝田陽美)、中国の役人(大塚卓)やらの関係性もよくわからなかった。後で原作のあらすじを見てみたけれど、それとも違うようだ。
労働者階級のようなジャケット・パンツにハット姿の群舞が、様々なフォーメーションで舞台に展開するがベジャールらしく、面白かった。

「ドリーム・タイム」
武満徹の音楽にイリ・キリアンが振付。
3人の女性に2人の男性ダンサーがからむ、夢のようなひと時。衣装、照明も美しかった。

「かぐや姫」
金森穣振付の新作というので期待。会場の告知によると、今後、2幕、3幕を制作し、再来年にフルバージョンを上演するはこびだそうで期待したい。

金森はバレエ団への振り付けは初めてだそうだが、群舞もパドドゥも金森らしさがありつつも、美しく自然な感じ。道児の柄本弾をはじめ村人や童、かぐや姫、翁も裸足なのは、田舎の表現か。ラスト、着飾って都へ行く場面のかぐや姫はポワントだったので、その後はポワントの踊りになるのかな。

かぐや姫の秋山瑛は小柄で可憐な様子がかぐや姫に似合いそう。1幕は子ども時代のためか、やんちゃで元気がいい。

残念だったのは、背景に映像が使われていたところ。冒頭の桜の花びらは安っぽく、竹林や小判が飛び出すところなどは、舞台表現で十分だろう。スクリーンに映るものを見たいなら映画館に行けばいいので、舞台芸術に持ち込むのは興ざめだ。冒頭から登場する、波や竹林を表現するコールドの衣装もいただけない。メタリックな光沢のある(ラメではないらしい)生地で手や脚の側面にフリンジがついているのだが、安っぽく見える。絹の光沢くらいに抑えるほうが、場面の美しさが際立つのになあと思った。


11月5日 第十六回山井綱雄之会「新作能 鷹姫」

開演前から場内に波音と海鳥の鳴き声が流れ、普段の能楽堂とは違う雰囲気。
冒頭にシェイクスピア「ヘンリー六世」の一場面。戦場で父を殺してしまった息子(島田惇平)と、息子を殺してしまった父親(廣田高志)が演じたのだが、新劇らしいセリフのテンションと音量に調子を崩され、その後の鑑賞に集中しにくかった。

この劇の主役と思しき空賦麟(クーフリン)を山井綱雄。くどいくらいの熱演。はじめに登場する老人の櫻間金記は小柄な容姿がこの世ならざる者のよう。2人目の老人、観世喜正と身長差があるので、同じ老人?という感じがした。
タイトルロールの鷹姫は宝生和英。可憐さと神秘性があり、不思議な磁力が役にあっている。(アフタートークによると、「謡い宝生」なので普段は謡いから役を掴んでいくのだが、鷹姫役は言葉を発せず、舞の型だけで表現しなければならないのはチャレンジだったそう。山井は術にかからないはずなのに、つい惹き込まれそうになったとか。)

コロスは紋付袴に、顔の上半分を覆うマスクとヴェールのようなものが付いた帽子のようなものを被っているのだが、あまり見栄えがしない。コロスが舞台上をランダムに動き回るのは、時折動きに迷いがあるように見えた(多分、各々の動きを把握しきれていないのだろう)。

演出はカクシンハンの木村龍之介。能楽師でない演出家を立てるのは能楽史上初めての挑戦(書き下ろしの脚本家が演出するケースは別)で、鷹姫の歴史に爪痕を残したと自賛していたが…。もっとブラッシュアップして再見したい。

2021年11月3日水曜日

11月3日 国立劇場バレエ団「白鳥の湖」

 木村優里・渡邊峻郁ペアは正直言って、今一つ。

渡邊の王子は、1幕の憂いは悪くないが、少し幼いというか、青いというか。なんだか高校生のよう。踊りも、体を反らすポーズなどもう少し粘ってほしいと感じた。3幕は演技が拙く、喜びの表現はわざとらしく見えて思わず苦笑してしまった。特筆すべきは3幕のソロで、トゥール・アン・レールを2回づつ続けて飛んでいたところくらいか。(ほかの人は1回だったと思う)

木村のオデットは柔らかみが足りないように見えた。腕の動きとか、体を反らすところとか。オディールもなんかもの足りない感じ。

帰国したポール・マーフィーに代わって冨田実里が指揮。1幕のプロローグなどはワクワクする高揚感がすごくよかったのだが、2幕はちょっとちぐはぐな感じがあった。けれど、小柄な全身を使って指揮するせいか、オケを引っ張っていく気概を感じる。指揮者が変わるとこんなに演奏が変わるものかと驚いた。金管はちょっと残念で、ファンファーレのトランペットはがっかりして苦笑してしまったし、ホルンも調子が外れた。