2021年4月24日土曜日

4月23日 カメレオンズ・リップ

客席はほぼ満席。松下洸平がケラの作品でどんな魅力を引き出されるのかと期待していたのだが、私の好みではなかった。早口で捲し立てるセリフが耳に触ってしんどかったし、何故か見たこともない初演の堤真一の影がチラついた。これは、生駒里奈も同じで、深津絵里のように見えるところがたびたび。初演は宛書きみたいなものだったのかもしれないが、再演するなら新しいキャストの魅力を引き出してほしい。

脚本もいまいち。「甘美なだまし合い」ってどこが?うそにうそをかさねるばかりで面白さが感じられないし、何よりちょくちょく挟まれる尾籠な描写に嫌悪感しかない。物語上必要でもなさそうだし、下ネタの出したら客が笑うと思っているなら幼稚だ。


2021年4月23日金曜日

4月22日  国立能楽堂企画公演

 「木六駄」

千五郎の太郎冠者に宗彦の主、七五三の茶屋、松本薫の伯父。

千五郎の実力を初めてと言っていいくらい体感した。牛を追う様で12頭の牛を引き連れる空間の広さが感じられ、雪の降る中で往生する辛さが身に染みた(今と季節感には外れるけど)。笑いを取りに行くより、こういうちょっと渋い作品のほうが本領が発揮されるのかも。


「泰山木」

世阿弥作とされながら、観世流には伝わっていなかったという復曲もの。(金剛流では「泰山府君」の題で所演)観世清和の天女、泰山府君には金剛永謹を招き、ワキに福王茂十郎、和幸、知登の親子、アイの花守には茂山千三郎という顔ぶれ。

福王親子が3人そろって声を発すると、声がよく似ているということがよくわかる。独特の深く、響きのある声が異世界に誘う。

桜を愛で、盛りの短さを惜しむという物語の起伏はあまりない。復曲時には、世阿弥の時代のようにシテやワキも地謡を謡う演出だったそうだが、今回は現行型の地謡だったので、特に目新しさもなく。

2021年4月21日水曜日

4月17日 文楽公演 第三部

「刀剣乱舞」とのコラボ効果で、客席にはいつもと違う客(主に女性)が多く、ちょっとキャピキャピしてる。

「傾城阿波の鳴門」

改めて聴くと、ひどい話だよなあ…、としみじみ。遠路はるばる会いにきた娘を追い返すお弓も辛いが、何より許し難いのは十郎兵衛!年端も行かない子供から金を巻き上げたり、騒ぐからと口を塞いであげく殺してしまうなんて。死体の始末といって、障子を立て掛けて燃やしてしまうのもびっくりだ。

前は御簾内で碩・燕二郎。短いながら役目をきっちりと果たした。盆に乗せず、あえて御簾内にするのは修行の意味もあるのかな。やたら出遣いにする人形との違いを感じたり。

前は千歳・富助。
あの…千歳さん、調子悪い?特におつるの詞が力入りすぎの感じで、可愛さや哀れさが感じられなかった。声が掠れ気味で、高音が耳に障ったのもあるか。

続く靖・錦糸が上出来!靖の声が素朴な雰囲気に合っているのもあり、物語の哀れさが胸をついた。この日に限っては、千歳よりよかったとすら思う。錦糸の三味線も過不足なく安心できる。

人形は勘十郎のお弓、休演の玉也に代わって玉佳の十郎兵衛。おつるの勘次郎がよく、哀れさが増した。


「小鍛冶」
床は織、睦、芳穂、小住、亘に藤蔵、清志郎、友之助、清允、清方。

織は神の役を意識してか重々しい様子。清方は胡弓も弾いて、入門からまだ日も浅いのに。

人形は玉佳の宗近、ダブルキャストの老翁実は稲荷明神は後半の玉志。肝心の相合槌が、玉志のリズム感が肌に合わす、なんだか気持ち悪かった。狐振り?で飛ぶように移動するところで何故か横向き気味だったのも??だった。


2021年4月19日月曜日

4月18日 文楽公演 第一部

「花競四季寿」

錣、芳穂、希、靖、碩、文字栄に宗助、清馗、寛太郎、錦吾、燕二郎。

人形は万才が簑紫郎、玉勢、海女が簑二郎、関寺小町が勘弥、鷺娘が清十郎。清十郎の鷺娘は引き抜きも決まってよかった。

「恋女房染分手綱」

道中双六の段は睦・勝平にツレが咲寿、清公。
睦は声がよく出ていて、破綻がなく好演。声はいいのだから、この調子でいってほしい。咲寿は声の調子が外れぎみだがちょっとふざけた感じの役には合っていたか。

切は咲・燕三。

人形は和生の重の井に気品があり、隠された情を感じさせる。
三吉の玉彦も健気。


2021年4月18日日曜日

4月17日 文楽公演 第二部

「国性爺合戦」

感染拡大が続く大阪に来ていいのか迷ったけど、簑助が今月限りで引退を表明したので意を決して来阪。来てよかった。

簑助が登場する「楼門の段」は呂勢・清治。大和風だという、美しい節が呂勢の美声で心地よい。清治の三味線も心なしか柔らかく聞こえ、約50分の耳福。
簑助の違う錦祥女が登場すると、いつもより大きく、長い拍手。この間も床は演奏を続けているわけで、手短に!と思わなくもないが、気持ちはわかる。簑助は楼門の上でほとんど動かないながら、表情豊かな人形遣いは健在。ただ、いつもは自身の顔や目線はあまり動かさない印象だったのに、この日は人形より先に簑助ご眼下の老一心を覗き込んだら、遠方を見やるような様子が見受けられた。
(翌日再見。簑助はいつも通り。途中、老一官が長めに語るところで椅子に腰掛けているようなが様子があり、そのせいでいつもと違って見えたのかも)

続く「邯鄲館の段」は呂・清介。力の入った三味線には及ばないものの、今日はよく聞こえるな…と思っていたら、盆が回って次の藤・清友の音量が全然違う!(翌日改めて聞いてみると、やはり声量が足りない。甘輝が錦祥女に剣を突き立てる緊迫感のある場面での立て詞も気が抜けたようで、聞くのが辛かった…)

紅流しより獅子が城の段は藤・せいとも。藤はタガが外れることもなく、ここぞという時は大きな声がよく響いた。

初めの「平戸浜伝いより唐土船の段」は掛け合い。希の和藤内、小住の小むつはニンからいったら逆では…とおもったが小住が検討。希は声は悪くないのに、一本調子というか、板についてない感じがする。ほか、津国の老一官、南都の一官妻、咲寿の栴檀皇女。「とらやうやう」て何だろう?中国語らしさが全く感じられないのだが。
三味線は清志郎、清丈、清公。

千里が竹虎狩の段は口が御簾内で亘・清允。奥は三輪に団七、団吾、錦吾。この段って三輪の持ち役なの?虎役がひょうきんな動きで笑いをとっていた。三輪とのからみはあっさりめ。

人形は玉助の和藤内。人形より本人の演技が大きいのが目についた。表情がついてしまうくらいはまあ仕方ないところもあるだろうけど、人形よりも大きく首を振ったり、睨みをきかせたりするのはどうかなあ。
甘輝館から後の錦祥女は一輔。終始眉間に皺がよってたようなのはいかに。人形は簑助が遣っていたものと冠や髪飾りが違った。座るとき左の膝を立てていたのはワザと?それにしては半端な感じだったが。
栴檀皇女の清五郎が珍しい若い女形で、可憐だった。

2021年4月12日月曜日

4月11日 笑えない会番外編 笑える会

 オンラインで視聴。

落言「冷庫知新」のみメモ。村上慎太郎作・演出で興味があったが、ドタバタ劇という感じ。家の主(よね吉)が、何でもかんでも冷蔵庫に入れてしまう妻をぼやきつつ、一人ビールを傾けると、冷蔵庫の中のひよこ饅頭(千五郎)、賞味期限切れのマヨネーズ(茂)、備長炭(宗彦)が、食材がぎゅうぎゅうに詰め込まれた冷蔵庫から脱出しようと悪戦苦闘(?)。

ひよこ饅頭は千五郎のフォルムからの配役?茶と黄色系の装束でそれっぽく見えなくもない。マヨネーズは黄色い装束にオレンジ(朱色?)の烏帽子、備長炭は黒づくめ。備長炭っていうキャラもよくわからないなあ。4人がわちゃわちゃしている面白さだけで、何だかあまり印象に残らない作品だった。小佐田定雄の落言「神棚」はもうちょっと、物語の骨格がしっかりしていたように思う。

2021年4月11日日曜日

4月10日 四月大歌舞伎 第三部

「桜姫東文章」上の巻

念願の!仁左衛門&玉三郎の桜姫‼︎チケット取るのに苦労したかいあった!!!
これまで色々な桜姫を観てきたけど(歌舞伎だけじゃなく)、これぞ決定版という感じ。2人の色気が凄まじい。36年ぶりの共演で、お二人ともが若さと美貌を保っているのが奇跡的。若作りの痛さは微塵もないもの。何度でも観たい。

仁左衛門は清玄と権助の演じ分けが凄い。清玄はシュッとした容姿なのに、ちょっと頼りないというか、煮え切らないというか、白菊丸をみすみす先立たせて怖気付くみっともなさ。17年後、高僧となり立派そうにふるまうものの、破戒してからの桜姫への執着がなんともうざい。一方の権助は悪の色気。桜姫との濡れ場の色っぽいことといったら!後ろの席のご婦人(けっこう年配)が変な声出してたよ。

玉三郎は白菊丸の可憐さ。お稚児さんはこうでないと。そして、桜姫は一見おぼこい姫でいながら、権助の入れ墨を一目見るや一変。権助に迫るときの恍惚、妖艶さ。視線で、身のこなしで、言葉より雄弁な誘い。視線が絡み合うのがなんとも言えん。

局長浦の吉弥もよかった。歌六は最近老け役でばかりみていたので、残月が長浦より年下⁉︎とビックリ。悪五郎の鴈治郎は悪役なのに憎めない。ちょっと下膨れの顔がいい人そうというか。千之助が吉田松若で出演。花道の引っ込みで、歌舞伎の動きになってない。もっとお稽古してください、と思った。

※20日再見。運良く2列目(=実質最前列)のチケットが取れた。間近で見る2人の色気の凄まじさよ。権助と桜姫の濡れ場では、御簾の下りる直前に権助が腰をぐっと抱き寄せ、桜姫が腰を反らせたのまではっきり見えた。


2021年4月10日土曜日

4月10日 国立能楽堂 普及公演

所用あって、万作の「魯蓮」は観られず。

「夕顔」
金春流は地謡がマスク着用。客席は1列目を開けただけの満席なので、ちぐはぐな感じ。いつまで続くのか。

シテは本田光洋。装束の着付けせいか、身体が傾いでみえたのが気になって…。プログラムを見たらかなり年配なので、お歳ゆえか。

ワキは飯冨雅介。ワキツレ2人を連れてものものしい。ワキ座の辺りに来てから、半径50センチほどのなかでしきりに向きを変えるのはどういう演出なのだろう。


2021年4月9日金曜日

4月9日 奈々福・吉坊 二人会

想う女、想わぬ女のタイトルで、浪曲と落語をそれぞれ一席。

前読みは富士綾那「陸奥間違い」。本人も季節外れと言っていたが、練習中なのかまだぎこちないところも。声はよく、節もしっかりしているが、セリフの語り分け、キャラクターの描き方がもう一つ。

奈々福は「悲願千人切りの女」(抜き読み)。ホームグラウンドの木馬亭だからか、今まで聞いた中で一番伸び伸びしていた。一声で前座との力量の差がくっきり。女千人斬りを果たしたという、幕末・明治の歌人松の門三艸子の物語。こんな女がいたとは…。三艸子に惚れて惚れて身分を捨てた男の、報われない恋が切ない。

吉坊は「たちきり」。期待していたほどではなく…。よね吉の熱演が耳に残っていて。外の騒音(音楽?)が漏れ聞こえてきたのにも興がそがれた。

アフタートークは、吉坊が最近ツイッターで毎日和歌を挙げている件について。四天王寺の雅楽の話から、能楽のルーツまで、えらい専門的なお話だった。