2020年2月24日月曜日

0223 京都観世会二月例会

「巻絹」
河村浩太郎のシテに浦田親良がツレの男。
シテは巫女の姿のまま神楽を舞い、狂乱していくさまが興味深い。

「呂蓮」
茂山あきらの出家に千三郎の男、鈴木実の女房。終盤に登場する女房がわわしい女で、ガラリと雰囲気が変わる可笑しさ。鈴木の女房におかしみがある。

「大原行幸」
梅若実のシテに片山九郎衛門の内侍、味方玄の局、大江又三郎の法皇。
シテとツレの2人は大振りの作り物の中に入って登場。引き回しの中に隠れて登場するのは、体調不良の梅原には都合がいいのだろう。
声には独特の力があるが、太い杖を用いたり、造り物から出るところで局に手を引かれたりと、やはり体調は良くなさそう。

「海士」
橋本光史のシテ、ツレの房前大臣を梅田晃熙。
後シテの龍神は女神で、舞はおとなしめだった。

2020年2月23日日曜日

0222 インディアン・ロープ・トリック

空へ投げたロープを伝って登る魔術師?の伝説をモチーフに繰り広げられる物語。時代を追って伝説が繰り返され、劇場空間がインドの市場と混然としてくる。円形の舞台をぐるりと客席が囲み、大道芸を観ているような雰囲気。
出演者は3人の役者とドラム1人。魔術師と弟子、見物人など役割を変えつつ、観客を物語の世界へ誘う。紅一点のサンジュクタ・ワーグはダンサーなのか、シェネのような回転を見せた。タンバリンのような小型のドラムが多彩な音色を奏でるのに驚いた。言葉は英語が中心で、時折ヒンドゥー語?が混じるのだが、字幕がだいぶ省略されているようでもどかしかった。

2020年2月22日土曜日

0221 匿名劇壇「運命的なアイデア」

フラッシュフィクションという寸劇を連ねた構成。
社内結婚を促進しようというキャンペーンで、フラッシュモブを使ったプロポーズを撮影しようとしている現場、らしいのだが、関係なさそうなエピソードが織り交ぜられ、嘘か本当かがあいまいになる。恋愛がモチーフというか、ちょっとエッチなエピソードが多く、少し戸惑った。
好きと告白しようとしてチョコパンを食べてもぐもぐしてしまう話がかわいかった。

2020年2月18日火曜日

0217 MONO「その鉄塔に男たちはいるという+」

1998年に初演した作品を劇団30周年に当たり再演。本編に先立ち、新メンバーによる番外編が30分ほど。
同じ鉄塔を舞台に、本編の数十年前の設定。離婚危機にある夫婦と、夫の妹、その友人で現地で暮らす女が旅する。分かり合えない男と女、兄弟、友人のチグハグさが可笑しくもあり悲しくもあり。夫婦の息子が、成長して本編のマイムカンパニーのメンバーになるというかかわりがあるものの、内容面での関連がよく分からなかった。

本編は、戦地へ慰問に来たマイムカンパニーのメンバーが逃走し、鉄塔に隠れている。近く戦争が終わると聞いて、それまで難を逃れようとしていると、逃走兵が合流して…。極限下にありながらもくだらないやり取りを続ける男たち。20年以上前はどうだったか分からないが、今の時代により現実感が高まっているような設定。ラストはまさかと思わせながら、やはりの幕切れ。何となくでは逃れられない現実の厳しさを突き付けられたよう。

2020年2月17日月曜日

2月16日 二月大歌舞伎 昼の部

「菅原伝授手習鑑」より加茂堤 筆法伝授 道明寺

十三世仁左衛門の追善で、当たり役の菅丞相を当代仁左衛門が。神々しいまでの気品がありながら、道明寺で庭の池を見やるところなどは色気も感じさせる。人形と本物の演じ分けも見事だか、やはり刈谷姫とも別れの涙に情が溢れる。

千之助が刈谷姫。線が細く、声もいいので、姫の拵えは似合う。が、女方の経験が少ないので所作はまだまだ。斉世親王の米吉がスッとした品がある。
桜丸の勘九郎、八重の孝太郎は良い夫婦ぶり。
園生の前の秀太郎、苦しいのか息をふうふう言っていたように見えた。

筆法伝授、希世の橘太郎はもう少し滑稽味があってもいいかも。梅玉の源蔵、時蔵の戸浪が手堅い。腰元勝野の莟玉が可憐。

道明寺は玉三郎の覚寿が思っていた以上によぼよぼしたお婆さんで、気丈に振る舞う様子に情がこもる。立田の前の孝太郎が刈谷姫の千之助を終始気遣う様子で、役と混然としていた。

2020年2月16日日曜日

2月15日 二月大歌舞伎 夜の部

「八陣守護城」
我當の佐藤正清はほぼ座ったままで、右手は刀の柄に添えたまま。滑舌が悪くせりふは聞き取りづらかったが、元気そう。脇に控える進之介が終始気遣う様子。
終盤、刺客として登場する千次郎が颯爽としてよき。

「羽衣」
玉三郎の天女に勘太郎の伯竜。能仕立てですり足の平行移動の舞なので、変化に乏しく退屈。花道から登場した天女の声に癖があり、耳に障る。天女が鞨鼓を下げているのは何故だろう。

「文七元結」
菊五郎の長兵衛は円熟。足取りに軽さがなかったり、動作が重かったりするものの、セリフの間や情感はこれぞという感じ。
お兼の雀右衛門は、長屋のおかみさんを好演。地色の拵えだと、バカリズムに顔が似ている。
文七の梅枝は真面目な感じが役に合っている。もう少し頼りなげでもいいように思ったが、このくらいの方がリアルなのかも。
お久の莟玉が、健気で可憐なのだが、セリフの情が足りない気がした。あと、前半は地色の地味な化粧なのに、50両を返して家に帰ると白塗りになるのは別人みたいだ。

「道行故郷の初雪」
梅川忠兵衛を秀太郎と梅玉で。秀太郎は当たり役の梅川を丁寧に勤め、足取りはおぼつかないものの、時折ドキリとする可愛らしさわ美しさがある。
松緑の万才は時間つなぎ?

2020年2月15日土曜日

2月14日 霜乃会+「講談会☆聖バレンタインデー」

バレンタインにちなんで?南龍が「細川忠義の血達磨」。立て板に水の勢いで畳みかけてほしいところで、言いよどむようなところがあるのが気になった。

2020年2月14日金曜日

0214 第十回システィーナ歌舞伎「NOBUNAGA」

織田信長が実は双子で、宣教師や吸血鬼が絡んで、のトンデモ展開に目が点。今井翼の復帰作なので、1幕ではフラメンコのソロ、2幕では歌唱と見せ場たっぷりはいいとして、愛之助=信長との絡みは少なめ。だからって、ラストで手を携えてポルトガルへってのはどうよ。
今井のフラメンコはカウントで踊ってる感じがした。歌は、決して下手ではないのにゾワッとした。過去の愛之助の歌でもゾワッとしたから、システィーナ歌舞伎の歌が苦手なのかも。
愛之助の信長は逆立った短髪で洋装。獅子のイメージか。声の調子だけで双子を演じ分けるので、いまいち分かりづらい。イザベラに籠絡されて吸血鬼になった三郎が放蕩にふけっているあいだ、四郎はどうしていたのかとか、急に現れた四朗に「信長を討て」と言われたら人格の不一致にもっと戸惑うのではとか、イザベラは四郎の存在を知らなかったの?とか、色々突っ込みどころはあった。クライマックスが、光秀が信長を討つ場面なので、座頭のはずの愛之助の存在感が今ひとつ。
事実上の主役では?という明智光秀は吉弥。老け役でない立役で、キリッとした役は珍しい。
見所は森蘭丸の壱太郎。誘惑しようとするイザベラ応じて駆け引きする色っぽさや、信長の前で家臣を嬲り殺しにするる残忍さなど、新境地ひ開いた感。二役でお市の方が浅井とともに攻め滅ぼされんとするところは、独白と舞で本領を発揮。
前半の信長軍の軍議の場面で、翫政の秀吉役は抜擢?と思ったが、出番はこの場面だけで残念。よく似合っていたのに。愛治郎、愛三郎らも家臣の一人として列席して、凛々しい姿を見せた。
システィーナではお約束になりつつある、歌劇出身者たちの踊りがなあ…。場つなぎで必要なのだろうけど、ピンクのヒラヒラのドレスが安っぽく、ドレスがの上に着物を羽織って踊るのも取ってつけたよう。比叡山焼討ちや本能寺の場面で、赤い旗や布をはためかせて炎を表現する演出は悪くなかったが、衣装がもっと抽象的だったらよかったのに。

2020年2月12日水曜日

0211 アリーナ・コジョカル ドリームプロジェクト

東京公演のAプロとBプロのいいとこ取りのようなプログラム。菅井円香とキム・キミンの「海賊」から。録音で、舞台装置なしという条件ではあるが、2人のテクニックを堪能。菅井は端正な演技で、キムはダイナミック。パートナーワークは東京より息が合ってたよう。

「マノン」はベッドや書物机のセットがあるが、音が生演奏でないので少し物足りない。コジョカルの可憐さは変わらず。

菅井の「ヴァスラフ」はコンテンポラリー。さっきポワントで踊ってて、ここでは裸足で、次のドンキでまたポワント!?とびっくりしたけど、クラシックと打って変わって、力強い踊り。

「ドン・キホーテ」はナンシー・オスバルデストン、菅井、キム、玉川貴博。2人のキトリは東京と同じだが、菅井の相手のバジルが玉川貴博に。ソロで跳躍を披露したものの、回転技はキムだけで競演がなく、ちょっと肩透かしだった。

「エディット」「ABC」は東京と同じ。

2幕は「マルグリットとアルマン」。ポルーニンのアルマンは魔王のような迫力で、別の物語のよう。マントを翻して、病床のマルグリットに会いに来るところとか、猛禽類にさが襲いかかってくる勢い。コジョカルのマルグリットは華奢で、今にも手折られそう。これはこれで、見応えのある一幕だった。

2020年2月10日月曜日

0209 ジゼル・ヴィエンヌ、エティエンヌ・ビドー=レイ「ショールームダミーズ#4」

日本人キャスト6人によるクリエーション。マネキンとダンサーが入り混じり、主客、支配するものと従うものが入れ替わる展開はスリリング。ダンサーばかりの配役の中で、俳優の朝倉千恵子が狂言回し的な役割りを担うのだが、表情の演技がはっきりせず、意図が分かりにくかった。

2020年2月9日日曜日

2月8日 文楽 第2部

「新版歌祭文」
睦・勝平→織・清治→咲・燕三のリレー。
咲の久作がよかった。だが、久作がお夏清十郎を例えに2人を諌めるところで笑いが起きるのはなぜか分からん。
人形は久松を玉助。あんまりしどころのなさそうな役で、なぜ2人の女に惚れられるのか。諸悪の根源はお前だろ!と責めたくなる(←多分褒めてる)

「傾城反魂香」
1月大阪と同じ配役。
錣は語りがより多彩になった感じ。又平のどもりはどもりらしく、女房の軽口もよりくっきり。

口上は基本的に大阪と同じだったのだが、おいどのエピソードで「顔面蒼白になって」とか余計な描写を加えたせいか、宗介がうつむきながら笑いをこらえていたように見えた。

2月8日 文楽公演 第3部

「新口村」

口は御簾内で亘・友之助。
呂・清介。呂の語りはいつも通りなのだが、曲がいいのだなあとしみじみ思った。

人形は玉佳の忠兵衛に勘弥の梅川、玉也の孫右衛門。地味にいい配役。「今じゃない」のところで、明らかに知っていて笑っている人がいた。(忠兵衛が飛び出すだいぶ前、孫右衛門が「名乗って出い」と言うところですでに笑っていたから)何故?話の筋を分かっていたらここは笑うところではないと思うのだが。

「鳴響安宅新関」
藤の弁慶、織の富樫、芳穂の義経に南都、文字栄、亘、碩。三味線は藤蔵を筆頭に、清志郎、清丈、清公、錦吾、清允、清方。
織、藤蔵の熱演は周囲から浮き上がるほど。
人形は玉男の弁慶に玉志の富樫。山伏問答の緊迫感など、歌舞伎のほうに分があると改めて思った。

2月8日 文楽公演 第1部

「菅原伝授手習鑑」
車引の段は靖の梅王、咲寿の桜丸、芳穂の松王、碩の杉王、津国の時平に清友。
靖、芳穂はこういう役は問題なし。碩もちょっと雑魚っぽい杉王みたいのは難なくこなす。咲寿は床本めくるのが格好つけ過ぎな割に、ガチャガチャした語り。津国の時平は、大笑いか長々と続き、拍手が起きていた。
人形は蓑紫郎の桜丸の型がきれいだった。

茶筅酒は三輪・團七。声がよく、チャリっぽいところも、嫁3人の語りわけもしっかり。

喧嘩の段は小住・清馗。小住は声がよく出ていいなだが、上品にまとまっているような感じもする。

訴訟の段は靖・錦糸。冒頭の低い声が辛そうで、今ひとつ精彩を欠く。難しいのかな。錦糸の顔も渋い。

桜丸切腹は千歳・富助。白太夫が八重を説得するところは情にあふれ、拍手がないのが不思議なくらいだったが、それ以外は元気すぎるというか、渋みが足りない感じだった。住太夫のイメージが強いからかも。一音一音を切ってスタッカート気味に語るのが、耳に触った。
人形は蓑助が切腹する桜丸を遣い、八重の勘十郎と師弟共演。玉也の白太夫は安定。


2020年2月8日土曜日

2月7日 少女仮面

冒頭の少女貝(木崎ゆりあ)と老婆(大西多摩恵)の場面に続き、喫茶「肉体」のボーイたちの場面は唐作品に力及ばずという感じで楽しめなかったが、春日野八千代役の若村真由美が出てきてからはぐっと引き込まれた。客席後方から、強烈なスポットライトを浴びて登場する煌びやかさ。低い声でのセリフが男役らしく、現役の宝塚の男役よりらしいのではと思うほど格好いい。貝と嵐が丘の一節を演じ、フィナーレで登場するところなど、思わず拍手しそうになったし。
無機質な舞台装置、ポップにボカロ編曲された悲しき天使など、杉原らしい味付けがはまっていた。
人形役の森田和真が上手い。

2020年2月7日金曜日

2月6日 アリーナ・コジョカル ドリームプロジェクト Aプロ

コジョカルが怪我で、プログラム、キャストか変更されていたのだが、満足度の高い公演だった。

1部「バレエ・インペリアル」は女性ダンサーの群舞が美しい。白いチュチュは雪の精のようで、フォーメーションも凝っていて見応えがある。

2部は「海賊」から。アリ役のオシール・グオーネは黒人で、厚い筋肉質な体が役に合っている。跳躍も回転もブレのない確かな技術。スピンの後半、スピードが上がったように見えたのがすごい。 メドゥーラは菅井円加。健全な感じのする踊りだ。

新作の「エディット」はピアフの歌に合わせてのソロ。ナンシー・オスバルデストンは舞台に上がる前の怖れから、打って変わった情熱的な力強い踊りへ。歌っていないのにピアフの情熱的な歌唱が感じられる。

ヨハン・コポーの「ABC」は洒落た作品。アルファベットの頭文字の順にキーワードがアナウンスされ、それに合った動きをするというもの。Aでアラベスクとか、Cでシャッセとか、バレエの動きをしたかと思うと、ニジンスキーら過去のダンサーの名前でそれっぽいポーズをしたり。Vのバリエーションではジゼルや色々な役をメドレーで。ちゃんと踊れるというところも見られて面白い。色んなダンサーで見てみたい。

「マノン」のパドドゥはコジョカルとフリーデマン・フォーゲル。コジョカルは軽やかな足取りで、儚げ。繊細な演技がドラマチック。 フォーゲルは好青年な感じ。

ラストは「ドン・キホーテ」のデヴェルティスマン。オスバルデストンと菅井のキトリとグオーネとキム・キミンのバジル。それぞれダブルキャストで踊りまくったら、そりゃあ盛り上がるさ。キムは高いジャンプがかつての熊川哲也を彷彿とさせる。バジル2人と、道化役(玉川貴博?)が3人並んで回転技を繰り広げるクライマックスが圧巻で、キムの速さ、安定感か際立った。


2020年2月3日月曜日

2月2日 イマーシブシアター サクラヒメ

正直言ってつまらなかった。1時間15分ほどの上演時間では仕方ないとはいえ、物語が薄い。3階席から観たが、 フラット舞台の後方半分ほどが見えず、何かをやっている気配が感じられるのがもどかしい。これはどこの席だったとしても、一定場面は見えないようになっており、舞台全体を見られない不満は多かれ少なかれありそう。フラット舞台にいる観客は逆に、目の前の限られた場面しか見えないだろうし、それで物語のどれほどを理解できるのか。
5人の恋人候補は、どれも人となりが描き足りない。アクロバットの鳶の男がやたら跳ねていたり、陰陽師がなぜかタップだったり。踊りを見せるなら見せるで、もっと密度高くてもいいのでは?セリフが録音みたいだったのも興ざめ。誰か贔屓の演者がいれば、その人が間近で見られる楽しみはあるのかも。

2020年2月1日土曜日

1月31日 霜乃会プラス 文楽

「一谷嫩軍記 組討の段」を碩太夫、燕二郎。
力いっぱいの熱演で好印象。碩は声がよく、語り分けも十分だし、フシも聴かせた。燕二郎はよく手が回り、明晰な音がいい。ちょっと力みすぎたかというところもあったが、若いうちはこれくらいでないと。

0131 「キレイー神様と待ち合わせした女―」

松尾スズキの代表作とのことで、4時間近い長い舞台ながらよく練られていて内容が濃い。戦争の虚しさとか、大豆兵のクローンとか、時代性のあるテーマを笑いに包んで訴える。
戦争は嫌だけど、戦争利権で生きている強かな母ちゃん役を演じた皆川猿時が意外によかった。後半、政治家に転じるのも筋が通っている。
主人公ケガレの生田絵梨花はミュージカルで活躍しているだけあり、歌が達者。成人したミソギ役の麻生久美子は歌は今一つだったが。
少年ハリコナ役の神木隆之介は初舞台だそうで、歌も踊りも懸命な様子に好感が持てる。ちょっと空回りしている感じもあったが。
マジシャン役の阿部サダヲのテンションがこの役には合っている。
総じて面白い舞台だったが、誘拐・監禁された少女という設定が男の変な妄想が透けて見えて嫌らしいとか、知恵遅れのバカとか、ホモセクシュアルを揶揄するような描き方はどうしたものかとか、少々引っかかるところはあった。