2015年10月31日土曜日

Kバレエカンパニー「白鳥の湖」

2幕、中村祥子のオデットが現れるだけで空気が変わる。圧巻。腕の動きが表現豊かで、悲愴さが際立つ。気品と繊細さ、空気を纏ったような柔らな動き。これまでオデットはあまり好きではなかったのに、すごくよかった。意外にもオディールよりも。

白鳥の衣装がチュチュなのはオデットだけで、他は羽を束ねたような、やや長めのスカートなのは、オデットを際立せるためか。群舞がジゼルみたいだった。

オディールの曲がいつもとちょっと違ってちょっと肩すかしだったせいか、3幕は期待したほどでなく。後方の席の人が終始鼻をすすり続けていたので集中できなかったせいもある。他の人は気にならないの?咳は止めることができないけど、鼻をすするのは意識的なのだから余計に気になる。誰だか特定できたらティッシュをあげたのだが。

4幕で一部の白鳥の衣装が薄いブラウンになったのはどういう意図か。
最後は湖に飛び込んで自害し、オデットが人に戻ってめでたし、という私の嫌いなパターン。

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10月31日 錦秋文楽公演 第1部

「碁太平記白石噺」 田植の段 口を小住大夫と清公、奥を松香大夫と清友。 小住大夫が1人で語るのを見るのは初めてか。発生がちゃんとできていて、安心して聞いていられる。 松香大夫、侍を待と読み間違えそうになったような。 浅草雷門の段 口を希大夫と龍爾、奥を咲甫大夫(津駒大夫の代役)と寛治。 希大夫の声は伸びやかでいいな。大道芸人?のコミカルな場面なので、楽しくていい。 咲甫大夫はこの頃チャリ場が多い気がするが(今日は代役だったけど)、だからいいってもんでもないようだ。寛治はいつものように、人形のようにちょこんと座っているようなのに三味線は過不足のない音に聞こえる。余計な力が入ってないということだろうか。 新吉原揚屋の段 英大夫と清介。 口上で「ただいまの切」と言ったように聞こえたのは気のせいかな。 前の場と打って変わってシリアス。父親の仇を、といって終わってしまうのはちょっと物足りない。 「桜鍔恨鮫鞘」 鰻谷の段(しか残ってないそう) 中を靖大夫と清丈、奥(チラシには前とあるが)を呂勢大夫と清治、切を咲大夫と燕三。 今日改めて思ったのは、呂勢大夫は声が多彩だ。お妻とお半の母と娘の涙ながらの会話が哀しいのはもちろん、弥兵衛のいやらしさ、八郎兵衛のやや頼りない男ぶりが、それぞれ際立っている。 咲大夫は期待を裏切らない安定感。 簑助のお妻が凄い。顔を背けてじっと座っているだけなのに、ちゃんと気持ちが感じられる。和夫の八郎兵衛も情感があってよかった。 「団子売」 三輪大夫、芳穂大夫、咲寿大夫と団七、団吾、龍爾、清允。咲若大夫が休場だったので、三味線が多いというアンバランス。 10分ほどでちょっと短いバージョン?

「大逆走」

不思議な芝居だ。意味はよく分からないのだが、見終わると面白かった。
工事現場の従業員、盗まれた募金箱、駅のホームに立ち続ける少女、ハムレットの芝居なんかが脈絡なく出てくる。コンテンポラリーダンスや歌舞伎の立ち回り(中村いてうが監修だそう)が入ることで一体化するのか。色々な形の大きな枠組みが、工事現場になったり、店になったり、車や駅のホーム、電車になったりするのも面白かった。

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劇団ひまわり「雪の女王」

BSPという、イケメン男性ユニットとのコラボということだが、うまく混ざっていなくて、バラバラのパフォーマンスが交互に出てきた感じ。子役のエレンとアンナは正統派の芝居と歌で好感が持てるが、これだけでは子供向けにとどまり、エンターテイメントとしては物足りないかも。BSPのアクションは派手だし、見応えはある。立ち回りの場面では客席まで揺れるほど。ただ、二つの要素が一つに見えなかった。
雪の女王は元宝塚の日向薫。音程がやや不安定か。

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2015年10月28日水曜日

大阪平成中村座 夜の部

「俊寛」 橋之助の俊寛。やはりこの芝居は好きではないと再認識したのだが、義太夫が聞きやすかったのか話の筋は今まで見たなかで一番よく分かった気がする。 この人に共感できないのは、自分の選択で島に残ったくせに、あんなに嘆き悲しむのは往生際が悪いように感じるから。島での生活は今からは想像できないくらい悲惨なんだと言い聞かせて、何とか心情を慮ったけど。 成経は国生。白塗りの二枚目はまだ板につかない感じかな。 千鳥は新悟。背が高く、手足が長すぎるせいか、可憐な感じがしない。普段の女形はいいのになんでだろう。 亀蔵の瀬尾に扇雀の基康。 「盲目物語」 弥市と秀吉を勘九郎。勘三郎の当たり役だそうだが、さぞ愛嬌のある弥市だったのだろう。弥市という人物は冷静に考えるとかなりキモイので、役者の愛嬌がないとなかなか難しいように思う。勘九郎は悪くはなかったけど、魅力には欠けたように思う。 扇雀のお市に七之助のお茶々。 お市と弥市が琴と三味線で合奏するところ、三味線の音がぷつぷつしてて下手に聞こえた。ソロで弾いているときはそうでもないのに。 最後、スクリーン越しにライトアップした大阪城。幻想的なイメージとあいまってよかった。

2015年10月27日火曜日

大阪平成中村座 昼の部

「女暫」 舞台上に一同勢ぞろいで華やか。パロディで笑いもあるので、男の暫よりも好きかも。 七之助の巴御前はちょっと力みすぎの感もあるが、凛々しさと可愛さがある。発声の仕方など、玉三郎を彷彿とさせるところも。 舞台番の勘九郎、勘三郎によく似た口調や仕草。 「三升猿曲舞」 勘三郎ほどの軽快さは望むべくもないが、力の抜けた楽しい踊り。舞台後が開いて大阪城が見える趣向。 「狐狸狐狸ばなし」 狐と狸の化かしあい。何でだろう、七之助のおきわがあんまり可愛らしくない。 扇雀の伊之助はきもさが絶妙。重善の橋之助は色男がよく似合う。 亀蔵が珍しく女形でおそね。といっても男の声のままだし、所作も女っぽくはない。

2015年10月25日日曜日

劇団伽羅倶梨「プラシーボ」

よくできた、完成度の高い芝居だった。ドタバタ劇で笑えて、ちょっとほっこりして、新喜劇みたい。あまり広い劇場ではないけれど、満席だったのは、支持しているお客さんがあるのだろう。

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劇団しし座「映写機はカタカタと音をたてて」

何がいいたいのかよく分からない芝居だった。青春の苦い思い出?自主映画の撮影を巡って揉めるのだが、主人公がなにに拘っているのか分からない。都合のいいハッピーエンドに納得できないのはいいとして、友人が勝手に撮影した、宝は実は「人を大事に」みたいな教訓だったてのじゃダメなの?そんなんで、その先36年もフィルムを放置する?まして、撮影直後に友人が死んでしまったら、代わりに編集するなり、思い出を偲んで見直したりしないのか。何で遺族に渡さずに主人公がフィルムを持っているかも釈然としない。
途中、乱入してきた同窓会と先生の一団もよく分からないし。もっと言ってしまえば、セールスマンもだ。

2015年10月24日土曜日

劇団こまつ座「十一ぴきのネコ」

言葉遊びの音感の楽しさと、覚えやすい音楽で耳に楽しいミュージカル。子どもの観客が多くて、予想外の場面で笑いがあったり、不規則発言があったり。 冒頭、ネコのキャストたちが客席をうろうろ。劇場の人が携帯電話のスイッチオフをお願いしたところで鳴り響く電子音。仕込みかってタイミングだった。 楽園を求めて進んでいるはずネコたちは、困難に直面したり、リーダーが不在にになったりするたびに揺れ動き、保守的になる。そのたびにリーダーのにゃん太郎が皆を説得して、前に進める。けれどその様子は一歩間違えると口の上手い扇動家。それがショッキングなラストにつながるのか。

劇団犯罪友の会「ひまわりとブルース」

ラブストーリーだそうだけど、ラブを感じられたのは母かなあ。小学生の娘と夫に捨てていかれたと思いたくないので、「出稼ぎに行っている」ことにして頑張ってきたというのうは分からなくもない。ただ、もう一方の、広告代理店の先輩(女)と後輩(男)の関係がよく分からず。母役と父役の役者さんは上手かったのだが、ほか3人のせりふ回しがぎこちないというか、躊躇があるというか。 冒頭のルポライター(志望?)の青年がなんだか、行っちゃってる人の演出なのか、演技がつたないのかよく分からないのだけど。 もと貴族令嬢の先輩もエキセントリックになり切れていない感じ。 女子高生は、「ウザい」とか「チョイ悪おやじ」とか、今っぽい言い回しが続出するので、時代感覚が混乱する。終演後のコメントによると昭和39年ごろの設定だそうだが、だったら、古風な言い回しのほうが時代感はでるように思う。

2015年10月20日火曜日

にっぽん文楽in難波宮

正直、いろいろ残念な公演だった。場所も悪かったのだろう。太夫三味線の音が拡散してしまうようで、客先に届く音が貧弱。本来の豊かな音は影もない。阪神高速の側で騒音がひどく、しかもNHKの建物の壁に反響してしまうので、やむなくマイクを使ったと言っていた。マイクのせいなのか、生音でもそもそも屋外では音が拡散してしまうのかわからないけど。文楽は人形を見るものと思っているひとならいいのかしら。
これを見て、文楽っていいな、また来たいな、と思う人がいるのだろうか。

食べたり飲んだりしながらというのも、客席が明らかに集中していないなか、演者たちはどんな気持ちなのか。子供連れが何組かあって、喋ったり泣いたり。夏休みの公演ではそれほど気にならなかったのに。手を抜いていたのではないのだろうが、観る側の態度が悪いと、雑に見えてしまう。

野外で、日差しが強く、暑いのと、日焼けが心配なのも困った。

ツボったのは清丈の自虐ネタ。三味線の地味さやプライベートの非リア充ぶりで笑いを取っていた。いつも思うのだが、三味線さんは喋りが上手い。

2015年10月19日月曜日

演劇集団キャラメルボックス「君をおくる」「水平線の歩き方」

60分の小品の2本立てなのだけど、どちらも見応え十分。ちょっとほろりときて、見終わったあとはすがすがしい感じが残るのがこの劇団のよさなのかな。 「君をおくる」 後で振り返ると、海外赴任で何年も帰ってこないからって離婚しなくてはならない理由がよくわからないのだが(だって、子供ができたと思っていたときは待つつもりだったのだし、事情が変わったのなら海外赴任の予定を変更してくれるくらいの柔軟性を今の企業は持っていると思う)、観ている間は引っ越しの手伝いで勘違いが勘違いを生んでおかしいことになってしまう可笑しさあり、じんわりくるいいセリフありで、内容の濃い1時間だった。 「水平線の歩き方」 水平線までの距離はたった4キロ余り。水平線の向こうにあるという死者の国はそんなに遠くはないのかも。 1人の男の成功と挫折を描いて、再生への希望まで、たった1時間でここまでのものを表現するってすごい。

美女音楽劇 人魚姫

寺山修二原作の人形劇を人の役者が演じるという一風変わった芝居。 衣装や舞台装置が美しくて、幻想の世界に誘われる。 人魚姫の青野紗穂は可憐。歌声は初めのころは低音が多くて魅力が十分に出ていなかったが、後半の高音域の声はのびやかで力もある。 船長ジークフリードは元宝塚の悠未ひろ。颯爽とした王子のような凛々しさと、優しいようで、でも人魚姫の思いに気づかないのかつれない仕打ちをする鈍感さが憎たらしい。 終演後にアフタートーク。最後、人魚姫が泡になった後に響く電子音は原子力発電所の警報音なのだそう。この世の中はもう安全なところではないのだよという意味なのだとか。

清流劇場「こわれがめ」

冒頭、芝居のとっかかりとなる女中役が、素人っぽいというかセリフも歌もぎこちなくて、この先の作品に不安を覚えた。これ以外の役者さんはみなさん達者で杞憂に終わったのだけど。 シーソーをモチーフにしたステージで、左右に傾くなか、役者が滑ったり、転んだりするハプニングも。

伏兵コード「遠浅」

脚本家の実体験に基づいているそうで、主人公は同じ名前の真理。 今と昔の2人の真理がいて、回想シーンを織り交ぜながら進む演出が面白い。 お父さんはむちゃくちゃなんだけど、まあ、こういう人は世間にまったくいないかというとそうでもなくて。 全体的に気がめいるような話で、薄暗いステージとあいまって、どんよりした気分が残った。

TOP HAT

やはり本場の踊りは凄いわ、の一言に尽きる。歌ももちろんこなすし、踊りのレベルが高い。日本でこれだけ歌って踊れる人がどれだけいるのか。 タップが中心なのだけど、主役のロジャー役アラン・バーキットの踊りが軽やかで、ジャンプも高い。歌も、甘い感じの伸びる声で聞かせる。 ヒロインのシャーロット・グーチも歌声が美しい。 カーテンコールで、キャストが客席通路に下りてきて歌って踊るサービス。

RENT

日本語版は多分初めて。歌詞がところどころゾワッとしたが、全体としては悪くなかった。歌手として活動している人が多いので、歌には問題なし。ちょっとダンスが物足りないか。特に感じたのが、ミミのジェニファー。歌はすごくいいのに、登場シーンのポールを使ってのダンスが振り切れていない感じで残念。あと、エンジェルの平間があんまりかわいくなかった。ソロの踊りもイマイチ弾けかたが足りない。 ロジャーのケミストリー堂珍や、コリンズのスクープオンサムバディTAKEなど、歌唱力のあるひとが揃っていたので、コーラスなんかはすごく良かった。もちろん楽曲のもつ力が大きいのだけど。 家に帰ってオリジナルのCDが聞きたいと思ったのは、ステージとして成功だったのか、どうなのか。

歌舞伎NEXT 阿弖流為

阿弖流為の染五郎は予想通りで特に驚きはなかったが、明るくおおらかなヒーロー坂上田村麻呂を勘九郎が好演。こういう二枚目の役ってあまりなかったように思うのだが、魅力的な人物だった。立烏帽子の七之助は凛々しく美しい。スカート状の衣装を翻しての立ち回りも魅せた。3人がほぼ出ずっぱりで、走り回り、アクションもたっぷりというのがいのうえ流なのかな。「義はいいが大儀となると胡散臭い」とか、守るために団結して戦わなければならないとか、今の世相に通じるようなセリフが随所にあった。 御霊御前の萬次郎の冷酷な悪っぷりがよかったなあ。

宝塚花組 新源氏物語

明日海りおは苦悩する美男子、光源氏にはあっている。それに、平安の装束は体の華奢さが隠れるのでいいかも。 けどなあ…、やっぱり歌が私は苦手だ。ぞわっとするのだ。 1時間あまりで源氏物語を、しかも宇治十帖までやってしまうので、ハイライトシーンを細切れで見せられているよう。情緒を感じる暇もない。もうちょっと一つ一つのシーンをじっくり見たく、物足りなさを感じる。 レビューは「メロディア」。ラテン調の歌がなんだかぞわぞわする。スパンコールを全身につけたスーツとかって、素敵には思えないのだが… 一番手、二番手よりも、三番手の柚香光に目が行った。後で調べたら、六条の御息所と柏木の2役だったそうな。

9月26日 文楽地方公演 昼の部

津駒大夫が休演で、代役が呂勢大夫といううれしいサプライズ。たっぷり聞けて、河内長野まで遠征した甲斐があった。 咲寿大夫の解説でスタート。団子売の歌詞に色っぽい意味が隠されているとか、笑いをとりつつ。 「団子売」 お臼の呂勢大夫に杵造の咲甫大夫、希大夫。三味線は清治、清四郎、清公、燕二郎。 美声の大夫3人に4台の三味線が華やか。 「心中天網島」 天満屋紙屋内の段 口は松香大夫と團吾、奥が呂勢大夫と清介。 急きょ代役の呂勢大夫は床本に挟んだ手書きの台本のようなものを見ながらの語り。 声の張りがなかったり、途中ちょっと早口になるようなところもあったりで、探り探り語っている感じ。 後で知ったが、当日の朝、急に代役が決まったとかで、ほぼぶっつけ本番だったのかと思えば凄いことだ。 小春を思って治兵衛に身請けするよう話すおさん。身請けしたあとは「子どもの乳母か飯炊きか」とかって、あんまり理不尽なのでできた女房なのか怖いのかよくわかんないけど、呂勢大夫が語るのを聞いていると、切なくて涙ぐみそう。 大和屋の段 切は咲大夫と燕三。 さすがの安定感。 道行名残りの橋づくし 呂勢大夫の小春に芳穂大夫の治兵衛、咲寿大夫、三味線は宗助、清馗、寛太郎。 紙屋内の段とはうって変わって張りのある美声が響く。

2015年10月9日金曜日

9月5日 もとの黙阿弥

井上ひさし原作で期待したが、なんだかもやもや。 いや、面白かったんだよ。場面場面では。 愛之助が劇中劇で素人っぽく見栄をしたり、セリフの間もよかったし、波乃久里子は流石のうまさだし。 けど、劇中劇の話が意味がわからんとか、最後に正気を失ってしまった女中も??この芝居で言わんとするところがつかめなかった。