2025年4月29日火曜日

4月29日 文楽公演 第3部

道行初音旅は織、靖、碩、聖、織栄に藤蔵、清志郎、寛太郎、清公、錦吾。
織はいつもよりやや控えめな感じもするが、上を向いて歌い上げる。靖は喉が開いてない感じで、声が前に出ていない。三味線もどこか重く、ウキウキした華やかさはないか。

一方、人形は一輔の静に品があって良き。扇の扱いも優雅で、扇返しや扇投げも綺麗に決まった。勘十郎の狐忠信は念願?の見台抜け(織栄の見台が真ん中から真っ二つ)で登場。(ぼーっとして見逃したので、翌日幕見で確認)

川連法眼館の前は睦・勝平。
出だしはまずまずと思ったが、義経の高音が掠れて聞きづらい。
切は千歳・富助に燕二郎のツレ。狐言葉が控えめで、時々「コンッ」と言うのと、出だしを伸ばすくらい?

狐忠信は登場こそ下手からだが、障子を破ったり、壁から出てきたりも。最後は宙乗りで華々しく幕。

2025年4月28日月曜日

4月28日 文楽公演 第1部

「義経千本桜」

大序は御簾内で織栄→碩→薫→聖、清方→清允→藤之亮→燕二郎のリレー。 織栄が思っていたより調子はずれ。碩の安定感。聖はのびのび。 堀川御所の奥は藤・燕三。 のびのび語る藤に燕三の三味線の的確さ。 アトは亘・友之助。 亘の語りは力んだ感じがなくなってだいぶいい。友之助の表情に気合いがみなぎる。 伏見稲荷の段は希・団七。 力みすぎなのか、声の調子が合っていない感じ。 渡海屋・大物浦の口は小住・清馗。 のびのびとしたいい声で語ってよき。三味線がもっと良ければ。 中は芳穂・錦糸。 ちゃんとしてる。 切は錣・宗助。 時代ものの切場はちょっと辛い。 人形は一輔の静に品があってよき。勘十郎の狐忠信は当たり役。弁慶の玉佳はどこか愛嬌がある。 玉男の知盛。最後は沖の岩場まで船で乗り付け、頂上から飛び込まず後方へ沈んでいく演出。典侍局 の和生は抑制された演技。

2025年4月27日日曜日

4月27日 深川秀夫バレエの世界

冒頭、スクリーンに往年の深川が踊る映像が流れ、故人の功績を改めて認識。バリシニコフと競ったというコンクールの模様など、高いジャンプや回転のキレの良さに驚く。 「ディ・フィーダー」 ジュニア向けに振り付けた白鳥に憧れるカルガモの踊りとのこと。黒地にカラフルな羽飾りをつけた総勢25人の女子ダンサーが美しく青きドナウの調べに乗って踊る。「白鳥の湖」を思わせる振り付けがあるなど、楽しいのだが、途中、「ギャッギャッ」という鳴き声をあげる場面は急な大音量にギョッとした。もうちょっと控えめでもいいのでは。 「ラフマニノフ・コンチェルト」 女性ダンサーばかり18人が様々にフォーメーションを変えつつ踊る。 「光の中で」 佐久間奈緒。スポットライトの中、舞台の準備をしているかのような女性ダンサーのソロ。 「レ・ゼトワールド」 女性8人の華麗な踊り。 「新たなる道へ」 田舎風の衣装の女性たちが、新天地へ向かうという説明だが、最後、舞台下手へ行きかけて引き返すのは元の世界に戻るように見えた。 「顔のない女」 青山季可と4人の女性ダンサー。ストーリー性の濃い作品で、仮面をつけた女はアンティークのフランス人形のような、美しくも少し衰えた感じが切ない。 「ソワレ・ド・バレエ」 中村祥子、米沢唯、池田理沙子、厚地康雄、中家正博、奥村康祐という錚々たるダンサーに、関西の上山榛名、春木友里沙、水城卓哉、今井大輔の5組のパドドゥに女性ダンサーの群舞。
中村祥子の風格ある優雅さ。真ん中にいる存在感が違う。米沢唯も気品ある踊りで存在感を発揮。池田理沙子はフレッシュな踊りでちょっと若く見える。そして奥村康祐のパートナーシップよ。これという見せ場がないのは残念ながら、アイコンタクトや微笑みの優しさにうっとり。

2025年4月26日土曜日

4月26日 文楽公演 第2部

「義経千本桜」

椎木の段の前は咲寿・団吾。
織の預かりとなり、師匠に借りたという肩衣で登場。落ち着いた語りぶりだったが、まだまだ若手から抜けられない感じも。団吾はいつも通り。

後は三輪・清友。
どうということもなく。小仙は権太が悪いことをしていると分かっていながらなぜ見逃すのかと思うなど。歌舞伎と違って善太の一文笛を吹く場面がないのは、この後に生きないと思った。

小金吾討ち死には、津国、南都、薫、文字栄に清丈。 床が揃ってないというか、それぞれ役に合っていない感じでガチャガチャしている。 すしやの前は呂勢・清治。 安定感のある語りでホッとする。お里や権太、母、維盛、弥左衛門らの人物造形が明確で、物語がくっきり。原作通り、弥左衛門が元盗賊の設定で、「親の因果が子に報い」の因果関係がはっきりする。 三味線はかつてのような精彩はもはや望めないのか。 切は若・清介。 うーん。安定の慎重運転で、速度遅すぎませんか? 急に別の物語世界に移行したみたい。 取り巻きが「待ってました」の声かけもいかがなものか。 人形は玉勢の小金吾が大立ち回りを力強く。権太は玉助で、人形より人形遣いが前へ出て感じる。玉也の弥左衛門に深みがある。

2025年4月17日木曜日

4月17日 マスタークラス

望海風斗演じるマリア・カラス。 引退後のカラスを演じるには少し若すぎる感もあるが、生徒に対峙する様子には威厳があり、皮肉っぽい物言いなど大プリマの貫禄は十分。歌唱シーンはないとのことだが、発声の見本を示したり、歌曲の一部を口ずさんだりする時は、歌のうまさが生きた。眼目は夫やオナシスとの会話を一人芝居で演じるところ。特に、横暴なオナシスのセリフは元男役トップの本領を発揮した。一人芝居から往年のマリア・カラスの音源に移行するところがスムーズで、ドラマの世界観が広がる。一方、女のセリフは甲高い声で甘えたような口調になるのは興醒め。ちょっとおどけたようなところは、黒柳徹子を想起させるところも。 マリア・カラスとオナシスの関係はなんとなく知っていたけれど、歌手活動をやめさせたり、子ども以外は愛さないと言ったり、こんな横暴な男のどこに惹かれたのか、さっぱりわからん。

2025年4月13日日曜日

5月13日 四月大歌舞伎

「毛谷村」のみを幕見で。新国立劇場から駆けつけたので、杉坂墓所には間に合わず、舞台転換後の毛谷村から。
仁左衛門の六助のチャーミングさ、凛々しさに感服。子ども相手の優しいおじさんから、騙されたと知った怒りへの変化率が凄まじい。弥三松をあやすところは少し短めで、「お獅子パクパク」がなかったのが残念。
孝太郎お園も女武者の凛々しさから、許嫁と知ってからの可愛さへのギャップが大きいが、ちょっとシナシナしすぎかもと思った。
歌六の弾正は憎々しい敵役で、仁左衛門に対峙するのに十分な貫禄。弥三松は秀之助。回を重ねているので落ち着いている。
斧右衛門が誰かと思ったら歌昇でびっくりした。



5月13日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

池田理沙子・奥村康祐ペアはこの1回のみ。

1幕のジゼルは純朴な村娘。恥じらいながらもアルブレヒトの熱演なアプローチにぽーっとなった初心な少女そのもの。狂乱のシーンはちょっと物足りないか。
奥村のアルブレヒトは少年のようで、無邪気に可愛い女の子に好き好きと言っていたらとんでもないことになってしまい、慌てている風。バチルドの手にキスしながらも、ジゼルを気にしている様子があり、このアルブレヒトなら、心から後悔していそうだし、許せるかもと思わせる。
木下嘉人のヒラリオンは説得力あり。心からジゼルを愛しているのに、むくつけきルックス故にジゼルには伝わらず、やることなすこと裏目に出てしまう残念なひと。 ペザントは東真帆と石山蓮。2人ともロールデビューだそうで、フレッシュな踊り。

2幕の池田ジゼルは人ならぬもの感が薄く、1幕に比べ凡庸な印象。右足を上げるバランスでもたついたり、リフトでぐらつくなど、ミスも気になった。奥村のアルブレヒトは後悔の念がひしひしと伝わる。感情を優先するあまりバランスを崩すようなところもあり、テクニックより役を生きている感じがした。
ミルタは山本涼杏。初役のせいか、まだこなれてない感じで、もっと音をはみ出すくらいの大きさが欲しいと思った。回を重ねて威厳が増すのを期待したい。モイナとズルマは東真帆と飯野萌子。東はペザントと2役。下手前方の席だったので、ミルタを先頭に襲いかかるウィリー軍団が迫って来るようで怖かった。

2025年4月12日土曜日

4月12日 新国立劇場バレエ団「ジゼル」

米沢唯が全幕復帰。1幕は華奢で儚い少女。ほんとに体が弱そうで、心臓発作で苦しむところなどリアルな演技だった。2幕は軽さというより浮遊感があり、人ならぬものの感じがすごい。墓から出てすぐの回転など、何かに操られているよう。
井澤駿のアルブレヒトは軽薄な感じ。バチルドの前では知らんふり。ジゼルが死んだ時も、悲しみよりもヒラリオンへの怒りが強い。
ヒラリオンは中家正博。悪い人ではないのに、浮かばれない悲哀がある。2幕の冒頭、舞台中央で佇む姿にも誠意が感じられる。 ペザントは飯野萌子と山田悠貴。山田の跳躍が高くキレがある。村人たちを率いて踊るのが勢いがあってワクワクする。
ミルタの根岸祐衣は登場時のパドブレの細かさと速さが異世界の雰囲気を醸し出す。ちょっと厳ついくらい威厳があり、不思議な力を秘めていそうで恐ろしい。
モイナの東真帆は滑らかなライン。ズルマの直塚美穂はシャープな踊りゆえか生命力が感じられ、生身の強い女みたい。ヒラリオンを引っ立てて崖から突き落とすところなど、喧嘩強そう。

カーテンコールは満場の拍手。米沢は涙ぐんでいるように見えた。


2025年4月6日日曜日

4月6日 四国こんぴら歌舞伎大芝居 第一部

「毛谷村」 萬太郎の六助はキビキビして気持ちいいが、ちょっと奴さんぽいかも。時蔵のお園は1月の国立劇場でも好演だったが、女武道の凛々しさと可愛らしさの入り混じる様子が良い。微塵弾正は錦之助。出番が短く、もっと憎々しさが欲しかった。 吉弥が一味斎後室お幸で、キリリとして武家の品格を感じる。弥三松は夏幹。可愛らしく、セリフもしっかり言えていたが、何もないところは集中力が途切れてしまうよう。試合の検分役の侍に千次郎、杣に當吉郎など、上方の役者が出てい流のが嬉しい。 「魚屋宗五郎」 獅童の宗五郎はのびのびやっていて、楽しそう。剃り跡?の水色が鮮やかすぎる感じでちょっと違和感。 コントのようになりそうなところ、時蔵のおはまがしっかり歌舞伎にしている感じ。宗五郎と取っ組み合うところも、きちんと形が決まっているのがさすがだ。おなぎの吉太朗がしっかり努める。宗五郎に絡まれて戸惑うところとか。 精四郎の三吉、父太兵衛の権十郎。丁稚与吉を陽喜。お兄ちゃんだけあってセリフもしっかり。 にの3という良席で、芝居小屋を堪能したが、後ろの席の人が足を伸ばして座っていて正面を向いて正座ができないのは辛かった。

2025年4月5日土曜日

4月5日 林喜右衛門襲名披露能

たくさんの花束、盛装した観客、そして何より出演者が大勢で、華々しい襲名披露。

舞囃子「高砂」は観世三郎太。手足が長いせいか、静止している間が長く感じる。 蓮吟「日蝕詣」

能「卒都婆小町」
宗一郎改め喜右衛門のシテ。襲名にあたって観世宗家が上演を許したそうだが、40代で老女ものはやはり映らないというか。一度之次第の小書きで、小町が橋がかりを歩いてくるところから始まるのだが、舞台にたどり着くまでの長いこと。その後、ワキの福王茂十郎、ワキツレ知登が登場して卒都婆問答になる。問答はどうということもなかったが、深草少将の霊が乗り移ってからは表情がグッと増した感じがした。ひとしきり、恨みつらみを述べたのち、小町が出家すると言って終わるのは唐突な感じだけれど、不思議な爽快感がある。
裏千家業躰・林松響階会長の金澤宗達氏の挨拶を挟んで、
狂言「末広かり」は千五郎の主人、千之丞の太郎冠者、忠三郎のすっぱ。千五郎の大物感、千之丞の軽妙さ、忠三郎は策士な感じ? 主人が怒って、飛び上がって勢いよく座り込むところに迫力がある。忠三郎の装束がタイガースカラーに見えた。
仕舞「老松」山本章弘、「通盛」上野朝義、「西行桜」大槻文蔵、「二人静 キリ」吉井基晴・上田貴弘、「山姥」大西礼久。 一調「張良」有松遼一・前川光範。「笠之段」藤井完治・大倉源次郎。 小舞「子の日」茂山七五三。 仕舞「嵐山」片山信吾、「屋島」浦田保浩、「誓願寺 キリ」井上裕久、「網之段」杉浦豊彦、「野守」大江伸行。
仕舞、一調がこんなに並ぶと壮観。

能「石橋」は観世清和のシテ、喜右衛門、彩八子、小梅のツレ。子方は赤い鬘に鼻から下を覆うマスク。親獅子の白頭に対し、赤頭の子獅子3頭のところ、所作台から子獅子を蹴落とすくだりで喜右衛門も一緒に蹴落としているように見えるなど、親2頭、子2頭に感じるところも。。喜右衛門は卒都婆小町と打って変わってキビキビとした所作に勢いがあり、喰らいつく娘たちの懸命さも相まって、とても見応えあり。