五・六段目は勘九郎の勘平。セリフ回しや表情など、勘三郎を彷彿とさせる。千崎と不破が訪ねてきたところでは、自分から刀を抜いて身だしなみを整える。七之助のおかるは玉三郎を思わせるところが。梅花のおかやは情のあるおっかさんで、いろいろ分かっている感じがした。
定九郎は隼人。影のある悪人らしさ、声の凄みがあり、役らしい。やることが多くてちょっと段取りめいたところもあったが。
判人源六は松之助で、上方言葉のもっちゃりした感じがよき。一文字屋お才が魁春で、江戸弁だったように思うが、不思議と違和感はなく。
七段目は仁左衛門の由良之助が絶品。先日初役の愛之助を見た時は悪くないと思ったが、やはり役者が違う。酔態の柔らかみ、家老としての器の大きさ。帰る力弥を呼び止めて「祇園町を出てから急げ」というところの間の絶妙さ。おかるとのやりとりの洒脱さ、軽妙さなどなど。これぞ大歌舞伎の由良之助。
七之助のおかるはすでに遊女のあしらいを身につけている感じ。松也の平右衛門とはちょっと恋人っぽい。与一兵衛と勘平が死んだと聞かされたくだりで本当に泣いたようで、終盤は目元の化粧が滲んでいた。松也の平右衛門は足軽にしては軽妙さがないかも。スッキリと格好いい。
十一段目は小林平八郎の萬太郎、竹森喜多八の橋之助が役替わり。萬太郎は松緑に比べると凄みが足りないのは経験値の差。橋之助は若手浪士で最初にセリフを言う場面が多いせいか、声が印象に残った。菊五郎の服部が出てくると一際大きな拍手。仁左衛門の由良之助とのやりとりは、大物同士の大らかさで、これぞ大歌舞伎。