「俊成忠度」
林彩八子のシテ。名前から娘さんかと思ったらご子息だそう。直面で鬘をつけ、大人と同じような装束ながら、謡は子方らしい一本調子なのは、大人の役を子方が演じているから? 45分ほどの曲の半分くらいは舞っている感じで、懸命に勤めている感じがよい。袖を巻き上げる所作の度、烏帽子に引っかかってしまうのは体格ゆえか。
観世清和がツレの俊成で、対面してセリフのやり取りをする。この歳で宗家とがっつり舞台を勤めるというのはとても恵まれているのだと思う。
「腰折」
茂山慶和の山伏、千五郎の太郎冠者、七五三の叔父。
慶和は大人顔負けの体格でハキハキとしたセリフが清々しい。とぼけた間がよく、笑わせる。
七五三は腰を曲げてヨボヨボた出てくるだけでおかしい。声が掠れ気味なのがちょっと心配。千五郎の安定感。
「望月」
林宗一郎がシテの甲屋主人、ツレの母を樹下千慧、花若を小梅。樹下は透き通った高い声が女の役に合っている。能役者は女の役でもあまり声を変えないと思っていたが。
ワキの有松遼一。いつもと違う発生で、悪役っぽく感じた。
獅子舞は扇2枚を獅子のカシラに見立てる綱豊卿の扮装なのだが、獅子というより貝のおばけみたい。余興をで油断させて、ここぞという時に仇に迫る、一瞬でテンションが変わるスリリングな展開。古式の小書きが付いていて、最後に望月を討つ前に、素性を問われて名乗る場面が加わる。生身の役者が後ろから小刀、正面から太刀を突きつけられるという生々しいシーンにたじろいだが、その後ワキは退場し、残された笠に太刀を振り下ろして成敗。
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