2024年7月28日日曜日

7月28日 Noism Company Niigata 20周年記念公演

「Amomentof」

20周年を記念した作品。
舞台を斜めに横切るようにバーが置かれ、井関佐和子がひとり、ストレッチをしているところへ次々と団員が合流する。井関がふと伸ばした指先を見ると、これまでの来し方が思い起こされ…という構成。多くのダンサーが合流しては離脱し、最後に一人残された井関を孤独が苛むが、振り返ると鏡越しにかつての作品の衣装に身を包んだ団員たちがいて。喜びの叫びをあげて泣き笑いの表情で再び踊り出すと、いつの間にか最初の場面に戻り、バーレッスンを始める。
バーはこちらとあちらを隔てるボーダーのようでもあり、決して交わらない断絶を表す。かと思うと、バーの一端な隙間ができて、向こう側へ走り抜ける。Noism の20年を観続けてきたわけではないけれど 、さまざまなタイプの振りが散りばめられ、20年の歴史を凝縮したように感じた。

「セレネ、あるいは黄昏の歌」

白い僧侶のような衣装の井関を先頭に、白装束を纏った男女が入り混じった一団。呪いのような手振りや宗教行事のような揃った動き、乱暴を働いた男に制裁を加える様子など、閉鎖的なコミュニティーのちょっとゾッとするような感じもあった。

7月27日 新国立劇場バレエ団「人魚姫」

初演の初日に期待が高まりすぎたのか、少し物足りなく感じた。話の筋に関係のない群舞が多く、全体として物語がわかりづらいと感じた。たくさんのダンサーが踊るのは振付としては面白いのだが、子供のための作品と銘打つなら、人魚姫や王子の心情を丁寧に描いて欲しい。(と思ってしまうのは、地主薫版と比較してしまうからかも…)

プロジェクション?を用いた海の底の情景は美しいが、舞台装置が少ないせいか小ぢんまりして見える。衣装も存外凡庸。(2023年のDance to the future で披露した小品の時の衣装が素敵だったと思ったらこちらは木下嘉人の振り付けだった) 

体調不良で降板した米沢唯に代わって廣川みくり。悪くはないが、ハッとするものはなかった、王子の速水省吾は悪意なく軽薄な王子らしい人物造形。高いジャンプや回転のテクニックを遺憾なく発揮する。奥村康祐の深海の女王は圧倒的な存在感。悪役かと思いきや、ナイフを忘れた人魚姫を追って地上まで来てしまう世話焼き。タコ足の衣装がイマイチ。

振付の貝川は休憩中もロビーにいて写真撮影に応じたあり、終演後はオペラシティ内のレストランに出没したりと、観客に近い感じだった。

2024年7月21日日曜日

7月21日 夏休み文楽公演 第2部

「生写朝顔話」

宇治川蛍狩の段の口を聖・清公。
聖は盆回しで出てくるのは初めてでは。10半ほどを一人で語ったが、堂々として良く声も出ていた。清公は先輩らしい落ち着き。
奥は睦・勝平。
出だしはよかったが、やはりという若い女性の言葉に難あり。深雪や浅香の声がああも掠れていては、美しい娘とは思えない。勝平の安定感。

明石浦船別れの段は芳穂・錦糸。琴に清方の名があったが、盆の裏で姿は見せず。
それまでと比べて人物描写が的確で、物語に立体感が出た。女主人公らしい流麗なくても旋律も錦糸の三味線がしっとりと聞かせる。

浜松小屋の段の前を呂勢・清治。
期待に違わぬ床。 落ちぶれた身を嘆く深雪が哀れ。
後は小住・清馗。
急にボリュームを5メモリくらい上げたような大声でびっくり。立ち回りのシーンがあるから?

嶋田宿笑い薬の段の中を咲寿・寛太郎。
終始上擦ったような発声で、10代の子どもがはしゃいでいるみたい。寛太郎のきっぱりとした三味線が救い。
次を織・藤蔵。
チャリ場にしては重々しいというか。藤蔵の三味線もどちらかというと思いので、聞く方が緊張感を強いられる。咲の軽妙さが懐かしい。
宿屋の段は錣・宗助。琴は清允。
切場の貫禄。
大井川の段は千歳・富助。千歳にはすこし軽い役かもしれないが、切場らしい品格があり、満足感があった。

人形は和生の深雪に玉男の阿曽次郎、勘十郎の祐仙と人間国宝揃い踏み。(なのに客入りの悪さよ…。ほぼ半分しか入ってなかった)

2024年7月20日土曜日

7月20日 OSK日本歌劇団「レビュー in KYOTO」

春の松竹座公演の第2部「BAILA BAILA BAILA」の南座バージョン。陰陽師や過去の南座作品のメドレーが加わり、半分くらい変わっている印象。

春には出ていなかった登堂結斗が陰陽師の敵役、蘆屋道満で出演。帝をたぶらかす九尾の狐の男役の椿りょう、帝役の華月奏らが印象に残った。
ロケットの前のフォーメーションやそれぞれのソロ(回転やジャンプ)などが凝っていて見応えアップ。ロケットは速くて高くて揃ってて、これぞOSK。
楊琳斗舞美りらのサヨナラだけど、最後まで明るく、楽しいショーだった。


2024年7月15日月曜日

7月15日 七月大歌舞伎 昼の部

「小さん金五郎」 

孝太郎の小さん、鴈治郎の金五郎。粋で洒落たやりとりが見どころなのだろうが、今一つ華やかさが足りないようで心が踊らない。
許嫁がいながら芸者のお糸(壱太郎)といい仲になって勘当された六三郎に隼人。女にはモテるが頼りない若旦那がよく似合う。  
金五郎に惚れている髪結のお鶴は扇雀。あまり惚れてる風に見えなかった。
千草屋娘お崎の吉太朗が可憐。

「藤娘」
菊之助の脂の乗った芸を堪能。

「俄獅子」
新時蔵の芸者、隼人、萬太郎の鳶頭。
時蔵が粋でいなせな芸者をきっちり魅せる。

「恋女房染分手綱」

時蔵改め萬寿の重の井は武家の乳人の品格があり、我が子への情と公の立場との間で引き裂かれる悲哀を好演したが、新梅枝の三太が思ったほど良くない。教えられたセリフ、所作をこなすだけでも大変だとは思うが、役として訴えるものがなかったのは残念。

2024年7月13日土曜日

7月13日 N響「夏」2024 大阪公演

前半はヴァイオリンのノア・ベンディックス・バルグリーを迎えて、シベリウス「ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47」

北欧の寒冷な空気を思わせる静謐なメロディに心が洗われるよう。

アンコールはJ.S.バッハ 無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ長調「ラルゴ」

後半はベートーヴェン 交響曲 第6番 「田園」

生オケで聞くのは初めてで、爽やか。

アンコールは伝ハイドン(ホフシュテッター)「セレナーデ」(弦楽合奏版)

よく聞くメロディだが初めて曲名を知ったかも。オーケストラのアンコールで弦楽器だけ(管楽器はただ座っている)というのはアリなのだろうか。

シンフォニーホールの舞台後方W列に座ってみたが、指揮者の表情がよく見えるので面白かった。指揮者のグスターボ・ヒメノは「驚きの指揮者」「魔術師」と評されているそうで、クールな表情でオケを率いる様をみて納得。オケの後ろで聞くのはどうかと思ったが、一般的な客席と特に違いはないように思った。

2024年7月8日月曜日

7月8日 七月大歌舞伎 夜の部

「義経千本桜」 

木の実から小金吾討死、すし屋。
仁左衛門の権太はもう何度目か。木の実で小金吾の荷物と取り違えるところで笠で手元を隠すなど芸が細かい。首実験で本物の松明は以前から? 煙が目に染みる演技がより自然に見える。小せんは吉弥。情のあるいい女房だが、なぜか姉さん女房に見えた。花道での「瑞々しいなあ」はどうしても秀太郎を思い出してしまう。倅善太郎は秀乃助(歌昇の次男?)はかなり小柄で幼く、仁左衛門が背負うにはいいのだろうが、セリフが拙かったのが残念。
萬寿の維盛は品よく、不足はないのだが、梅枝の鮮やかな変化を見ると少し物足りない。壱太郎のお里が可愛らしく、歌六の弥左衛門、梅花の女房のバランスがいい。若葉の内侍は孝太郎、六代君は種太郎。


「汐汲」

扇雀の苅藻、萬太郎の此兵衛。
扇雀は体格がよくどすこい感が、、、。萬太郎と並ぶと大きく見えるのは損だ。


「八重桐廓噺 嫗山姥」

梅枝改め時蔵の襲名披露。
時蔵の八重桐は喋りの間がよく、長い一人語りを全く飽きさせない。嫗山姥は何度か観ているが、こんなに面白かったのかと思う。最後に時行の魂が乗り移ってからの変わり身が別人のよう鮮やか。
煙草屋源七実は坂田蔵人時行は菊之助が華を添える。女房に見つかり隠れてしまったり、敵討がなされているのを知らなかったり、挙げ句の果てには勝手に切腹してしまったりといいところがない。沢瀉姫の壱太郎はおぼこい姫を好演。白菊の孝太郎、鴈治郎の太田十郎。萬太郎の腰元お歌はちょっと意外な配役だったが、ちゃきちゃきした女中という感じ。襲名を寿ぐ感じでよき。

竹本は葵太夫で、景事の声質ではないと思うのだが、格調高かった。

2024年7月6日土曜日

7月6日 林宗一郎の会

「俊成忠度」

林彩八子のシテ。名前から娘さんかと思ったらご子息だそう。直面で鬘をつけ、大人と同じような装束ながら、謡は子方らしい一本調子なのは、大人の役を子方が演じているから? 45分ほどの曲の半分くらいは舞っている感じで、懸命に勤めている感じがよい。袖を巻き上げる所作の度、烏帽子に引っかかってしまうのは体格ゆえか。
観世清和がツレの俊成で、対面してセリフのやり取りをする。この歳で宗家とがっつり舞台を勤めるというのはとても恵まれているのだと思う。

「腰折」

茂山慶和の山伏、千五郎の太郎冠者、七五三の叔父。
慶和は大人顔負けの体格でハキハキとしたセリフが清々しい。とぼけた間がよく、笑わせる。
七五三は腰を曲げてヨボヨボた出てくるだけでおかしい。声が掠れ気味なのがちょっと心配。千五郎の安定感。


「望月」

林宗一郎がシテの甲屋主人、ツレの母を樹下千慧、花若を小梅。樹下は透き通った高い声が女の役に合っている。能役者は女の役でもあまり声を変えないと思っていたが。
ワキの有松遼一。いつもと違う発生で、悪役っぽく感じた。
獅子舞は扇2枚を獅子のカシラに見立てる綱豊卿の扮装なのだが、獅子というより貝のおばけみたい。余興をで油断させて、ここぞという時に仇に迫る、一瞬でテンションが変わるスリリングな展開。古式の小書きが付いていて、最後に望月を討つ前に、素性を問われて名乗る場面が加わる。生身の役者が後ろから小刀、正面から太刀を突きつけられるという生々しいシーンにたじろいだが、その後ワキは退場し、残された笠に太刀を振り下ろして成敗。

2024年7月5日金曜日

7月5日 素浄瑠璃の会

「源氏烏帽子折」 

伏見の里の段を靖・燕二郎。
素浄瑠璃でのみ継承されている曲だそう。燕三が燕二郎に伝えたいと思い、相方を靖にしたのだとか。2月の京都で初披露したのは聞けなかったので、聞けてよかった。

冒頭から三味線の旋律が美しく、太夫のフシも流麗で、常盤御前が主人公だからか、終始音楽的で美しい曲。靖は健闘していけれど、美声の太夫で聞いてみたいと思ってしまった。燕二郎はよく手が回るが、この曲を弾きこなすのは大変そう。


「義経千本桜」

渡海屋から大物浦の段を呂勢と燕三。
呂勢がこういう骨太の時代物を語るのは珍しく、わざわざ聞きに行った甲斐があった。知盛は、仁左衛門よりも若い感じで、怨念の深さというよりは、虎視眈々と義経を狙っているかのよう。内侍の局の嘆きはさすがで、安徳帝とのやり取りは感極まった。
燕三の三味線の端正さに惚れ惚れ。人形付きだと舞台の派手さについ目を奪われてしまうけれど、素浄瑠璃でも情景描写が鮮やかだし、むしろ物語が深く描かれる気がした。

アフタートークで呂勢の見台を紹介。桜に錨の模様はこの曲にうってつけだが、これまで使う機会がなかった。肩衣は白地に金糸?で知盛の白糸縅をイメージしたとか。(師匠存命中は派手だと言われ使えなかったのだそう) 入門した頃は師匠方から文楽は世襲じゃなく実力主義なのがいいところだと言われていたが、最近の文楽は誰かの孫だとか甥だとかいう人が目立っている。今日の4人は皆文楽の家の出身でない、馬の骨チーム。
燕三は適当にお茶を濁したり、自分に見切りつけるような稽古はだめで、できなくても追い求めることが大事で、靖と燕二郎はそういう稽古をしていると。結果は甘んじて受け、また上に少しでもと考えることが大切。2にの姿勢には感銘を受けたと褒めていた。いい師弟関係。呂勢については、すぐに自虐する困った人(笑)と。呂勢の靖評は、情が語れて自分にないものを持っているライバル。燕三は師匠思いで、(あまり付き合いたくない人に)よく仕えたと。