2022年11月27日日曜日

11月27日 新国立劇場バレエ団「春の祭典」

「半獣神の午後」
平山素子振付の新作は総勢15人の男性ダンサーで、福田圭吾のソロ、奥村康祐と中島瑞生のデュオ、群舞のパートで構成。はじめは群舞のなかに福田が混ざり、福田が起点となって全体に波紋を起こすような踊り。アラブ風のパンツに上半身は裸でボディペイントを施した衣装がダンサーの肉体を引き立てる。これだけ踊れるダンサーが飛んだり跳ねたり回ったりすると迫力がある。
デュオは赤いレオタード?の奥村に紫のタイツの中島が、光と影、陽と陰のようであり、主客が入れ替わったり、対峙したり。リフトしたりされたりと絡みが多く、女性ダンサーとのパドドゥとは違って拮抗した感じ。普段はリフトする側の男性ダンサーは持ち上げられるとどんな気分なんだろうと思うなど。

「春の祭典」
こちらは一転して、2台のピアノによる生演奏に、米川唯と福岡雄大のデュエット。ストラヴィンスキーの複雑な音楽といい、もがくような振付といい、祭典というタイトルながら祝祭感はない。2人とも身体能力も表現力も素晴らしいのだが、米沢の華奢な身体でこういう振りを踊ると痛々しく感じる。
ラストは舞台に敷かれていた布?が後方に巻き込まれ、米沢、次いで福岡が黒い幕の向こうに呑まれていく。

11月26日 大槻能楽堂

「清経」
大槻文蔵と天野文雄の対談を聞いた後なので、細部まで目を配って見られた。笛の音に合わせて、清経が少しずつ姿を現し、妻のもとへ近づいてるのは、やはりこのテンポだからいいのであって、早送りしたら台無しだよなと思ったり。
シテの上野雄三、ツレの長山耕三ともに声が聞き取りやすく、詞章がよくわかった。清経の面は時に絶望したり、時に泣き笑いに見えたりした。
恋之音取の小書き付きで、笛方が舞台の方に出てきて演奏していた。  
隣の席の男性が大方寝ていてかすかにイビキをかいているのが耳に障り、集中を削がれたのが残念。 

11月26日 劇団☆新感線「薔薇とサムライ2」

ライブビューイングで千秋楽を観劇。
今まで観た新感線のなかでは一番面白かった。天海祐希演じるアンヌ女王の気高く凛とした美しさと格好良さか何より。ストーリーもしっかりしていて、フランス革命ものを彷彿とさせる筋立てに見応えがあった。天海は2部の冒頭で、怪盗紳士としてトート閣下ばりに「最後のタンス」を歌い踊ったり、短髪の男装で黒燕尾を披露したりのサービスも嬉しい。まあ、彼女は陽性の人なので、トートそのものは仁でないとも思ったが。

後継者となる新田ニコルは初めて観たが、歌、芝居共によく、好演。古田新太や生瀬勝久、高田聖子らの安定感。早乙女友貴の殺陣が目に鮮やか。

ただ、休憩挟んで3時間半は長く、後半はダレた。同じようなギャグや殺陣の繰り返しはちょっとうんざりした。

2022年11月24日木曜日

11月23日 文楽公演第二部

「一谷嫩軍記」

弥陀六内は睦・団吾。
この場面を見るのは初めてかも。睦はいつもの高音の掠れがあまり出ず、敦盛と小雪の恋模様が瑞々しい。とはいえ、青葉の笛のような大事なものをあげてしまうほど、小雪のことを思っているのだろうか。人形は清五郎の敦盛に簑紫郎の小雪が可憐。弥陀六は玉助。爺さんかと思っていたが、颯爽として格好良く見えた。 

脇ヶ浜宝引きの段は休演の咲に代わった織と燕三。6人ばかりいる村人を語り分けたのは立派だが、滑稽な場面なのにいまいち笑いが起こらず。盤が回ったところから気合の入った表情で、大熱演はいいのだが、こういう場面は眦を決して語るようなものではないのではと思う。

熊谷さくらは希・清丈。 

熊谷陣屋は前後に分けて、前半を錣・宗介。聞き応えのある熱演だったが、声質が向いてないように感じて今ひとつ入り込めず。
後半は呂・清介。感想はいつもと同じで、三味線ばかりが力強い。

人形は玉志の熊谷。世代交代なのだろうが、動きがこじんまりしてる気がした。

2022年11月13日日曜日

11月13日 「波濤を超えて」

能、歌舞伎、現代劇のコラボだそうで、お目当ては壱太郎をはじめとする上方歌舞伎の面々と能楽師の林宗一郎。主演のジャニーズの若手は全く知らんかったが、さすがの人気で一階席はほぼ満席。やれやれ。

能楽師は3人キャスティングされているが、日替わり出演。聞いてないよーと思ったが、運良く宗一郎の回に当たった。
冒頭、蘇った知盛の亡霊として船弁慶のような装束で一差し舞ったのと、天狗の親玉、大天狗として吉弥の天逆毎姫(といって老女だが)を従えて登場。大天狗てはセリフもあって、低く響く声に人ならぬものの凄みがあった。他の出演者との絡みはあまりなく、能の要素を象徴的に取り入れた感じ。現代劇だから直面を期待したのだが、役の時はどちらも面を着けていてがっかり。カーテンコールでは素顔を見せてくれ、遠慮がちに手を振るのが微笑ましい。

源義経を関西ジャニーズJr.の嶋崎斗亜、平知盛をジャニーズJr.の影山拓也。2人とも若くて芝居はまだまだ、というか、義経と知盛のコスプレみたいに見えた。義経と頼朝の対面や、知盛の入水など印象的な場面をピックアップして、間を達者な歌舞伎役者らが繋いでなんとか芝居の形にしている感じ。物語はブツ切れだし、頼朝に追われた義経が落命するところなんかは説明てすませちゃったりして、芝居を見たというには物足りない。せっかくの知盛の入水は、岩の上に登って薙刀(碇ではない)を掲げるものの、仰向けに倒れ込むのではなく、くるっと回転して脚から飛び込んだのが肩透かし。
梅天狗の千寿、太郎天狗の千次郎らがうまい。三郎天狗と駿河次郎の二役をこなした吉太郎も活躍。歌舞伎や能役者が出るところは見られたが、ジャニーズ主体のところはしんどかった。
壱太郎の演じた静はいいとして、物語の鍵となる祇王がなあ…。恨みの根源になってからはいいとして、清盛の命令で知盛に殺されたのがきっかけとして薄いというか、あっさりしすぎで、平家はともかく、源氏やその他を巻き込むほどの深い怨念を抱くには弱いのでは。まあ、そこが見せ場ではないので、尺をとっていられないのだろうが。

11月13日 文楽公演第一部

「心中宵庚申」

改めて好きな話ではないと思ったが、演者は充実してたので聞き応え、見応えあり。
呂勢・清治の八百屋の段が特によく、半兵衛が心中を持ちかけるところで思わずホロリとした。全然共感できない話なのに。呂勢の意地悪婆は安定の面白さ。

上田村は千歳・富助。最近聞いた中では悪くない。というか、引っ掛かりなく曲に委ねて聞いていられた。人形もよく、勘十郎の千代が控えめな風情で、玉男の半兵衛の煮え切らないいい人ぶりと相まって、いいカップル。玉也の父平右衛門も抑制の効いた芝居で、千歳の「灰になっても帰るな」のセリフが痛切に響いた。

幕開き、糸繰りする下女を遣う簑悠がいい。仕草が丁寧で、ちょい役なのに目を惹かれた。隣りで似たような役の玉延は途中、クスクス笑っていて、頭巾を被っている足遣いも体を震わせて笑っているのが分かるほど。何かアクシデントがあったのかもしれないけど、いただけないと思った。

道行思ひの短夜は錦糸がシン、二枚目が勝平で安定感があった。ほか友之助、燕二郎。太夫は芳穂のお千代、南都の半兵衛、咲寿、聖、薫。語りのせいなのかなんなのか、やっぱりこの2人が心中する理由が分からんとモヤモヤして終わった。だつて、義母を悪く言われないために半兵衛から去り状を出しても、直後に死んじゃったらやっぱり義母のせいってことにならないか?お腹の子が憐れとかいうなら尚更、死ぬ以外の選択肢をとれなかったかと思ってしまう。


2022年11月12日土曜日

11月12日 文楽公演第三部

「壷坂観音霊験記」

沢市内を藤・団七。
藤は気持ちよさそうに歌い上げて、聞き心地よい。あまり浄瑠璃を聴いているような感じはしなかったが。沢市のキャラが違う感じがしたのは、思い詰めたような深刻さが薄いからか。新しい演目で、元々好きな話でないというのもあるかもしれないが。

奥の山の段を三輪・清友に清允のツレ。三輪の声が濁声みたいで聞きづらかった。

人形は清十郎と簑二郎の沢市。


「勧進帳」

七挺七枚の大編成で迫力のある床。織の弁慶、靖の富樫は若さゆえか、息詰まる心理戦というよりはがちんこの殴り合いみたいな勢いながら、緊迫感はあった。小住の義経、亘と碩の番卒がらしくてよい。が、冒頭で冨樫に呼ばれて出てきたの番卒は1人なのに、セリフを割っていたので誰が喋ってるの?となった。
人形は弁慶が三人出遣いで玉助、玉佳、勘介。初役の玉助は汗かいて力演。左の玉佳が好サポート。勘介は動いている時はいいが、止まっている時に右足が左に流れがちなのが気になった。花道での引っ込みは、大の男3人が身を寄せての熱演。勢いあって客席は沸いたが、花道横で見ると後半は人形遣いの背中しか見えないのがなんだかなぁ。
松羽目なのだが、安宅の関柄移動したところで、青海波に老松の背景に。こんなだったっけ?

2022年11月6日日曜日

11月6日 江戸能 DO-YOU-NOH?

江戸時代の勧進能を模して、江戸時代の扮装など当時を再現するという趣旨と聞いていたのだが、ちょっと中途半端。受付スタッフらが丁髷や日本髪で、能奉行役の辰巳万次郎が丁髷に長袴の裃姿で登場し口上を述べたり、ワキが丁髷姿だったりしたが、他の出演者は普段通りの姿だったので、チグハグというか、一部の人がコスプレしているだけみたい。

「墨塗」
大蔵基誠の大名、榎本元の太郎冠者、吉田信海の女。
基誠は大柄なこともあって立派な大名。吉田は墨の塗り方が涙のようでなく、雑に見えた。
以前見たのとだいぶ印象が違ったのは何故なのだろう。確か茂山狂言会だったので、同じ大蔵流のはずなのだが…。

「隅田川」
宝生和英のシテ、渡守は森常好、旅人は舘田義博、梅若は出雲路啓。  
宝生和英は初役だそう。前半、笠を被っているときは小柄なせいか、母というより童女のよう。後半、船に乗って渡守から塚の由来を聞く段では、京から連れられた吉田何某の子と言われたところではっと顔を上げ、亡くなったことを知るとがっくりと音を立てて姿勢を崩すさまに母親の思いが溢れた。 終盤、塚から念仏を唱える子どもの声が聞こえ、実際に子方が姿を表す。母と子が互いに手を伸ばすのだが、触れられずにすれ違う。歌舞伎や舞踊では子役を使わないので、違いが興味深い。

2022年11月3日木曜日

11月3日 Kバレエカンパニー「クレオパトラ」

50歳の熊川哲也シーザー役で久しぶりに舞台出演するというので、それを目当てに行ったのだが正直期待はずれ。登場シーンでは一瞬熊川と分からず、会場の拍手で気づいたほど。往年のようなテクニックは望むべくもないが、年齢を重ねたからこその存在感やオーラを期待していたのだが。なんだか肩のあたりが丸く見え、冴えない普通のおっさんのよう。政治家として頂点に登っていこうという人物の力強さは感じられなかった。ダンスシーンは結構あり、跳躍なども見せたが特筆するほどではなく。女性ダンサーをリフトするところはちょっとしんどそうだった。

クレオパトラの日高世菜はバランスや回転、ジャンプの安定感があり、確かなテクニックで魅せる。シーザーを誘惑する場面では妖艶さがあるが、なんでか可愛らしい感じもあり、一国を統べる女王の大きさは足りないと思った。 蛇のように、床に寝そべって身体をくねらせる仕草はいただけないと思った(彼女のせいではなく、振り付けの問題だけれど)。

オクタヴィア役は古典的な振り付けが他と違って印象的。成田紗弥も良かった。

初演の時も思ったけど、作品としては今ひとつ。音楽が物語に合っておらず、ドラマに入り込めない。曲とマッチして盛り上がるのは冒頭とラストだけで、他はあまり印象に残らなかった。