スティーブン・ソンドハイムの歌なのに、キャストの半分以上が歌に難ありというのがつくづく残念な舞台だった。望海風斗の魔女は圧倒的な歌唱力だったけど、ほかは……。2人の王子(広瀬友祐・渡辺大輔)のデュエットは悪くなかったのと、赤ずきんの羽野晶紀がいいキャラを出していたほかは、正直、歌を聴くのが辛かった。パン屋夫婦の渡辺大知と瀧井公美、シンデレラの古川琴音など、役者としては評価している人たちだったので、マイナスのイメージになってしまうのが惜しい。ジャック役の福士誠治はこんなに歌えなかったっけ?という印象(1幕目、配役を確認せずに観ていたので、この歌が下手な役者はだれ?くらいに思っていた)。8~9割方歌える人をそろえて、残りをキャラクターを表現するためにどうしてもこの人の演技力が欲しいということで、あまり歌えない人を入れるならまだしも、歌える人が少数派というのはいただけない。
赤ずきんとシンデレラ、塔の上のラプンツェル、ジャックと豆の木というなじみのある童話を森でつなぐ物語はよくできていて、1幕は(歌を抜きにすれば)楽しく見られた。が、1幕の最後にシンデレラとラプンツェルがそれぞれ王子と結ばれて大団円の満足感があったので、2幕が少し蛇足に感じた。というか、2幕でハッピーエンドのその後を描くなら、もっと中身が欲しかった。呪いが解けて子どもを授かったパン屋の夫が、自分が抱くと赤ん坊が泣くといって妻に子育てを押し付けるところや、追い求めていた女を手に入れた王子たちが次のターゲットを求めるくだりはリアリティがあったけれど、それ以外はピンとこない。1幕は魔女が影の主役という感じで、継子のラプンツェルとの関係(魔女のセリフで、「世間はひどいところだから、塔に閉じ込めて守っていた(世界は野蛮だから、子供のままでいなさい。永遠に?)」みたいなのがあって、毒親とそれに反発する娘みたいなシーンがあったし、パン屋の息子の呪いを解こうとするのも、ラプンツェルとの関係修復のためだった)がテーマなのかなとも思えたが、2幕では早々に退場してしまって、物語を担うのがシンデレラとパン屋、赤ずきん、ジャックになってしまうし。人を食う巨人が出てくると、どうしても進撃の巨人を連想してしまうのもよくないと思う。
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