冒頭、舞台番役の千次郎が上の巻のあらすじを解説。舞台上に写真パネルを置いて、紙芝居のように引き抜いて絵を変えるのだが、写真は数枚だけだし、大きさも控えめ。
病み衰えた清玄は桜姫への執着を募らせ、気持ち悪さに拍車がかかり、悪党ぶりを増す権助は顔にあざができてからの色悪っぷりにしびれる。対極的な2役を色濃く演じる仁左衛門の凄さよ。ただ、ほとんどが顔にあざがある状態なので、ビジュアル的には少し残念。玉三郎は奇跡のような美しさ。立ち回りで決まるたび、絵になる2人だ。清玄の幽霊に真実を知らされ、権助が父と弟の仇であることを知る過程の心情の変化が鮮やか。権助と2人で話すところで珍しくセリフをとちっていた? 女郎屋から戻って、蓮っ葉な口調と姫言葉が混在するところはお見事。他の役者ではこうはいかない。
ラストはお家再興に望みをかけ、浅草雷門の前に吉田家の面々がそろって大団円。仁左衛門が大友常陸之助役で出てきたのには少し驚いたが、コロナ感染で休演していた千之助も復帰してめでたさが増す。最期は「本日はこれにて大切り」で、鮮やかな幕切れ。陰惨な場面が続いただけに、こういう終わり方だと気持ちが晴れる。
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