安徳帝が典待局に誘われて海の下へ向かおうとする場面から、舞台は過去へ遡り、鳥羽上皇から崇徳、後白河へと続く皇室の跡目争いや、源平の戦いがポップに描かれる。源義朝や平清盛は特攻服のような上着で、背中に「全国制覇」「盛者不衰」の文字。「渡海屋」の場面に至るまで40分あまり、争いに敗れて死んだ者は着物を脱ぎ捨てて去り、赤と白を基調とした着物が次々と舞台を埋めていく。
源平の勝敗が決したのち、帝から初音の鼓を拝領した義経が、頼朝の不興を買い、静と別れる場面もあり、本編?(渡海屋)に至るまでの状況がよくわかる。
渡海屋では、銀平ら船問屋の人々はニッカポッカ―に長靴という漁師のいでたち。義経一行はタキシードや作業服風から、ジーンズ、アロハに短パンと、カジュアルな恰好に。
魚尽くしや女房おりうののろけなど、見せ所はちゃんと残しつつ、テンポよく進む。
大物浦で義経への恨みを述べる銀平の独白は、古典のセリフ。ナレーションのような義太夫節をアンサンブルが語るが、どちらも発声が現代劇風なので、台詞を聞く心地よさがないのが惜しい。一方、安徳帝を大人の女優が演じていたため、台詞が明瞭で、争いをやめようと持ち掛ける義経に反発していた銀平が、安徳帝の詞で意を改めるまでの様子がより分かりやすかった。手負いになった銀平の血まみれの衣装のなかに、レインボーカラーや東京オリンピックのロゴ。最期は、碇の代わりに、死んでいった者たちの着物を束ねたものを抱えて海に飛び込む。敗れていった者たちのすべてを抱えていくかのよう。
ラストは弁慶ら一行が去ったあと、一人義経が舞台に残り、白装束の人々が念仏踊りのように踊りながら周囲を囲む。無常観というか、義経の孤独が鮮明になり、タイトルロールであることがよくわかる幕切れだった。
清盛や弁慶を演じた三島景太が、ガタイがよく、坊主頭に髭という姿が日本人離れして異彩を放っていた。
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