劇場で観そびれたので、オンラインで視聴。
江戸時代初期、シャムロに移り住んだ日本人の居留区が舞台の時代劇。筑前や備前など、日本各地の方言や、シャムロとの混血や現地生まれなどの片言の日本語などが飛び交う。武家出身の者たちが上に立ち、現地人や日本人でも現地生まれで日本を知らないものを見下すなど、差別の構造が見え隠れし、次第に締め付けが厳しくなっている。
正義感の強いツル(立川茜)はそうした状況を立て直そうと活動している。後につかまって牢に入れられてしまうほど。事を荒立てず、温厚に暮らす兄、一之介(尾方宣久)に不満を漏らした際の一之介のセリフが印象的。信念を言葉にしてしまうとこぼれて落ちるものがある。正しいことを追いすぎるとやがて人を許せなくなる。人を責めるとなぜかもっと腹が立つ。本当は近かった人をやがて憎むようになり、気づいた時にはもとには戻れない…。コロナ禍の閉塞感が他人への攻撃に向かう今の状況を映したよう。
武家の娘、ヒサ役の石丸奈菜美の、程よく高飛車で調子が良く、状況が変わると手のひらを返したようになるしたたかさがいい味。純朴な青年、梅蔵の渡辺啓太や混血児クラの高橋明日香らも、キャラが立っていた。深刻になりそうなところで、喜左衛門(奥村泰彦)の「ござるのでござる」「ワッシャ」など変な侍詞が楽しい。
日本が鎖国政策に入ろうとしている時世もあり、新天地を求めてカボチアへ移ることを決めた一行。ユートピアの希望を感じさせる幕切れだった。
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