2020年8月17日月曜日

8月17日 第一回千五郎の会

当代の十四世千五郎になってから初めての東京での会。3月の予定がコロナ禍で5月に延期され、さらに8月に。加えて、客席の収容人数を制限するため1日2回公演という異例の開催。当初予定していた大蔵家の参加がなくなり、演目が「三本柱」から「末広かり」に変更になり、千五郎は大曲の「釣狐」を1日に2回演じるという挑戦になった。1日2回目の17時の会を所見。
開演5分前に千五郎から挨拶。当初は父、五世千作と出演予定だったが、亡くなったため取りやめも考えたが、供養にもなると開催を決意したこと。コロナ禍で2度の延期を経てようやく開催にこぎつけたことなどを語る。客席には1席置きに千作の写真を使ったチラシ?が貼ってあり「舞台から見ると父がたくさん」と。笑顔の千作に吹き出しで「このお席は使えまへん」「なんや、そうしゃるなたんすちゅうやつですわ!」とありほっこりした。
「末広かり」 千五郎の果報者に逸平の太郎冠者、島田洋海のすっぱ。 挨拶の後、5分ほどで着替えて登場した千五郎。2度の釣狐に加えて、末広かりまでとは、意気込みが感じられる。が、声大きい。大きいのは悪くないのだが、なんか耳に障るのだよ。スピーカーの音量を上げ過ぎて音割れしているような感じとでもいうか…。改めて気が付いたのだが、千五郎の狂言は何でかあまり笑えないし楽しくない。怒っているみたいだからか、などとつらつら考えた。
「狐塚」 茂の太郎冠者に宗彦の次郎冠者、七五三の主人。 打って変わって、ほのぼのと楽しい。鳴子で鳥を追い払うところや、主人を狐と疑ってしっぽがないか確かめるところが微笑ましく。七五三の主人も大らかでいい。
「釣狐」 千五郎の老狐、千之丞の猟師。
老狐の登場時から足首のあたりから狐の着ぐるみが見えていたり、動いた拍子に袖から狐の毛皮がのぞいたりしていたのは、演出だろうか。ずいぶんはっきり見えていたが。伯蔵主に化けたものの人に近づくことの恐ろしさで震える様子など、狐の心理描写が分かりやすかった。節回しも自然で、さすが当主の貫禄。面越しでもはっきりセリフが聞き取れるのはありがたい。中入りで引っ込むところで、橋がかりに差し掛かったところで着物の裾をまくり上げ、しっぽを見せる。
千之丞の猟師ははじめから疑っている様子が明白で、何か企んでいそうな感じ。老狐との緊迫感のあるやり取りに見ごたえがあった。

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