場内はほぼ女性客。開演5分前くらいから劇場の様子がスクリーンに映し出されたが、スクリーンの向こうの客席よりも映画館の客性がシーンと静まり返っていて怖かった。
人類の争いにより滅んだ地球から逃れた人々が水星に移住しているという近未来的SF。人々は左腕に装着した“へその緒”によって見えない膜に覆われて外気から守られ、酸素や栄養の供給を受かる代わりに、思想を管理される。不穏な考えを持つものは直ちに拘束されて矯正措置を施され、平和が保たれている。緻密な設定により構築された世界観の裏に、多様性がなくなり同質化した社会は果たして幸せなのかという哲学的な問題意識が描かれていて、上田久美子らしい見応えのある物語。小説か漫画で読みたいと思った。
歌は劇中歌のようなものが少しあるだけ、宇宙や近未来感がコンテンポラリー風のダンスで表現させるほかは、ストレートプレイのよう。衣装や装置もキラキラ感は皆無で、薄暗く、およそ宝塚らしくはない。上演時間短縮のためか、最後のパレードもなかったし。
主人公オバク(サーシャ)の真風涼帆はシリアスながら勿体をつけたようなセリフ回しが、宝塚くさい。前半は目が半開きのような様子。記憶をなくした苛立ちや無気力の表現で、後半との変化をつけるためなのだろうが、つい睡魔に襲われてしまった。タルコフ役の寿つかさがほぼ出ずっぱりで、安定感のある演技。(露出が多いので、もしかして退団?と思ってしまった)
カーテンコールで千秋楽の挨拶があり、感極まって涙ぐむ真風。同時期に公演していた花組や星組は休演したことを思うと、全日程をやりとげられて本当によかった。
0 件のコメント:
コメントを投稿