2017年4月29日土曜日
0429 唐組「ビンローの封印」
地下の偽ブランドマーケットを舞台に、元船員の男や地下マーケットのボスなどたくさんの登場人物が錯綜する。誰もかれもがいかがわしく、ナンセンスなやり取りががやがやと進む。「賑やかな芝居」というのはその通り。元船員・製造の福本雄樹が若々しく、一本気な主人公を好演。海賊のヤンは赤松由美。浮浪者のような恰好で登場し、途中で女であることがばれるのだが、胸をはだける必要があるのか?帽子を取ればいいのでは。主人公が憧れる船長の娘あかねの藤井由紀は登場シーンは短いのだが、舞台に出ると空気が変わるのがさすがだ。ラストシーン、公衆トイレが大海原へ漕ぎ出す船のようになる。不思議な幕切れ。
2017年4月28日金曜日
0428 Plant M「凛然グッドバイ」
劇場の場所が分かりづらくて迷ったため、冒頭を見逃した。
出口弥生とののあざみの2人芝居はコンパクトな劇場空間を濃密に埋め尽くした。自らを生まれついての詩人と信じるが才能がないと判断されるセンと、180%を超える才能があるとされながら薬物に侵されて言葉すら失ったデモ。デモに言葉を取り戻させようとするセンとデモの葛藤がヘレン・ケラーとサリバン先生のやり取りに重なる。デモを更生させたセンは戦場で受けた銃弾による痛みから薬物に頼るようになり、逆に廃人となってしまう。娘には負け犬と軽蔑されているセンは哀れに見えるが、デモは彼女こそ先生であり、詩人だったと言う。芸術とは何か、才能とは、と改めて考えさせられる。詩人って何も生み出さない人と思われがちだが、「世界の秩序(?)は詩人によって保たれている」とうセリフが印象的だった。
0427 宝塚雪組「幕末太陽傳」「Dramatic”S”!」
落語の居残り佐平次をベースにした映画の舞台化。いわゆる二枚目ではない、コミカルなこの役は宝塚では早霧せいなでしかできないと思う。居残りのほか、品川心中、お見立てなど落語のエピソードを盛り込んでテンポよく進むが、ちょっと盛りすぎの感もあり、これといった見せ場のないまま終わってしまう。主人公が新天地へ旅立つという幕切れはサヨナラ公演として上手くまとまっているが、佐平次が死病を患っているという描写が薄いので、最期に生きる意欲を抱いてアメリカへ行くとう決意が唐突に感じられた。高杉晋作役の2番手望海風斗は三味線をつま弾いて都都逸を口ずさむ登場シーンが粋。
ショーも上手くまとまっているものの、これといった見せ場に欠ける。冒頭の早霧のソロダンスから、歌よりも踊りに重点を置いた構成なのは、歌があまり得意でないトップだからだろう。踊りもねえ、動きはシャープなのになんだか冴えないのは何でだろうと考えつつ観て気づいたのは、リズムに合ってないから?オンテンポよりもやや早いのと、手足が伸びきってないので慌ただしく見えるのでは。次期トップの自覚からか、望海の歌と踊りに頼もしさが増していたように感じた。初舞台生のロケットがオーソドックス過ぎて物足りなかった。
2017年4月24日月曜日
0423 桂南天独演会
凄くあったかい独演会だった。客席の熱が高く、温かい。
「ちりとてちん」のマクラで師匠南光がパンフレットに寄せた文章を読んで泣いたと明かし、内弟子時代の思い出を笑いを交えながらたっぷりと。感極まって落語ができなくなりそうなほどだったが、立て直して勢いのあるちりとてちんだった。客席のウケが異常なくらいいいののあって、予定時間を大幅にオーバーしたらしい。(後に出た紅雀によると25分が50分になった)
「だんじり狸」ほのぼのしたいい話だ。だんじり囃子に見送られるラストが変わっている。
「愛宕山」ブリーゼの広い空間を上手く使って、自然の中の広々とした雰囲気がよく出ていた。落語を聞いているのに、お天気空の下を歩いているような。
2017年4月14日金曜日
0411 4月文楽公演 第2部
「楠昔話」
碪拍子の段は咲甫・清友。山があって川があって昔話のようなのどかな風景のなか、仲睦まじい老夫婦…と思っていたら小学生のような口論を始める。咲甫は声が若いので老人らしさは物足りないが、団子売りや落ち武者のちょっと滑稽な語りは上手い。
徳太夫住家の段は中が始・喜一郎、奥が千歳・富助。始は堂々とした体格にたがわぬ声で頼もしい。千歳は老夫婦の語りも味があり、娘、嫁の語り分けもくっきり。ストーリーはあまりのシュールさにもうなんか唖然。喧嘩のあげく差し違える老夫婦って激しすぎる。
「曽根崎心中」
生玉社前の段を睦・清志郎。高音の擦れはあったがだいぶましになったよう。ちょっと硬さは残るけど、大抜擢によく応えたのでは。
天満屋の段を津駒・団七。情感あふれる濃い天満屋だ。
天神森の段のお初を呂勢、徳兵衛を咲甫、ほか芳穂、希、亘。三味線は寛治、清志郎、寛太郎、清公、燕次郎。若い美声の太夫ばかりなので、音楽的に聞こえた。
人形は勘十郎のお初に清十郎の徳兵衛。勘十郎のお初はちょっとくどいと思うところもあるが、清十郎の徳兵衛は抑制のきいた物腰がいい。天満屋の縁の下に隠すところもスムースだった。ラストは徳兵衛がお初を刺し、自分の首に刃を突き立てるところまで。
2017年4月10日月曜日
0409 浪花人情紙風船第一七回公演「てん、てこ、まい。~芸人長屋は、春爛漫~」
芸人ばかりが暮らす貧乏長屋のドタバタ喜劇。桂九雀が落語やクラリネットを披露したり、洋あおいが女剣劇一座の座長で男役の芝居をしたり、喜味屋たまごの三味線、手品などそれぞれの芸を披露する一幕も。紅壱子は安定の存在感で、幼いころに手放した息子との再会に涙する見せ場ではホロリとさせられた。が、「上手い!」って掛け声はいかがなものか。
2017年4月9日日曜日
0408 Zsystem「キラメキ~私はトビウオ、あなたは太陽~」
世界初というシンクロナイズドスイミング芝居。シンクロを取り上げるというのはユニークだが、トレーニングをしていない女優の中には水着姿が厳しい人もいて見るのが辛かった。プールのような反響音で水中のような雰囲気を作ったり、肩倒立でシンクロの演技を再現したりといろいろ工夫はされていた。が、演技シーンが多すぎたかも。ダンサーとしてのレベルも決して高くはないので、飽きてしまった。
コーチに思いを寄せるエースの少女との恋愛めいたやり取りとか、そのコーチが少女時代に憧れた先輩と最後にキスするとか、なんだか唐突で共感できなかった。もしかしてこれは男性が書いた脚本だからなのかもしれない。
4月8日 4月文楽公演 第1部
「寿柱立万歳」
三輪、津国、南都、小住、文字栄に清馗、龍爾、錦吾、清允、団吾。人形は紋臣と清五郎。
華やかで賑々しい。が、途中テンポがもたついたような。足踏みの間が悪かったのか。
「菅原伝授手習鑑」
茶筅酒の段は芳穂と宗助。白太夫の枯れた感じ、チャりにもう少し軽みがあるといい感じ。
喧嘩の段は咲寿と清丈。落ち着いて語ろうという努力は感じられ、義太夫らしくなってきた。喧嘩場で少しわあわあした印象が残るのが惜しい。(4月29日、ダブルキャストの小住。若手らしからぬどっしりとした体格で低音部が安定している。一方、高温はちと聞き苦しく、喧嘩場はガヤガヤした感じだった)
訴訟の段は靖と錦糸。低音が少し辛そうだが、安定感が増してきたか。
桜丸切腹の段は文字久と藤蔵。声がよく出ていて語り分けも明快だが、住太夫の印象がまだ強く残っているので「なんまいだ」に深みが足りなく感じた。三味線の熱演はいいのだが、うんうん唸りすぎで八重のクドキのあたりなどはちょっと煩く感じた。
嫁たちは揃いの着物でそれぞれ夫にちなんだ柄。八重だけが振り袖。
「口上」
咲の案内で清治、勘十郎が挨拶。咲の呂律が怪しくてハラハラする。
清治が「先代の呂太夫は映画俳優に誘われるほどで、文楽に似つかわしくないくらいの美男子だったが、当代は…ご覧ください。まことに文楽に似つかわしい」と言って爆笑を誘っていた。
寺入りの段は呂勢と清治。何とも贅沢な寺入り。戸波と千代の語り分けが明快で、涎くりのチャリも面白かった。「一日に~」の名台詞をサラリと言っていたのが好印象。あまり引っ張ると嫌みだから。
寺子屋の段は前が呂と清介、切が咲と燕三。呂は出だしはやや声が小さかったが中盤はよく通っていた。クライマックスでもうひと盛り上がり欲しかった。技術的には的確なんだろうなあと思うのだが。盆が回って咲の語りになると、差が歴然。咲としては本調子からは程遠いのだが、切場語りの力を見せつけた。
2017年4月7日金曜日
4月6日 文之助・市馬ふたり会
遅れたので前座の市江は見られず。
文之助が「茶屋迎い」「蔵丁稚」。茶屋迎いでは唄や義太夫節、蔵丁稚では芝居をたっぷりと披露。最初ちょっと噛みかみだったけど、後半は文句なしだった。ちょっとあっさりしすぎてるかな。
市馬は「松曳き」「寝床」。口跡がいいのと、語りのテンポが心地いい。
2017年4月5日水曜日
0404 白蟻の巣
三島由紀夫の初の長編戯曲だそうで、切れ味の鋭いナイフで削いだようなセリフが痛いよう。ブラジル移民の大農場のオーナー夫婦とその運転手の夫婦の奇妙な三角?四角?関係。過去の過ちをうやむやにしたまま、何事もなかったように夫婦関係を続けるが、閉塞感が次第にふくらみ、緊張感が高まる。そこから逃れるのは死だけだと思いながら、結局何事も変えられない。気が弱く、妻の浮気がとがめられない主人を平田満が好演。ゆっくりとした話し方ですべてを受け入れてしまう寛容さがいらいらするくらいだ。心中未遂を起こした妻を安蘭けい、浮気相手の運転手を石田佳央。運転手の妻の村川絵梨が若くエネルギーにあふれる演技で、古い世界に属する3人との対峙が鮮やかだった。
2017年4月4日火曜日
0403 コメディ・トゥナイト!ローマで起こったおかしな出来事《江戸版》
何というか、いろいろと残念な舞台だった。ポスターのはじけた笑顔から懸念はあったのだが、予想を裏切らなかった。
前説からコメディ、コメディとくどいくらいに強調するのだが、ちっとも笑えない。稽古はできていてこれが完成形なのだろうが、少しずつ歯車があってない感じでテンションが空回りしている。唯一吹いてしまったのは、2幕でルー大柴が女装して出てきたところ(←意外に完成度が高かったので)歌は平野綾と鈴木壮馬は聞きごたえがあったが、その他は下手ではないけど上手くもなく。何よりメロディが古臭く感じた。女郎の女たちのダンサーは踊れる人が多かったみたい。けど、中途半端な外国風など設定がいまいちだった。
後半、3人の女が入れ代わり立ち代わり現れるところなど、ドタバタしているところがよかったので、もっと全体的にテンポよくして、ドタバタぶりを徹底するほうがいいのでは。
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