2017年10月5日木曜日

10月5日 木ノ下歌舞伎「心中天の網島」

糸井プロデュースは妙なミュージカル風。随所に歌が盛り込まれているのだが、あまり上手くないというか、むしろ下手。狙ってるのかとも思ったが、西田夏菜子だけ上手いので、単に音痴なのか。特に小春。可愛らしく調子っぱずれで作品には合っているものの、曲はキャッチャーで悪くないのでちゃんと歌える人たちで聞いてみたい気もした。 治兵衛のダメ男ぶりがこの上なくて、なんで小春が惚れるのか分からないくらい。小春、おさんは感情表現が上手くはまった。おさんと治兵衛の若かりし幸せだった場面はおそらく原作にはないが、これがあったのでかえって小春とのことの理不尽さを際立たせて効果的。心中のシーンは刀を振りかざしては躊躇し、痛がってのたうち回ったり、首をつって苦しみもがいたりと、死をみっともなく描いたのがよかった。実際の心中なんて綺麗事ではないはず。 義太夫節風に語るところで、西田がヴァイオリンを弾いていて、芸達者ぶりに驚いた。

1005 宝塚星組「ベルリン、わが愛」「Bouquet de TAKARAZUKA」

紅ゆずるがナチスの支配が強まるなか、映画製作にかける青年テオ役。お笑い色を封印しシリアスな役どころは悪くないが、冒頭、映画への情熱を語るセリフの滑舌が悪いのが何とも残念。ちょっとうわずった声もいただけない。礼真琴がテオの友人で絵本作家の穏やかな男役。ふんわりとした雰囲気が良かった。ユダヤ人女優ジル(綺咲愛里)をヒロインとして起用し続け、ゲッペルスに逮捕されそうになるところを国外へ逃れるところで幕。戦争の暗い時代をあえて避けるのはちょっとご都合主義すぎる気もするが、宝塚だから仕方ないのか。 レビューはモンパリ90周年で、過去の主要な音楽をふんだんに盛り込む。オープニングの花をモチーフにした、ピンクベージュ系の衣装は華やかで美しいが、蝶と花のシーンのセットがいかにもな書割で学芸会みたいだったのと、スパニッシュのシーンの唐突さに戸惑った。紅は歌はともかく、ダンスがことごとく今一つなのは、ポーズが決まり切らないから。礼が歌、踊りともに秀でているのが改めて感じられた。

2017年10月2日月曜日

1001 「謎の変奏曲」

橋爪功と井上芳雄の二人芝居。1人の女性をめぐる男たちの心理戦で、ミステリーのように謎が明かされていく。派手な展開はなく、静かに展開するので、感動はじわじわと来るのかも。私が今一つ引き込まれなかったのは、橋爪にあまり色気を感じないからだろうか。初演はアラン・ドロンだそうだが、だったら2人のやり取りももっと緊迫感を感じられたのかなと思った。

0930 貞松・浜田バレエ団「ジゼル」

貞松融団長の前説、バレエのマイムと手話を並べて比較するのが面白い。 ジゼルの川﨑麻衣は純朴な風情がぴったり。重力を感じさせない軽やかな踊り。頭が小さく、すらりとした手足のバランスがいい。 アルブレヒトの塚本士朗はあまり格好いいとは見えなかったが、サポートが的確なのかな。川崎がよろけたのを上手くカバーしていた。 ミルタの廣岡奈美は力強さがみなぎる。ウイリーの踊りも全体的に幽玄というより勇壮だったような。

0928 ピッコロ劇団「かさぶた式部考」

好評だった舞台の再演ということで期待していたのだが、初演のほうがよかったという人も。 宗教のうさん臭さと突きつけ、豊市一家は結局救われないというラスト。焚火の火に照られされた母伊佐(平井久美子)の横顔が切ない。 智修尼の森万紀は凛とした美しさで2幕で豊市をいたぶるところの妖艶さが鮮烈。知的障害の信者、夢之助の孫高宏の鬼気迫る様子、てるえ役の吉江麻樹の切羽詰まった演技が良かった。解せないのは伊佐が最後、正気に戻ったことを忘れるため巡礼地の管理人のようになるところ。豊市が正気に戻ったという「奇跡」を描いた大きな絵馬が飾られているところになぜとどまるのか。絶えずその事実を突きつけられる場所にあえて身を置く理由がわからない。

0927 壁ノ花団「ウイークエンダー」

水不足の四国の山あいの村?で暮らす女。同居していた父は川に流され、結婚して京都に出ていた妹が帰省している。大切なものは川から流れてくるという父の教えや、ジョイとソロウと名付けた犬、採用面接に落ち続けている夫、そな夫に妊娠を告げられずにいる妹、思い出を食ってしまう幼馴染など、寓意的なエピソードが散りばめられるが、全体としてはぼんやりしている。父親やハワイと呼ばれる幼馴染を演じた金替康博がそこはかとなくおかしい。姉妹は「〜だ」というふうなぶっきら棒なものいいなのは作者の好みか。

0926 劇団新派「華岡青洲の妻」

市川春猿改め河合雪之丞の大阪お目見え。先に新派入りした喜多村緑郎と2人が入って、一気に華が増した。立ち姿の美しさに口跡のよい台詞回しが心地よい。波乃久里子の小陸は遠目だったこともあってか、妹らしい幼さがあり、「女であることが恐ろしい」などのセリフが的確で心に響く。水谷八重子は圧倒的な美しさというのとはちょっと違うけれど、独特の可愛らしさがあるので、嫁いびりが陰湿になりすぎないのがいい。ただ、青洲への執着があまり感じられず、嫁への対抗心が唐突に見えた。