2025年2月23日日曜日

0223 貞松・浜田バレエ団「ラ・バヤデール」

60周年記念の新制作。振付の貞松正一郎は幻の場面で終わらせず、最後の崩壊まで描くことにこだわったそう。

ニキヤ役の名村空の慎ましい雰囲気に対し、ガムザッティの井上ひなたは華があ李、とても役に合っていた。ソロルの水城卓哉は優柔不断なキャラを見事に表現していた。

ラジャの川村康二はひょろりとした姿が少し頼りない感じ。ハイ・ブラーミンの武藤天華、マグタヴェヤの幸村恢麟はステレオタイプなルックスのままなのはどうだろう。新制作なので少し配慮が欲しかった。ブロンズアイドルの小森慶介はキレのあるジャンプや回転で見せた。

2025年2月16日日曜日

2月16日 文楽公演 第2部

「妹背山婦女庭訓」

猿沢池の段を亘・寛太郎。
女の声ががちゃがちゃしているほかは、板についてきた感じ。寛太郎はきっちり、楷書の演奏。

鹿殺しは御簾内で薫・清方。
語り出しは悪くなかったが、だんだん2制御が聞かなくなる感じ。

掛乞の段は小住・清丈。
落ち着きがあって良い語り。

万歳の段は芳穂・錦糸に清允のツレ。
こうやって聞いてくると、芳穂ってうまい。音楽性もあるし。錦糸はなんか不機嫌そうだったが的確な音。

芝六忠義は千歳・富助。
これぞ切場の語り。子どもの声が可愛くないのは相変わらずだが、三作と杉松の語り分けもしっかり。

人形は玉助の芝六が豪胆。三作は玉彦で、万歳の踊りを頑張っていた。お梶の清十郎が母親の悲しみをくっきり描く。

2月16日 文楽公演 第1部

「妹背山婦女庭訓」

小松原の段 
三輪、咲寿、南都、文字栄、津国に団吾。
咲寿はいつもより落ち着いた声でよく響いていたが、雛鳥ならもっと可憐さがほしい。

太宰館の段は希・団七。
よく声が出ていたし、入鹿の大笑いはゆったりと時間をかけて大きさを出そうとしていたが、拍手がない。どこか空虚な感じがするからか。団七は大笑いの終盤、抑えた掛け声がよき。

妹山背山の段は若、藤に清志郎、清介の背山に、呂勢、錣に清治、藤蔵の妹山。
清志郎の弾き出しの力強さ、これぞ背山という重厚感。藤はやたら顎を使った語り?対して妹山の柔らかさ、華やかさが際立つ。清治の三味線、呂勢の語りの音楽性に聞き惚れる。
若の大判事は慎重な語りのせいで小物に感じる。顎を使った分骨太感がある久我之助のほうが大物な感じ。錣は情があるのはいいのだがウェットな感じが定高ではないかも。

人形は勘彌の久我之助が凛々しくて良き。玉佳の入鹿が公家悪の禍々しさ。

2025年2月15日土曜日

2月15日 踊れ、その身体がドラマになるまで〜矢上惠子メモリアルガラ2025 in TOKYO〜

矢上恵子作品をたっぷり、しかも新国立劇場バレエ団のダンサーが踊るという、とても見応えのある公演。

「Witz」
福田圭吾の太ももの筋肉がすごい。筋が見えるほど。キレのある動きを存分に見せる。
 
「Multiplex Personality(多重人格)」
井本聖那須を中心に、4つの人格を井後麻友美、石川真理子、佐々木夢奈、杉前玲美。
井本と4人が入れ替わりながらユニゾンで踊り、異なる人格を表現。佐々木は少しカウントが早い?と思うところがあった。

「FROSEN EYES〜凍りついた目〜」
米沢唯と木下嘉人。
心が壊れてしまった少女の米沢は糸の切れた人形のように脱力するのがすごい。パイプ椅子の上で踊っているときにバランスを崩して倒れかけてヒヤッとしたけど、流石の身体能力で持ち直し、大事にはならなかったよう。

「Butterfly」 
福田圭吾のために振り付けた作品だそう。はじめ動体のないロンTのような(肩と腕だけ)衣装から踊るうちにマントのように羽が広がってゆくのが面白い。

「Bourbier(ブルビエール)」
福岡雄大はコンテだと力強く生き生きして見える。身体能力の高さよ!足の甲をつけて座った姿勢から手を使わずに上に伸びるようにぐんっと立ち上がるの、どうやってるんだろう。 

「Cheminer(シュミネ)」
小野絢子を中心に、柴山紗帆、池田理沙子、五月女遥、川口藍、金城帆香、橋本真央。
小野は凛とした風情が作品に彩りを与えてよき。コンテも悪くない。池田はちょっと作品に合っていないような感じがして、振りをこなすだけではダメなのだなと思うなど。 

「Toi Toi」
疾走感、踊りっぱなしで爽快。上演前に矢上の映像が流れ、人となりを見られたのも感慨深い。 

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2025年2月14日金曜日

2月14日 人間を脱出したモノたちへ

コンテンポラリーダンスと人形劇のダブルビル。

「ペトルーシュカとロベルト・モンテネグロ」はバレエ・リュスの再創造とあり、関典子の振付・出演。ピアノで奏でるストラビンスキーの曲に乗って、人間が人形を演じる。タイトルにあるロベルト・モンテネグロの絵をモチーフにした衣装と舞台装置で、90cm四方の黒い箱が人形を飾るケースのよう。

「ペドロ親方の人形芝居」はいいむろなおき演出で、マイムと浄瑠璃人形、オペラ歌手が共演する雑多さ。能勢の鹿角座が協力していて、人形の貸与や指導をしたようだが、素人の遣う人形なので、動きのぎこちなさは否めず。スペイン語オペラで物語が進むのだが、舞台のあちこちで同時に進行するため字幕が追いきれず、話がよくわからなかった。

アフタートークでいいむろが、人形遣いには体の角度など、マイムで気をつけるところを注意したそう。そういうとこらに共通項があるのかも。 

2025年2月11日火曜日

2月11日 立春歌舞伎特別公演 夜の部

「義経千本桜」

怪我で降板の愛之助に代わり、道行は虎之介、四の切は獅童が代演。

獅童は声の調子が悪そうで、狐言葉が辛い。初音のチュジュミとか、タ行の発音が…。体が重そうで、欄干に飛び乗るところなどキレがない。以前演じた時はそんなことなかったと思うのだが。 2階席最前列で休憩明けに係の人が「はしごを架けるけど乗り出さないで」とネタバレ。梯子を登ってきた獅童は降りる時にウインクして、客なら歓声を浴びていた喜ばせていた。

大序からの上演は珍しいが、義経(扇雀)が藤原朝方(青虎)から初音の鼓を渡されるところが描かれると後の話がわかりやすい。堀川御所の場では卿の君の團子の女方が初々しい。姿は可憐だが発声はまだまだか。静御前の笑也が落ち着いた美しさ。だが、正妻と愛妾が仲睦まじくって嘘っぽい。

道行初音旅は虎之助の忠信に壱太郎の静。虎之助は弟感があるので、姉弟のようだった。

2025年2月10日月曜日

2月10日 文楽公演 第3部

妹背山婦女庭訓の通し

杉酒屋は睦・清友。
中音部はいいと思う。

道行恋苧環は呂勢、織、小住、織栄に宗助、清馗、錦吾、藤之亮。
バランスのよい配役。呂勢は声の良さはもちろん、お三輪の町娘らしい勝気な愛らしさを描出。織はもったぶった語りが高貴な姫君らしく、お三輪と好対照だった。小住の求女も含めて、耳に心地よい。宗助を中心に華やかな三味線も聞きよかった。
人形は勘十郎のお三輪がいじらしく可愛らしく、一輔の橘姫は高貴な姫君らしく、こちらも好対照。求女の玉勢も2人の娘どちらにも いい顔をする優柔不断さが秀逸。

鱶七上使の口は御簾内で聖・燕二郎。素直な発声で嫌味がないのがいい。
奥は靖・勝平。
靖はこのところ頑張りが上滑りしているような感じ。入鹿の大笑いはやり過ぎ?とも思ったが、人形を見ながら聞くとスケールの大きさがちょうど良かった。(玉佳の芸のおかげ?)勝平は鋭い掛け声がよき。

姫戻りは碩・友之助。
いい声だし、高音も無理なく出ているが、姫の高貴さが足りないか。町娘ならこれでいいのだが。桃色の裃が場面に合っていた。友之助は淡々と。

金殿は織・燕三。
朗々と歌い上げて、美声自慢。何故かお三輪が可愛くないので可哀想に思えない。いじめの官女は老女のようであまり意地悪な感じでないし。鱶七は堂々として似合ってた。そして燕三の三味線の的確なこと! 語りの不足を補う。

人形は勘十郎、一輔の女方2人が素晴らしい。お三輪は橘姫と恋の鞘当てを演じる可愛らしさ、金殿で虐められる哀れさ、擬着の相への変化、刺されてからの悲喜交々がひしひし。耳では?のところも、視覚では伝わった。玉佳の入鹿が公家悪の大きさ。荒牧弥藤次の紋秀は右に傾いでいるように見えた。


2025年2月9日日曜日

2月9日 東京バレエ団 ベジャールの「くるみ割り人形」

ベジャール版くるみ。猫のフィリップ役のダニール・シムキン目当てだったので怪我で降板は残念だったが、ベジャールらしさが随所に見られて面白かった。

主人公はマーシャならぬピムという男の子(山下湧吾)。飼い猫のフェリックス(宮川新大)、父親的存在のM(柄本弾)、母(政本絵美)を中心に、クリスマスの夢の世界が描かれる。自伝的物語とあって、幼い頃に死に別れた母への思慕や別れの悲しさが描かれる。いい歳した男が母親に甘えたり、パドドゥを踊ったりするのはちょっとマザーコンプレックス的感じがして引いたが、最後の別れが近づくとうるっときた。
Mは時に父親、時にマリウス・プティパ、時にメフィストフェレスのようにと場面ごとに役割も雰囲気も違って、笑っていても何考えているかわからないような不思議な存在。柄本は少し役者不足か。 
同時にあちこちで芝居が進んでいるので、どこを見ていいのか、目が足りない。
花のワルツでプティ・ペール役のジル・ロマンが登場。ちょっとした動きでも惹きつけられるのはさすが。クライマックスで、黒燕尾の男性ダンサーが一斉にジャンプしたのが音楽に合って効いていた。
グランパドドゥは「プティパの振り付けに忠実に」とアナウンスがあったように、振り付け自体は初演時に忠実なのだろうが、パドドゥが終わったところで燕尾服の男たちが現れて女性だけを絶賛。うち1人が女性をエスコートして袖に引っ込み、男性ダンサーが取り残されたり、男性のソロを腕を組んで見ていたりと、笑いの要素も盛り込んでいた。黒のチュチュに男性も黒の上下という衣装はちょっと違和感。 雪のワルツでも何故か少女たちが黒のケープを纏っていた。

2025年2月8日土曜日

2月8日 noism「円環」

「過ぎゆく時の中で」

金森穣演じるゆっくりと歩む男をnoism1の若者たちが次々に追い越してゆく。男が引き留めようとしても止められず、やがて男も一緒に踊り始める。疾走感のある踊り(実際走っている)で、noism1の若いダンサーたちは体にフィットするレオタードなのに対し、金森の衣装は全体にギャザーを施した黒のスーツで、老いを象徴するかのよう。ハットを被っていたこともあって、初め誰だかわからなかったくらい、しょぼくれて見えた。背筋が伸びたまま走る姿勢が美しく、ダンサーの身体性を見た気分。

「にんげんしかく」

近藤良平振付の箱を使った楽しい踊り。大小の段ボールの中にダンサーが隠れていて、箱のキャラクターのようにちょこまかと動く様が微笑ましい。箱を出てからも近藤らしい楽しさが満載で、段ボールを叩いたり擦ったりしてリズムを取るのも面白かった。音楽は色々な曲のオムニバスで、キラークイーンやwhat a wonderful world などのカバー曲ものどかな感じ。

「Suspended Garden−宙吊りの庭」 

井関佐和子、山田勇気に加え、退団した2人noism1のメンバーを加えての新作。天井に斜めに下がった白いパネルがスクリーンになって、赤い花や紅葉などの映像が投影され、季節の移り変わりを示す。赤いドレスの井関と色違いの茶系?のドレスを着せられたトルソーがもう1人のダンサーのように4人のダンサーが戯れる。男性ダンサーがドレスを着たり、トルソーと組んだ井関にひっくり返したドレスを着せ、また戻したりとドレスの使い方も面白かった。40代のnoismは流石に若さのキレはないなと思うなど。

2025年2月1日土曜日

2月1日 第51回バレエ芸術劇場「ドン・キホーテ」

日本バレエ協会関西支部・関西バレエカンパニー公演に新国立劇場バレエ団の奥村康祐がバジル役でゲスト出演。ベテランらしく周囲をサポートし、盛り上げる素晴らしさ。パドドゥの包容力たるや。フィッシュダイブはかなり無理な姿勢に見えたが綺麗にポーズをとっていたし、片手リフトでも立ち位置を調整してバランスを保つなど、キトリ役の佐々木夢奈をよく支えていた。ソロのジャンプや回転もキレがよく、見応えがあった。
キトリの佐々木は音の取り方がちょっと早い?と思うところや、32回フェッテでぐらついたりというところもあったが、奥村のサポートもあって大過なく。目鼻立ちがくっきりして可愛いのでもっと表情に余裕があるとなお良いと思った。
ドン・キホーテは内野晶博。キホーテが夢の中で幻影を見るプロローグなど、タイトルロールをしっかり描く演出。踊りの見せ場はあまりなく、あご髭が短いせいか若く見えた。サンチョ・パンサは末原雅広。お腹の詰め物はちょっとやりすぎに感じた。
1幕でメルセデスの代わりに町の踊り子、2幕で森の女王など、女性パートを増やしていたのは協会公演ゆえか。3幕のグランパドドゥの間にキトリの友人のバリエーションが入るなど、見慣れたドンキとは違うところも。
関西フィルハーモニーの演奏で指揮は冨田実里。冨田の指揮にしては大人しいかったかも。