2024年3月24日日曜日

0324 金剛能楽堂開館二十周年記念公演

 「安宅」は金剛龍謹のシテ、義経は謹一郎。富樫樫某は宝生欣哉。強力は野村又三郎、富樫の従者は野村信朗。

龍謹は弁慶の装束が似合う。声もよく、堂々とした弁慶。謹一郎は大役のためか緊張した面持ち。義経の臣に一門が揃うのだが、背がまちまちでばらばらな感じ。


「佐渡狐」は七五三の奏者、越後の百姓を島田洋海、佐渡の百姓を宗彦。

袖の下を一度は断りながらも受け取り、ニヤリと笑う七五三のおかしみ。宗彦と共犯の目配せする間の息のあった様子が笑いを誘う。


「泰山府君」

天女の舞の小書。泰山府君に金剛永謹、天女に観世清和という、異流の宗家による競演が貴重だ。天女は金剛流の雪の小面、泰山府君は観世流の小癋見をかけるという趣向。

ワキは福王茂十郎、花守は茂山忠三郎。

桜の開花はまだだったが、春を先取りするような華やかな舞台。






2024年3月23日土曜日

3月23日 BUNRAKU 1st SESSION「曽根崎心中」

 ゲネプロと本番1回目を続けて鑑賞。

ジブリアニメの背景を担当した男鹿和雄によるアニメ背景を用い、古典芸能とサブカルチャーのコラボレーション、海外公演時の大道具の移動コストを削減しようという取り組み。ゲネプロはクラウドファンディングのリターンになっていて、男鹿と勘十郎の対談映像も。男鹿のファンだという勘十郎はアニメ作品を見るとき、背景を見ている時間が長いのだとか。

ナビゲーターはいとうせいこう。玉助を招いて、三人遣いのことなど解説するのだが、映像もあるとはいえ、人形がない中で位置関係など話されても初見の人には意味不明ではと思う。

上演h天神森の段のみで、背景のアニメ映像も違和感ない。橋だけはリアルの大道具で、移動に連れて背景が動く。途中、森の奥に分け入るような描写もあり、舞台に奥行きが感じられた。背面から投影していたので、人形に影が掛からなかったものよい。徳兵衛がお初を刺すところは背景がブラックアウトし、スポットライトのみとなる演出も効いていた。ラスト、2人の魂?が白み始めた空に登って星になるというのは、ちょっと説明過多かなと思った。

床は藤のお初、靖の徳兵衛、咲寿に清志郎、寛太郎、清允。

人形は玉助の徳兵衛(左・玉翔、足・玉延)、簑紫郎のお初(左・玉誉、足・清之助)。出遣いでなく、頭巾をかぶっていたが、カーテンコールで顔出し。

解説込みでトータル1時間ほど。英語の同時通訳入り、入門編としてはいいのかも。





2024年3月22日金曜日

3月22日 三月大歌舞伎 昼の部

「寺子屋」

菊之助初役の松王丸はニンでないのか合わない服を着ているような違和感があった。化粧も似合わないし、セリフの調子もどこか冷めた感じで、悲しみが薄いように感じた。
対する愛之助の源蔵は時代物の重々しさが十二分。「せまじきものは〜」のくだりで戸波と嘆き合うところはこれまで見たことがないほどの泣きぶり。慎吾の戸波は決意のこもった眼差しが力強い。
千代の梅枝は気丈に振る舞いながらも悲しみが隠せない様がよく、寺入りから見たかった。小太郎は丑之助で、こちらも短い出番が勿体無い。ただ、戸波に手を引かれて出てくるところ、いつもの癖か眩しそうに顔を傾げていたのが気になった。

涎くりは鷹之資。とても目立っていたのはいいとして、何回か大向こうがかかっていたのは多過ぎ。

冒頭、菅秀才に反抗した涎くりを寺子たちが懲らしめるところで一旦外に出て、源蔵が帰ってくるのに気づいてあわてて席に戻る→帰宅した源蔵を寺子たちが並んで出迎え→源蔵は子たちの顔を見比べてため息…という流れは初めて見た気がする。そんなに露骨に品定めせんでも…と思う。

「傾城道成寺」

四世雀右衛門の追善で、当代が清姫。スッポンから出てくるも、あまりおどろおどろしさはなく、正体を現すのも、髪を捌いて(打掛の陰で鬘を変えた?)ぶっかえりくらい。菊五郎は椅子に座ったまま登場で、最後まで座ったままだったのは体調が心配だ。

「元禄忠臣蔵」

仁左衛門の綱豊卿が充実。セリフの緩急、時折見せる鋭い眼差しでほぼセリフのみでドラマを牽引する。客席が暗いので集中力が途切れることもあったが、これまでで一番ちゃんと見られたと思う。
梅枝の喜代が、千代とはガラリと変わって、若々しく柔らかみのある色気。
伊勢参りは小川大晴。背も伸びて、一生懸命やってるだけで可愛いという時期を脱しつつある。
助右衛門の幸四郎は暑苦しい男を熱演。

冒頭の女中の綱引きの場面で、りき彌が扇で応援。遅れて加勢する力持ちの女中に千蔵。女方は珍しい。 松十郎が助右衛門を案内する番卒役。




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2024年3月21日木曜日

0320 重山狂言会 春「茂山七五三 人間国宝認定記念」

 小舞で幕あき。蓮の「土車」と鳳仁の「岩飛」

「鎧」は千五郎の太郎冠者、逸平の果報者、千之丞のすっぱ。話の筋は末広かりとほぼ同じ。鎧を求めに行くという設定のためか、少し武張った感じがする。

「素袍落」は七五三の太郎冠者、竜正の主人、あきらの叔父。七五三は疲れからか声が掠れ気味なのが気がかりだが、酒をねだるところなど表情や間の取り方がなんともおかしく、可愛らしい。四世千作を思わせた。あきらの叔父は飄々と。竜正の主人はまだ硬さがあるが、祖父孫世代の競演が感慨深い。

素囃子の「神舞」を挟んで、「福部の神」は宗彦、茂、千之丞、虎真、島田洋海、井口竜也、山下守之、増田浩紀と大人数。地謡に丸石やすし、千五郎、逸平、松本薫が入り、最後は慶和の福部の神が舞う。一門総出演のおめでたい雰囲気。

2024年3月17日日曜日

3月17日 三月花形歌舞伎 松プロ

口上は壱太郎。コースターもまた壱太郎だったし、今回は壱太郎づいているのかも。

「心中天網島 河庄」

今まで見たことない新鮮な河庄だった。隼人の孫右衛門になんともいえないおかしみがあって、出て来た時から挙動不審というか、慣れない侍のふりに必死な様子。右近の治兵衛とのやり取りなんか漫才のよう。これまで観たのは弥十郎やら梅玉やら、ベテランだったので、年相応の貫禄が兄らしさにもなっていたけれど、隼人は治兵衛と変わらないくらい頼らない感じ。
右近の治兵衛は、セリフは鴈治郎の写しで、上方言葉に違和感はない。やはりシュッとして、背筋に芯が入っている格好良さ。情けなさは薄くて、ワガママも上からな感じがして、母性本能をくすぐる感じではない。でも小糸があれほど惚れるくらいだから格好良くていいのかと思ったり。 
壱太郎の小糸は、力無く俯いている様がなんとも哀れで、上方和事の風情を一人色濃く醸し出していた。男2人と違う次元にいるような感じがしないでもない。

太兵衛に千次郎(今日が誕生日だったそうで、口上で壱太郎が話していたので登場時の拍手が一段と大きかった)、善六に千寿の上方コンビ。こういう配役が見られるのも、南座の花形ならでは。千次郎のセリフに愛之助みを感じた。千寿の口三味線は掛け声多め。

「忍夜恋関扉」

隼人の光圀は絵に描いたような二枚目ぶり。 壱太郎の滝夜叉姫は桜とあまり変わらない感じ。
ラストは屋根の上で滝夜叉姫と光圀が対峙。



2024年3月16日土曜日

3月16日 貞松・浜田バレエ団「The Lake」

「白鳥の湖」の改訂でなく新制作だそう。ストーリーも設定もガラリと変わり、白鳥のいない湖の話になった。

森優貴の振り付けはスピード感があって面白く、舞台いっぱいを使ったフォーメーションも面白い。音の取り方はマシューボーンを彷彿とさせるところも。やはり白鳥の湖の音楽はドラマチックだし、群舞が映える。群舞の衣装はユニセックスで、背中が大きく開いた白い上下。マシュー版の白鳥に似てる感じもするが、背中を開けている理由がよく分からなかった(背中が美しくみえるというわけでもなかったので)。照明の使い方も凝っていて、3つのペアのシーンでそれぞれを四角い光で加工ところなど効果的だった。公演を重ねて改善を期待したいのは、1幕の暗転の多さ。曲が変わるたびに暗転する感じで、集中力が削がれる。配置転換のためなのかもしれないが、もう少しスマートにできそう。2幕で母親が魂との交流ののち解脱?するところで、それまで着ていた衣装を脱いで、裸の背中と淡いピンクのロングチュチュ姿に。光に包まれてとても美しいシーンなのだが、脱いだ服を胸に抱えていて、身体で隠しているつもりなのだろうが、見えてしまうので少し興醒め。

白鳥の湖と銘打っている割に、チャイコフスキーでない音楽が多いのにも不満が残った。印象としては1幕の半分、トータルでも3〜4割は知らない曲。新制作とはいえ、よく知っているあの曲をこう踊るのかという驚きを期待しているので、そういう意味ではモヤモヤ。ストーリーもよく分からなくて、何で親子なん?とか、最後父親は魂になったの何で?とか。 
大切な人を亡くした人が色々出てくるのだが、夫を亡くした妻とか、姉を亡くした令嬢とか、誰がどの役か初見ではわからない。プレトークがあったらしいので、聞いていればわかったのかもだが、そもそも事前説明がないと分からない作品って…とも思う。 

2024年3月13日水曜日

3月13日 三月花形歌舞伎 桜プロ

口上は壱太郎。客席後方から出てきてびっくり。遅れて来た外国人の客とぶつかりそうになって、ソーリーと言ったとか。
「女殺油地獄」は女が油の地獄で殺される話と、身も蓋もない紹介。タイトルでネタバレは歌舞伎あるあるだけど、結末が分かっていてもそれまでの人間模様を見てと。

「女殺油地獄」
隼人初役の与兵衛は、野崎、河内屋は今ひとつ。セリフや仕草の端々に仁左衛門の教えが見え隠れするも、だから余計に足りなさを感じてしまった。一番足りないのは可愛げか。仁左衛門の与兵衛はしょうがないなぁといいながら、放っておけない感じがある。
ただ、豊島屋はすごく良かった。お吉を説得しようとするも断られたときの顔が何とも美しく、殺しの場面では狂気の横顔にみほれた。
右近の七左衛門は、与兵衛に嫉妬を露わにするのが目新しい。これまで見た七左衛門はもっと大人の分別で抑えている感じだったと思う。 
吉弥のおさわと橘三郎の徳兵衛が流石の説得力で芝居の世界を作り出していた。豊島屋から帰るところで手を繋いでいたのが、夫婦仲のよさを表して微笑ましい。 

「忍夜恋関扉」

壱太郎の滝夜叉姫は怪しい美しさ。光圀は右近で踊り上手の2人の競演に緊張感がある。
屋台崩しの後出てくる蛙がユーモラスで可愛い。ラストは花道から去る滝夜叉姫。









2024年3月9日土曜日

3月9日 新国立劇場バレエ団「クラシックバレエハイライト」

「ドゥエンテ」
静かな曲のコンテンポラリー。身体能力の高いダンサーたちはよく揃っていてきれい。両足を卍のように曲げたポーズが印象的だった。照明が暗くて誰が誰やらよく分からなかったのだが、総じて男性ダンサーの上半身裸の衣装が見栄えしないなぁと思う。欧米人のような厚みがあるといいのだろうか。


「海賊」のパドドゥは木村優里・速水渉悟ペア。
速水は舞台からはみ出す勢いでジャンプしたり、木村はクルクルとよく回ったりで、テクニックを見せつけた。木村のフェッテで手拍子が出たのが残念。

「ジゼル」のパドドゥは小野絢子・奥村康祐ペア。
暗転を挟んだだけの転換だったが、一瞬で作品の世界観を描出していたのはさすが。小野は妖精のような軽さが儚く、奥村のサポートが光った。

2部のドンキは米沢唯・福岡雄大ペア。米沢は連続パッセやポーズを余裕たっぷりに見せつける。フェッテで少しグラついたものの、トリプルを交えて圧巻。福岡も、空中で回し蹴りするようなジャンプなど、振り切った演技で会場を沸かせる。 

枚方市総合芸術センターは新しいホールで、3階席からでもかなり見やすい。こんなお値段で新国バレエ団のトップダンサーをこんなに見ちゃっていいの!?と思う。2部のドンキはパドドゥ+αくらいかとかと思っていたらキャストが大勢出てきてびっくり。まあ、録音だし、19時終演予定が18時半過ぎに終わってたけど(ということはドンキはトータルで20分強だということ⁉︎とまたびっくり) 




2024年3月2日土曜日

3月2日 文楽京都公演 Aプロ

解説は靖。上演しない小金五討死の話より、説明すべきことがあるのでは。客席はほぼ満席で、補助席まで出てた。

「義経千本桜」

椎の木の段の口は南都・燕二郎。
詞が制御されてなくて、まとまってない感じ。

奥は靖・清丈。
靖は人物の語り分けは出来ているのだが、締まりがないというか、足元が不安定な感じがする。

すしやの段の切は千歳・富助。
どうしちゃったの?というくらい、聞いているのが辛かった。お里が可愛いさを作ってる感じもしんどいし、無理に声を出してるようで。

奥は藤・清志郎。
のびのびとした語りは聞きやすいのだが、10分くらい寝落ちしてしまったのは何故だろう。芝居っぽいのかなぁ。

人形は一輔のお里が可憐で健気。寝たふりしながら維盛が「義理で契った」いうのを聞いてわっと泣き伏すところとか、哀れで。維盛は和生で、弥助の時の頼りなさと、維盛の時の気高さの変化が巧み。紋臣の若葉の内侍も品があって良き。
権太は玉男。母親からまんまと金をせしめた時に小躍りするのが可愛かった。


3月2日 文楽京都公演 Bプロ

解説は碩。桂川は実際にあった出来事を元にしていると言いながら、ご当地京都が舞台ということに触れなかったのはもったいない。

「桂川連理柵」

六角堂の段は睦・勝平。
高音の掠れもなく、よく声が出ていて、いい睦だった。

帯屋の段の前は織・燕三。
お絹の思わず義母に食ってかかるところ、ヒステリックな感じはキャラじゃないと思う。儀兵衛の笑いも耳に触る。燕三が何だか悲しそうな顔で、体調が悪いのかと心配。三味線は美しかった。

後は呂勢・錦糸。
ガラリと雰囲気が変わって、落ち着いた語りぶりが心地よい。お半の「おじさん」の破壊力。長右衛門と抱き合うところが官能的というか艶かしくて、これまで見たことないお半長に驚いた。人形の一輔、玉也のおかげもあるだろう。錦糸の三味線は派手さはないけど、的確なのだと感じる。

道行朧の桂川は咲寿、碩、織栄に友之助、錦吾、清方。
咲寿はフシの音程があれ?というところもあったが、落ち着いた語りになってきた。

人形は何より一輔のお半が!あざとさや媚びた感じは全くないのに、14歳の少女の危うさというか、長右衛門がどうにかなっちゃうのもわかる気がする。玉也の長右衛門は分別のある落ち着いた中年男の風なのに、お半に翻弄されてしまう弱さに色気がある。
儀兵衛の玉佳は憎めない敵役。亀次のおとせは本人と似てる。玉助の繁斉は珍しい老け役だが、頼りなくてお前がしっかりしないから…と思わせる。