「寺子屋」
菊之助初役の松王丸はニンでないのか合わない服を着ているような違和感があった。化粧も似合わないし、セリフの調子もどこか冷めた感じで、悲しみが薄いように感じた。
対する愛之助の源蔵は時代物の重々しさが十二分。「せまじきものは〜」のくだりで戸波と嘆き合うところはこれまで見たことがないほどの泣きぶり。慎吾の戸波は決意のこもった眼差しが力強い。
千代の梅枝は気丈に振る舞いながらも悲しみが隠せない様がよく、寺入りから見たかった。小太郎は丑之助で、こちらも短い出番が勿体無い。ただ、戸波に手を引かれて出てくるところ、いつもの癖か眩しそうに顔を傾げていたのが気になった。
涎くりは鷹之資。とても目立っていたのはいいとして、何回か大向こうがかかっていたのは多過ぎ。
冒頭、菅秀才に反抗した涎くりを寺子たちが懲らしめるところで一旦外に出て、源蔵が帰ってくるのに気づいてあわてて席に戻る→帰宅した源蔵を寺子たちが並んで出迎え→源蔵は子たちの顔を見比べてため息…という流れは初めて見た気がする。そんなに露骨に品定めせんでも…と思う。
「傾城道成寺」
四世雀右衛門の追善で、当代が清姫。スッポンから出てくるも、あまりおどろおどろしさはなく、正体を現すのも、髪を捌いて(打掛の陰で鬘を変えた?)ぶっかえりくらい。菊五郎は椅子に座ったまま登場で、最後まで座ったままだったのは体調が心配だ。
「元禄忠臣蔵」
仁左衛門の綱豊卿が充実。セリフの緩急、時折見せる鋭い眼差しでほぼセリフのみでドラマを牽引する。客席が暗いので集中力が途切れることもあったが、これまでで一番ちゃんと見られたと思う。
梅枝の喜代が、千代とはガラリと変わって、若々しく柔らかみのある色気。
伊勢参りは小川大晴。背も伸びて、一生懸命やってるだけで可愛いという時期を脱しつつある。
助右衛門の幸四郎は暑苦しい男を熱演。
冒頭の女中の綱引きの場面で、りき彌が扇で応援。遅れて加勢する力持ちの女中に千蔵。女方は珍しい。
松十郎が助右衛門を案内する番卒役。
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