2024年2月26日月曜日

2月26日 MONO「御菓子司 亀屋権太楼」

経歴詐称が明らかになった古い和菓子屋を巡る物語。 
江戸時代か続くという偽の由来を創業者の父が作ったことが発覚するが、次期社長の次男(尾方宣久)は父の死期が近いことを慮って公表には踏み切れないでいる。SNS時代の、過ちを糾弾する社会への対応を描くとともに、出来る弟に嫉妬する兄(水沼健)や、被差別部落出身の従業員(金替康博、奥村泰彦)やカフェ店長(高橋明日香)、本気出してないゆとり世代のアルバイト(渡辺啓太)なども絡んで盛り込みすぎの感も。とぼけた笑いを誘った和菓子職人の金替が面白かった。
舞台を囲む壁が収納にもなっていて、机や椅子などの道具を出し入れして場面転換するアイデアが秀逸。

2024年2月25日日曜日

2月25日 新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」

奥村康祐のホフマンは期待を上回るハマり役。冒頭の初老のくたびれた感じが秀逸で、友人やウェイトレスとのやり取りがまさに中年男という感じ。舞台の真ん中で踊りの見せ場が展開しているのに、上手のテーブルから目が離せないほど。

舞台が転換すると一転、若々しく、溌剌とした青年に。女性群舞にモテモテで愛想を振り撒く様がまたいい。オリンピア(奥田花純)と会ってからは喜びに溢れ、周囲に嘲笑われているのも知らず幸せそうで、騙されたと知った時の落胆ぶりが哀れ。

2幕のアントニア(小野絢子)とのグランパドドゥは、音楽に合って優雅。昨日より音楽との一体感を感じたし、小野の宙を漂うような軽やかさが際立つ。バランスなども危なげなく、乗って踊っている感じがした。

3幕のジュリエッタは米沢唯の説得力が勝る。出てきた時から妖艶な魅力に溢れて、誘惑に引き寄せられずにいられない。奥村ホフマンは抗いながらも次第に引き寄せられていく様を丁寧に描く。

現代に戻って、ステラに去られたあとの表情には寂寥感や諦め、喪失感など様々な感情が渦巻いているのが感じられ、幕が降りてからも余韻が残った。

2024年2月24日土曜日

2月24日 新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」

福岡雄大のホフマン。男性ダンサーが主役なのに、4人の女に振られまくり、3幕とも絶望で膝から崩れ落ちて幕という可哀想な役。いろいろな踊りが見られてとても楽しめた。最後、やり切ったというような表情を見せた。

ホフマンの友人は速水翔悟、森本亮介、木下嘉人。速水がやはり踊りの伸びやかさで目を惹く。森本は回転ジャンプの後の着地が不安定だった。

オリンピアの池田理沙子は人形振りがキュート。小野絢子のアントニアはグランパドドゥもあり、女性主役? 病弱な役所ながら、死ぬ時は結構前のめりな感じ。ジュリエッタの柴山沙穂はオディールを思わせる役どころ。 

3幕を通してホフマンの敵役を渡邉峻郁。いろいろなタイプの悪の魅力で格好いい。

3幕の男性群舞の衣装、オリエンタルな感じで上半身裸なのがセクシーというより滑稽に見えてしまうのは何故だろう。特に短パンがいただけない。女性はそれなりにセクシーなのに(全体的にもうちょっと厚みは欲しいが)。

2024年2月12日月曜日

2月12日 文楽公演 第3部

「五条橋」

咲寿、亘、薫に清志郎、友之助、清允、藤之亮。
咲寿がシンとしての落ち着きというか、肚が据わった感じ。牛若丸の詞は甲高いと感じたが、以前のような張り上げる風ではなく、聞きやすい。
人形は簑太郎の弁慶、玉誉の牛若丸。対で出ることの多い2人だ。

「双蝶々曲輪日記」

難波裏喧嘩の段は靖の長五郎、津国の郷左衛門、有右衛門・長吉の南都、吾妻の碩、与五郎の織栄に、団吾。
靖の長五郎は与五郎の窮地に駆けつける格好良さ。ザ・ヒーローの風情。
文字栄の休演て有右衛門の代役に立った南都は敵役と味方の長吉の二役ながら、大きな語り。碩の吾妻はヒロインらしく。
人形は黒衣。

八幡引窓の段の中は芳穂・錦糸、切は千歳・富助。
芳穂は錦糸と組んでからぐんぐん良くなってきた。長五郎母の語りがいい。盆が回ってからだいぶ外まで移動した(回転する外まで)のはいかに。
切の千歳は、これまで見聞きした引窓で一番というくらい感動した。このところパッとしなかったので期待していなかってのだが、なかなかどうして。長五郎が捕まるつもりというのを母が引き止めるところでは拍手があったし、終始、過不足ない感じ。
人形は和生の長五郎母は実子と継子の間で気持ちが行ったり来たりする母心が胸に迫る。お早の勘彌、玉男の十次郎。玉志の長五郎が男前。


2月12日 文楽公演 第2部

「艶姿女舞衣」

酒屋の段を三輪・清友、錣・宗介、呂勢・清治のリレーで。ベテランと言っていい演者が並ぶので不足などあろうはずもなく。
幕が開いていきなり「待ってました」の掛け声があり、思わず「誰を?」と呟く。舞台上は玉彦だけだし、盆のどちらか?
三輪のチャリ場は上手いけど、長太の泣き声は激しすぎでは。
錣は宗岸の親心を情感豊かに描出するも、お園のクドキの前で盆が廻り、選手交代。呂勢の美声と清治の淡麗な三味線が悲劇を彩る。…のだが、話の理不尽さにどうしても入り込めず。夫婦は二世だから次は夫婦でとか言われて喜べないし、私が死んでたらとか言いながら婚家に戻ってくるのが理解できん。

人形は勘十郎のお園のが身体中から嘆きが迸るよう。後ろ振りも綺麗に決まっている。が、後ろ振りって悲しみの最高潮にしては変なポーズだなあと思ったり。悲しい時って前屈みに身体を丸めるのに、立ち上がって背を反らせるなんて真逆じゃん。
冒頭、玉彦の長太が滑稽な動きをよく遣っていた。


「戻駕色相肩」

廓噺の段は藤、靖、碩に燕三、清丈、清公、燕二郎。
人形は玉佳、玉勢、一輔。一輔の禿が可愛い。

2月12日 文楽公演 第1部

「二人三番叟」

睦、亘、聖に勝平、寛太郎、錦吾、清方。
日本青年館ホールの音響のせいか、鳴り物と足踏みがずれてて気持ち悪い。反響が残る感じ?終盤の三味線はヤケのように、拍子を無視して早く弾いていたようだった。

人形は紋吉と玉翔。 

「仮名手本忠臣蔵」

山崎街道は小住・清馗。
小住は貫禄が増して頼もしい。

二つ玉は希・団七。 床の後ろで藤之亮の胡弓。
何故だか集中できず。

身売りは織・藤蔵。
おかやとお軽の語り分けが明瞭で、聞きやすい。お軽の軽やかな感じがいい。一文字屋亭主はちょっと押し出しが強すぎ。見ていた時は一文字屋の使いかと思ったが、亭主ならもっと抑えてもいいのでは。

勘平腹切は呂・清介。
いつもながらの制限速度を守るような安全運転。緩急を効かせるところが欲しい。

人形は玉助の勘平が力演。簑紫郎の定九郎は注目していたのだが、記憶が…。紋臣のお軽が可愛い。

2024年2月9日金曜日

2月9日 猿若祭二月大歌舞伎 昼の部

「野崎村」

鶴松のお光、登場シーンは嬉しさが表情からも身体の動きからも溢れ、健気で可愛い。クールな感じの化粧がもっと柔らかくなったらなおよいのでは。終盤の悲しみも泣かせる。
久松は七之助。おっとりとして頼りなさそうな色男ぶり。児太郎のお染は綺麗だが、顔立ちも身体つきもがっちりしているので、七之助と並ぶと逞しく見えてしまう。
弥十郎の久作、東蔵のお常。


「釣女」

たわいない舞踊劇なのにちっとも笑えないのは時代の変化だけではない。萬太郎の大名、新悟の上﨟は古典に則っていたけど、太郎冠者の獅童と醜女の芝翫は笑わせようとふざけているのが却って笑えない。表情で芝居しすぎだし、余計な動きが多い。時代の価値観なら合わなくなっているからこそ、何気なく演じる中におかしみがでてくるくらいに止めるのがよいのでは。


「籠釣瓶花街酔醒」

勘九郎の次郎左衛門は勘三郎を彷彿とさせつつも、より純朴な人物像。裏切りに恨みを募らせ、4ヶ月かけて復讐の準備をする執念が怖い。七之助の八ツ橋は美しく、間夫と上客の間で引き裂かれる様が哀れ。ころならずの縁切りに緊張感が漲る。
仁左衛門の栄之氶は美しく色気があり、プライドばかり高いダメ男なのに八ツ橋が惚れてしまう説得力がある。が、悪いのは松緑演じる権八だよなぁ。
九重の児太郎は野崎村に同じく。七越の芝のぶに曲輪らしさ。 

2024年2月8日木曜日

2月8日 ミュージカル「イザボー」


史上最悪の王妃という触れ込みで、望海風斗のダーティーぶりを期待していたのだが、正直期待外れ。悪徳の限りを尽くしたというが、大して悪いことはしていないと思う。気が触れた王の代わりに様々な男と関係を持って味方につけるというのはこの時代ならさもありなんだし、国家財政を顧みずに贅沢をしたというのも、マリー・アントワネットという有名な例を超えるほどではないし。しかも、大した贅沢をしているように見えないし、それで楽しそうでもないのだ。何のために何をしているのか不明だから感情移入できず、傍観者として見るしかない。ラストのバラの花びらが降ってくる演出も既視感が(「once upon a time in American」?)。日本であまり知られていない人物で、面白くなりそうな人物なのに、生かしきれていないようで勿体無い。よかったのは歌唱面、シャルル7世役の甲斐翔真を味め、シャルル6世の上原理生ら、歌が達者な人が多くストレスなく聞けた。望海もソロナンバーが多く、劇場を満たすような歌唱力は堪能できた。ハードロック調の曲や衣装は残念な感じ。劇団☆新感線を狙ったのか。3重の円柱状のセットが目まぐるしく動き、舞台転換がスムーズなのは飽きずに見られた。

2024年2月6日火曜日

2月6日 立春歌舞伎特別公演 夜の部

「新版色讀販 ちょいのせ」

壱太郎の久松は憂いのあるたたずまい。右近のお染は綺麗だけど、ちょっときつそう。
鴈治郎の善六が三枚目を好演。亀鶴の源右衛門と浄瑠璃を語るところは、義太夫とは違う感じだったけど、たっぷりと笑わせる。 愛之助が山家屋清兵衛で美味しい役。

油屋蔵前の場は人形振りで。踊り上手の右近が力量を発揮。鴈治郎の善六は人形の足をつけて、終始コミカル。

「連獅子」

扇雀、虎之介親子。虎之介の子獅子は勢いがあるのはいいが、ちょっとうるさい。板をぶち抜くかという足踏みや、跳躍時に袴が捲れて脛までみえるのはいただけない。並ぶと扇雀がとても上手く見えた。
宗論は荒五郎とかなめ。ちょっと間延びして感じた。

「曽根崎心中」

壱太郎のお初のコッテリした色気と憂い。藤十郎の面影を其処彼処に感じる。3回目ともあって気持ちも乗っていて、のっけから一貫して匂い立つよう。一方、初役右近の徳兵衛はシュッとしてて、江戸の役者なんだなと。つっころばしには隙というか、庇護欲を刺激するような頼りなさがいると思う。一つ一つの動きが踊りの所作のようで、美しいが、気持ちより形をなぞっているように見えた。
亀鶴の九平次は憎たらしい敵役。
お初の同僚の女郎に吉太朗、千之助、愛三郎の若手が並び、若々しい。

お玉に翫政。女方は珍しいが、ハキハキとして愛嬌があった。着物のお尻のところが裂けていたのは演出?

お初と徳兵衛が花道を去ってから、九平次の店の使いが印判を持って現れ、悪事が露呈するくだり。初めて観たように思うが、蛇足では。死ななくていいのに死を選ぶ2人の悲劇が強調されるより、早まった浅はかさを見せつけられるよう。

天神森は舞踊のように美しいポーズを繰り広げるが、ちょっと長く感じた。最後は徳兵衛が刀を振り翳したところで緞帳が降りて幕。


2024年2月4日日曜日

2月4日 立春歌舞伎特別公演 昼の部

「源平布引滝」

義賢最期
竹本の樹太夫は若手の抜擢だそうだが、声が大きく、明瞭な語りが好印象。三味線もクリアな音色で舞台を引き立てる。

上方歌舞伎塾の面々が活躍しているのも嬉しい。 冒頭の千寿とりき彌の葵御前と待宵姫の会話がこっくりとしてよき。右近の奴はシュッとしていて、待宵姫が惚れるのもわかる。上方風ではないけれど、これはこういう人でもまあいいか。 

愛之助の義賢はもう何度目か。襖の向こうから地響きのような声を響かせ、立ち現れた姿が骨太で立派だ。戸板倒しも、仏倒れも危なげなく決まった。 りき彌・待宵姫との親子の別れ、千寿・葵御前との夫婦別れに胸熱。戸板倒しの最後の軍兵は愛治郎。きれいに決まり、客席がどよめく。何度も見て慣れてしまっていたけど、初めて見たら驚くよね。 
壱太郎の小万、松之助の九郎助は太郎吉を背負って奮闘。太郎吉の子役がいたいけでかわいらしい。 
義賢を最期に追い詰める進野次郎は吉太朗。立派ないい武者ぶり。階段を上がって義賢を抱え上げたり、羽交締めにしたりと、力技もこなすのにびっくり。役の幅広すぎ。 

竹生島遊覧

塩見忠太が誰かと思ったら吉太朗で驚く。前の場面と変わったコミカルな役で笑わせる。