お菊役の井関佐和子の身体表現力が素晴らしい。人形振りがマリオネットのようで手足が無機物のようにカクカクと、だが踊りとしての優美さを保つ。途中、本物の人形と入れ替わるのだが、違和感がないというか、井関の人形らしさがより印象付けられる。(文楽人形のようと評している人があったが、文楽人形はもっと滑らか。むしろ、悲しみの表現でシオルような手振りをするなど、能楽のエッセンスを感じた)
着物風の白いドレスに角隠しは、同時上演の「鬼」と通じる。遊女たちの黒と小紋柄を組み合わせた袖なしのドレスも、着物の雰囲気がありながら踊りやすそうで、飜る裾にニュアンスがある。
お菊や遊女たちが三つ編みなのは、ストラヴィンスキーの「結婚」の歌詞にあるのだが、白無垢に三つ編みは幼さを感じさせて「結婚」がより惨たらしく見える。
ピエールは仲間たちに殺され、お菊自身も自害するラスト。衝撃的な展開だが、後味が悪い。
「鬼」
鼓童の生演奏との共演は、客席にも振動が伝わって没入勘に飲み込まれ、40分が短く感じた。ダンサーと演奏者の間の緊張感や一体感があるからだろう。舞台上手と下手から現れた清音尼(井関)と役行者(山田勇気)がすれ違うところで、カーンと乾いた大鼓のような音が響き、客席に衝撃が走る。その後は緊張感、躍動感に包まれて一気に駆け抜けたよう。
井関は清音尼実は鬼という役どころで、黒衣の尼僧の姿から、全身レオタードで身体のラインを見せつける鬼に変わってからの怪しさ、恐ろしさ。手指や腕、足を不自然な形に捻じ曲げ、表情も野生的な迫力があり、獣らしいというか妖怪らしいというか、言葉が通じない相手という感じ。修行者らが鬼を取り囲み、5人がかりでリフトするところは、それぞれが均等に力を入れなければバランスを崩してしまいそう。
遊女たちの衣装は「お菊」の遊女のものに透ける赤い袖を付けた? 袖が翻る様が美しく、赤色が鬼の恐ろしさを象徴するようで、視覚的にも印象的だった。
役行者以外は皆、着物を脱ぎ、鬼の正体を表すというラスト。
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