2023年7月23日日曜日

7月23日 夏休み文楽公演 第2部

「妹背山婦女庭訓 」

井戸替の段は小住・藤蔵。コミカルな場面で、床も手すりもほっこり。皆が踊り出すところの時唄が朗々として聴き良い。

杉酒屋は芳穂・錦糸。語り出しからなぜか鬱々として聞こえた。声の張りがなかったのかしら。

道行恋苧環は呂勢、織、靖、聖、織栄に清治、清志郎、清公、清允、清方、藤之亮。呂勢・清治がこれだけとは物足りないが、やはり精緻な音色に耳が惹かれる。清公が3枚目で求女の役というのはなかなかの抜擢? 初舞台の織栄、藤之亮は緊張した面持ちながら、大過なく務めた。

人形は勘十郎のお三輪は鉄板ながら、前半は可憐な姿にキュンとした。が、橘姫の存在を知って嫉妬に悶えるあたりからのオーバーアクションはちょっと辟易。人間にはできないほど背中を反らせたり、捻ったり、こういうのがウケるのだろうけど。一輔の橘姫は品があって、柔らかな抑えた所作が好ましい。求女は玉助。ニンじゃないのか、高貴な二枚目って難しい。

鱶七使者の口は碩・燕次郎が御簾内で。声がちょっと高めに感じたが、そんなものか。

奥は(切ではないの?)錣・宗介。いつも通りの熱演。

姫戻りは希・勝平。勝平が微妙な表情をしていたように見えたのは気のせいか。

金殿は呂・清介。三輪の言葉が初めっから囁き声というか、掠れた小声なのはどういう意図なのだろう。終盤の瀕死になってからならともかく、初めっからというのはよくわからん。地では普通に声が出ていたので、出せないわけではなかろうに。

入鹿誅伐は睦、南都、芳穂、咲寿、薫、文字栄に団吾。咲寿の橘姫がキンキンと耳に障る…。悪人がやっつけられてスッキリ。


8月11日に再見。道行はお三輪の出で清治の三味線が入ると途端に世界観が変わる。金殿は冒頭は声がよく出ていたが、終盤に行くにつれ息切れ感が…。

2023年7月22日土曜日

7月22日 夏休み文楽公演 第3部

 「夏祭浪花鑑」

住吉鳥居前の口は亘・錦吾。元気がよい。

奥は睦・清友。女性の声にやはり難あり。清友も微妙な表情をしていた。

釣船三婦内の切を千歳・富介。ちょっと間を詰めすぎというか、急ぎ気味に感じた。お辰はサラリと粋。

アトは織、藤に燕三。語りは抑え目に感じた。三味線が締める。

人形は玉男の団七が骨太な感じ。心なしか筋肉が厚いように感じた。殺しの型は決まりきらないところもあったが、上演を重ねてよくなりそう。和生の義平次は憎たらしい。一輔のお梶が粋ないい女。梅枝を思い出した。


10日に再見。口コミで客が増えるかと思ったが、入りは半分くらいか。遅れて入場する際の割引などもあったけど、あまり効果なかったみたい。

千歳・富介は前回感じた違和感がなくなり、安心して聞けた。織・藤の語りは2ヶ月続けたせいか何だか不思議なノリが発生していて、別の芸能になっているというか、義太夫ではないように感じてしまった。

7月22日 N響「夏」2023大阪公演

平成生まれの指揮者、熊倉優とピアニストの北村朋幹。久しぶりのフルオーケストラだったが、さすがN響という隙のない演奏。若手指揮者のせいか、瑞々しい感じがした。

ウェーバー 歌劇「魔弾の射手」序曲

モーツアルト ピアノ協奏曲 第24番 ハ長調

※アンコール シューマン 「森の情景」第7曲「予言の鳥」

シューマン 交響曲 第3番 変ホ短調 作品97「ライン」

※アンコール モーツアルト「フィガロの結婚」序曲

2023年7月14日金曜日

0714 OSK日本歌劇団「レビュー Road to 2025!」

 第一部は日舞レビュー「春・夏・秋・冬」、山村友五郎の演出・振付。

チョンパの幕開きで華やかな群舞。扇を多様した振付は山村流らしいが、ほぼ全ての場面が扇を使っていたのはマンネリ感も。春でカラス役の桐生麻耶とウグイス役の楊琳が梅を取り合う寸劇、夏は祭りと定番というか、子ども騙しというか…。秋は狩衣姿でちょっと目に新しかったけれど。ほぼ出ずっぱりだった楊には関心した。フィナーレで「コンニチワ」と連呼する歌がダッサイ歌詞と思っていたら、万博のテーマ曲だそうで…。


第二部は洋舞の「HEAT!!」、演出・振付は平澤智。

洋舞の方が楊にはあっているのだが、前半、ヒップホップやK-POP風の踊りは今ひとつ。ゴスペルやジャズは悪くないのだが。途中、ソロでバラードを歌うところがあり、音を外すことなく堂々と歌い切って、上手くなったなあと(←上から?)。三番手のポジションだった椿りょうは背が高く、打ち出しもよくて注目株。踊りもキリッとしてよし。


2023年7月9日日曜日

7月9日 七月大歌舞伎 昼の部

 「吉例寿曽我」

鶴ヶ丘石段は隼人の近江小藤太に虎之助の八幡三郎。若手による、清々しい一幕。隼人は線が太くなった感じで、錦之助に重なるところも。

がんどう返しで場面転換し、大磯曲輪外は弥十郎の工藤を中心に、千之助の十郎、染五郎の五郎。染五郎は将来も五郎を演じるのだろうなという感じ。茶道鎮才を吉之丞、秦野四郎を廣太郎。米吉の大磯の虎が美しい。朝比奈は亀鶴だったのだが、キャストを確認せずに観たので気づかず…


「京鹿子娘道成寺」

菊之助の花子の美しいこと。鐘への恨みは静かな情念といった感じで、派手さよりも、うちに秘めた感じ。

所化に松十郎、千寿、千次郎ら上方歌舞伎会出身の役者たち並んだのも嬉しい。


「沼津」

鴈治郎の平作、扇雀の十兵衛という兄弟共演。お米は孝太郎。

正直、しんどかった。1時間40分が長いこと!客席降りとか色々やってくれてはいるのだけれど…。 「足腰にいい薬飲んでんねん」と扇雀がCMに出ているグルコサミン?を匂わせる場面も。薬事法に引っかかるのではと余計な心配をしたり。

途中、体調不良で休演していた寿治郎が復帰していたので一安心。荷持安兵衛役だが、明らかに主人よりだいぶ歳をとっているのはいいのか。

2023年7月8日土曜日

7月8日 英国ロイヤルバレエ団 ロイヤル・バレエ・ガラ

「田園の出来事」

予習せずに初見したのだが、なんというメロドラマ!いろんな男女のバドドゥが観られるのは楽しいが、ちょっとあからさまというか。細かいパッセは恍惚感の表現?

この公演を最後に退団するというラウラ・モレーラがよろめく人妻を情感たっぷりに。全てを失って一人佇む終幕に情緒がある。 全ての女性にモテモテの家庭教師はムンタギロフによく似合う。息子役のアクリ瑠嘉は高いジャンプやきれのある回転を遺憾無く見せ、ボールを使ったトリッキーな振り付けも危なげなくこなした。

20分ほど経ったところで火災報知器が鳴り、一時中断。誤作動だったそうでやがて再開したが、水を差されたようで残念。

「ジュエルズ」よりダイヤモンドのパドドゥはサラ・ラムと平野亮一。神々しい。

「リーズの結婚」のパドドゥはメーガン・グレース・ヒンキスとアクリ瑠嘉。はずむような踊りが楽しい。

「ウィズイン・ザ・ゴールデン・アワー」パドドゥは高田茜とカルヴィン・リチャードソン。ベージュのピッタリした衣装なので、男性は一瞬裸に見えた。 

「白鳥の湖」2幕のパドドゥは佐々木万璃子とルーカス・B・ブレンツロッド。

「ディアナとアクテオン」のパドドゥはヴィオラ・パントゥーソと五十嵐大地。五十嵐の跳躍の高さに会場が息を呑んだ。調べたら、ロミオとジュリエットのマンドリン・ダンスも踊っていて、これからの活躍が期待できそう。

「ロミオとジュリエット」バルコニーのパドドゥはイザベラ・ガスパリーニとジョゼフ・シセンズ。シセンズの踊りはバネのようなしなやかさ。

「クオリア」レティシア・ディアスとカルヴィン・リチャードソン

「精霊の踊り」はウィリアム・プレイスウェル。マリアネラ・ヌニュスが休演で、急遽演目が変更に。

「シンデレラ」のパドドゥを金子扶生とムンタギロフ。

「眠れる森の美女」のパドドゥをサラ・ラムと平野。


盛りだくさんだったけど、それぞれが短く、もっと見たいと思ってしまった。

2023年7月5日水曜日

7月5日 英国ロイヤルバレエ団「ロミオとジュリエット」

金子扶生のジュリエットとワディム・ムンタギロフのロミオ。
ムンタギロフはスラリとした手足で優雅な踊り。ノーブルな王子のよう。優しい雰囲気のロミオに対して、金子のジュリエットはシャープな印象。顔だちのせいもあるが、上手いのだけれど踊りもどこか直線的というか、硬質に感じた。あまり好みではないと思っていたが、3幕の演技には引き込まれた。ロミオが去ってからベッドで佇む時間が結構長いのだが、表情に決意が浮かぶ、最後はなぜか寝台?の向こうへ行って胸を突くので、ロミオの方に近づこうと這い上がる動きが不思議。はじめから近くにいればいいのでは?。 

ティボルトの平野亮一がすごかった、髭もあって、見るからに危ない雰囲気。乱闘の場面には酒瓶を煽りながら現れ、やさぐれた様子ではっきりと殺意を持ってマキューシオを刺す。逆上したロミオとの対決は剣を激しく交え(大きな金属音がしてたから、かなりの力で打ち合っていたはず)、最期はのたうち回っての壮絶な最期。

2023年7月4日火曜日

7月4日 七月大歌舞伎 夜の部

「俊寛」

仁左衛門の俊寛は登場した時から違う。痩せた顔に漂う寂寥感が、離島に流されたもののリアリティを生んでいる。セリフの一つ一つ、動作の一つ一つが胸に迫り、赦免状に自分の名がないかと紙の裏表ばかりか、重なっていないかまで確認する様子など、これまで俊寛を観たときには気にしていなかったところもしっかり印象づける。そして、仁左衛門のオリジナルという、花道に設けた海に踏み込んでいく場面。花道横の席だったので、必死の表情が迫り来るよう。崖を登ってからの最後の場面は、諦観のようなものもあり、短い時間で感情が入り乱れる様がありありと伝わった。

瀬尾の弥十郎か憎たらしい敵役を好演。だが、客席から笑いが起こったのはなぜ? 菊之助演じる丹左衛門が、瀬尾との争いを傍観する時宣言したところでも笑いが起きていたなぁ。
千鳥の千之助は、小柄で可憐な容姿はいいが、立ち居振る舞いやセリフがあざといというか、商売女のよう。田舎娘の素朴さ、健気さがほしい。 (19日に再見し、ますます下手になっていたように見えたのに戦慄した…。孝太郎に習ったとのことだが、言われてみれば所作やそれっぽいかもと思うも、孝太郎の千鳥は可愛かったのに。何が違うのだろう)

「吉原狐」

米吉がいい。気風のよさ、江戸っ子らしい語り口、おっちょこちょいでトラブルメーカーだけれど憎めない。こういうキュートな芸者って、どこかにいそうな感じ。

染五郎は廓で遊興に耽る若殿様はよかったが、後半の落ちぶれてからは板につかない。経験値が足りないのだろう。

千寿の花魁がおっとりと美しい。

2023年7月1日土曜日

7月1日 木ノ下歌舞伎「糸井版 摂州合邦辻」

2度目の再演とあって、役者一人一人の深みが増し、芝居の濃度が上がった。特に、群舞が印象に残った。ダンスのレベルはそれぞれ違うだろうに、誰かが目立つということがなく、よく揃って見える。
圧巻だったのは、合邦が玉手を刺すところで、ヴァイオリン演奏と共に浄瑠璃の語りのような情景描写があり、奏者の気迫のこもった掛け声もあって、緊迫感があった。

玉手の俊徳丸への恋が本当かというのは、色々な解釈があるが、今回は行為の底に恋慕があるように見えた。というのは、回想シーンで、腰元時代の玉手が主人の子どもである俊徳丸と戯れるところで好意を抱いたようだったから。刺されてから、恋は偽りというセリフがあるが、本心ではないと聞こえた。

玉手の内田慈は妖艶さと清廉さが見え隠れして好演。声が良ければなお良かった。アニメを思わせる発生は、子どもの頃はともかく、大人の女としてはどうか。歌も、強めの地声で音程が不安定のが惜しかった。

鑑賞サポートが入って、歌詞の字幕があったのだが、良し悪しと思う。2つの歌詞を同時に歌うところや、聞き取りにくい言葉が明確になる一方、つい字幕を見て役者な目がいかないのはマイナス。

大千穐楽とあって、キャストもやり切った様子で涙ぐむところも。客席はスタンディングオベーション。 

アフタートークで木ノ下が3つのキーワードを解説。1つは音楽、糸井のミョージカル。2つめは太陽と月に象徴される天体。舞台となる高安と天王寺は山と海の象徴。3つ目は神話。弱法師の伝説は遡るとインドの仏教説話、クマラ王子の伝説に行き着く。今昔物語にも同様の話が。おしてるやは難波、さざなみは大津の枕詞。